正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

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第1章 入学前

10話 嫌な予感

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 21時。
 シャワーを浴びて、ぼーっと携帯を確認すると、メッセージが溜まっていた。

 フィアス軍曹からだ。

 『食糧が尽きた』『ちょっと来て』などなど。
 ちょっと来てって、ここから青月館に行くには相当時間がかかるんだけど。

『明日の午前中に食糧を持っていくよ』

 返信をして、携帯を閉じる。
 ただ、フィアスの数あるメッセージの中の『異様な気配がする』というのに少し不安を覚えていた。



 22時。
 ザーッと雨の音がする。
 今日はなんやかんやでたくさん歩いて疲れていたので、すぐに眠りにつくことができた。


 …………


 雨上がりの朝、青月館へ歩いていく。

 ピンポーン

「昨日なんで来てくれなかったのさ。もうお腹ペコペコだよ~」

「まさか俺の差し入れ以外で何も食べてないなんて思わなかったんだよ。あれ?フィアス、髪の毛染めた?」

「?? 染めてないよ。変わったように見える?」

「あれ……? 気のせいかな、前はもっと真っ黒だったような。まあいっか」

 見間違いだろうか。
 でも、雪夜も高次元世界に来てから髪色が変わったし、あながち気のせいじゃないのかも。

「それはそうと、体調はどう?」

「うん。気分はだいぶ良くなってきたけど、体は重いままかな。ずっとベッドで寝てるの」

「たまには外に出た方がいいんじゃない? 植物には日光も必要なんだぞ」

「誰が植物だ」

「今日、雪夜とお出かけに行く予定なんだけど、一緒に行こうよ。都会の方とか」

「うーん……都会か~。糸がどうしてもって言うならついていくけど……」

「はい決定。40秒で支度しな」

「糸は朝食の支度しな」

 適当にフレンチトーストを作る。



「……ねえ糸、高次元世界に来てから雪夜が凄まじくなっていることに気づいてる?」

 フィアスがフレンチトーストを頬張りながら、唐突な話題を出した。

「凄まじく……? ああ、俺は感じないけど、雪夜は【闇の次元】とやらに干渉してるんだってさ」

「ああ、そういえばバスで変わったおじいさんがそんなこと言ってたね。実はさ、私にも見えるんだ。雪夜の言ってた黒いモヤモヤ」

 フィアスはバスの一件で【逆空間の次元】を認識できる能力者であることは分かってたけど、まさか【闇の次元】まで認識できるのか。

「それでね、昨日の夜から上の階からドス黒い闇が天井を突き抜けてここに流れているんだ。雪夜の部屋……一つ上の階だよね?」

「それだけ雪夜の闇が大きくなっているってこと!?」

 俺は天井を見上げる。

「んん……どこらへん?」

 目を凝らす。

「ほら、こうばーっと広がってるじゃない。まあでも、見えない人には見えないのかもね!」

 フィアスがくすっと笑う。
 悔しいので、頑張って集中していると……

「あ……っ!!! 見えた……!!!」

 こんなあっさり認識できるようになるものなのか。
 見えてしまえばもう疑いはない。ドス黒く漂う闇、はっきりと見える。

「えっ! 見えたの!?」

 面白がっていたフィアスは一瞬驚き、すぐに真剣な顔に戻った。

「もしこれだけの闇が全部雪夜のものだったら、相当ヤバイ気がするんだ」

 確かにフィアスもいくらか闇はまとっているが、比べ物にならないほど天井からの闇は濃く、大きい。

「……雪夜の部屋に行ってみよう」

 俺たちはフレンチトーストを食べ終え、3階の雪夜の部屋へ向かった。



 ピンポーン

「……はい」

 ガチャ

「……糸にフィアス。おはようございます」

 雪夜と対面した瞬間、背筋が凍った。
 闇が見えるようになったせいなのか、昨日の雪夜とは別人に見えた。

 全てを凍てつかせるような冷酷なサファイアのような瞳。
 フィアスの部屋で感じた何倍もの凄まじい黒い威圧感。
 俺は昨日、この状態の雪夜と遊んでいたというのか!?

「お、おはよう雪夜! 昨日の約束通り、い、一緒におでかけいかにゃ……ない?」

 あまりのプレッシャーに噛んでしまった。
 フィアスすらも、雪夜に見えないように俺の服を掴んで小刻みに震えている。

「ええ、構いませんわ。とりあえず上がります?」

「は、はいっ! 喜んで!」

 とても偉い人の誘いを受けるような返事。

「紅茶、淹れますわね」

 雪夜が台所へ向かう。
 ふう、と息をついて少し落ち着く。

「い……糸……」

 そこへ、フィアスが怯えた表情で何かを指さす。
 この角度では足しか見えない。
 まさかこれは……。

「昨日のぬいぐるみだ……」

 フィアスの方へ寄ると、震えながら俺の腕をつかんだ。
 なんと、そのぬいぐるみは首が切断されており、ボロボロに引き裂かれていたのだ。

「紅茶、淹れましたわ」

 雪夜が来るや否や俺たちはもとの席へ戻り、何も見なかった顔で迎える。

「フィアスはしばらくですわね。屋上のバイキング、美味しかったですわよ。今度一緒に行きませんこと?」

「わ、私は糸が作ってくれたご飯でいいかな」

「あら、いつの間にそのようなご関係に?」

 雪夜がこちらをじっと見る。
 怖い怖い。俺はとりあえず首を振っていた。

「……さて、本日はどこへ行きますの?」

「そうだね、駅前の都会の方に行ってみない?」

「都会……ですか。……分かりましたわ」

 雪夜の返事には躊躇いが見られた。
 この時、本人もこれから起こってしまうことに薄々気づいていたのかもしれない。
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