【R18】銭湯モニター【なずみのホラー便 第28弾】

なずみ智子

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銭湯モニター

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「えっと……ここがクニエの親戚が経営している銭湯なの?」

「そ! モモコはモニターとして、この銭湯の率直な感想を聞かせて欲しいのよ」

 女子大生モモコは、同じ学科のクニエより学内で突然に声をかけられた。
 モモコ、クニエと一応は名前で呼び合っている間柄であるも、彼女とはそれほど親しい友人というわけではない。
 そんなクニエがモモコに「私の親類が銭湯を経営しているんだけど……そろそろリニューアルを考えているんだ。でね、モモコにはモニターとして銭湯を利用してもらって、改善点とかいろいろ聞かせて欲しくって」と、”モモコの胸元に目を落とし”、両手を合わせてお願いしてきたのだ。

 正直、面食らったモモコであったが、モモコは他人と同じお湯に浸かることにそれほど抵抗はないタイプであった。
 他人と言っても”お湯を同じくする”のは皆、絶対に同性であるわけだ。林間学校や修学旅行などでのお風呂に始まり、モモコは高校時代には強豪バレーボール部に所属していた。強化合宿等での女同士のお風呂など幾度となく経験していたのだから。

 それに――
「あ、そうだ。モニターの報酬の5,000円は先払いしておくね。封筒の中には、ちゃんと押印や但し書きをしてある領収証が入ってるから」

 クニエがカバンの中から、茶封筒を取り出し、モモコに手渡した。
 そう、モモコはこの5,000円という高額なモニター報酬につられてしまったというのもあった。
 大学入学と同時に親元を離れて1人暮らしを始めた。仕送りと奨学金、あとはアルバイト料でモモコは日々の学生生活を維持している。そんななか、たった数十分ほど銭湯を利用するだけで、諭吉の半分に該当する生活資金がもらえるのは相当に有難い。

「ありがとう。モニター報酬、確かに受け取ったよ。でもね、クニエ……この銭湯なんだけど、なんで看板も暖簾も何もないの? 隠れ家的なコンセプトなのかもしれないけど、集客を考えているなら、もっと誰が見ても”ここに銭湯がある”って分かるようにした方がいいと思うんだけど」

 経営マネージメントについてはド素人であるモモコですら気づいた、”人目を避けるかのようにひっそりと町の片隅に根付いている”この銭湯の第一の改善点だ。
「そりゃまあ、ごもっともだよね」とクニエが頷いた。

 そして、モモコに向き直ったクニエは突然――
「ね、モモコ、私の目を見て」
「え?」
「いいから、私の目を見て。まっすぐに」

 超がつくほど親しいわけではないが、超がつくほど苦手だったりするわけでもない同じ学科の友人に「目を見て」と言われてしまったモモコは、つい見てしまった。
 クニエの両目を。まっすぐに。

――???

 それは時間にしたら、ほんの数秒だったように思えた。
 しかし、クニエの両目を見てしまったモモコは、”後頭部を後ろに引っ張られたうえ、足元もガクンとふらついてしまったかのような妙な感覚”を感じずにはいられなかった。

「……それじゃあ、お願いね、モモコ。私は一緒に銭湯に入るわけにはいかないから、また明日、大学で会った時に口頭でいいから、感想を聞かせてね」
 そういったクニエは、モモコに手をひらひらと振りながら、軽やかな足取りで去っていった。


※※※


 番台に座っていた中年女性は、モモコの姿を見ると、揉み手をしながら、ニコニコと近づいてきた。
 客商売なのだから当たり前であるが、過剰なまでに愛想が良すぎることは一種の不気味さへとつながってしまうと、この銭湯の第二の改善点を、モモコは脳内にメモ書きせずにはいられなかった。

 貴重品をロッカーに預けた後、モモコは脱衣所へと向かった。
 脱衣所にはすでに何人かの先客の姿があった。
 その先客の女性たちは、モモコの姿を見るなり、ハッとした。
 そして、自分たちも服を脱ぎながら、全裸へとなっていくモモコが”気になってたまらない”と言う感じで、顔を赤らめながらチラチラと見てくるのだ。

――何? この人たち……私、何か……おかしい格好や行動してるのかしら?

 不気味で不可解な脱衣所を通り抜けたモモコは、携帯用シャンプーやタオルを片手に持ったまま、女湯の引き戸をガラッと開けた。 

――!!!!! えっ?……やっぱり、何、何なの?!!

 引き戸を開けるやいなや、すでに女湯の中にいた客たち全員の目線がズザザザザッとモモコへと集まってきたのだ。
 その客たちはおおよそ20名以上。20名以上の無遠慮な視線が、モモコの裸体に集まってきたのだ。
 客たちの中には、脱衣所で出会った先客たちと同じく、モモコより少し年上かと思われる20代半ばぐらいの女性もいれば、モモコの母ぐらいの年齢の中年女性、そしておばあちゃんと呼べるであろう高齢女性もいた。
 誰も彼もが食い入るように、モモコを――”モモコの体”をジイイイイイイッと見てくる。
 無遠慮にも程がある数々の視線たち。

――この人たち……自分たちだって、同じ女なのに……体のつくりは皆、同じなのに……なんで、こんなに私の体を見てくるの?!

 確かにモモコの言う通り、この女湯にいるのは皆、女なのだ。
 肌の艶や身長、手足の長さ、乳首の色や乳首の位置、尻の丸みや張りにそれぞれの違いはあっても、皆、同じ女の体を保有しているにもかかわらず……
 そのうえ、女性たちは皆、なぜか”姿勢が物凄く悪かった”。妙に背中を丸めているというか、”前かがみになっている”。

 得体の知れない不気味な視線たちに耐えつつ、かけ湯を終えたモモコは、一番近くの湯へと浸かった。

 すると、同じ湯に浸かっていた中年女性がニヤニヤと笑いながら、モモコの隣へとチャプと湯音をさせながら、にじり寄ってきた。

「お嬢さん、大学生?」
「……ええ、そうですけど」
「おっぱい、大きいねぇ。それDカップどころの”騒ぎ”じゃないでしょ」
「あ、はい……」

 モモコのブラジャーのサイズは、Gカップであった。しかし、年下とはいえ初対面の相手に、こんな失礼な言葉を投げかけてくる中年女性に正直にサイズを答える気にはなれなかった。
 モモコの心中には気づかず、いや、気づいているのかもしれないが、なおも愉快そうに中年女性は続ける。

「”先っぽ”も可愛いピンク色だねえ。本当に美味しそうな”エッチなカラダ”だ」
「!!!!!」

 気持ち悪い!!!
 いくら同性とはいえ、これは明らかなセクハラだ。

 慌てて湯から上がろうとしたモモコであったが、「まあまあ、お嬢さん。来たばかりなんだから、もう少しだけお湯に浸かっていたら……」と、別の女性客に両肩を上から軽く押され、湯の中へと押し戻されてしまった。
 温かいお湯の中で身を縮こまらせたモモコは、自分が”さらに気持ち悪い状況”へと追いやられてしまったことに気づく。

 なんと――
 他の客たちも”さりげなさを装いながら”モモコと同じお湯の中へと足を踏み入れてきたのだ!!!
 モモコはなんと10名以上の女性客に湯の中で囲まれてしまった。
 有り得ないほどに同じ湯に密集することになった客たち。
 客たちは皆、湯の中のモモコの体を――白い乳房に始まり、湯の中で揺らめく陰毛、そしてむっちりした太腿をニヤニヤしながら、眺めてくる。
 それらの無遠慮な視線には気持ち悪さや嫌悪感などを通り越し、モモコは恐怖すら抱くほどであった。


「し、失礼します!!!」

 ついに、モモコは湯からザバッとあがった。
 これ以上は耐えられない。
 まだ髪も体も洗っていないが、そんなことどうだっていい。一刻も早く、こんな気持ち悪くて恐ろしい銭湯から逃げ出したい。

 慌てて脱衣所に向かうモモコの背中に「もう、あがっちゃうんだ。お嬢さんの髪や体、皆で洗ってあげたのに」「お尻もプリンプリンだなぁ。若いっていいねえ」という声が投げつけられた。

――もう、最悪! 何なの?! この銭湯……! 気持ち悪い女の人ばっかり集まって……!!!

 唇を噛みしめ真っ赤な顔のまま、脱衣所の自分のカゴの前へと辿り着いたモモコであったが、追い打ちをかけるかのごとく最悪な事態に直面してしまった。

 カゴの中に入れていた下着が無くなっている!!!
 ここに来るまでに身に付けていた使用済みの下着も、換えの洗濯済みの下着のどちらとも――!!!


※※※


 モモコの銭湯モニターとしての感想は、星の1つも付けたくないぐらいであった。
 最悪、最低なんて言葉は、すでに通り越している。
 銭湯の設備うんぬんというよりも、集まってきている客の質が……民度があまりにも低過ぎる。あの銭湯で味わった生理的嫌悪感や恐怖は、今もモモコの身にヌメヌメとこびりついている。
 そのうえ、盗難被害にまであってしまった。警察に訴えようかとも思ったが、盗まれたのは自分の下着であること、それに何より、もう二度とあの銭湯には関わり合いになりたくなかったため、モモコは泣き寝入りをすることにした。

 この銭湯モニターを紹介してくれたクニエが悪いわけではないが、モモコは彼女にだけはあの銭湯であったことを正直に話そうと思っていた。
 大学のキャンパスを歩いていたモモコは、数十メートル先ほどにクニエの姿を見つけた。

 クニエは話し中であった。
 そして、クニエが話をしている相手は、モモコもよく知っている人物だ。

――あれは……もしかして、アミ?

 アミは、モモコと同じ高校の強豪バレーボール部の1学年下の後輩であり、今現在は同じ大学にこうして通っている。
 バレーボールの実力はそこそこあり、また部内における上下関係に基づく礼儀などもしっかりわきまえているアミであったが、どうもその他の部分では”フワフワとして頼りない世間知らずの天然ちゃん”とも言える性格であった。

 クニエとアミが前から顔見知りの関係であったのか、それとも今日という日に初めて話をしたのかは、モモコには分からない。だが、クニエはモモコに手渡したのと同じように、カバンから取り出した茶封筒をアミに手渡していた。アミは礼儀正しくクニエにペコッと頭を下げ、その茶封筒を受け取っていた。

 遠目からであったが、モモコはクニエの視線が”アミの胸元へと注がれている”ように思えた。
 モモコも巨乳であったが、アミもまた巨乳であった。高校時代のバレーボール部のユニフォームの上からもアミの胸の膨らみはしっかり分かったし、アミとは強化合宿等で同じお風呂に入ったことがあるため知っていた。

――まさか……まさか……!

 クニエはアミにも、あの”銭湯モニター”をお願いしたのかもしれない。
 そして、クニエはあの銭湯には”自分たちも女なのに、やたら人の体をジロジロ見てきて、卑猥な言葉を投げかけてくる女性客ばかりが集まっていること”をちゃんと知っているのかもしれない。
 全て承知のうえで、クニエはアミを”次なる生贄”に選んだのかもしれないと!!!



※※※


 モモコはアミをあの銭湯へと行かせるわけにはいかなった。可愛い後輩にまで、あんな思いをさせるわけにはいかなかった。
 しかし、キャンパス内で見失ってしまったアミとはなかなか連絡がつかなかった。

 アミはあの後、すぐにあの忌まわしい銭湯へと向かったわけでもなく、幾つかの講義を受けていたようだ。
 けれども、モモコがやっとアミと連絡がついた時、事態はすでに最悪な方向へと向かってしまった後であった。

「モモコ先輩、着信に気づくのが遅くて本当に申し訳なかったです。私は今から、モモコ先輩と同じ学科の人が紹介してくれた銭湯に、モニターとして行ってきます。戻ってきたら、また私の方から連絡しますね」と、アミから留守番電話にメッセージが入っていたのだから。

――もう、バカバカバカ。私のバカ! 電話で直接、アミに連絡を取るんじゃなくて、LI〇Eで「その銭湯には絶対に行っちゃダメ」ってメッセージをアミに送ればよかったのに、どうかお願い。間に合って……!

 モモコは二度と辿りたくなかった、あの銭湯への道を脇目も振らずに猛ダッシュした。

 銭湯の番台に座っていた”中年男性”は、息を切らせ、髪を振り乱し飛び込んできたモモコの姿を見て、飛びあがらんばかりに驚いていた。
 先日、モモコがこの銭湯へと足を踏み入れた時、番台に座っていたのは確かに”中年女性”であったはずだ。この番台の中年男性は、あの女性の親族なのか?
 いや、そうじゃないかもしれない! まさか……!

 モモコは思い出した。
 この銭湯へと入る前、クニエに「私の目を見て」と言われたことを。
 そして、クニエの両目を見てしまったモモコは、”後頭部を後ろに引っ張られたうえ、足元もガクンとふらついてしまったかのような妙な感覚”を感じずにはいられなかったことを。

――もしかして、私、あの時、クニエに何か、”催眠術のような暗示”をかけられたんじゃ……こんなこと考えるのは馬鹿げてる! でも、そうとしか思えない! そう考えたとしたなら……!!!


 モモコは、番台の「お嬢さん、落ち着いて!」との制止を振り切り、”男湯”の方へと走った。
 これはモモコ自身が、痴女と見なされて警察を呼ばれたとしても仕方のないことだ。だが、モモコには確信があった。アミは絶対、”男湯”の方にいるに違いない!


「――――アミ!!!」

 男湯の引き戸をガラララッと開けたモモコに、中にいた男性客たちのとてつもない驚きの視線がズザザザザッと集まって来た。
 そのうえ「あ! ”この間”の女子大生だ」という声までもが。

 そして、モモコの予測通り、アミはこの男湯の中にいた。湯の中で、10名以上のニヤついた顔の男性客たちに囲まれていた。おそらく”この間”のモモコと同じように。

「あれ? モモコ先輩、服着たまま、どうしたんですか?」
「アミ、早くそこから出て! ここは男湯よ!!!」
「……? 何、言ってるんですか? ここはちゃんと女湯ですよ。周りにいるのも、女の人達ばっかりですし」

 ここは女湯ではない。
 ”周りの男たちが女に見えるように、そして男の声が女の声に聞こえるように”クニエに暗示をかけられてしまっているだけで、ここはれっきとした男湯なのだ。
 自分たちは、クニエとこの客たちの策略に引っ掛かり、おぞましい混浴をさせられてしまっていたのだ!

「早く! 早く、出て!!!」

 モモコは、周りの男たちのすでにいきりたっている”肉の棒”を見ないようにして、湯舟の中のアミの腕を引っ張った。
 「?」と釈然としない顔のままのアミであったが、モモコの必死の形相によって、ただならぬ事態に自分が置かれていることに気づき始めたのだろう。

 モモコは、濡れたままのアミの体に自分の上着を素早く羽織らせ、そのまま彼女の腕を引っ張り続け、脱衣所を目指した。
 アミを連れて、早くここから逃げなければ……!

 しかし、そんなモモコの思いは、引き戸の向こうより姿を現した者によって踏みにじられてしまった。

「……クニエ!」

 腕組みをしたクニエが、平然とした顔で服を着たまま、この男湯へと足を踏み入れてきたのだ。クニエの後ろからは、番台もオズオズと姿を見せた。

「クニエ様!」「クニエ様だ!」という声が、男たちからあがる。
 クニエは、この銭湯に集まっている男たちに、神のごとき扱いをされているとでもいうのか?
 男たちにとっては、”うちの銭湯には神様がいる”とでもいうのか?
 若くて巨乳な女と自分たちとを混浴させてくれる神様。卓越した暗示の技術を持って、女をこの銭湯に次々に調達してきてくれる神様が……
 いや、正確に言うなら、ここは銭湯ではない。銭湯を隠れ蓑にした、禍々しい性犯罪が行われている現場だ。


「あーあ、ついにバレちゃったかぁ」
「クニエ、あんた……!」
「そんな怖い顔しないでよ、モモコ。でも本当に、”あんたたち自身のためにも”気づかなけば良かったのに。何も知らなければ良かったのに。そうしたら、モニター報酬として5,000円もらったけど、”不審な女性客たち”に囲まれて嫌な思いをした数十分なだけで済んだでしょ? こんな裏側なんて、知らない方が良かったでしょ?」

 クニエは全く悪びれずに、鼻をフフンと鳴らした。

「いいから! 早く、そこをどいて! このことは大学側にも報告させてもらうから!」
「どくわけないでしょ。バレてしまった今だから言うけど、モモコ、あんた、かなり”評価”良かったわよ。レビューでいう、星5つってとこかしら? 『胸もお尻もプリンプリンの超ナイスバディなのに、”首から上”は物凄く可愛いわけじゃなくて、普通より少し可愛い程度なのが余計に生々しくていい』ってさぁ」

 モモコの顔がカアッと熱を持った。
 憤怒に顔を歪めるモモコの傍らのアミは、やっと”この銭湯モニターの裏側”を理解したらしく、青ざめ震え始めていた。

「言っとくけど、私は”我慢できずに本番したり”、写真やビデオにおさめたりすることは、男たちにちゃんと禁止していたんだからね。あんたたちは、周りにいる男たちに”生のオカズ”を本人は知らずと提供していただけで終わる話だったんだから……でも、こうなったら”違う終わり方”をさせなきゃね」
 吐き捨てたクニエは、”前かがみとなっている男たち”へと目配せした。

「この2人、適当に”口封じ”しちゃって。でも、私への献上金は、最低でもいつもの5倍は払ってもらうことになるけどね」

「はいっ! クニエ様!!!」

 まるで軍隊のごとく訓練された声が、響き渡った。
 事実、この男湯に集まっている奴らは、クニエに”性欲という鎖”で飼い慣らされているのだ!

――!!!!!

「きゃ――――!」
 アミの甲高い悲鳴も、男湯に響き渡った。
 ダッと駆け寄ってきた20名を越える男たちの腕によって、モモコはアミとあっという間に引き剥がされてしまった。
 そして、モモコは服を着たまま近くの湯の中へと投げ込まれた。

 口封じ!
 自分たちは殺されてしまうのか?
 違う、奴らにとって”口封じ”というのは……!!!

 湯の中よりプハッと顔を出したモモコに、アミの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
「ぎゃーっ!!! 痛い痛い痛い!!! お願い、抜いてェェ!!!」
 湯舟の中で温まっていたアミの大切なところに、男が強引に押し入ったのだ!!!

「アミィィ!!!」
 湯から引きずり出されたモモコの口もグッとふさがれた。
 生臭い”肉の棒”によって。
 濡れて肌に貼り付いているモモコの服に幾本もの腕が伸びてきて、服をはがそうとする!

「そっちの足も押さえろ!」
「誰かスマホ持ってこい! 撮れ! 撮りまくれ!!!」

 ハァハァという荒い息をさせた中年男が、モモコにのしかかってきた。
「ああ! あのピンク色の乳頭に直に吸い付けるなんて……」
 感極まるという感じで言葉を漏らした男は、モモコの濡れた両の乳房をこれでもかとこねくり回し始めた!


※※※


 野獣たちは去った。
 銭湯の床に全裸で転がっているモモコとアミをそのままに。
 モモコとアミの体に、吐き出すだけ吐き出して去っていった。
 惨い。これは惨すぎる。

「モモコ先輩ぃ……」
「アミ……」

 モモコとアミは、全裸のまま抱き合い、わあわあと泣き続けた。ともに体育会系の部活で鍛えられており、滅多なことでは泣かないはずであった自分たち2人のどこに、これほどの量の涙が貯蓄されていたのかと思えるほどに。

「帰ろう……帰ろう……早く帰ろう」
「はい、モモコ先輩……」

 モモコたちは、互いに肩を貸しあい、ヨロヨロと痛み続ける体で立ち上がった。
 その時、引き戸がガラッと開いた。

 まさか、男たちの誰かが戻って来たのか! とビクッと震えあがったモモコとアミであったが、姿を見せたのはクニエであった。

 クニエは、自分と同じ性を持つ者たちが”20名以上もの男たちに散々に凌辱された後の姿”を見ても、顔色一つ変えずに平然としたままだった。罪悪感や良心の呵責に悩まされることなど、彼女にはないのだろう。

「随分と長湯だったみたいだけど、やっと終わったのね。やっぱり、あんたたち2人には礼を言っといた方がいいよね。あの男たちも素人で現役の巨乳女子大生2人と”思う存分に本番ができた”ってことで、私への献上金も今夜はかなり弾んでくれたのよ」

 ニンマリとうれしそうに笑うクニエ。

「今夜のことで、あんたたちも身に染みて分かったでしょ。うまい話には裏があるってことと、この世は所詮、弱肉強食なんだってことをね。私みたいに人を利用して生きていくのが、賢い生き方よ。ま、散々に利用された後のあんたたちに言っても遅いけどさ……ここはちょうど銭湯なんだし、体を洗い流して早く家に帰ったら? 今夜のモニター報酬として、あんたたちにはそれぞれ上乗せして50,000円ずつ渡すぐらいはするから。でも、誰かの種がヒットしていて妊娠してたり、病気とか移されてても自分たちでちゃんと”処置”してよね。私は、そこまでは責任持てないし」

 そう言ったクニエは、クルッと踵を返し、鼻歌混じりで脱衣所の方へと足を向けた。


「うあああああああああ!!!!!」

 モモコの口より、咆哮のごとき絶叫が発せられた。
 自分の口から発せられし咆哮を、モモコ自身はどこか遠くで聞いてるような気がした。

 近くにあった風呂桶をガッと掴んだモモコは、振り返ったクニエの頭部へとビュッと投げつけた。
 それは見事なアタックであった。
 鈍い音とともに頭を押さえたクニエが、呻きとともに銭湯の床へと倒れ込む。

「うがああああああああああ!!!」

 モモコは吠え続けた。
 吠えながら、クニエの頭部に風呂桶を幾度となく振り下ろした。

 濡れた床にクニエの脳漿が次々に飛び散っていく光景を目の当たりにしたアミが、泣き叫び失禁していることすら、もうモモコの目にも耳にも入らなかった。

 何度も何度も何度も、モモコは裸の乳房を揺らしながら、止まることのない咆哮とともに、クニエの潰れゆく頭部へと風呂桶を振り下ろし続けた……



―――fin―――
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