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第十一節
〜調べ〜 後編
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紅華はサファと話した後、一人でまたバルコニーに行って夕焼け空を眺めていた。
現在18:48。
ボケーッとしていたら、何処からか手紙が飛んできた。しかも二つ。
一つはかなり古ぼけた、ちゃんとした赤い刻印でとめられている白い手紙。
もう一つは、真っ黒で何故かセロハンテープでとめられている。
その白い手紙を恐る恐る開けてみると、そこには………………
"あの人”、眞白さんからの手紙だった。
「は、え、待って待って待って。眞白さん……っ?!」
突然連絡もなく手紙で来るなんて……と思っていたが、あの時はスメホなんて無かったので仕方ないとすぐに思い直した。
(えーと、『突然なんの連絡もなくこんな形でお手紙を渡してごめんね、紅華。実は黒幕を見つけたんだ。名前はきっと今の君ならわかっていると思うけど、黒金翡翠だ。この情報は遠い島で聞いたことなんだけど、そいつはこの国に恨みを持っていて、いつか崩壊させようと裏で動いているらしい。そいつにも仲間が多数いるらしいから、警戒してね。君にいつ手を出すか分からないから、今だけは外出を控えた方がいい。絶対出るなとは言わないけど、自重してほしいんだ。俺も裏から協力させて。後でLIN○追加するね。それじゃあね、大好きだよ、秋屋眞白(しゅうやましろ)より』……ねぇ。良くも悪くも、味方って事ね。)
「とりあえず、諷に言わなくちゃ……ん?え、そんな……ウソ、でしょ……?」
その後に書かれていた文に、紅華は絶句した。
「…………『翡翠は友達だから、正しい道に戻して欲しい』って、どういう事なのよ……?!」
「…………」
「紅華、おかえり。何かあった……?」
「い、いや……その」
「うん」
「さっき、二通手紙が来て……一人は味方、もう一人は……黒幕からよ」
「?!……待って、幹部達のところに行こう。それは話さないと……紅華?」
「いいえ、大丈夫よ。まだ見てないもの。それにもう夕方だから、一旦解散しないと体力も落ちてしまうわ。詳しい事は家で話す、それでもいい?」
「……分かった。その代わり、明日朝イチで幹部達集めるから。それが条件、姉として、大統領を支える右手として」
「了解したわ、それじゃインカムで伝えて」
「はーい、全く人使い荒いんだから。うちの妹」
「う、しょうがないでしょ」
「まぁ、しょうがないのかな?『幹部達、今回の会議は終わりにする!明日また改めて会議をするので覚えておくように!繰り返す……今回の会議は終わりにするので帰って良いとの事だ!明日また会議が午前中にあるので覚えておくように!』……言ったよ、帰ろう紅華」
「…………えぇ」
紅華と諷は、幹部達にインカムで伝えたあと、馬車に乗って国会堂を後にした。
「……は、く…………はっ……紅華!」
「はっ!?……寝てたのね、なに?」
「もう家着いたよ。今止まってもらってるから早く降りよ?」
「えぇ……」
どうやら馬車の中で寝てしまっていたようだ。紅華は諷の手をとって、馬車からそっと降りた。
「ほんとに大丈夫?あとちょっと歩いたら家の中入れるけど……おんぶとかする?」
「いや、大丈夫。早く寝たい……」
「やっぱおんぶする?」
「ううーん、お願いするわ……」
「しょうがないなぁ。あれ、カバンに入れた手紙は?」
「帰る時に中に入れたからあるわ……先に見てほしい……」
「分かった、おやすみ」
どうやら限界だったらしい紅華は諷におんぶしてもらいながら寝てしまった。
「ボクも疲れた……早く手紙読んで寝よ」
諷は一つあくびをしながら、紅華を背負って家に帰った。
「ふぁ~、手紙見よ……何この黒い手紙……怖すぎるでしょ……え?」
紅華を部屋の寝室にどうにかして寝かせた後、紅華のカバンから真っ黒の手紙を取り出し、見てみるとそこには……
諷と紅華宛の手紙だった。
(『やぁアストロニアの大統領、瑪瑙紅華様、私の弟子である諷はそちらにいるのかな?突然の事だが、明日の夜2時ぐらいに廃校である菜花小学校に来い。貴方たちの1番上であるお姉さんについてを教えよう。そのうち手合わせもしてもらいたいね、この事はあまりほかの人に言わないように。当日一人で来てくれると大いに助かりますねぇ。では待っております。あぁ、そうそう。行かなかったらどうなるか……分かっていますよね?それでは。By黒金翡翠』)
「……ふざけてるのか?誰が行くかよ」
暗い夜の中でたった1人、諷は紅華に聞かせてはいけないほどの地を這うようなドス声で呟いた。
次の日~
「んあぁ~!よく寝たー!……そういや諷お姉ちゃんどこいるんだろう?」
紅華は午前3時くらいにスッキリ目覚め、諷がいる事を確認しに三階へと階段を登った。
(ちなみに瑪瑙家は5階建てである。最上階には現大統領でしか入れない部屋があるらしい。詳しくは知らん)
「お姉ちゃん~?起きたよ……って、置き手紙?」
紅華は姉、諷の部屋のドアを開けると、置き手紙を見つけた。
「えーと、『ごめん、ちょっと黒い手紙を見て察して欲しい。詳しくは4時に菜花小学校で。諷』…………まさか、勝手に読んだな?……は?待って、これ……!!」
置き手紙を見たあと、黒い黒幕からの手紙を見ると、驚いた。
なぜなら、すごく罠にしか見えなかったから。
どう考えたって怪しいのに、行かなければ自分の命が危ないのだ。だから諷はすぐに出かけてしまったのだ。徹夜とほぼ同じ状態の諷が今の黒幕に勝てるはずがない。ましてや相手の能力もわかっていない状態で。しかもかつての師匠なのに。
そんな状態で戦闘になったりしたら諷の身も危ないのだ。
紅華は急いでチェニーを向かわせ、戦いに向けて準備をした。
「…………お前、何しにここへ来た」
「ハハッ、いつからお前はそんなに減らず口を叩けるようになったんだ?諷、私の弟子よ」
「もう師匠なんかじゃない。"黒金翡翠”!お前の考えは分かっている。ボクの妹、瑪瑙紅華を暗殺することだろ!」
「ふん、それはお前が知るべきことじゃない。お前はあの時の戦争で死んでいればよかったのだ!私はな!お前ら2人が気に食わないんだ!」
「…………なぜ気に入らない?それに、ボクたちは三姉妹だ。紅音姉さんの事を恨んではいないんだな?」
「あぁ……っ、これ以上は言えないな。それに、もっと知りたいことがあるんじゃないか?」
「……っち、そうだな。お前の能力についてだ。お前の能力はなんだ?」
「…………ふっ、良いだろう。良きタイミングだ。この際だから言ってやる、私の能力はな……『破壊と再生を操る能力』だ」
「破壊と再生?」
「あぁ、そうだ。1回どこかのビルを破壊すれば、その分その日のうちに再生をしなくてはならない。だから、これは1種のバフスキルだ。1回自分のどこかを壊し、また別の負傷した所や壊した所を直せばいい。"因果応報”、そんな四字熟語が似合う能力だな」
「……で?お前は何がしたいんだ」
「…………それは、お前が考えることでは無い。今日はそれについて話しただけだ。さらば!」
「あっ、おおい!……行っちゃった。攻撃する訳でもなく、闇に溶けて行ったようだな」
黒金は、一瞬でどこかへ行ってしまった。すると、妹である紅華の声がした。
「諷お姉ちゃん!」
「!!…………紅華?!」
「まったくもう!なんで1人で背負い込むの?!……行くよ!」
「あ、うん…………黒幕の能力も分かったよ。ごめんね、心配かけて。あとありがとう。ここまで来てくれて」
「そっ…………そんなの当たり前じゃない!ほら、能力を報告するわよ!いつまた会うか分からないんだから作戦練らないと!」
「…………そうだね、行こ」
若干頬を赤く染めている紅華に、ほんのり嬉しさを交えて微笑んだ諷は、国会堂に向かって歩いていった。
次回、第十二節
~妖朴乱魈 弐~
次の話から異変が起こり始めます!
諸事情により遅れるかもしれませんが、楽しみにしていてください!
番外編もまたちょくちょく入れますのでお楽しみに~
(本編ともしかしたら関わりある……かも?)
では!
現在18:48。
ボケーッとしていたら、何処からか手紙が飛んできた。しかも二つ。
一つはかなり古ぼけた、ちゃんとした赤い刻印でとめられている白い手紙。
もう一つは、真っ黒で何故かセロハンテープでとめられている。
その白い手紙を恐る恐る開けてみると、そこには………………
"あの人”、眞白さんからの手紙だった。
「は、え、待って待って待って。眞白さん……っ?!」
突然連絡もなく手紙で来るなんて……と思っていたが、あの時はスメホなんて無かったので仕方ないとすぐに思い直した。
(えーと、『突然なんの連絡もなくこんな形でお手紙を渡してごめんね、紅華。実は黒幕を見つけたんだ。名前はきっと今の君ならわかっていると思うけど、黒金翡翠だ。この情報は遠い島で聞いたことなんだけど、そいつはこの国に恨みを持っていて、いつか崩壊させようと裏で動いているらしい。そいつにも仲間が多数いるらしいから、警戒してね。君にいつ手を出すか分からないから、今だけは外出を控えた方がいい。絶対出るなとは言わないけど、自重してほしいんだ。俺も裏から協力させて。後でLIN○追加するね。それじゃあね、大好きだよ、秋屋眞白(しゅうやましろ)より』……ねぇ。良くも悪くも、味方って事ね。)
「とりあえず、諷に言わなくちゃ……ん?え、そんな……ウソ、でしょ……?」
その後に書かれていた文に、紅華は絶句した。
「…………『翡翠は友達だから、正しい道に戻して欲しい』って、どういう事なのよ……?!」
「…………」
「紅華、おかえり。何かあった……?」
「い、いや……その」
「うん」
「さっき、二通手紙が来て……一人は味方、もう一人は……黒幕からよ」
「?!……待って、幹部達のところに行こう。それは話さないと……紅華?」
「いいえ、大丈夫よ。まだ見てないもの。それにもう夕方だから、一旦解散しないと体力も落ちてしまうわ。詳しい事は家で話す、それでもいい?」
「……分かった。その代わり、明日朝イチで幹部達集めるから。それが条件、姉として、大統領を支える右手として」
「了解したわ、それじゃインカムで伝えて」
「はーい、全く人使い荒いんだから。うちの妹」
「う、しょうがないでしょ」
「まぁ、しょうがないのかな?『幹部達、今回の会議は終わりにする!明日また改めて会議をするので覚えておくように!繰り返す……今回の会議は終わりにするので帰って良いとの事だ!明日また会議が午前中にあるので覚えておくように!』……言ったよ、帰ろう紅華」
「…………えぇ」
紅華と諷は、幹部達にインカムで伝えたあと、馬車に乗って国会堂を後にした。
「……は、く…………はっ……紅華!」
「はっ!?……寝てたのね、なに?」
「もう家着いたよ。今止まってもらってるから早く降りよ?」
「えぇ……」
どうやら馬車の中で寝てしまっていたようだ。紅華は諷の手をとって、馬車からそっと降りた。
「ほんとに大丈夫?あとちょっと歩いたら家の中入れるけど……おんぶとかする?」
「いや、大丈夫。早く寝たい……」
「やっぱおんぶする?」
「ううーん、お願いするわ……」
「しょうがないなぁ。あれ、カバンに入れた手紙は?」
「帰る時に中に入れたからあるわ……先に見てほしい……」
「分かった、おやすみ」
どうやら限界だったらしい紅華は諷におんぶしてもらいながら寝てしまった。
「ボクも疲れた……早く手紙読んで寝よ」
諷は一つあくびをしながら、紅華を背負って家に帰った。
「ふぁ~、手紙見よ……何この黒い手紙……怖すぎるでしょ……え?」
紅華を部屋の寝室にどうにかして寝かせた後、紅華のカバンから真っ黒の手紙を取り出し、見てみるとそこには……
諷と紅華宛の手紙だった。
(『やぁアストロニアの大統領、瑪瑙紅華様、私の弟子である諷はそちらにいるのかな?突然の事だが、明日の夜2時ぐらいに廃校である菜花小学校に来い。貴方たちの1番上であるお姉さんについてを教えよう。そのうち手合わせもしてもらいたいね、この事はあまりほかの人に言わないように。当日一人で来てくれると大いに助かりますねぇ。では待っております。あぁ、そうそう。行かなかったらどうなるか……分かっていますよね?それでは。By黒金翡翠』)
「……ふざけてるのか?誰が行くかよ」
暗い夜の中でたった1人、諷は紅華に聞かせてはいけないほどの地を這うようなドス声で呟いた。
次の日~
「んあぁ~!よく寝たー!……そういや諷お姉ちゃんどこいるんだろう?」
紅華は午前3時くらいにスッキリ目覚め、諷がいる事を確認しに三階へと階段を登った。
(ちなみに瑪瑙家は5階建てである。最上階には現大統領でしか入れない部屋があるらしい。詳しくは知らん)
「お姉ちゃん~?起きたよ……って、置き手紙?」
紅華は姉、諷の部屋のドアを開けると、置き手紙を見つけた。
「えーと、『ごめん、ちょっと黒い手紙を見て察して欲しい。詳しくは4時に菜花小学校で。諷』…………まさか、勝手に読んだな?……は?待って、これ……!!」
置き手紙を見たあと、黒い黒幕からの手紙を見ると、驚いた。
なぜなら、すごく罠にしか見えなかったから。
どう考えたって怪しいのに、行かなければ自分の命が危ないのだ。だから諷はすぐに出かけてしまったのだ。徹夜とほぼ同じ状態の諷が今の黒幕に勝てるはずがない。ましてや相手の能力もわかっていない状態で。しかもかつての師匠なのに。
そんな状態で戦闘になったりしたら諷の身も危ないのだ。
紅華は急いでチェニーを向かわせ、戦いに向けて準備をした。
「…………お前、何しにここへ来た」
「ハハッ、いつからお前はそんなに減らず口を叩けるようになったんだ?諷、私の弟子よ」
「もう師匠なんかじゃない。"黒金翡翠”!お前の考えは分かっている。ボクの妹、瑪瑙紅華を暗殺することだろ!」
「ふん、それはお前が知るべきことじゃない。お前はあの時の戦争で死んでいればよかったのだ!私はな!お前ら2人が気に食わないんだ!」
「…………なぜ気に入らない?それに、ボクたちは三姉妹だ。紅音姉さんの事を恨んではいないんだな?」
「あぁ……っ、これ以上は言えないな。それに、もっと知りたいことがあるんじゃないか?」
「……っち、そうだな。お前の能力についてだ。お前の能力はなんだ?」
「…………ふっ、良いだろう。良きタイミングだ。この際だから言ってやる、私の能力はな……『破壊と再生を操る能力』だ」
「破壊と再生?」
「あぁ、そうだ。1回どこかのビルを破壊すれば、その分その日のうちに再生をしなくてはならない。だから、これは1種のバフスキルだ。1回自分のどこかを壊し、また別の負傷した所や壊した所を直せばいい。"因果応報”、そんな四字熟語が似合う能力だな」
「……で?お前は何がしたいんだ」
「…………それは、お前が考えることでは無い。今日はそれについて話しただけだ。さらば!」
「あっ、おおい!……行っちゃった。攻撃する訳でもなく、闇に溶けて行ったようだな」
黒金は、一瞬でどこかへ行ってしまった。すると、妹である紅華の声がした。
「諷お姉ちゃん!」
「!!…………紅華?!」
「まったくもう!なんで1人で背負い込むの?!……行くよ!」
「あ、うん…………黒幕の能力も分かったよ。ごめんね、心配かけて。あとありがとう。ここまで来てくれて」
「そっ…………そんなの当たり前じゃない!ほら、能力を報告するわよ!いつまた会うか分からないんだから作戦練らないと!」
「…………そうだね、行こ」
若干頬を赤く染めている紅華に、ほんのり嬉しさを交えて微笑んだ諷は、国会堂に向かって歩いていった。
次回、第十二節
~妖朴乱魈 弐~
次の話から異変が起こり始めます!
諸事情により遅れるかもしれませんが、楽しみにしていてください!
番外編もまたちょくちょく入れますのでお楽しみに~
(本編ともしかしたら関わりある……かも?)
では!
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