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Episode11 1,000字以内オムニバスショートホラー5品(女主人公)+エッセイをお届けいたします。

【実録】ルノルマン・カードは教えてくれていた

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 私、なずみ智子は、いわゆるスピリチュアルな力の持ち主ではありません。
 目に見えぬ存在とお話できたり、未来のワンシーンがパッと頭に浮かんだりなんてことに、小学生の頃から三十代半ばとなった今もなお密かに憧れつつも、そのような力が目覚める兆しすらありません。
 そんな私ですが、ルノルマン・カードと付き合い始めてからというもの、少しばかり不思議な体験をすることがありました。
 今回はそれらの体験の中で、特に印象深かった2つの出来事をお送りいたします。
 それぞれにサブタイトルを付けるとするなら、1本目『なずみ智子、眩暈で倒れる!』と、2本目『なずみ智子、実印を失くす! それと”たぬきがこけた”』になりますね。


〇 1本目『なずみ智子、眩暈で倒れる!』

 2020年10月21日(水)。
 今思えば、この日から始まっていました。
 私は直感を鍛えるためにも、本連載時だけでなく、ほぼ毎日、ルノルマン・カードの2枚引きを行い、その結果を手帳に記録しています。
 この日の運勢として引いたカードは、1枚目『8 棺』と2枚目『27 手紙』でした。

 カードそのものに罪はないと言えども、『8 棺』のカードを目にすると、やはり身構えてしまいます。
 絵面的にどうしても不吉なイメージを連想せずにはいられないのですから。
 しかし、21日はこれといって何事もありませんでした。

 そして、その日の夜、翌日10月22日(木)の運勢として引き当てたカードは、1枚目『8 棺』と2枚目『3 船』でした。
 「あれ、またまた『8 棺』?」と思いつつも、「『3 船』はポジティブな意味合いの強いカードだから中和されるかな? そもそも今日(21日)の分のカードも全く当たらなかったし……」と気楽に考え、そのまま眠りにつきました。

 しかし、22日の早朝、何だか妙な時間――普段ならまだベッドの中でぐっすり眠っているはずの時間――に、目が覚めたのです。
 うまく説明できないのですが、その時、ベッドに横たわったままなのにもかかわらず、頭がグラリとしたのです。まだまだ寝足りない眠気によるものではなく、頭の中身そのものがグラリと揺れたかのごとき変な感じでした。

 二度寝の後、いつも通りの時間に起床。
 身支度を整え、いつも通りに出勤せん、としたのですが、明らかに体の調子がおかしいのです。

 なんだかフラフラしている……
 でも、熱はないはずなのに……

 毎朝、体温を測ってから出勤することを会社より義務付けられており、この日の朝も測ったのですが平熱でした。

 その後、トイレに駆け込みリバースしてしまったのです。
 しかし胃がムカムカはしていない。お腹の調子も悪くない。悪い物も食べた記憶もない……

 直属の上司に出勤が遅れることを連絡し、駅のホームや電車の中で再度リバースしてしまうかもしれないことを考え、鬼太郎袋(エチケット袋)をカバンの中に入れたりしている最中、またもやトイレに駆け込み、今度は立て続けに5、6回リバースしてしまいました。

 駄目だ、これは……
 家から出ることすらできそうにない。

 結局、欠勤することとなり、ベッドに横になっていたのですが、仰向けになっても寝返りを打って横向きとなっても、視界がグワングワンと激しく揺れ続けているのです。
 こんな症状は生まれて初めてです。
 対処しようにも、その方法も分からないし、立ちあがって病院に行くこともできそうにありませんでした。
 大げさな話ですが、「このままベッドの上でたった一人で、三十五歳でひっそりと逝ってしまうのでは……」と、死の恐怖すら感じていました。

 そして、私はグワングワンと揺れ続ける視界を見ながら思い出していました。
 『8 棺』は”死”や”終焉”を意味しています。
 それに『今のこの状態……まるで、荒れ狂う”船”の中にいるみたい』とも……
 まさか『3 船』のカードがこんな風に的中するとは……!


 翌日23日には症状はややマシになり、病院に行くことができました。
 「もしかして精密検査しなければならないのかも……」と不安だったのですが、”はがれた耳石が三半規管に入り込み、眩暈を引き起こしている”との診断でした。
 体は苦しかったですが私自身が思っていたほど深刻な結果ではなかったので、少しだけ安堵しました。

 回復へと向かいながら、私はルノルマン・カードたちが示してくれていたことについて、考えていました。
 『8 棺』は、”死”や”終焉”だけでなく、”健康状態の悪化”や”病気の人”という意味も持っています。
 それに、私にとって病院は普段、滅多にいくことのない場所でした。近くにあっても心理的には”外国のように遠い場所”です。
 そのうえ、今回のことで滅多に乗らない(ここ3年ぐらい乗っていない)タクシーという乗り物も利用せざるを得ない状況になりました。

 そして、何よりも眩暈で倒れる前日(21日)分として引き当てていた『8 棺』と『27 手紙』。
 そうです。
 ”手紙”(電子メールなどではなく、言葉通りの手紙)は、すぐには届きません。
 遅れて届けられるものです。
 『27 手紙』を引いた次の日に、私の体に眩暈という異変が届けられ(現れ)ました。
 ルノルマン・カードは、ちゃんと教えてくれていたのです。

 ちなみに、後日談ではありますが、出勤を控えた10月25日(日)の夜にも2枚引きを行いました。
 すると1枚目は『8 棺』、2枚目『2 クローバー』という結果に……
 22日、23日、25日と3回連続で、1枚目に『8 棺』のカードを引き当ててしまいました。
 まだ本調子じゃないから、無理するなよってことだったんでしょうね。
 ちょっと鳥肌が立った不思議体験でした。


〇 2本目『なずみ智子、実印を失くす! それと”たぬきがこけた”』

 仕事が休みの2020年11月21日(土)の午後。
 急に思い立った私は、机の周り、小物や書類を入れている引き出しをガーッと片付けました。
 より使いやすい&取り出しやすい位置に諸々を引っ越しさせ、もう使用しないであろうものはゴミ袋へと次々にインしていきました。
 「ふう。これですっきり♡」と思いきや、大変なことに気付きました。

 にゃっ、にゃい! 実印がにゃい!

 認印ならまだしも実印は相当にまずかろうということで、必死で探します。
 元々保管していた場所や、最後に見た記憶のある場所付近を中心に探しましたが、一向に見つかりません。

 机の下やベッドの下にも落ちていない。
 「今日は一度も外出もしていないし、ゴミ出しもまだしていないから、この家のどこかにあるのは間違いない……」と、ゴミ袋の中までガサゴソ漁りましたが全て徒労に終わりました。

 困った私は、ルノルマン・カードに助けを求めました。
 ワンオラクル(1枚引き)で聞いてみたところ、『9 花束』を引き当てました。
 ポジティブなカードなので、ちょっとだけ心の中に光が差し込みます。

 でも、どういうことだろうか?
 家の中に花は飾っていないし、誰かからの贈り物(プレゼント)の中に紛れ込んでいるということ?
 それとも、サプライズ的に思いもよらない場所から見つかるということ?

 捜索を再開しましたが、見つからず。
 「実印を失くしたのは大変なことだけれども、このまま焦って探し続けていると余計見つからなくなるような気もする、いったんクールダウンしよう、家のどこかにあることは間違いないんだから」と、この日の捜索はいったん打ち切ることにしました。
 そして、眠る前にもう一度、私はルノルマン・カードに問いかけました。
 本当は同じ質問を何度もするのは良くないらしいのですが、問わずにはいられなかったのです。

 2回目に出たカードは『5 樹』でした。
 「健康? 成長? なんのこっちゃ? 実印の在処に何の関係があるんだろう」と首を傾げるばかりでした。

 結局、実印は見つからないまま、翌日11月22日(日)の正午が過ぎました。
 藁にもすがる思いで、インターネットで検索する私。
 すると、「たぬきがこけた」という呪文を唱えながら、探し物をすると探している物が見つかるとの情報が……

「たぬきがこけた、たぬきがこけた、たぬきがこけた……」
 昨日も今日もあれだけ探したのに果たしてそうすんなりと見つかるだろうか?
 ブツブツ呪文を唱えながらも、信じきれない気持ちがほんの少しあったのも事実です。

 すると、なんと20分もしないうちに実印が見つかったのです!
 ホッとするとともに「『たぬきがこけた』すごい!!!」と思わずにはいられませんでした。

 ちなみに、実印は机の上の本棚の2冊の本の間に挟まっていました。
 「なぜ、こんなところに?」と思ったのですが、おそらく一時的な置き場所のつもりで、並べられた本の上部にポンと実印を置いてたところ、下に落ちてしまい、これら柔らかいソフトカバーの本の間に挟まってしまったのだと思われます。

 そして、2冊の本を見て、さらにビックリしました。
 実印は、学研辞典編集部 (編集)の『美しい日本語選び辞典 』と『情景ことば選び辞典』の間に挟まっていました。
 このシリーズの背表紙上部には、葉っぱのマークが記されています。
 私が昨日引いた2枚のルノルマンカード『9 花束』と『5 樹』、その両方のカードの絵柄に共通していたのは”葉っぱ”です。
 それに、ややこじつけかもしれませんが『美しい日本語選び辞典 』はピンク、『情景ことば選び辞典』はイエローグリーンの表紙です。
 背表紙に印字された”葉っぱ”のマーク、それに花とその茎を思わせる組み合わせの色の本が隣り合って、私の目の前にあったということなのです。

 『たぬきがこけた』のパワーもさることながら、ルノルマン・カードもきちんと実印の在処を教えてくれていたんです。
 私が、それに気付くのに時間を要してしまったんですね。

 本当にありがとう。
 思わず、口に出してしまいました。

 これらの不思議体験から学んだことは、カードの意味――ルノルマン・カード関連の参考文献に書かれている意味――をそのままとらえて当てはめようとするのではなく、カードから受けた直感、そして質問内容に自分の生活や身の回りを照らし合わせて柔軟に解釈していくことが大切だと思いましたね。
 ルノルマン・カードはちゃんと教えてくれているのですから。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 ラストとなる来月12月分も頑張ります。
 実は、来年2021年も『2021年版 ルノルマン・カードに導かれし物語たちよ!』として、新たに連載開始する予定なので、真の意味でのラストではないのですが、よろしくお願いいたします。


2020年11月29日
なずみ智子
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