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「HEY HEY HEY!! 派手な登場、それが相応、だって文字通り神っ!Yeah!ザッツGOD
Are・you・ready? エビバデ、この場で、祀られYeah!オレ様、神様、崇めろYeah!……
……って誰も聞いてないんかいっ!あー、まじか。今日のためにめっちゃ頑張って綴ったリリック、こっからが盛り上がるところだったのに」
「神サマ……少々登場が派手過ぎでございます。とはいえ相手は人間なんですから、雷なんて落としたら、ほら……やっぱりみんな倒れちゃってるじゃないですか。それに、なんですか?そのお姿は……」
「いやあ、ビジュアルで彼らに負けるわけにはいかないだろ?そう言うコマだって、ちゃっかり令和の流行り顔じゃないか……」
重低音のビートに乗せた自作のラップをかましながら意気揚々と登場したのは、この神社に祀られている張本人、天之音羽雅命とこの神社の狛犬、通称コマ。ここの神様であるは「如何にも」と言える仰々しい束帯姿で現れた。ただ、烏帽子こそかぶってはいるものの、その髪型はシルバーアッシュに染まった長髪を後ろでラフに束ねただけ。その鼻筋は細くスッと通り、顎のラインは見惚れるほどに美しい。そんな彼は、その場で気を失い倒れてしまった賀成との五人を見下ろしながら、残念そうな表情を浮かべている。
「んんっ、私の本来の姿は“この通り”でございます。この像が随分と不細工に作られているだけで……」
一方、傾いてしまった狛犬の像を直しながらそんな風に呟いたコマも、神サマに仕えさせておくには勿体ないほどのビジュアルをしている。神サマである天之音羽雅命が塩顔イケメンであるのに対し、コマは「王道」のイケメンといえよう。万人受けする二重幅、涙袋のちょうど良い位置にあるホクロ。ミルクティー色でウェーブのかかったマッシュヘアーはトイプードルのようで、わしゃわしゃと撫でまわしたくなる。コマは狛犬なだけあって、そんな子犬的可愛さを含んだ容姿をしていた。
「いや……確か前見た時は……」
「もう、よいではないですか。ほら、もうそろそろ彼らを起こして差し上げましょう?」
神サマの話を上手に逸らしたコマは自分の定位置である神サマの半歩後ろへと戻り、急かすようにそう言った。
「そうだった。んで、どうする?もう一回イントロから……」
「いい加減にしてください」
「……はい」
*
「痛ぇ……」
「……はっ、おい、みんな大丈夫か?」
神サマがふいっと手を振ると、辺りはほわほわとした光に包まれる。賀成とahornの五人はその光に包まれて、次々と目を覚ましはじめた。
「やば……これ祟りじゃね?」
「うわあっ……あれ?俺……生きてる?」
倒れる寸前に狛犬に登っていたハルはキョロキョロと辺りを見渡し、アンジは自分の身体をペタペタと触ってその無事を確認している。
「驚かせてしまったみたいでごめんよ。歓迎したつもりだったんだが……」
そんな二人の様子を見た神サマは烏帽子の側をポリポリとかきながら、少々派手にし過ぎた登場を反省していた。
「歓迎?って、まじ死ぬかと思ったんだけど!」
「大丈夫大丈夫、大事なキミたちを死なせるわけがないじゃないか」
「えっ?じゃあ、俺があの犬を倒した祟りじゃないってこと?良かったぁ……」
そう言ったハルは狛犬の像が元通りの場所にあることを確認して、ホッと胸をなでおろす。しかし、安心しきっているハルの表情をみたコマは面白くなさそうに顔をしかめると、「そちらに関しましては、後ほどゆっくり……」と呟いた。
「……ってかさ、誰?」
オースケの放ったその一言で、全員の視線が一か所に集まる。
ナチュラルに会話に参加してきた神サマとコマを自然と受け入れているかのようにみえたハルたちだったのだが、その実は何も考えていないだけだったのだ。だからこの不可思議な状況を皆が認知するためには、いつも冷静なオースケが目を覚まして状況を把握するのを待つほかなかった。そんなオースケの放った一言で、メンバーの表情がみるみるうちに固まっていく。
「あ、まじだ。俺、普通に話しちゃってた……」
「ハル、そういうのホントやめた方がいいよ?」
「なんだよ、アンジだって今まで気付かなかったくせに」
「二人とも同じようなもんだよ?」
「もうっ、ライムは黙ってて!」
「まあまあ、落ち着いて……」
「はあ?誰のせいだよ?ってか、まじ誰だよ……?」
目の前に佇む仰々しい姿のイケメン二人を前に、ハルたち三人は見当違いのイラつきをみせていた。しかし、やっと「自分の存在を認知された」のだと感じた神サマは、ハルたちの小競り合いをなだめ、やたらと嬉しそうにしている。そして「いよいよ出番だ」と言わんばかりにその美しい姿勢をもう一度正すと、彼らの方へと向きなおった。
「如何にもこの私こそがこの場所に祀られし神、天之音羽雅命である。まあまあ、皆の者、そう構えずとも良いぞ……」
賀成とahornの五人へ向かい、神サマはその威厳を示すように自己紹介をした。ただ……彼らの反応は神サマが期待していた通りではなかった。そう、神サマは参拝にやってきた彼らなら、まさにこの状況を「ご本人様登場」的な感じでさぞ喜ぶのだろうと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
「あれ?思ってたのと違うな……もっと、ワアとかキャーとか言ってもよいのだぞ?」
「ちょっと……キャラがぶれてしまったからですかね?」
コマもそう言いながら神サマと顔を見合わせて不思議そうな顔をしていた。
「神サマって言われてもねぇ……あっ、あれでしょ?コスプレユーチューバー的なやつ!」
確かに『神サマと狛犬』というよりも『コスプレ系ユーチューバー』といわれた方がしっくりくる。それほどまでにイケ散らかしたビジュアルで登場してしまったせいで、神サマとコマの威厳はすっかり損なわれてしまっているようだ。
「それだ!賀成さんは知ってたんですか?やだなあ……俺たちもうドッキリとか仕掛けられちゃう感じ?」
「いや、俺は何も知らないけど?」
「ああ、そういった感じなのですね」
ahornのメンバーは「賀成さんじゃないのなら、社長の仕業?」などと各々推理を口にしていたが、その様子を少し見ていたコマは彼らの会話に納得したようにうなずきながら、この現状を神サマに耳打ちすると、コマに負けないくらい仕上がったビジュアルの神サマも「ああ、そうか」と嬉しそうにうなずき、至極お洒落にパチンと指を鳴らしてみせた。
「ひゃっ」
今のイマまで呆気にとられ過ぎていて言葉を失っていたニコが少し飛び跳ねながら叫び、想定外の事態からahornの五人を守ろうと気張っていた賀成も小さく「ウソだろ……」と呟いたきりそのまま言葉を失ってしまう。
Are・you・ready? エビバデ、この場で、祀られYeah!オレ様、神様、崇めろYeah!……
……って誰も聞いてないんかいっ!あー、まじか。今日のためにめっちゃ頑張って綴ったリリック、こっからが盛り上がるところだったのに」
「神サマ……少々登場が派手過ぎでございます。とはいえ相手は人間なんですから、雷なんて落としたら、ほら……やっぱりみんな倒れちゃってるじゃないですか。それに、なんですか?そのお姿は……」
「いやあ、ビジュアルで彼らに負けるわけにはいかないだろ?そう言うコマだって、ちゃっかり令和の流行り顔じゃないか……」
重低音のビートに乗せた自作のラップをかましながら意気揚々と登場したのは、この神社に祀られている張本人、天之音羽雅命とこの神社の狛犬、通称コマ。ここの神様であるは「如何にも」と言える仰々しい束帯姿で現れた。ただ、烏帽子こそかぶってはいるものの、その髪型はシルバーアッシュに染まった長髪を後ろでラフに束ねただけ。その鼻筋は細くスッと通り、顎のラインは見惚れるほどに美しい。そんな彼は、その場で気を失い倒れてしまった賀成との五人を見下ろしながら、残念そうな表情を浮かべている。
「んんっ、私の本来の姿は“この通り”でございます。この像が随分と不細工に作られているだけで……」
一方、傾いてしまった狛犬の像を直しながらそんな風に呟いたコマも、神サマに仕えさせておくには勿体ないほどのビジュアルをしている。神サマである天之音羽雅命が塩顔イケメンであるのに対し、コマは「王道」のイケメンといえよう。万人受けする二重幅、涙袋のちょうど良い位置にあるホクロ。ミルクティー色でウェーブのかかったマッシュヘアーはトイプードルのようで、わしゃわしゃと撫でまわしたくなる。コマは狛犬なだけあって、そんな子犬的可愛さを含んだ容姿をしていた。
「いや……確か前見た時は……」
「もう、よいではないですか。ほら、もうそろそろ彼らを起こして差し上げましょう?」
神サマの話を上手に逸らしたコマは自分の定位置である神サマの半歩後ろへと戻り、急かすようにそう言った。
「そうだった。んで、どうする?もう一回イントロから……」
「いい加減にしてください」
「……はい」
*
「痛ぇ……」
「……はっ、おい、みんな大丈夫か?」
神サマがふいっと手を振ると、辺りはほわほわとした光に包まれる。賀成とahornの五人はその光に包まれて、次々と目を覚ましはじめた。
「やば……これ祟りじゃね?」
「うわあっ……あれ?俺……生きてる?」
倒れる寸前に狛犬に登っていたハルはキョロキョロと辺りを見渡し、アンジは自分の身体をペタペタと触ってその無事を確認している。
「驚かせてしまったみたいでごめんよ。歓迎したつもりだったんだが……」
そんな二人の様子を見た神サマは烏帽子の側をポリポリとかきながら、少々派手にし過ぎた登場を反省していた。
「歓迎?って、まじ死ぬかと思ったんだけど!」
「大丈夫大丈夫、大事なキミたちを死なせるわけがないじゃないか」
「えっ?じゃあ、俺があの犬を倒した祟りじゃないってこと?良かったぁ……」
そう言ったハルは狛犬の像が元通りの場所にあることを確認して、ホッと胸をなでおろす。しかし、安心しきっているハルの表情をみたコマは面白くなさそうに顔をしかめると、「そちらに関しましては、後ほどゆっくり……」と呟いた。
「……ってかさ、誰?」
オースケの放ったその一言で、全員の視線が一か所に集まる。
ナチュラルに会話に参加してきた神サマとコマを自然と受け入れているかのようにみえたハルたちだったのだが、その実は何も考えていないだけだったのだ。だからこの不可思議な状況を皆が認知するためには、いつも冷静なオースケが目を覚まして状況を把握するのを待つほかなかった。そんなオースケの放った一言で、メンバーの表情がみるみるうちに固まっていく。
「あ、まじだ。俺、普通に話しちゃってた……」
「ハル、そういうのホントやめた方がいいよ?」
「なんだよ、アンジだって今まで気付かなかったくせに」
「二人とも同じようなもんだよ?」
「もうっ、ライムは黙ってて!」
「まあまあ、落ち着いて……」
「はあ?誰のせいだよ?ってか、まじ誰だよ……?」
目の前に佇む仰々しい姿のイケメン二人を前に、ハルたち三人は見当違いのイラつきをみせていた。しかし、やっと「自分の存在を認知された」のだと感じた神サマは、ハルたちの小競り合いをなだめ、やたらと嬉しそうにしている。そして「いよいよ出番だ」と言わんばかりにその美しい姿勢をもう一度正すと、彼らの方へと向きなおった。
「如何にもこの私こそがこの場所に祀られし神、天之音羽雅命である。まあまあ、皆の者、そう構えずとも良いぞ……」
賀成とahornの五人へ向かい、神サマはその威厳を示すように自己紹介をした。ただ……彼らの反応は神サマが期待していた通りではなかった。そう、神サマは参拝にやってきた彼らなら、まさにこの状況を「ご本人様登場」的な感じでさぞ喜ぶのだろうと勝手に思い込んでしまっていたのだ。
「あれ?思ってたのと違うな……もっと、ワアとかキャーとか言ってもよいのだぞ?」
「ちょっと……キャラがぶれてしまったからですかね?」
コマもそう言いながら神サマと顔を見合わせて不思議そうな顔をしていた。
「神サマって言われてもねぇ……あっ、あれでしょ?コスプレユーチューバー的なやつ!」
確かに『神サマと狛犬』というよりも『コスプレ系ユーチューバー』といわれた方がしっくりくる。それほどまでにイケ散らかしたビジュアルで登場してしまったせいで、神サマとコマの威厳はすっかり損なわれてしまっているようだ。
「それだ!賀成さんは知ってたんですか?やだなあ……俺たちもうドッキリとか仕掛けられちゃう感じ?」
「いや、俺は何も知らないけど?」
「ああ、そういった感じなのですね」
ahornのメンバーは「賀成さんじゃないのなら、社長の仕業?」などと各々推理を口にしていたが、その様子を少し見ていたコマは彼らの会話に納得したようにうなずきながら、この現状を神サマに耳打ちすると、コマに負けないくらい仕上がったビジュアルの神サマも「ああ、そうか」と嬉しそうにうなずき、至極お洒落にパチンと指を鳴らしてみせた。
「ひゃっ」
今のイマまで呆気にとられ過ぎていて言葉を失っていたニコが少し飛び跳ねながら叫び、想定外の事態からahornの五人を守ろうと気張っていた賀成も小さく「ウソだろ……」と呟いたきりそのまま言葉を失ってしまう。
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