ユメ/うつつ

hana4

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 俺はソラが青春の色だと呼ぶそのアオ色に吸い込まれそうになった。隣でものすごい事を発見したかのようにソラがはしゃぐ。「確かにそうだ」とは俺も思った。


 でも、この青空のアオ色が青春なんじゃない。


「色じゃない」
「え?」
「やっぱ何でもない」
「なんだよぉ?気になるじゃん?」

 頬を膨らまして不服を表現するソラには、まだ教えてやらない。


 高校からの帰り道、いや、もっと前だ。
 きっと、ソラともう会えなくなった事を知ったあの日も。


 俺の視線の先の青空は、いつも何かに切り取られていた。


 見慣れた街並みが、張り巡らされた電線が、教室の窓枠が。
 俺に見える景色を好き勝手に切り刻んでいく。


 その枠組みの中からはみ出してしまえば、居場所なんて簡単になくなってしまう事にはもう、皆が気付いているような。

 当たり前の世界。

 だからそこでは、出来る限りの俺になってゆく。
 ソラ以外の友達が居て、それぞれが実現できそうな夢をみている。


「ソラって夢、ある?」
「ん?夢?」
「そう。将来の夢」
「……将来の夢か。そうだな……うーん。もう叶っちゃった、かな」
「え?もう叶ったって?」
「うん。夢ね、叶った。……そういえば、話してなかったね?」

 夢を叶えたと言っているソラの声色が曇る。

「僕、前の学校を辞める事、自分で決めたんだ」

 すぐにいつもみたいな笑顔に戻ったソラの声が弾みだしていた。それに安心を覚えつつ、俺には別の不安が過る……

「シン、そんな顔しないで?僕、別にいじめられて転校してきたとかじゃないんだよ?それに僕、一人きりだって平気なくらいだし。でもさ、物足りなさが募ってどうしようもなくなってはいた。でもそれが何でなのかは自分じゃ全然わかんなくて、それまでは、なんとなく上手にできてたんだけどね……」

 俺が声色でソラのコトがわかるように、ソラも俺の表情をみれば何が言いたいのか察してくれる。
 俺は、ソラが編入してきた理由が、いじめに耐えかねてではないと信じていたかった。

 それなのに、俺がそれを不安に感じていたことはもう、ソラに見透かされていた。まあ、ソラが転校したいほど辛い思いをしたのでなければ、そんなことはどうでもいい。

「このカメラをくれたおじいちゃん。高一の冬に死んじゃったんだ」
「そっ……か」
「もう九十歳だったしね?悲しかったけど、亡くなる前にちゃんと沢山話せたから、後悔とかはないよ。でもさ、おじいちゃん、会いに行く度に僕のコトを心配してた。『ちゃんと今しかできない事をやれてるのか?』って。『くだらない事も、叶いそうもない夢も、大人になっちゃったら何も出来なくなっちゃうぞ?』ってしつこい位。
 僕ね、それまで親の言いなりだった。うちの両親っていつも忙しくて、あんまりちゃんと話せない間に、僕が中学受験するって事も決まってたし、引っ越しだって……でも、嫌だって言えなくて、全部言われた通りにして。そうしないと嫌われちゃう気がしてたのかもしれない。だから何となく何でも笑って受け入れてっていうのが癖になってた……でも、そんな僕が、言い知れない物足りなさを抱えている事に、おじいちゃんは気付いてくれてたみたいだった」

 子供だったから。なんて言い訳はしたくない。けど俺はソラの家の事も受験の事も、引っ越しのワケも。ひとつも知らなかった。違う。そうじゃない。知ろうともしなかったんだ。

 そんなことに今頃気が付いた。
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