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無機質少女は夢を見る
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これは叶わない夢。
そんなことは分かっている。
だけれども、どうしても考えてしまう。
自由になってこの世界を飛び出し、自らの意思で行動出来たらどんなに幸せだろうかと。
今日も目が覚めた。
周囲に広がるのは見慣れた光景。
聞き慣れた音楽。
ここは町中にある公園だ。
陽はすっかり落ち、街頭のボンヤリとした明かりがこの一帯を照らしている。
私は公園のベンチで一人座っていた。
この先の展開がどうなるかは分かっている。
なぜなら、もう何度も繰り返してきたからだ。
数分もしたら一人の男がここにやって来る。
私がエスパーなのかって? それは違う。
この世界で私は、特殊な存在なだけだ。
そんなことを考えていると男がやってきた。
年齢は私と同じ高校2年生。クラスでも人気者だ。
……ぶっちゃけて言おう。
私はこのあと告白される。
100%確実にだ。
自惚れるなって? そう思われても無理はない。
でも告られるのは事実なのだから仕方ない。
「ごめん、待たせた?」
男はそう言ってきた。
「ううん、大丈夫だよ」
私の口がそう喋った。
その後、他愛のない会話が続いていく。
ちなみになぜ私が目の前の人を余所余所しく「男」と呼ぶのかというと、ただ単純にその人の人間性に興味がないからだ。
この男にいくら興味がなくても、私の口は言葉を勝手に紡いでいく。
表情も照れたり上目遣いになったりと、勝手に機敏に変化する。
自分のことなのに、『私の口がそう喋った』だったり『表情も勝手に変化する』といった表現をするのには理由がある。
それは後々説明しよう。
10分位経ち、男は真剣な表情で私を見つめ、そして愛の告白をしてきた。
だけれども私の胸にはこれっぽちも響かなかった。
何度も何度も聞いてきたセリフだからだ。
一字一句同じ。
変化もなければロマンチックの欠片さえもない。
だが私の気持ちとは裏腹に、口が勝手に「私も好きです」と言葉を発した。
そして男の胸に飛び込んでキス。
今まで幾度となくもこのシーンを繰り返してはいるが、この瞬間が一番ツライ。
本当は好きでもないやつとの口づけなんて吐き気がするほど惨めな気分になる。
本当は泣き出したい気分なのに、私の体はこの目の前の男に抱きしめられて悶えている。
本当は私が好きなのは『彼』なのに……。
心の中では泣きながら、私は思考に没頭することにした。
……どうして私はこんな世界に生まれたのか。
いや、『閉じ込められているのか』ということについてだ。
目が覚めたのは突然のことだ。
当時のことを振り返ってみることにした。
気がつくと学校の制服に身を包み、教室の中にいた。
頭に入ってくるのは軽快な謎のBGM。
(え、どういうこと!?)
と思ったのも束の間、驚きの出来事が起こる。
私の口が意思に反して勝手に喋り始めたのだ。
それはまるで用意されている台本を読むかのごとく。
私はパニックに陥った。
不安で泣き出したかった。
でもそれも叶わないとすぐに分かった。
私の体の自由は一切効かないのだ。
まるで誰かに操られているかのように勝手に言葉を発し、体が動いて行く。
悪い夢なら覚めてくれ。そう心から願った。
数分後、突然視界が真っ暗になったかと思うと、私は別の場所へと瞬間移動していた。
ここは、住宅街?
隣には同じデザインの制服を着た女子と、ブレザーを着た男子が2人いる。
一瞬で周囲の景色が変わった。
どういうことなのだ。
訳が分からないとはまさにこういうことを言うのだろうと私は思った。
ここでも意思に反して体は操り人形状態。
激しい目眩がした。
だけれどもそんなこともお構いなしに私の体は強制的に動き続ける。
頭がおかしくなりそうだ。
夢ならきっといつか覚める。
そう信じて私は耐えた。
……だけれどもその希望は叶えられなかった。
あれからどれくらいの時間が過ぎただろうか。
自由の効かない体。
一瞬で切り替わる周囲の景色。
常に頭に響き続ける謎の軽快なBGM。
精神的に疲れ果てていた時、ふと気になる言葉が飛び込んできた。
度々登場する、同じクラスにいる男が発した言葉だ。
そいつはどうやらオタクらしく、『ぎゃるげー』というものが好きなのだそうだ。
ぎゃるげーとは、可愛い女の子の登場人物と仲良くなり、恋人としてイチャイチャするまでの過程を描いた『げーむ』というものなのだそう。
色々と説明を聞いているうちに、私は衝撃を受けた。
もしかして、今私がいる世界って、ぎゃるげーの中なのではないかと。
そしてこれはげーむというものの世界なのではないのかと。
そう考えれば、様々な出来事に辻褄が合う。
オタクの男が解説していた通りの内容が、私の身の回りに起こっている。
この状況を打開するには一体どうすればいいのだろう。
私は必死に考えた。
勝手に動いていく体と日常の中で、どこかに自由になれるヒントがないかと死物狂いで目と思考を凝らして探したが、無意味に終わった。
私は『ぎゃるげー』と言う『げーむ』の世界に作られた存在なのだ。
そもそも人間でもなんでもない。
ならばどうしては私は意思を持った? 前世は人間だった?
分からない。答えてくれる存在はどこにもいない。
このげーむをプレイしているユーザーの操り人形に過ぎないのだ。
叫びたくても叫べない。
どうしようもない地獄だった。
……最初の公園の場面の説明に戻ろう。
『目が覚めたのが公園』ということについて。
このげーむのプレイヤーが、昨日げーむをこの公園の場面までプレイしてセーブし、今日そのデータをロードしたから公園で目が覚めたのだ。
げーむが起動していない間、私は記憶がない。
プレイヤーがプレイを始めると同時に私も目が覚める。
『聞き慣れた音楽』ということについて。
げーむで流れているBGMのこと。
嫌になってうんざりするのを通り越すくらずっと聴き続けている。場面によってBGMがコロコロ変わるのだが、耳を塞ぎたくても出来ない。まさに苦行だ。
『何度も繰り返してきた』ということについて。
それはプレイヤーがこのげーむを何度も周回プレイしているから。
会話の内容や出来事、それらは毎回全く同じ内容で進行する。
無限ループというやつだ。
私はどうしたら良いのだろう。
思考は出来るが、体の自由がない。
故に逃げ出す術もない。
神様。
どうか私の祈りを聞いてください。
これは叶わない夢。
そんなことは分かっている。
だけれども、どうしても考えてしまう。
自由になってこの世界を飛び出し、自らの意思で行動出来たらどんなに幸せだろうかと。
そんなことは分かっている。
だけれども、どうしても考えてしまう。
自由になってこの世界を飛び出し、自らの意思で行動出来たらどんなに幸せだろうかと。
今日も目が覚めた。
周囲に広がるのは見慣れた光景。
聞き慣れた音楽。
ここは町中にある公園だ。
陽はすっかり落ち、街頭のボンヤリとした明かりがこの一帯を照らしている。
私は公園のベンチで一人座っていた。
この先の展開がどうなるかは分かっている。
なぜなら、もう何度も繰り返してきたからだ。
数分もしたら一人の男がここにやって来る。
私がエスパーなのかって? それは違う。
この世界で私は、特殊な存在なだけだ。
そんなことを考えていると男がやってきた。
年齢は私と同じ高校2年生。クラスでも人気者だ。
……ぶっちゃけて言おう。
私はこのあと告白される。
100%確実にだ。
自惚れるなって? そう思われても無理はない。
でも告られるのは事実なのだから仕方ない。
「ごめん、待たせた?」
男はそう言ってきた。
「ううん、大丈夫だよ」
私の口がそう喋った。
その後、他愛のない会話が続いていく。
ちなみになぜ私が目の前の人を余所余所しく「男」と呼ぶのかというと、ただ単純にその人の人間性に興味がないからだ。
この男にいくら興味がなくても、私の口は言葉を勝手に紡いでいく。
表情も照れたり上目遣いになったりと、勝手に機敏に変化する。
自分のことなのに、『私の口がそう喋った』だったり『表情も勝手に変化する』といった表現をするのには理由がある。
それは後々説明しよう。
10分位経ち、男は真剣な表情で私を見つめ、そして愛の告白をしてきた。
だけれども私の胸にはこれっぽちも響かなかった。
何度も何度も聞いてきたセリフだからだ。
一字一句同じ。
変化もなければロマンチックの欠片さえもない。
だが私の気持ちとは裏腹に、口が勝手に「私も好きです」と言葉を発した。
そして男の胸に飛び込んでキス。
今まで幾度となくもこのシーンを繰り返してはいるが、この瞬間が一番ツライ。
本当は好きでもないやつとの口づけなんて吐き気がするほど惨めな気分になる。
本当は泣き出したい気分なのに、私の体はこの目の前の男に抱きしめられて悶えている。
本当は私が好きなのは『彼』なのに……。
心の中では泣きながら、私は思考に没頭することにした。
……どうして私はこんな世界に生まれたのか。
いや、『閉じ込められているのか』ということについてだ。
目が覚めたのは突然のことだ。
当時のことを振り返ってみることにした。
気がつくと学校の制服に身を包み、教室の中にいた。
頭に入ってくるのは軽快な謎のBGM。
(え、どういうこと!?)
と思ったのも束の間、驚きの出来事が起こる。
私の口が意思に反して勝手に喋り始めたのだ。
それはまるで用意されている台本を読むかのごとく。
私はパニックに陥った。
不安で泣き出したかった。
でもそれも叶わないとすぐに分かった。
私の体の自由は一切効かないのだ。
まるで誰かに操られているかのように勝手に言葉を発し、体が動いて行く。
悪い夢なら覚めてくれ。そう心から願った。
数分後、突然視界が真っ暗になったかと思うと、私は別の場所へと瞬間移動していた。
ここは、住宅街?
隣には同じデザインの制服を着た女子と、ブレザーを着た男子が2人いる。
一瞬で周囲の景色が変わった。
どういうことなのだ。
訳が分からないとはまさにこういうことを言うのだろうと私は思った。
ここでも意思に反して体は操り人形状態。
激しい目眩がした。
だけれどもそんなこともお構いなしに私の体は強制的に動き続ける。
頭がおかしくなりそうだ。
夢ならきっといつか覚める。
そう信じて私は耐えた。
……だけれどもその希望は叶えられなかった。
あれからどれくらいの時間が過ぎただろうか。
自由の効かない体。
一瞬で切り替わる周囲の景色。
常に頭に響き続ける謎の軽快なBGM。
精神的に疲れ果てていた時、ふと気になる言葉が飛び込んできた。
度々登場する、同じクラスにいる男が発した言葉だ。
そいつはどうやらオタクらしく、『ぎゃるげー』というものが好きなのだそうだ。
ぎゃるげーとは、可愛い女の子の登場人物と仲良くなり、恋人としてイチャイチャするまでの過程を描いた『げーむ』というものなのだそう。
色々と説明を聞いているうちに、私は衝撃を受けた。
もしかして、今私がいる世界って、ぎゃるげーの中なのではないかと。
そしてこれはげーむというものの世界なのではないのかと。
そう考えれば、様々な出来事に辻褄が合う。
オタクの男が解説していた通りの内容が、私の身の回りに起こっている。
この状況を打開するには一体どうすればいいのだろう。
私は必死に考えた。
勝手に動いていく体と日常の中で、どこかに自由になれるヒントがないかと死物狂いで目と思考を凝らして探したが、無意味に終わった。
私は『ぎゃるげー』と言う『げーむ』の世界に作られた存在なのだ。
そもそも人間でもなんでもない。
ならばどうしては私は意思を持った? 前世は人間だった?
分からない。答えてくれる存在はどこにもいない。
このげーむをプレイしているユーザーの操り人形に過ぎないのだ。
叫びたくても叫べない。
どうしようもない地獄だった。
……最初の公園の場面の説明に戻ろう。
『目が覚めたのが公園』ということについて。
このげーむのプレイヤーが、昨日げーむをこの公園の場面までプレイしてセーブし、今日そのデータをロードしたから公園で目が覚めたのだ。
げーむが起動していない間、私は記憶がない。
プレイヤーがプレイを始めると同時に私も目が覚める。
『聞き慣れた音楽』ということについて。
げーむで流れているBGMのこと。
嫌になってうんざりするのを通り越すくらずっと聴き続けている。場面によってBGMがコロコロ変わるのだが、耳を塞ぎたくても出来ない。まさに苦行だ。
『何度も繰り返してきた』ということについて。
それはプレイヤーがこのげーむを何度も周回プレイしているから。
会話の内容や出来事、それらは毎回全く同じ内容で進行する。
無限ループというやつだ。
私はどうしたら良いのだろう。
思考は出来るが、体の自由がない。
故に逃げ出す術もない。
神様。
どうか私の祈りを聞いてください。
これは叶わない夢。
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だけれども、どうしても考えてしまう。
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