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6【:sink】
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しおりを挟むさっきまでと違う気配を感じると、鼻先が冷たくなっていた。
朝の空気はツンとその奥を刺して、重たい瞼を持ち上げる。
暗い部屋に少しずつ焦点が合うと、オレンジの小さな光だけで、ここが自分の部屋なのだとわかる。それで、これが本当の安心感なのだと思い出した。期待を抱えたまま終わったはずの夢は、あの悪夢とはまた別の絶妙に不味い後味を残し、言い知れない焦燥感が疼いている。
全く違う世界観なのにも関わらず、この夢とあの悪夢はどこか関係している気がしていた。それに、目を覚ましてからもこんなにハッキリと覚えている夢は、あの悪夢以外では初めてだった。
夢に出て来た灰色の壁の正体は、とんでもなく大きなクジラの様だった。その灰色の肌には無数の細かな穴が開いていて、触ればきっとザラザラとするだろう。喋る度に沢山の空気が溢れ出し、小さな泡の集合体となって昇ってゆく。その様子も気持ちが良いものではなかった。それに加えて、ギョロリと突き出た両方の目玉は絶えず動いていたし、あんなに間近で見つめられて、よく耐えていたなと自分でも思う。今思い出しても気持ちが悪いその姿に、何故あんな安心感を覚えたのか、どんなに考えてももうわからなかった。でも、あの小瓶を手渡された時、やっとの思いで夢を掴み取ったような達成感で高揚した記憶はハッキリと残っていて、既視感の名残と、曖昧な情報が俺をいらつかせていた。
しっかりと目覚めてからも、ソラに会いたい気持ちはなくならず、むしろ今日絶対に会っておかなければいけない様な気さえしてくる。たかが夢を見ただけなのに、今すぐにでもソラのもとへと駆け出したい。
手の中で四角く光る画面をただ見つめる。
何もできないまま、それはただ黒いだけになって、情けない自分の顔が映り込んでいた。
ソラに会って話がしたい。
悪夢のせいで上手く眠れない。
だから、ソラとの時間を上手く保てなくなってしまったのだと言い訳をしたい。
不安な夢の正体を、俺と一緒に探して欲しい。
そんな自己中心的な想いしか浮かばなくなって、電話も、文字を打ち込む事も出来ないでいる。連絡を取りさえすれば満たされるかもしれないこの欲を、ソラに知られてしまうのが恥ずかしかった。
悪夢の続きを振り払いたいのに、ちっぽけな俺の、大きなプライドがこの部屋に居座って邪魔をしてくる。まだ、だめなんだ。晒せない自分に呆れながら、そんな自分を守るために部屋を飛び出す。でも無意識は未練がましくて、俺は、あのカメラをいつの間にか抱えていた。
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