ユメ/うつつ

hana4

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8【:discord】

8-3

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 どうしようもない後悔ばかりが頭の中を駆け巡っている。
 ソラの頬には涙が伝う。それを反射してくれる光は一筋も無かった。

「シン……ごめん。僕がシンと一緒にいたくなったから。折角、僕ら離れ離れになって、そのまま僕を忘れてたら……こんな事にはならなかったかもしれない。そう、シンが僕のコト思い出さなければ良かったんだ。そのことにもっと早く僕が気付けば……」
「違う……」

 そう呟くのが精一杯だった。俺を振り切るように走り出したソラの腕を、掴もうと思えば掴めたはずだ。それにこのまま追いかければ、ソラに追いつく事は容易い。
 飾らずに笑い合ったあの記憶を全部自分達で踏み潰して、思い出の中の何もかもが間違いだった様な気分になる。


 少しずつ遠ざかってゆくソラの背中を見つめながら、腕が、足が、思い通りに動かなかった。
 俺らは今、何のためにこんな仲違いをしなきゃならないんだ?
 巻き戻せない時間を恨んでいた。そして、この運命からも逃げ出したくなる。


 ソラの言う通り、俺はあの時自分の持ちうる全ての希望を、見返りとしてあの魔法使いに渡し、代わりに人間になるための薬を貰った。今思えば、それで見返りとしては十分だったはずだ。でもあの魔法使いは更に要求を重ね、俺にもう一つの制約を課した。

 それは、俺が一度手放した夢をもう一度思い出し、大人になるまでにそれを叶えるという事。

 もし夢を叶えられないまま大人になれば、俺はその瞬間に空気の泡となり、悪夢ばかりを好んで食べるアイツのエサになる。


 別に何かになりたかったわけじゃない。


 今まで一度もこんな事、考えもしなかった。


 小さい頃は、誰かを救う、そんな正義のヒーローを夢見た。
 この身を賭してでも戦う。そんな……


 でも、それが遥か昔に手放した夢だった。


 俺があの時願ったこと。
 それは、人間になってアイツを、厄災を引き連れてくるアイツを倒す事だった。
 人魚として永遠に近い時を生きられる事を捨ててでも、あんな悪い奴は倒してしまいたい。あの時の俺は本気でそう思ったから、この身を、自分の持つ希望の全てを賭して人間になった。


 そんな大層な夢が、俺の本当の夢だったと思い出したところで、今更そんなの叶えられるはずがない。


 今まで、人間の当たり前を装いながら生きてきた。
 叶いそうな夢を探しながら、ただ何となく周りに合わせて。


 俺には何の力もない。あんなもの倒せるわけがない。
 目に見えるものだけが世界の全てだったはずじゃないか。


 そんな枠にはまってしまっていたのも全部、アイツらに仕組まれていた事なのかもしれなかった。



 それでも──
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