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最強の魔術師の弱点
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【問題】
努力は大切です。
でも、各々が生まれ持った能力には、決して努力だけでは超えられぬ壁があります。
「当代随一の魔術師」と誰もに評されるマリオという名の魔術師がいました。
まだ二十歳そこそこの彼でしたが、「彼こそが魔王を倒すことができる最強の魔術師に違いない!」と皆の願いと期待を一身に背負っている立場にあったのです。
しかし、魔王を倒すためには魔術師マリオの力だけでなく、洞窟の奥深くに封印されている巻物をも手に入れる必要がありました。
その巻物に書かれている呪文こそが、魔王に一撃で滅びを迎えさせることができる呪文であると。
マリオを加えた魔王討伐パーティーは洞窟へと向かい、巻物の管理者である超美男子妖精の許しを得て、その巻物を見事に手に入れることが出来ました。
最強の魔術師・マリオに、最強の呪文が書かれた巻物。
まさに”鬼に金棒”といった状態で、魔王の城へと赴いた魔王討伐パーティーでありましたが、なんとマリオも含めて、全滅してしまいました。
当のマリオに至っては、魔王本人に殺されたわけではありません。
彼は、魔王とは”阿吽の呼吸”で繋がっているペットの雌リントヴルム(ドラコン)に火傷を負わされたあげく、激痛でのたうちまわっているところを、数多の配下の中でも小柄なコーボルト(ゴブリン)にブチュリッ!と刺し殺されるという最期を迎えました。
さて、マリオ含む魔王討伐パーティーの敗北の原因は何であったでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : マリオやリントヴルム、コーボルトといった言葉から問題文の舞台は西洋世界……おそらくドイツ? かと思われますが、「鬼に金棒」とか「阿吽の呼吸」などと日本のことわざが出てくるのが不思議ですね。
チエコ先生 : 光景を想像しやすいかと思って、問題文に混ぜ込んでみたのよ。
キクちゃん : そうだったんですね。今回の問題は、根本的に考えてみます。”灯台下暗し”とも言いますから。魔王も、そして魔王の配下たちも、マリオたちの予想より遥かに……彼らの歯が立たぬほどに強かったのですかか?
チエコ先生 : NO。彼らは魔王を倒せるだけの実力は持っていたわ。
キクちゃん : となりますと……もしかして、洞窟の超美男子妖精より渡された巻物が偽物だったのですか?
チエコ先生 : NO。巻物も本物だったの。
キクちゃん : 実力もあって、巻物も本物で……それでも魔王たちの前では、逆に滅ぼされることになったということですか? …………問題文のタイトルの「最強の魔術師の弱点」、問題文中の「皆の願いと期待を一身に背負っている立場にあったのです」により考察してみますと、マリオさんはプレッシャーに強くなく、いざという時にアガってしまったり、パニック状態になったりして、真の実力を発揮できないタイプの人だったのではないでしょうか?
チエコ先生 : NO。そういった人でもなかったわ。むしろ、生まれ持った力の強さゆえに大して努力しなくても、スイスイと何でもできてしまうから、周りの人たちを馬鹿にして、見下している言動を常日頃から見せていたの。
キクちゃん : ……卓越した実力はあれども、人間的に慕われるような人ではなかったんですね。そうなると、魔王討伐パーティーで仲間割れの事態が発生したのですか?
チエコ先生 : NO。パーティーの人たちも、魔王討伐という重大な任務を背負っているわけだし、いくらマリオが嫌な奴でもそこらへんは大人として我慢していたわ。
キクちゃん : パーティーの人たちの方が精神的に大人だったんですね。ここまでのやり取りを整理した限り、魔王に敗北する要因は、マリオさん側にはないように思えるのですが……これはもう、”運”の問題でしょうかね……?
チエコ先生 : キクちゃん、今回の問題解決に繋がる最大のヒントは”巻物”よ。
キクちゃん : 巻物? ということは、巻物に書かれていた最強の呪文は、マリオさんが読むことができない言語で書かれていたのですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : うーん……最強の呪文は読める言語で書かれていたけれども、あまりにも長くて複雑なものだったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。最強の呪文自体は、約30秒程度で唱え終えることができるものよ。分かりやすい例を挙げるとするなら、「祗園精舎の鐘の声……」から始まる『平家物語』の冒頭と同じぐらいの文章量かしら? 巻物そのものが手元に無くとも、まずまずの記憶力を持っている人なら暗記することだって不可能じゃないでしょうね。
キクちゃん : ……やっと分かりました。マリオさんは、魔王に一撃で滅びを迎えさえることのできる最強の呪文を、魔王の城に着く前に暗記していなかった。持って生まれた自分の力に驕り高ぶるがゆえに、覚えようとすらしていなかった。そのことを魔王たちに見抜かれてしまったんですね?
チエコ先生 : YES。正解よ。魔王たちは、最強の魔術師・マリオがついに自分たちを倒しにやってきたことに焦らないわけではなかったけれども、彼が巻物に書かれていた呪文を碌に覚えてもおらず、ほぼ、ぶっつけ本番で読み始めたであろうことを一目で悟ったの。よって、魔王とは”阿吽の呼吸”で繋がっている雌リントヴルムが、即座に口からゴオオオオッッと火を吐いて、マリオの手にある巻物を即座に焼却してしまった……その後、優勢となった魔王側が一人一人を追い詰めながら、片を付けたというオチよ。
キクちゃん : ……マリオさんは最強の魔術師と評され、大して努力しなくても何でもスイスイと出来てしまう人であったために、努力を一切しようとしない人だったんですね。まあ、この場合は”魔王討伐”といった特殊な状況でありますから、努力というよりもリスクヘッジでしょうか?
チエコ先生 : そうね。パーティーの仲間の一人も、再三にわたり、「魔王との闘いでは何が起こるか分からないし、”保険として”俺も巻物に書かれた呪文を覚えておくから」とマリオに促していたの。そこで巻物を渡していれば、渡された彼だけでなく、”門前の小僧習わぬ経を読む”といった具合に他の数人も呪文を覚えて、戦闘中のマリオさんに教えてあげることができていたかもしれない。巻物は焼き払われても、各々の頭に最強の呪文は塵と化すことなく残っていたはずよ。でも、マリオは「は? 実際に巻物に書かれた呪文を読むのは、この俺だぜ。俺の後に続くしかない雑魚のお前らに何が出来んの?」と鼻で笑って、巻物に書かれた呪文を仲間と共有しようとすらしなかったのよ。
(完🔥)
努力は大切です。
でも、各々が生まれ持った能力には、決して努力だけでは超えられぬ壁があります。
「当代随一の魔術師」と誰もに評されるマリオという名の魔術師がいました。
まだ二十歳そこそこの彼でしたが、「彼こそが魔王を倒すことができる最強の魔術師に違いない!」と皆の願いと期待を一身に背負っている立場にあったのです。
しかし、魔王を倒すためには魔術師マリオの力だけでなく、洞窟の奥深くに封印されている巻物をも手に入れる必要がありました。
その巻物に書かれている呪文こそが、魔王に一撃で滅びを迎えさせることができる呪文であると。
マリオを加えた魔王討伐パーティーは洞窟へと向かい、巻物の管理者である超美男子妖精の許しを得て、その巻物を見事に手に入れることが出来ました。
最強の魔術師・マリオに、最強の呪文が書かれた巻物。
まさに”鬼に金棒”といった状態で、魔王の城へと赴いた魔王討伐パーティーでありましたが、なんとマリオも含めて、全滅してしまいました。
当のマリオに至っては、魔王本人に殺されたわけではありません。
彼は、魔王とは”阿吽の呼吸”で繋がっているペットの雌リントヴルム(ドラコン)に火傷を負わされたあげく、激痛でのたうちまわっているところを、数多の配下の中でも小柄なコーボルト(ゴブリン)にブチュリッ!と刺し殺されるという最期を迎えました。
さて、マリオ含む魔王討伐パーティーの敗北の原因は何であったでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : マリオやリントヴルム、コーボルトといった言葉から問題文の舞台は西洋世界……おそらくドイツ? かと思われますが、「鬼に金棒」とか「阿吽の呼吸」などと日本のことわざが出てくるのが不思議ですね。
チエコ先生 : 光景を想像しやすいかと思って、問題文に混ぜ込んでみたのよ。
キクちゃん : そうだったんですね。今回の問題は、根本的に考えてみます。”灯台下暗し”とも言いますから。魔王も、そして魔王の配下たちも、マリオたちの予想より遥かに……彼らの歯が立たぬほどに強かったのですかか?
チエコ先生 : NO。彼らは魔王を倒せるだけの実力は持っていたわ。
キクちゃん : となりますと……もしかして、洞窟の超美男子妖精より渡された巻物が偽物だったのですか?
チエコ先生 : NO。巻物も本物だったの。
キクちゃん : 実力もあって、巻物も本物で……それでも魔王たちの前では、逆に滅ぼされることになったということですか? …………問題文のタイトルの「最強の魔術師の弱点」、問題文中の「皆の願いと期待を一身に背負っている立場にあったのです」により考察してみますと、マリオさんはプレッシャーに強くなく、いざという時にアガってしまったり、パニック状態になったりして、真の実力を発揮できないタイプの人だったのではないでしょうか?
チエコ先生 : NO。そういった人でもなかったわ。むしろ、生まれ持った力の強さゆえに大して努力しなくても、スイスイと何でもできてしまうから、周りの人たちを馬鹿にして、見下している言動を常日頃から見せていたの。
キクちゃん : ……卓越した実力はあれども、人間的に慕われるような人ではなかったんですね。そうなると、魔王討伐パーティーで仲間割れの事態が発生したのですか?
チエコ先生 : NO。パーティーの人たちも、魔王討伐という重大な任務を背負っているわけだし、いくらマリオが嫌な奴でもそこらへんは大人として我慢していたわ。
キクちゃん : パーティーの人たちの方が精神的に大人だったんですね。ここまでのやり取りを整理した限り、魔王に敗北する要因は、マリオさん側にはないように思えるのですが……これはもう、”運”の問題でしょうかね……?
チエコ先生 : キクちゃん、今回の問題解決に繋がる最大のヒントは”巻物”よ。
キクちゃん : 巻物? ということは、巻物に書かれていた最強の呪文は、マリオさんが読むことができない言語で書かれていたのですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : うーん……最強の呪文は読める言語で書かれていたけれども、あまりにも長くて複雑なものだったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。最強の呪文自体は、約30秒程度で唱え終えることができるものよ。分かりやすい例を挙げるとするなら、「祗園精舎の鐘の声……」から始まる『平家物語』の冒頭と同じぐらいの文章量かしら? 巻物そのものが手元に無くとも、まずまずの記憶力を持っている人なら暗記することだって不可能じゃないでしょうね。
キクちゃん : ……やっと分かりました。マリオさんは、魔王に一撃で滅びを迎えさえることのできる最強の呪文を、魔王の城に着く前に暗記していなかった。持って生まれた自分の力に驕り高ぶるがゆえに、覚えようとすらしていなかった。そのことを魔王たちに見抜かれてしまったんですね?
チエコ先生 : YES。正解よ。魔王たちは、最強の魔術師・マリオがついに自分たちを倒しにやってきたことに焦らないわけではなかったけれども、彼が巻物に書かれていた呪文を碌に覚えてもおらず、ほぼ、ぶっつけ本番で読み始めたであろうことを一目で悟ったの。よって、魔王とは”阿吽の呼吸”で繋がっている雌リントヴルムが、即座に口からゴオオオオッッと火を吐いて、マリオの手にある巻物を即座に焼却してしまった……その後、優勢となった魔王側が一人一人を追い詰めながら、片を付けたというオチよ。
キクちゃん : ……マリオさんは最強の魔術師と評され、大して努力しなくても何でもスイスイと出来てしまう人であったために、努力を一切しようとしない人だったんですね。まあ、この場合は”魔王討伐”といった特殊な状況でありますから、努力というよりもリスクヘッジでしょうか?
チエコ先生 : そうね。パーティーの仲間の一人も、再三にわたり、「魔王との闘いでは何が起こるか分からないし、”保険として”俺も巻物に書かれた呪文を覚えておくから」とマリオに促していたの。そこで巻物を渡していれば、渡された彼だけでなく、”門前の小僧習わぬ経を読む”といった具合に他の数人も呪文を覚えて、戦闘中のマリオさんに教えてあげることができていたかもしれない。巻物は焼き払われても、各々の頭に最強の呪文は塵と化すことなく残っていたはずよ。でも、マリオは「は? 実際に巻物に書かれた呪文を読むのは、この俺だぜ。俺の後に続くしかない雑魚のお前らに何が出来んの?」と鼻で笑って、巻物に書かれた呪文を仲間と共有しようとすらしなかったのよ。
(完🔥)
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