The end of the world

よりさん

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世界の終わり

その終わりの瞬間を私は知らない。

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 もし、この世界に神様が本当にいるのだとしたら、その神様はきっと“情”というものを知らないはずだ。知っていたとしたら、その神様は酷く残忍で残酷だ。だって、優しい神様ならこんな世界にしないはずだから。

 生き残った人々は皆、この出来事を“The end of the world” 通称世界の終わりと名付けた。
そして私は、その終わりの瞬間を知らない。

 夏休み真っ只中の日中、両親は仕事でいないし特にやることもなかった私はクーラーの効いた部屋で快適に昼寝をしていた。
だから気づかなかったんだ。周りの耳をつんざくような悲鳴も、鳴り止まない大量の車のクラクションも。
昼寝をしてからどのくらいたったのだろうか。目を覚ますと外は綺麗な茜色に染まっていた。時計を見れば6時過ぎを指していて、今日は定時に上がると言っていたからそろそろ両親が帰ってくる頃だった。
その時、家の電話が騒ぐように鳴り響いた。一人きりだった部屋に妙に鳴り響く電話は早く出ろと言わんばかりに鳴り続ける。どうせ、友達か両親のどちらかだろうと検討をつけて電話に出る。

「はい。清水ですが…」

電話に出た。いや、正確には電話に出ようとした。

-----バンッ…バンッ…バンッ…バンッ…バンッ…………

玄関の扉を平手で叩いてるような音がゆっくりと何度も何度も繰り返された。

「誰?」

この家にはちゃんとインターホンがあるし、普通の人ならそっちを鳴らすだろう。それに両親が帰ってきたとしても鍵を持ってるからドアをこんなに乱暴に叩く奴は私の知る可能性の中ではいない。

「……陽菜!?…陽菜!!陽菜ッ!!」

外したままの受話器から母親の焦っているような声が聞こえた。

「おか…あさん?」

「陽菜!!無事なのね!?よかったッ…。」

今にも泣きそうな声が、いや、もう泣き出している声が私の耳を刺激した。

「陽菜、絶対に家から出ちゃダメよ!!」

「どうして?」

今も尚、ドアを叩く音は止まらない。

「いいから!絶対に家から出ちゃだッ…きゃぁぁぁぁぁぁッ………」

「お母さん!?お母さん!?もしもしッ!?」

耳をつんざくような悲鳴が聞こえたあと電話は切れた。

何度繰り返しかけても一向につながる気配はない。何が起こってるの?お母さんは?なんで電話が繋がらないの?なんで悲鳴が聞こえたの?なんで?一体何がッ…

-----バンバンバンバンバンバンバン……

さっきよりも扉を叩く音が激しくなる。いや、激しくなっただけじゃない。数が増えている。言葉に出来ない恐怖が足元から脳天にかけてせり上がってくる。どうすればいい?一体どうすればいい?

ひとりやふたりなら例え男でも逃げ切れる自信はある。だが、所詮私は女であって、何人もの奴らに押しかけられれば逃げ切れる自身はない。幸い、まだ築何年とたっていないここのマンションの扉は頑丈でちょっとやそっとじゃ壊れないはずだ。だが、それも時間の問題だ。この扉の先に何人もの人がいたとして、ずっと扉を叩きつけているわけがない。もしも、普通の人間ならドアノブを壊すなりなんなりするだろう。念のため、こっそりと玄関へ行きスニーカーを手に取った。それからインターフォンを覗き見る。

「……!!」

言葉を失った。こんなの有り得るわけがない。私はきっとまだ昼寝をしていて夢を見ているんだ。瞬時にそう思ったが、今だ扉を叩き続ける音が私を現実に引き戻す。もう一度インターフォンを見るとやはり同じ光景が広がっている。この家の扉を叩き続ける死んだような顔色をした複数の人間たちが。いや、もう人間ではないのかもしれない。ひたすら扉を叩き続け、呻きながら血を流すその姿はおぞましかった。

“逃げなければ”

瞬間的に思ったのはたったそれだけだ。今すぐここから逃げなければ行けないと本能的に思った。玄関からはあいつらがいるから逃げられない。ならベランダか?だけどここはマンションの7階で飛び降りるにしてはヒーローでもない限り無理だ。ならどうすればいい?ここにずっといれば扉が壊れた時私はどうなる?言葉に出来ない恐怖が次々に襲ってくる。インターフォンをまた覗き見れば、続々と奴らが集まってきている。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

これから先の未来を想像しても明るい未来なんて想像出来ない。奴らがここに入ってきたら。恐怖に身体が震えソファにうずくまった。これは夢だ。夢に違いない。私はまだ眠っていて嫌な悪夢を見ているだけだ。起きたらいつも通りの日常が待っている。ほら、やっぱり夢だ。扉を叩く音が段々と無くなってきた。

-----ピーンボーン

その時、部屋のインターフォンが軽快になった。

-----ピーンポーン…ピーンポーンピーンポーンピーンポーン

しばらく静かに様子を伺っていてもなり止む気配はない。また、言葉にはできない恐怖が襲いかかってくる。

-----ダンダンダンダンダンッ

「おいっ!陽菜いないのか!?陽菜!!」

涙が出た。一気に身体から恐怖が消える。私は外を確認することもなくいきよいよく扉を開けた。
 
「お父さん!!」

扉の外には誰よりも会いたかった父がいた。その姿を目に止めた瞬間一気に力が抜けた。いつもなら邪険に扱っていた父の温もりですら今は何よりも安心して、張り詰めた糸が緩まったように涙が止まらなくなった。

「無事で良かった…。」

「お母さんから電話来て出たら悲鳴が聞こえてそしたら電話切れてかけ直しても繋がんなくて何がどうなってるのかわからない!!ドアの外は変な奴らがいっぱいいるし怖くて怖くて何が何だか…」

「落ち着くんだ陽菜、お父さんも長くはここにいられない。ちいか陽菜、今すぐここから逃げるんだ。」

父の言ってることがうまく理解できない。何でここにいられないのか、逃げなくてはいけないのか理解できない。いや、理解したくないと脳が拒否している。

「なんで?わかんないよ。ちゃんと説明してよ!!」
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