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hana4

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case2:白金恵太様

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「ほら、ビビってんじゃねーよ。俺はお前だよ。ってかあかりさん、これって失敗じゃない?俺の一番の後悔って、絶対ココじゃないんだけど」

「なになに?なにこれ、どういう状況?」

「俺は“本人”ですよ。ケータです。いま頭抱えてる、こいつの未来!」

「え?じゃあ……施術中に一緒に“来た”ってこと?」

「たぶんそうですね。気がついたら中学の……これは、カレンに告られた時かな……っていうか、俺の過去で一番キモなの、本当にここなんですか?ちゃんとみました?」

「……実は、君のストーリーってグシャグシャで。全然意味わかんなかったんだよね。こんなこと今までに一度もなかったし、滅茶苦茶に動くせいで酔って……んで、気付いたらここだったの。だから、ベースになる記憶が全くわからないし、後悔のポイントもわからないんだよ……」

「なんか、俺のせいみたいな言い方してますけど……それ、あかりさんの腕が悪いんじゃないですか?」

「ちょっ……無理くり施術受けておいて、なにその言い方っ!!」


(あの……おれの頭の中で喧嘩するのやめてもらえます?)

 中学生の彼が仲裁してくれたから良かったものの、腕が悪いだとか言われて、危うく他人の頭の中でヒートアップするとこだった。

(しっかりとした状況はまだよく飲み込めてないんですけど……おれ、告白の返事はどっちでも良いし。お任せするんで、良い未来になる答えを教えて下さい)

 なにこの中学生……いわゆる悟り系?未来の彼よりも、ずっと大人びている印象だ。

「そうね。時間もたっぷりとあるわけじゃないし、とりあえず解決しないと……でさ、どうなのよ?あの子とは付き合ったの?」
「うん。カレンは可愛かったし、あん時は俺、誰とも付き合ってなかったから、とりあえずOKして付き合ったけどね。付き合ってるあいだの思い出も別に……ましてや、後悔する程の事なんて何もねーけど?」
「まあ!中学生のくせに“とりあえず”付き合うだなんてっ……贅沢すぎ……ただ、特にエピソードも無いって事は、付き合うこと自体に“後悔”があったのかも?」
「たかが一ヵ月程度の付き合いで?」
「そんなに短かったの?」
「おう」
「そっか……でも他に選択肢って、ある?」
「そう言われたらそうか……おしっ、俺!あとでカレンに付き合えないって言っておいて!」

 彼がそう言った途端、ピピピピッという電子音が部屋に響く。

 その音で、私も彼も同時に目を覚ました。

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