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それもそのはず、神サマとコマがパチンパチンとリズムよく指を鳴らすと、その音に合わせるように彼らの姿カタチは次々と変化していくのだ。
ただ二人ともこだわりが強いらしく、その姿はどれもまあイケメン……しかもコマに至っては、途中なんとも愛らしいトイプードルの姿まで挟んでいた……
一方、二人がその容姿ごと次々と変化させてゆくさまに釘付けになっている面々はというと、口をあんぐりと開けたまま情けない顔を晒しているだけ。その目の前で"エンターテインメント"を繰り広げている神サマとコマの方が、デビューを間近に控えたahornの五人よりも、よっぽどエンターテイナーだった。
「どうだい?これなら信じられるだろ?」
最初の姿に戻った神サマは一世一代のドヤ顔を浮かべている。愛らしい犬とイケメンを交互に披露していたせいで息が上がっているコマも、やはり最初の王道イケメンの姿へと戻っていた。
「まあ、そういうわけだから。よく来たね、待っていたよ。ハル、アンジ、ライム、オースケ、ニコ。それから……宙」
「ソラって……」
神サマはahornのメンバー一人一人の顔を見ながらその名前を呼んだあと、賀成の顔をじっと見つめて「宙」と呼んだ。賀成はそれに一瞬ビクッと反応し、思わず神サマから視線を逸らす。
「ああ、もう今はソラではないのか……」
「……」
「すまんすまん。なんだか顔を見たら懐かしくて、つい」
「えっ?どういうこと?賀成さん、神サマたちと知り合い……?」
そんなアンジの質問に賀成は首を横に振りながらも、それ以上何も言わずに考え込んでしまった。
「神サマ、そろそろ本題に……」
「おお、そうだな。今日、ここにキミたちを呼んだのは他でもない……」
「呼んだ……って?」
コマに促された神サマは、まだ混乱の中にいる賀成とahornの顔色もライムの投げかけた疑問も全て無視して語り始めた。
「キミたちも見ての通り、此処はすっかり寂れてしまった。それもこれもこの神社唯一の偶像だったSPARKが解散して“信仰心”が集まらなくなってしまったから。まあね、これを責めるつもりはない。だけどさ、このままじゃ此処は……というかむしろ私が神として存在することさえ難しくなってしまうのだよ。そこで、神サマ考えました……じゃんっ!まずはこのフリップをご覧ください」
神サマがそう言うと、コマが徐に一枚のフリップを取り出して神サマに手渡した。
「えーこちらがですね、いわゆる“宗教”と呼ばれるものの概要でございます」
すっかり司会者気取りの神サマは、イラストを指差しながら得意げな表情を浮かべている。
「これ、これがね、皆さんが信仰する“神様”ですね、そしてこちらが“信仰心”を神様に送ってくれる“信者”と呼ばれる方々。まあ、この間に私たちが“偶像”と呼ぶ……そうですね“教祖”と言えばわかりやすいでしょうか?そういった立場の人間がいたりいなかったり……つまりはこの矢印に従って、キミたちが“神様”と呼ぶ存在が成り立っているわけなのですが……」
「神サマ……どうやら数名、理解できていないようですよ?」
フリップに書かれた矢印を指差しながら説明を続けていた神サマにコマがそう告げる。
「うーん、実は神サマもね、途中からそんな気がしてました……では、後はコマから……どうぞ」
「えっ?私ですか……?」
「うん。彼らにわかりやすいように簡単に説明してあげて?」
「……わかりました。そうですね、つまりは“神サマ”が“神様”として存在し続けるには、信仰してくださる方々が必要なのです」
司会者気取りの神サマからの無茶ぶりに即座に応えられるコマは流石だ。神サマも思わず「よっ、さすがコマっ!」という合いの手を入れる。
「んんっ、ありがとうございます……では続けますよ?」
頼りがいのあるコマに説明を任せることにした神サマは「ひゅいっ」と指笛を鳴らし、自分はガヤに徹することにしたようだった。
「そして10年前、この神社の“偶像”の役割をお願いしたのがSPARKの皆さまだったわけです。これはあまり知られていないのかもしれませんけど……実質、“偶像”や“教祖”というものなんて何でもいいのですよ。なにかの“像”でも良いですし、“人間”でもいい。それが何人でも構わない。経なんて唱えなくともその心……“信仰心”さえ頂ければ十分なわけなのです」
「そうそう!コマぁいいねえ、その調子でどんどんイッチャッテ!」
「……はい。それでですね、芸能の神を祀る神社というのは遥か昔から、往々にして歌い踊る者をその“偶像”に据えることが多いのです。能とか、盆踊りなんかもそれの一種。しかし……その“偶像”へと捧げられる信仰心が集まらなくなると御覧の通り、その社は廃れてしまう」
「ちょっと待って……宗教とか、偶像?とか……一気に喋られても意味わかんないし」
神サマとコマの話を真剣な表情で聞いていたようにみえて、やはりその実なにも理解できていなかったハルが堪らず口を開いた。するとアンジとライムも顔を見合わせて大きくうなずく。
「あーそう、つまりはね……次は、YOUたちがこの神社の“偶像”になっちゃいなよ。ってハナシなのです」
「神サマ、そちらの口調は既に専売特許でして、今やタブーでございます……」
「だって、一回言ってみたかったんだもん」
コマに指摘を受けた神サマは少しだけしょんぼりとしていた。
ただ二人ともこだわりが強いらしく、その姿はどれもまあイケメン……しかもコマに至っては、途中なんとも愛らしいトイプードルの姿まで挟んでいた……
一方、二人がその容姿ごと次々と変化させてゆくさまに釘付けになっている面々はというと、口をあんぐりと開けたまま情けない顔を晒しているだけ。その目の前で"エンターテインメント"を繰り広げている神サマとコマの方が、デビューを間近に控えたahornの五人よりも、よっぽどエンターテイナーだった。
「どうだい?これなら信じられるだろ?」
最初の姿に戻った神サマは一世一代のドヤ顔を浮かべている。愛らしい犬とイケメンを交互に披露していたせいで息が上がっているコマも、やはり最初の王道イケメンの姿へと戻っていた。
「まあ、そういうわけだから。よく来たね、待っていたよ。ハル、アンジ、ライム、オースケ、ニコ。それから……宙」
「ソラって……」
神サマはahornのメンバー一人一人の顔を見ながらその名前を呼んだあと、賀成の顔をじっと見つめて「宙」と呼んだ。賀成はそれに一瞬ビクッと反応し、思わず神サマから視線を逸らす。
「ああ、もう今はソラではないのか……」
「……」
「すまんすまん。なんだか顔を見たら懐かしくて、つい」
「えっ?どういうこと?賀成さん、神サマたちと知り合い……?」
そんなアンジの質問に賀成は首を横に振りながらも、それ以上何も言わずに考え込んでしまった。
「神サマ、そろそろ本題に……」
「おお、そうだな。今日、ここにキミたちを呼んだのは他でもない……」
「呼んだ……って?」
コマに促された神サマは、まだ混乱の中にいる賀成とahornの顔色もライムの投げかけた疑問も全て無視して語り始めた。
「キミたちも見ての通り、此処はすっかり寂れてしまった。それもこれもこの神社唯一の偶像だったSPARKが解散して“信仰心”が集まらなくなってしまったから。まあね、これを責めるつもりはない。だけどさ、このままじゃ此処は……というかむしろ私が神として存在することさえ難しくなってしまうのだよ。そこで、神サマ考えました……じゃんっ!まずはこのフリップをご覧ください」
神サマがそう言うと、コマが徐に一枚のフリップを取り出して神サマに手渡した。
「えーこちらがですね、いわゆる“宗教”と呼ばれるものの概要でございます」
すっかり司会者気取りの神サマは、イラストを指差しながら得意げな表情を浮かべている。
「これ、これがね、皆さんが信仰する“神様”ですね、そしてこちらが“信仰心”を神様に送ってくれる“信者”と呼ばれる方々。まあ、この間に私たちが“偶像”と呼ぶ……そうですね“教祖”と言えばわかりやすいでしょうか?そういった立場の人間がいたりいなかったり……つまりはこの矢印に従って、キミたちが“神様”と呼ぶ存在が成り立っているわけなのですが……」
「神サマ……どうやら数名、理解できていないようですよ?」
フリップに書かれた矢印を指差しながら説明を続けていた神サマにコマがそう告げる。
「うーん、実は神サマもね、途中からそんな気がしてました……では、後はコマから……どうぞ」
「えっ?私ですか……?」
「うん。彼らにわかりやすいように簡単に説明してあげて?」
「……わかりました。そうですね、つまりは“神サマ”が“神様”として存在し続けるには、信仰してくださる方々が必要なのです」
司会者気取りの神サマからの無茶ぶりに即座に応えられるコマは流石だ。神サマも思わず「よっ、さすがコマっ!」という合いの手を入れる。
「んんっ、ありがとうございます……では続けますよ?」
頼りがいのあるコマに説明を任せることにした神サマは「ひゅいっ」と指笛を鳴らし、自分はガヤに徹することにしたようだった。
「そして10年前、この神社の“偶像”の役割をお願いしたのがSPARKの皆さまだったわけです。これはあまり知られていないのかもしれませんけど……実質、“偶像”や“教祖”というものなんて何でもいいのですよ。なにかの“像”でも良いですし、“人間”でもいい。それが何人でも構わない。経なんて唱えなくともその心……“信仰心”さえ頂ければ十分なわけなのです」
「そうそう!コマぁいいねえ、その調子でどんどんイッチャッテ!」
「……はい。それでですね、芸能の神を祀る神社というのは遥か昔から、往々にして歌い踊る者をその“偶像”に据えることが多いのです。能とか、盆踊りなんかもそれの一種。しかし……その“偶像”へと捧げられる信仰心が集まらなくなると御覧の通り、その社は廃れてしまう」
「ちょっと待って……宗教とか、偶像?とか……一気に喋られても意味わかんないし」
神サマとコマの話を真剣な表情で聞いていたようにみえて、やはりその実なにも理解できていなかったハルが堪らず口を開いた。するとアンジとライムも顔を見合わせて大きくうなずく。
「あーそう、つまりはね……次は、YOUたちがこの神社の“偶像”になっちゃいなよ。ってハナシなのです」
「神サマ、そちらの口調は既に専売特許でして、今やタブーでございます……」
「だって、一回言ってみたかったんだもん」
コマに指摘を受けた神サマは少しだけしょんぼりとしていた。
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