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なずみのホラー便 ※公開順
第44弾 ドス黒なずみ童話 ⑤ ~どこかで聞いたような設定の娘の婚活~
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童話ラプンツェル × SNS社会 × 家族の絆(?)をシェイクした本作です。
18才を目前に控えたラプンツェルは、魔法使いゴーテルの庇護の元、森の中の高い塔の一室にて何不自由なく、ゆったりふわふわと暮らしていた。
ちなみに、塔の中には各種電化製品やエレベーターもしっかり完備されている。
ゴーテルは魔法使いであるも、やはり年には勝てないらしく、箒ではなくエレベーターに乗って、ラプンツェルの元にタッパーに入れた料理を持って姿を現すようになっていた。
生活のための電化製品は完備されているも、ラプンツェルはインターネットに接続できる環境ではないし、テレビも置いてはいなかった。
それもそのはず、ゴーテルの育児方針(?)は「世の中ってのは、不条理で汚いところなんだ。”人に寄生し、骨の髄まで喰いものにしようとする者”だっているんだ。あんたは下界から離れて、何にも汚されることなく暮らしてればいいんだ」とのことであったのだから。
そんなある日、窓の外よりラプンツェルが初めて見る”奇怪な鳥”が塔の中に飛び込んでくる。
しかし、それは鳥ではなくドローン。
そして、そのドローンの持ち主は「グリムン」と言う名前のユーチューバーの男性だった。
サラサラでツヤツヤの髪の毛、パッチリ&クッキリとした二重の瞳、あまりにもシュッと通った鼻筋の”王子様”の突然の来訪に、ラプンツェルは、グリムンを塔の中へと招き入れてしまう。
それからのラプンツェルは、グリムンと肉体関係を結ぶことに……とは一切ならず、ただただ、彼からのいろいろな質問に答えていくことによって親睦(?)を深めていった。
グリムンは言う。
「実はね……俺、結構、有名なユー〇ューバーなんですよ。俺と一緒に稼ぎましょう。もちろん、ラプンツェルさんの顔出しは必須ですけど……ビジネスパートナーとして一定期間の契約を結びましょうよ」
さらに、彼はこうも続ける。
「食事をもらえなかったり、殴る蹴るの暴力を受けたり、『シンデレラ』みたいにこき使われたり、『ヘンゼルとグレーテル』みたいに森に捨てられ育児放棄されたりするのだけが虐待じゃありませんよ。今までにお宅へインタービューした限り、学校にも行かせてもらってないそうじゃないですか? 社会で生きていくための様々なことを学ぶ機会を奪うことも、俺は虐待だと思ってます。仮にお宅、この塔から放り出されたとしたら、1人で生きていけます?」
ラプンツェルは、ゴーテルに”優しい虐待”を受け続けていたということだ。しかも、ゴーテルはいわゆるバカッター行為までしていたため、グリムンにも特定されてしまった。
ラプンツェル、いや、他9人ものラプンツェルたちもゴーテルの監禁下から救出され、保護されることとなる。
一番年長であったラプンツェルは、グリムンのビジネスパートナーとなり、ユーチューバーとしてデビューする。
グリムンの狙い通り、『グリムンが外界より隔離されていたラプンツェルを今風お洒落ガールにプロデュース』は、”何事にも驚いた反応を見せるラプンツェルの初々しい魅力”によって、動画再生数ならびにチャンネル登録数を伸ばし続けていた。
そして、ゴーテルに監禁されていたラプンツェルではあったも、塔の中で過ごした18年間、ゴーテルからの愛はしっかりと感じていた。ゴーテルも間違った方法であったが、ラプンツェルを大切に思い、愛してはいたのだから。
ゴーテルが刑期を終えて戻ってきた時に”一緒に暮らす”ための家も購入し、そこで自身の”王子様”とも幸せに暮らすことが、ラプンツェルの夢となった。よって、彼女は自身の婚活も頑張り始めていた。
し・か・し!
有名人となったラプンツェルに狙いを定め、”寄生し、骨の髄まで喰いものにしよう”としている輩たちが群れとなり、ついにラプンツェルの目の前に現れた。
この輩たちのことを説明するには、まずラプンツェルの原点に立ち戻らなければならない。そう”ラプンツェルがラプンツェルとなった根本”は、ラプンツェルの実の両親の行いだ。
ラプンツェルの血のつながった家族たち――両親と6人の兄、3人の姉――は、全員とも大柄で体格も良いうえに、とてつもないDQN揃いであった。家族全員に殺人、強盗、詐欺、恐喝、傷害、強姦、麻薬取引などの何らかの前科があり、刑務所に入ったままの者もまだ2人ほどいると……
有名人となり稼いでいる娘 or 妹に寄生して、”骨の髄まで喰いものにするつもりらしい”奴らは、そのままラプンツェルの家に入り浸り、大切な預貯金までも湯水のごとく使われていってしまう。
グリムンとのコンビも解消することになり、ついに胃に穴があいてしまったラプンツェルは入院してしまう。
「あんな人たちが私と血のつながった家族だったなんて。あの塔に帰りたい(ゴーテルの庇護の元に帰りたい)」とラプンツェルは病室で泣き続けていた。
気の毒なラプンツェル。
もはや、婚活どころではない。
実際に血のつながった家族たちの中に1人だけ、手の付けられないアウトローがいるならまだしも、ラプンツェルの場合は見事に、彼女以外の全員が手の付けられないアウトローである。
彼女の婚活にも翳りがさしているというよりも、もはや彼女のバックは真っ黒、ドス黒な現代版『ラプンツェル』となってしまった。
⇒【ややホラー風味な】ドス黒なずみ童話 ⑤ ~どこかで聞いたような設定の娘の婚活~【ショートショート第44弾】
(完結日:2019年7月16日)
★作者コメント★
公募に応募するため【ややホラー風味なショートショート】の発表を約3か月間、お休みしておりましたが、昨日10月26日(土)に応募完了です。
1人3作まで応募できる公募でしたので、9月中に1作目と2作目、そして昨日に3作目を応募しました。
結果はどうであれ、応募を決めた時の「絶対に3作応募しよう」という目標も、応募締め切り日までに達成することができたので、これで一区切りつきました。
選考スケジュールを確認すると、今年の12月下旬に一次選考通過作品が発表されるとのこと……
選考落ちで戻ってきた作品については、なずみ智子の【ややホラー風味なショートショート】用にリメイクして、また順次、公開していく予定です。
18才を目前に控えたラプンツェルは、魔法使いゴーテルの庇護の元、森の中の高い塔の一室にて何不自由なく、ゆったりふわふわと暮らしていた。
ちなみに、塔の中には各種電化製品やエレベーターもしっかり完備されている。
ゴーテルは魔法使いであるも、やはり年には勝てないらしく、箒ではなくエレベーターに乗って、ラプンツェルの元にタッパーに入れた料理を持って姿を現すようになっていた。
生活のための電化製品は完備されているも、ラプンツェルはインターネットに接続できる環境ではないし、テレビも置いてはいなかった。
それもそのはず、ゴーテルの育児方針(?)は「世の中ってのは、不条理で汚いところなんだ。”人に寄生し、骨の髄まで喰いものにしようとする者”だっているんだ。あんたは下界から離れて、何にも汚されることなく暮らしてればいいんだ」とのことであったのだから。
そんなある日、窓の外よりラプンツェルが初めて見る”奇怪な鳥”が塔の中に飛び込んでくる。
しかし、それは鳥ではなくドローン。
そして、そのドローンの持ち主は「グリムン」と言う名前のユーチューバーの男性だった。
サラサラでツヤツヤの髪の毛、パッチリ&クッキリとした二重の瞳、あまりにもシュッと通った鼻筋の”王子様”の突然の来訪に、ラプンツェルは、グリムンを塔の中へと招き入れてしまう。
それからのラプンツェルは、グリムンと肉体関係を結ぶことに……とは一切ならず、ただただ、彼からのいろいろな質問に答えていくことによって親睦(?)を深めていった。
グリムンは言う。
「実はね……俺、結構、有名なユー〇ューバーなんですよ。俺と一緒に稼ぎましょう。もちろん、ラプンツェルさんの顔出しは必須ですけど……ビジネスパートナーとして一定期間の契約を結びましょうよ」
さらに、彼はこうも続ける。
「食事をもらえなかったり、殴る蹴るの暴力を受けたり、『シンデレラ』みたいにこき使われたり、『ヘンゼルとグレーテル』みたいに森に捨てられ育児放棄されたりするのだけが虐待じゃありませんよ。今までにお宅へインタービューした限り、学校にも行かせてもらってないそうじゃないですか? 社会で生きていくための様々なことを学ぶ機会を奪うことも、俺は虐待だと思ってます。仮にお宅、この塔から放り出されたとしたら、1人で生きていけます?」
ラプンツェルは、ゴーテルに”優しい虐待”を受け続けていたということだ。しかも、ゴーテルはいわゆるバカッター行為までしていたため、グリムンにも特定されてしまった。
ラプンツェル、いや、他9人ものラプンツェルたちもゴーテルの監禁下から救出され、保護されることとなる。
一番年長であったラプンツェルは、グリムンのビジネスパートナーとなり、ユーチューバーとしてデビューする。
グリムンの狙い通り、『グリムンが外界より隔離されていたラプンツェルを今風お洒落ガールにプロデュース』は、”何事にも驚いた反応を見せるラプンツェルの初々しい魅力”によって、動画再生数ならびにチャンネル登録数を伸ばし続けていた。
そして、ゴーテルに監禁されていたラプンツェルではあったも、塔の中で過ごした18年間、ゴーテルからの愛はしっかりと感じていた。ゴーテルも間違った方法であったが、ラプンツェルを大切に思い、愛してはいたのだから。
ゴーテルが刑期を終えて戻ってきた時に”一緒に暮らす”ための家も購入し、そこで自身の”王子様”とも幸せに暮らすことが、ラプンツェルの夢となった。よって、彼女は自身の婚活も頑張り始めていた。
し・か・し!
有名人となったラプンツェルに狙いを定め、”寄生し、骨の髄まで喰いものにしよう”としている輩たちが群れとなり、ついにラプンツェルの目の前に現れた。
この輩たちのことを説明するには、まずラプンツェルの原点に立ち戻らなければならない。そう”ラプンツェルがラプンツェルとなった根本”は、ラプンツェルの実の両親の行いだ。
ラプンツェルの血のつながった家族たち――両親と6人の兄、3人の姉――は、全員とも大柄で体格も良いうえに、とてつもないDQN揃いであった。家族全員に殺人、強盗、詐欺、恐喝、傷害、強姦、麻薬取引などの何らかの前科があり、刑務所に入ったままの者もまだ2人ほどいると……
有名人となり稼いでいる娘 or 妹に寄生して、”骨の髄まで喰いものにするつもりらしい”奴らは、そのままラプンツェルの家に入り浸り、大切な預貯金までも湯水のごとく使われていってしまう。
グリムンとのコンビも解消することになり、ついに胃に穴があいてしまったラプンツェルは入院してしまう。
「あんな人たちが私と血のつながった家族だったなんて。あの塔に帰りたい(ゴーテルの庇護の元に帰りたい)」とラプンツェルは病室で泣き続けていた。
気の毒なラプンツェル。
もはや、婚活どころではない。
実際に血のつながった家族たちの中に1人だけ、手の付けられないアウトローがいるならまだしも、ラプンツェルの場合は見事に、彼女以外の全員が手の付けられないアウトローである。
彼女の婚活にも翳りがさしているというよりも、もはや彼女のバックは真っ黒、ドス黒な現代版『ラプンツェル』となってしまった。
⇒【ややホラー風味な】ドス黒なずみ童話 ⑤ ~どこかで聞いたような設定の娘の婚活~【ショートショート第44弾】
(完結日:2019年7月16日)
★作者コメント★
公募に応募するため【ややホラー風味なショートショート】の発表を約3か月間、お休みしておりましたが、昨日10月26日(土)に応募完了です。
1人3作まで応募できる公募でしたので、9月中に1作目と2作目、そして昨日に3作目を応募しました。
結果はどうであれ、応募を決めた時の「絶対に3作応募しよう」という目標も、応募締め切り日までに達成することができたので、これで一区切りつきました。
選考スケジュールを確認すると、今年の12月下旬に一次選考通過作品が発表されるとのこと……
選考落ちで戻ってきた作品については、なずみ智子の【ややホラー風味なショートショート】用にリメイクして、また順次、公開していく予定です。
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