61 / 67
第3章 王座争奪戦
61話 勝ちたい
しおりを挟む
全ての準決勝が終了し、明日の決勝に進出する4チームが決定。その1つである俺達チーム27は、最後のミーティングを行っていた。
「今日見たように、決勝の相手はどれも強敵だ。特に、大将戦では3人の超能力者が出てくる。だが、ここまで来たんだ。何が何でも絶対勝つぞ!」
「「はい!!」」
「よし、じゃあ明日に疲れを残さないために、今日は解散だ。明日の9時半に控室でな!」
みんなはそれぞれの寮に帰る。しかし、小雲先輩は会場から動こうとしなかった。
「おい七道、突っ立ってどうしたんだ?」
「あ……いえ。ちょっと忘れ物を……」
「お前、もしや……」
ぎくっ!
「明日俺達の試合がこの会場で映し出されるとこを想像してただろ!」
「えっ? あ、あははは!! バレちゃいましたか! ちょっと自分が活躍して大歓声が沸くとこを妄想しちゃいました!」
「ははは。まあ、ほどほどにな。じゃあまた明日!」
一ノ瀬先輩も帰って行った。
「……一ノ瀬先輩、もう行ったよな」
「はい」
「……ごめん、糸くん……肩貸してくれん……?」
「小雲先輩……やっぱり足が……」
「うん……。実はな、病院には行ってないんや。きっとドクターストップされてまうけん」
小雲先輩は皆の前では顔に出さなかったが、足の怪我は相当悪く、痛いらしい。
「俺は小雲先輩が時谷未来を倒すためにとても頑張っていたのはよく知っています。どうしても勝ちたい理由があることも知っています。……でも、その状態で試合に出場するのは流石に……」
小雲先輩は俺の口に手を添えた。
「糸くん、それ以上言わんといて。私は絶対に出る……例えもう二度と歩けなくなっても……絶対に」
「小雲先輩……」
「明日の決勝で時谷を倒して王座を取ることが、これまで私がチューベローズにいたことの全てなんや。……ドクロのバッジをつけてこの学校に入学した私なんかが、偉大な先輩に大きな夢を託されて、そんな重すぎる夢のために生活を捧げるほど努力してきた……。でもやっぱり、くる年もくる年も負け続けて……とうとう明日がそれを叶える最後のチャンスになってもた……。……勝ちたい……勝ちたいよぉ……糸くん……!」
小雲先輩はもたれかかるように俺を抱きしめ、溜めていたものを全てさらけ出すように涙を流した。
ここで、「俺に任せてください」なんて言えたらどれだけ恰好いいだろうか。
「小雲先輩、絶対に勝ちましょう。時谷未来に勝って、一緒に王座を掴みましょう……」
「うわあああん!!」
今の俺からはこんな言葉しか出てこなかった。
小雲先輩は感情と足の痛みが限界になり動けなくなってしまったので、俺は小雲先輩をおんぶしてセトル・ブルーオーシャンまで送り届けた。
小雲先輩が王座を取りたい気持ちは分かっていたつもりだったけど、きっと俺の思っている以上に王座に懸けていたんだ。普段は先輩として取り繕っていて、奥底にある本心は抑えていたのだろう。
でも、足を怪我している小雲先輩には無理をさせられない。
「俺が……時谷未来を倒すんだ……!」
そう口にはするものの、本当に倒せると思っているのだろうか。あの雪夜と、練習でほとんど勝てなかった小雲先輩が負け続けた相手に、俺なんかが……。
赤砂寮への帰り道。
俺の中の強気と弱気がひっきりなしに戦っていた。
ピロリン!
そんな時、ケータイが鳴る。
「フィアスからメッセージだ。『準決勝勝ったから、今日もお祝いのご馳走食べよ~!』……。はは、なんか悩みがある時って、マイペースなやつに救われるな」
俺は返信し、食事街で買い物をしてフィアスの部屋へ向かった。
◇◇◇
ピンポーン
「はい、今開けますわ」
ガチャ
「おまたせ、フィアス……って雪夜!?」
「こんばんは。私もさっきフィアスに誘われましたの」
ちょっと気まずい。なぜかというと、準決勝に勝った俺とフィアスに対して、雪夜は準決勝を敗退しているから。
「おい、フィアス。お前準決勝の結果見てないのか?」コソコソ
「え? 見てないけどどうせみんな勝ったんでしょ?」
やっぱりだ。フィアス軍曹は試合も見ていなければ、結果も知らない。
「あのな……」コソコソ
「ええっ!? 雪夜負けちゃったの!? あの雪夜が!?」
「声がでかい!!」
パシッ!!
「痛い~!」
「糸、お気になさらないでください。昨日散々泣きましたから、もう大丈夫ですわ。それに、私は貴方たちに勝ってほしいんです。私にも夢を託させてください」
「雪夜……」
「ねえ雪夜、雪夜は誰に負けたの? 未だに信じられないんだけど」
「能力者ランキング1位の時谷未来ですわ。……糸、以前、彼女には謎の力があるって仰ってましたよね?」
「うん。先輩が言うには、瞬間移動した感じって……」
「はい。その力を私も体感しました。そして、私は時空を闇で支配していたため、何が起こったかを見破りました。彼女は、時を止めています」
「時を……止めているだって……?」
「その通りですわ。彼女は不連続に時空を移動しました。空間転移でないのであれば、もうそう考えるほかありません」
「そんなの……勝てるわけないじゃないか……」
「難しいと思います。しかし、彼女は止まった時の中では私のバッジを壊しませんでした。止まった時の中で壊せばいいのに、ちゃんと時が動きだしてから壊しています。ここに、何か突破口があるかもしれません」
「今日見たように、決勝の相手はどれも強敵だ。特に、大将戦では3人の超能力者が出てくる。だが、ここまで来たんだ。何が何でも絶対勝つぞ!」
「「はい!!」」
「よし、じゃあ明日に疲れを残さないために、今日は解散だ。明日の9時半に控室でな!」
みんなはそれぞれの寮に帰る。しかし、小雲先輩は会場から動こうとしなかった。
「おい七道、突っ立ってどうしたんだ?」
「あ……いえ。ちょっと忘れ物を……」
「お前、もしや……」
ぎくっ!
「明日俺達の試合がこの会場で映し出されるとこを想像してただろ!」
「えっ? あ、あははは!! バレちゃいましたか! ちょっと自分が活躍して大歓声が沸くとこを妄想しちゃいました!」
「ははは。まあ、ほどほどにな。じゃあまた明日!」
一ノ瀬先輩も帰って行った。
「……一ノ瀬先輩、もう行ったよな」
「はい」
「……ごめん、糸くん……肩貸してくれん……?」
「小雲先輩……やっぱり足が……」
「うん……。実はな、病院には行ってないんや。きっとドクターストップされてまうけん」
小雲先輩は皆の前では顔に出さなかったが、足の怪我は相当悪く、痛いらしい。
「俺は小雲先輩が時谷未来を倒すためにとても頑張っていたのはよく知っています。どうしても勝ちたい理由があることも知っています。……でも、その状態で試合に出場するのは流石に……」
小雲先輩は俺の口に手を添えた。
「糸くん、それ以上言わんといて。私は絶対に出る……例えもう二度と歩けなくなっても……絶対に」
「小雲先輩……」
「明日の決勝で時谷を倒して王座を取ることが、これまで私がチューベローズにいたことの全てなんや。……ドクロのバッジをつけてこの学校に入学した私なんかが、偉大な先輩に大きな夢を託されて、そんな重すぎる夢のために生活を捧げるほど努力してきた……。でもやっぱり、くる年もくる年も負け続けて……とうとう明日がそれを叶える最後のチャンスになってもた……。……勝ちたい……勝ちたいよぉ……糸くん……!」
小雲先輩はもたれかかるように俺を抱きしめ、溜めていたものを全てさらけ出すように涙を流した。
ここで、「俺に任せてください」なんて言えたらどれだけ恰好いいだろうか。
「小雲先輩、絶対に勝ちましょう。時谷未来に勝って、一緒に王座を掴みましょう……」
「うわあああん!!」
今の俺からはこんな言葉しか出てこなかった。
小雲先輩は感情と足の痛みが限界になり動けなくなってしまったので、俺は小雲先輩をおんぶしてセトル・ブルーオーシャンまで送り届けた。
小雲先輩が王座を取りたい気持ちは分かっていたつもりだったけど、きっと俺の思っている以上に王座に懸けていたんだ。普段は先輩として取り繕っていて、奥底にある本心は抑えていたのだろう。
でも、足を怪我している小雲先輩には無理をさせられない。
「俺が……時谷未来を倒すんだ……!」
そう口にはするものの、本当に倒せると思っているのだろうか。あの雪夜と、練習でほとんど勝てなかった小雲先輩が負け続けた相手に、俺なんかが……。
赤砂寮への帰り道。
俺の中の強気と弱気がひっきりなしに戦っていた。
ピロリン!
そんな時、ケータイが鳴る。
「フィアスからメッセージだ。『準決勝勝ったから、今日もお祝いのご馳走食べよ~!』……。はは、なんか悩みがある時って、マイペースなやつに救われるな」
俺は返信し、食事街で買い物をしてフィアスの部屋へ向かった。
◇◇◇
ピンポーン
「はい、今開けますわ」
ガチャ
「おまたせ、フィアス……って雪夜!?」
「こんばんは。私もさっきフィアスに誘われましたの」
ちょっと気まずい。なぜかというと、準決勝に勝った俺とフィアスに対して、雪夜は準決勝を敗退しているから。
「おい、フィアス。お前準決勝の結果見てないのか?」コソコソ
「え? 見てないけどどうせみんな勝ったんでしょ?」
やっぱりだ。フィアス軍曹は試合も見ていなければ、結果も知らない。
「あのな……」コソコソ
「ええっ!? 雪夜負けちゃったの!? あの雪夜が!?」
「声がでかい!!」
パシッ!!
「痛い~!」
「糸、お気になさらないでください。昨日散々泣きましたから、もう大丈夫ですわ。それに、私は貴方たちに勝ってほしいんです。私にも夢を託させてください」
「雪夜……」
「ねえ雪夜、雪夜は誰に負けたの? 未だに信じられないんだけど」
「能力者ランキング1位の時谷未来ですわ。……糸、以前、彼女には謎の力があるって仰ってましたよね?」
「うん。先輩が言うには、瞬間移動した感じって……」
「はい。その力を私も体感しました。そして、私は時空を闇で支配していたため、何が起こったかを見破りました。彼女は、時を止めています」
「時を……止めているだって……?」
「その通りですわ。彼女は不連続に時空を移動しました。空間転移でないのであれば、もうそう考えるほかありません」
「そんなの……勝てるわけないじゃないか……」
「難しいと思います。しかし、彼女は止まった時の中では私のバッジを壊しませんでした。止まった時の中で壊せばいいのに、ちゃんと時が動きだしてから壊しています。ここに、何か突破口があるかもしれません」
0
あなたにおすすめの小説
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~
月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」
猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。
彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。
チート能力? 攻撃魔法?
いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。
「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」
ゴブリン相手に正座で茶を勧め、
戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、
牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。
そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……?
「野暮な振る舞いは許しません」
これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる