正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

文字の大きさ
52 / 67
第3章 王座争奪戦

52話 期待を胸に

しおりを挟む
 大会2日目の夜、俺は青月館のフィアスの部屋で、雪夜とフィアスと夕食を食べていた。

「みんな無事に準決勝進出! かんぱーい!」

 カチャン!

「ん? 準決勝進出って、また戦わなくちゃいけないの?」

「なんで知らないんだよ」

 さすがフィアス軍曹、大会には全く興味がないご様子。

「フィアス。私達は負けていったチームの気持ちも背負っておりますのよ。準決勝ではそのチームの分まで戦わなくてはなりません」

「それにしても雪夜の試合は凄かったね。あっという間にほとんど一人で倒しちゃって。22分で決着は全1回戦の中で2番目に早いタイムらしいよ」

「ありがとうございます。ですが、問題は明日ですわ」

「雪夜の明日の対戦相手は、能力者ランキング1位の時谷未来だもんね」

「ねえ、能力者ランキングって何?」

「だからなんで知らないんだよ!」

「能力者ランキングは能力やマナの量を数値化してランキングにしたものですわ。ほら、フィアスも検査のようなものを受けたでしょう?」

「ああ、変な機械でやったあれか~。ねね、私って何位? やっぱり1位?」

「だから1位は時谷だって! 確か雪夜が5位で、フィアスは6位だったよ」

「私が6位ぃ~~? あの機械、見る目ないね」

「雪夜、時谷は相手の動きの未来を見て戦うみたい。だから、時谷の動きをよく見て瞬時にこっちの未来も変えればいいんだ」

「あの的確な動きと杖さばきはそのためなのですね。情報ありがとうございます」

「……それと、何かやばい必殺技もあるんだって。それが何かはまだ分からないんだけど、『まるで瞬間移動した感じ』らしい」

「瞬間移動、ですか。【時間の次元】と【逆時間の次元】の超能力者であることを考えると、とんでもないことが起きてそうですわね」

「糸、その時谷って人に詳しすぎない? ファンなの? 好きなの?」

「ち、違うよ! 俺のチームの先輩に過去に時谷と戦った人がいるんだ。その先輩は時谷と同じ【時間の次元】の能力者だから、詳しいってだけ」

「ならばよい」

「それはそうと、糸も明日準決勝でしょう? それに、糸の対戦相手のチーム19は、今大会の3強と報道されていましたわ」

「えっ、そうなの?」

「時谷未来のいるチーム4、千陽先輩のいるチーム48、そして3人のランキング上位の能力者がいるチーム19。これらが、総合優勝オッズの1番人気、2番人気、3番人気ですわ」

 最後にどのチームが優勝するかを当てる賭け方もあるようだ。そこで多く支持を得ている3チームが、その3チームらしい。

「お互い相手は手強いですが、きっと決勝の舞台でお会いしましょう」

「うん、そうだね」

「糸~ごちそうさま~」

 軍曹が満足した表情でお腹をさすっている。

「おそまつさまでした。洗い物するね」

「……すみません、少し私は外に出ててもよろしいですか?」

「え? うん」


 ◇◇◇


 その頃、セトル・イエローレモンシフォンにて。

「お……お邪魔します……」

「散らかっていてすまんな。ま、適当にくつろいでくれ」

 なんと五条先輩は三橋さんを部屋に連れ込んでいた。

「あ、あの、今日はどういったあれでしょうか……?」

 モジモジ

「おい、今更何緊張してんだよ! これだ、これ!」

 五条先輩はカセットにDVDを入れ、テレビを映した。

「あ、これ、去年の五条先輩の試合ですか?」

「そうだ。1回戦のビデオなんてあまり出回ってないんだが、一ノ瀬先輩が探して焼き増してくれたんだ。……本当はこの試合、誰にも見られたくなかったんだけどな」

「今更何言ってるんですか。五条先輩の恥ずかしいことなんていっぱい知ってますよ」

「な、なんだと!? 例えば何だ」

「女子風呂覗くために桶で山を作ってたこととか」

「き、気づいてたのかっ!?!? …………すみませんでした」

「アハハ。で、この試合って、五条先輩が桐山楓に負けた試合ですよね」

「そうだ。このシーンを見てくれ」

 五条先輩が味方を倒したシーンを再生する。

「ビデオからはただの仲間割れにしか見えないだろ。でも、違うんだ。俺は桐山を倒したはずだった。なのに、味方を倒していたんだ。この意味、分かるか?」

「桐山が五条先輩に幻影を見せていたってことですか?」

「幻影というより、認識をすり替えられた感じだった。だが、分かってしまえば単純だろ?」

「単純ですが強力ですよね。いつ騙されているか分かりませんし、もしかしたら騙されていないかもしれませんし」

「ああ。だが、攻略法はある。聞いてくれ」



 明日はAブロックとBブロックの準決勝。
 この夜、選手たちは敵も味方も、様々な想いが巡っていた。

 五条先輩たちのように、寮で作戦を練る者。
 小雲先輩のように、夜遅くまで練習をする者。
 ジョニー先輩のように、パワーを温存するためにぐうぐう寝る者。

 そして、青髪の優等生は、公園のブランコで夜風を感じながら月を眺めていた。

「あ、いたいた。雪夜、フィアスがもう寝るって言ってるから、俺も赤砂寮に帰るね」

「ありがとうございます。……あの、ちょっとだけ話しません?」

「ん、いいよ」

 二人で並んでブランコに座る。

「青月館にはこんな公園も付属してるんだね。羨ましい」

「あら、赤砂寮の周りには運動会が開けそうなほどの広さの運動場があるじゃないですの」

「あんなの雑草ボーボーの空き地じゃないか! 雪夜、煽ってるでしょ」

「ふふ、申し訳ございません。……ねえ糸、私は明日……時谷未来に勝てるのでしょうか。時間を超越する相手に、私は敵うのでしょうか」

「それは……やってみないと分からないね」

「最強……絶対王者……チャンピオン……。王座戦の練習をし始めてから、色んな人から何度も時谷未来の名前を聞きました。そして、同時にこうも言われました。私なら時谷未来を倒せるかもしれない、と。皆さんは、チューベローズの頂点に君臨する時谷未来を目標としていて、なんとか勝ってみたいと願っているのです。そして、その夢を私に託してくれる人がいる。私に期待してくれる人がいる……」

「雪夜……」

 カシャンッ!

 雪夜はブランコを降りて、俺の座っているブランコの鎖をぎゅっと握りながら顔を近づけて言った。

「……糸、見ていてください。私は明日、時谷未来を倒してみせます。松蔭の誇りと、彼女に敗れてきたたくさんの想いのために、必ず勝ちます」

 強く、震える声で決意を表した雪夜の額には汗が流れ、鼓動がここまで聞こえてきそうなほど心臓がドキドキしていた。武者震いというやつだろうか。

「……うん。楽しみにしてるよ」

 天性の才能を加え、人並み以上の努力をする天才。そのサファイアの瞳には、月明かりに負けない光が灯っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...