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第3章 王座争奪戦
52話 期待を胸に
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大会2日目の夜、俺は青月館のフィアスの部屋で、雪夜とフィアスと夕食を食べていた。
「みんな無事に準決勝進出! かんぱーい!」
カチャン!
「ん? 準決勝進出って、また戦わなくちゃいけないの?」
「なんで知らないんだよ」
さすがフィアス軍曹、大会には全く興味がないご様子。
「フィアス。私達は負けていったチームの気持ちも背負っておりますのよ。準決勝ではそのチームの分まで戦わなくてはなりません」
「それにしても雪夜の試合は凄かったね。あっという間にほとんど一人で倒しちゃって。22分で決着は全1回戦の中で2番目に早いタイムらしいよ」
「ありがとうございます。ですが、問題は明日ですわ」
「雪夜の明日の対戦相手は、能力者ランキング1位の時谷未来だもんね」
「ねえ、能力者ランキングって何?」
「だからなんで知らないんだよ!」
「能力者ランキングは能力やマナの量を数値化してランキングにしたものですわ。ほら、フィアスも検査のようなものを受けたでしょう?」
「ああ、変な機械でやったあれか~。ねね、私って何位? やっぱり1位?」
「だから1位は時谷だって! 確か雪夜が5位で、フィアスは6位だったよ」
「私が6位ぃ~~? あの機械、見る目ないね」
「雪夜、時谷は相手の動きの未来を見て戦うみたい。だから、時谷の動きをよく見て瞬時にこっちの未来も変えればいいんだ」
「あの的確な動きと杖さばきはそのためなのですね。情報ありがとうございます」
「……それと、何かやばい必殺技もあるんだって。それが何かはまだ分からないんだけど、『まるで瞬間移動した感じ』らしい」
「瞬間移動、ですか。【時間の次元】と【逆時間の次元】の超能力者であることを考えると、とんでもないことが起きてそうですわね」
「糸、その時谷って人に詳しすぎない? ファンなの? 好きなの?」
「ち、違うよ! 俺のチームの先輩に過去に時谷と戦った人がいるんだ。その先輩は時谷と同じ【時間の次元】の能力者だから、詳しいってだけ」
「ならばよい」
「それはそうと、糸も明日準決勝でしょう? それに、糸の対戦相手のチーム19は、今大会の3強と報道されていましたわ」
「えっ、そうなの?」
「時谷未来のいるチーム4、千陽先輩のいるチーム48、そして3人のランキング上位の能力者がいるチーム19。これらが、総合優勝オッズの1番人気、2番人気、3番人気ですわ」
最後にどのチームが優勝するかを当てる賭け方もあるようだ。そこで多く支持を得ている3チームが、その3チームらしい。
「お互い相手は手強いですが、きっと決勝の舞台でお会いしましょう」
「うん、そうだね」
「糸~ごちそうさま~」
軍曹が満足した表情でお腹をさすっている。
「おそまつさまでした。洗い物するね」
「……すみません、少し私は外に出ててもよろしいですか?」
「え? うん」
◇◇◇
その頃、セトル・イエローレモンシフォンにて。
「お……お邪魔します……」
「散らかっていてすまんな。ま、適当にくつろいでくれ」
なんと五条先輩は三橋さんを部屋に連れ込んでいた。
「あ、あの、今日はどういったあれでしょうか……?」
モジモジ
「おい、今更何緊張してんだよ! これだ、これ!」
五条先輩はカセットにDVDを入れ、テレビを映した。
「あ、これ、去年の五条先輩の試合ですか?」
「そうだ。1回戦のビデオなんてあまり出回ってないんだが、一ノ瀬先輩が探して焼き増してくれたんだ。……本当はこの試合、誰にも見られたくなかったんだけどな」
「今更何言ってるんですか。五条先輩の恥ずかしいことなんていっぱい知ってますよ」
「な、なんだと!? 例えば何だ」
「女子風呂覗くために桶で山を作ってたこととか」
「き、気づいてたのかっ!?!? …………すみませんでした」
「アハハ。で、この試合って、五条先輩が桐山楓に負けた試合ですよね」
「そうだ。このシーンを見てくれ」
五条先輩が味方を倒したシーンを再生する。
「ビデオからはただの仲間割れにしか見えないだろ。でも、違うんだ。俺は桐山を倒したはずだった。なのに、味方を倒していたんだ。この意味、分かるか?」
「桐山が五条先輩に幻影を見せていたってことですか?」
「幻影というより、認識をすり替えられた感じだった。だが、分かってしまえば単純だろ?」
「単純ですが強力ですよね。いつ騙されているか分かりませんし、もしかしたら騙されていないかもしれませんし」
「ああ。だが、攻略法はある。聞いてくれ」
明日はAブロックとBブロックの準決勝。
この夜、選手たちは敵も味方も、様々な想いが巡っていた。
五条先輩たちのように、寮で作戦を練る者。
小雲先輩のように、夜遅くまで練習をする者。
ジョニー先輩のように、パワーを温存するためにぐうぐう寝る者。
そして、青髪の優等生は、公園のブランコで夜風を感じながら月を眺めていた。
「あ、いたいた。雪夜、フィアスがもう寝るって言ってるから、俺も赤砂寮に帰るね」
「ありがとうございます。……あの、ちょっとだけ話しません?」
「ん、いいよ」
二人で並んでブランコに座る。
「青月館にはこんな公園も付属してるんだね。羨ましい」
「あら、赤砂寮の周りには運動会が開けそうなほどの広さの運動場があるじゃないですの」
「あんなの雑草ボーボーの空き地じゃないか! 雪夜、煽ってるでしょ」
「ふふ、申し訳ございません。……ねえ糸、私は明日……時谷未来に勝てるのでしょうか。時間を超越する相手に、私は敵うのでしょうか」
「それは……やってみないと分からないね」
「最強……絶対王者……チャンピオン……。王座戦の練習をし始めてから、色んな人から何度も時谷未来の名前を聞きました。そして、同時にこうも言われました。私なら時谷未来を倒せるかもしれない、と。皆さんは、チューベローズの頂点に君臨する時谷未来を目標としていて、なんとか勝ってみたいと願っているのです。そして、その夢を私に託してくれる人がいる。私に期待してくれる人がいる……」
「雪夜……」
カシャンッ!
雪夜はブランコを降りて、俺の座っているブランコの鎖をぎゅっと握りながら顔を近づけて言った。
「……糸、見ていてください。私は明日、時谷未来を倒してみせます。松蔭の誇りと、彼女に敗れてきたたくさんの想いのために、必ず勝ちます」
強く、震える声で決意を表した雪夜の額には汗が流れ、鼓動がここまで聞こえてきそうなほど心臓がドキドキしていた。武者震いというやつだろうか。
「……うん。楽しみにしてるよ」
天性の才能を加え、人並み以上の努力をする天才。そのサファイアの瞳には、月明かりに負けない光が灯っていた。
「みんな無事に準決勝進出! かんぱーい!」
カチャン!
「ん? 準決勝進出って、また戦わなくちゃいけないの?」
「なんで知らないんだよ」
さすがフィアス軍曹、大会には全く興味がないご様子。
「フィアス。私達は負けていったチームの気持ちも背負っておりますのよ。準決勝ではそのチームの分まで戦わなくてはなりません」
「それにしても雪夜の試合は凄かったね。あっという間にほとんど一人で倒しちゃって。22分で決着は全1回戦の中で2番目に早いタイムらしいよ」
「ありがとうございます。ですが、問題は明日ですわ」
「雪夜の明日の対戦相手は、能力者ランキング1位の時谷未来だもんね」
「ねえ、能力者ランキングって何?」
「だからなんで知らないんだよ!」
「能力者ランキングは能力やマナの量を数値化してランキングにしたものですわ。ほら、フィアスも検査のようなものを受けたでしょう?」
「ああ、変な機械でやったあれか~。ねね、私って何位? やっぱり1位?」
「だから1位は時谷だって! 確か雪夜が5位で、フィアスは6位だったよ」
「私が6位ぃ~~? あの機械、見る目ないね」
「雪夜、時谷は相手の動きの未来を見て戦うみたい。だから、時谷の動きをよく見て瞬時にこっちの未来も変えればいいんだ」
「あの的確な動きと杖さばきはそのためなのですね。情報ありがとうございます」
「……それと、何かやばい必殺技もあるんだって。それが何かはまだ分からないんだけど、『まるで瞬間移動した感じ』らしい」
「瞬間移動、ですか。【時間の次元】と【逆時間の次元】の超能力者であることを考えると、とんでもないことが起きてそうですわね」
「糸、その時谷って人に詳しすぎない? ファンなの? 好きなの?」
「ち、違うよ! 俺のチームの先輩に過去に時谷と戦った人がいるんだ。その先輩は時谷と同じ【時間の次元】の能力者だから、詳しいってだけ」
「ならばよい」
「それはそうと、糸も明日準決勝でしょう? それに、糸の対戦相手のチーム19は、今大会の3強と報道されていましたわ」
「えっ、そうなの?」
「時谷未来のいるチーム4、千陽先輩のいるチーム48、そして3人のランキング上位の能力者がいるチーム19。これらが、総合優勝オッズの1番人気、2番人気、3番人気ですわ」
最後にどのチームが優勝するかを当てる賭け方もあるようだ。そこで多く支持を得ている3チームが、その3チームらしい。
「お互い相手は手強いですが、きっと決勝の舞台でお会いしましょう」
「うん、そうだね」
「糸~ごちそうさま~」
軍曹が満足した表情でお腹をさすっている。
「おそまつさまでした。洗い物するね」
「……すみません、少し私は外に出ててもよろしいですか?」
「え? うん」
◇◇◇
その頃、セトル・イエローレモンシフォンにて。
「お……お邪魔します……」
「散らかっていてすまんな。ま、適当にくつろいでくれ」
なんと五条先輩は三橋さんを部屋に連れ込んでいた。
「あ、あの、今日はどういったあれでしょうか……?」
モジモジ
「おい、今更何緊張してんだよ! これだ、これ!」
五条先輩はカセットにDVDを入れ、テレビを映した。
「あ、これ、去年の五条先輩の試合ですか?」
「そうだ。1回戦のビデオなんてあまり出回ってないんだが、一ノ瀬先輩が探して焼き増してくれたんだ。……本当はこの試合、誰にも見られたくなかったんだけどな」
「今更何言ってるんですか。五条先輩の恥ずかしいことなんていっぱい知ってますよ」
「な、なんだと!? 例えば何だ」
「女子風呂覗くために桶で山を作ってたこととか」
「き、気づいてたのかっ!?!? …………すみませんでした」
「アハハ。で、この試合って、五条先輩が桐山楓に負けた試合ですよね」
「そうだ。このシーンを見てくれ」
五条先輩が味方を倒したシーンを再生する。
「ビデオからはただの仲間割れにしか見えないだろ。でも、違うんだ。俺は桐山を倒したはずだった。なのに、味方を倒していたんだ。この意味、分かるか?」
「桐山が五条先輩に幻影を見せていたってことですか?」
「幻影というより、認識をすり替えられた感じだった。だが、分かってしまえば単純だろ?」
「単純ですが強力ですよね。いつ騙されているか分かりませんし、もしかしたら騙されていないかもしれませんし」
「ああ。だが、攻略法はある。聞いてくれ」
明日はAブロックとBブロックの準決勝。
この夜、選手たちは敵も味方も、様々な想いが巡っていた。
五条先輩たちのように、寮で作戦を練る者。
小雲先輩のように、夜遅くまで練習をする者。
ジョニー先輩のように、パワーを温存するためにぐうぐう寝る者。
そして、青髪の優等生は、公園のブランコで夜風を感じながら月を眺めていた。
「あ、いたいた。雪夜、フィアスがもう寝るって言ってるから、俺も赤砂寮に帰るね」
「ありがとうございます。……あの、ちょっとだけ話しません?」
「ん、いいよ」
二人で並んでブランコに座る。
「青月館にはこんな公園も付属してるんだね。羨ましい」
「あら、赤砂寮の周りには運動会が開けそうなほどの広さの運動場があるじゃないですの」
「あんなの雑草ボーボーの空き地じゃないか! 雪夜、煽ってるでしょ」
「ふふ、申し訳ございません。……ねえ糸、私は明日……時谷未来に勝てるのでしょうか。時間を超越する相手に、私は敵うのでしょうか」
「それは……やってみないと分からないね」
「最強……絶対王者……チャンピオン……。王座戦の練習をし始めてから、色んな人から何度も時谷未来の名前を聞きました。そして、同時にこうも言われました。私なら時谷未来を倒せるかもしれない、と。皆さんは、チューベローズの頂点に君臨する時谷未来を目標としていて、なんとか勝ってみたいと願っているのです。そして、その夢を私に託してくれる人がいる。私に期待してくれる人がいる……」
「雪夜……」
カシャンッ!
雪夜はブランコを降りて、俺の座っているブランコの鎖をぎゅっと握りながら顔を近づけて言った。
「……糸、見ていてください。私は明日、時谷未来を倒してみせます。松蔭の誇りと、彼女に敗れてきたたくさんの想いのために、必ず勝ちます」
強く、震える声で決意を表した雪夜の額には汗が流れ、鼓動がここまで聞こえてきそうなほど心臓がドキドキしていた。武者震いというやつだろうか。
「……うん。楽しみにしてるよ」
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