20 / 56
4【:peak】
4-6
しおりを挟む
俺はソラが青春の色だと呼ぶそのアオ色に吸い込まれそうになった。隣でものすごい事を発見したかのようにソラがはしゃぐ。「確かにそうだ」とは俺も思った。
でも、この青空のアオ色が青春なんじゃない。
「色じゃない」
「え?」
「やっぱ何でもない」
「なんだよぉ?気になるじゃん?」
頬を膨らまして不服を表現するソラには、まだ教えてやらない。
高校からの帰り道、いや、もっと前だ。
きっと、ソラともう会えなくなった事を知ったあの日も。
俺の視線の先の青空は、いつも何かに切り取られていた。
見慣れた街並みが、張り巡らされた電線が、教室の窓枠が。
俺に見える景色を好き勝手に切り刻んでいく。
その枠組みの中からはみ出してしまえば、居場所なんて簡単になくなってしまう事にはもう、皆が気付いているような。
当たり前の世界。
だからそこでは、出来る限りの俺になってゆく。
ソラ以外の友達が居て、それぞれが実現できそうな夢をみている。
「ソラって夢、ある?」
「ん?夢?」
「そう。将来の夢」
「……将来の夢か。そうだな……うーん。もう叶っちゃった、かな」
「え?もう叶ったって?」
「うん。夢ね、叶った。……そういえば、話してなかったね?」
夢を叶えたと言っているソラの声色が曇る。
「僕、前の学校を辞める事、自分で決めたんだ」
すぐにいつもみたいな笑顔に戻ったソラの声が弾みだしていた。それに安心を覚えつつ、俺には別の不安が過る……
「シン、そんな顔しないで?僕、別にいじめられて転校してきたとかじゃないんだよ?それに僕、一人きりだって平気なくらいだし。でもさ、物足りなさが募ってどうしようもなくなってはいた。でもそれが何でなのかは自分じゃ全然わかんなくて、それまでは、なんとなく上手にできてたんだけどね……」
俺が声色でソラのコトがわかるように、ソラも俺の表情をみれば何が言いたいのか察してくれる。
俺は、ソラが編入してきた理由が、いじめに耐えかねてではないと信じていたかった。
それなのに、俺がそれを不安に感じていたことはもう、ソラに見透かされていた。まあ、ソラが転校したいほど辛い思いをしたのでなければ、そんなことはどうでもいい。
「このカメラをくれたおじいちゃん。高一の冬に死んじゃったんだ」
「そっ……か」
「もう九十歳だったしね?悲しかったけど、亡くなる前にちゃんと沢山話せたから、後悔とかはないよ。でもさ、おじいちゃん、会いに行く度に僕のコトを心配してた。『ちゃんと今しかできない事をやれてるのか?』って。『くだらない事も、叶いそうもない夢も、大人になっちゃったら何も出来なくなっちゃうぞ?』ってしつこい位。
僕ね、それまで親の言いなりだった。うちの両親っていつも忙しくて、あんまりちゃんと話せない間に、僕が中学受験するって事も決まってたし、引っ越しだって……でも、嫌だって言えなくて、全部言われた通りにして。そうしないと嫌われちゃう気がしてたのかもしれない。だから何となく何でも笑って受け入れてっていうのが癖になってた……でも、そんな僕が、言い知れない物足りなさを抱えている事に、おじいちゃんは気付いてくれてたみたいだった」
子供だったから。なんて言い訳はしたくない。けど俺はソラの家の事も受験の事も、引っ越しのワケも。ひとつも知らなかった。違う。そうじゃない。知ろうともしなかったんだ。
そんなことに今頃気が付いた。
でも、この青空のアオ色が青春なんじゃない。
「色じゃない」
「え?」
「やっぱ何でもない」
「なんだよぉ?気になるじゃん?」
頬を膨らまして不服を表現するソラには、まだ教えてやらない。
高校からの帰り道、いや、もっと前だ。
きっと、ソラともう会えなくなった事を知ったあの日も。
俺の視線の先の青空は、いつも何かに切り取られていた。
見慣れた街並みが、張り巡らされた電線が、教室の窓枠が。
俺に見える景色を好き勝手に切り刻んでいく。
その枠組みの中からはみ出してしまえば、居場所なんて簡単になくなってしまう事にはもう、皆が気付いているような。
当たり前の世界。
だからそこでは、出来る限りの俺になってゆく。
ソラ以外の友達が居て、それぞれが実現できそうな夢をみている。
「ソラって夢、ある?」
「ん?夢?」
「そう。将来の夢」
「……将来の夢か。そうだな……うーん。もう叶っちゃった、かな」
「え?もう叶ったって?」
「うん。夢ね、叶った。……そういえば、話してなかったね?」
夢を叶えたと言っているソラの声色が曇る。
「僕、前の学校を辞める事、自分で決めたんだ」
すぐにいつもみたいな笑顔に戻ったソラの声が弾みだしていた。それに安心を覚えつつ、俺には別の不安が過る……
「シン、そんな顔しないで?僕、別にいじめられて転校してきたとかじゃないんだよ?それに僕、一人きりだって平気なくらいだし。でもさ、物足りなさが募ってどうしようもなくなってはいた。でもそれが何でなのかは自分じゃ全然わかんなくて、それまでは、なんとなく上手にできてたんだけどね……」
俺が声色でソラのコトがわかるように、ソラも俺の表情をみれば何が言いたいのか察してくれる。
俺は、ソラが編入してきた理由が、いじめに耐えかねてではないと信じていたかった。
それなのに、俺がそれを不安に感じていたことはもう、ソラに見透かされていた。まあ、ソラが転校したいほど辛い思いをしたのでなければ、そんなことはどうでもいい。
「このカメラをくれたおじいちゃん。高一の冬に死んじゃったんだ」
「そっ……か」
「もう九十歳だったしね?悲しかったけど、亡くなる前にちゃんと沢山話せたから、後悔とかはないよ。でもさ、おじいちゃん、会いに行く度に僕のコトを心配してた。『ちゃんと今しかできない事をやれてるのか?』って。『くだらない事も、叶いそうもない夢も、大人になっちゃったら何も出来なくなっちゃうぞ?』ってしつこい位。
僕ね、それまで親の言いなりだった。うちの両親っていつも忙しくて、あんまりちゃんと話せない間に、僕が中学受験するって事も決まってたし、引っ越しだって……でも、嫌だって言えなくて、全部言われた通りにして。そうしないと嫌われちゃう気がしてたのかもしれない。だから何となく何でも笑って受け入れてっていうのが癖になってた……でも、そんな僕が、言い知れない物足りなさを抱えている事に、おじいちゃんは気付いてくれてたみたいだった」
子供だったから。なんて言い訳はしたくない。けど俺はソラの家の事も受験の事も、引っ越しのワケも。ひとつも知らなかった。違う。そうじゃない。知ろうともしなかったんだ。
そんなことに今頃気が付いた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる