乙女ゲーのガヤポジションに転生したからには、慎ましく平穏に暮らしたい

茶坊ピエロ

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一章

貴族としての責務と常識の変革

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 俺達の実力は貴族達に示すことが出来たはずだ。
 これを見てまだ爵位がどうのとか言ってたらもういい。
 そいつは見捨てる。

「す、すげぇ!」

「おいお前らすげぇな」

「ジャイアントベアをたった三人で瞬殺しやがった!」

「来年入学だろ?有望な新入生が来たなぁ」

「なぁ、俺達のサークル来いよ」

 主に服装が学生達は、さっきまでの青い顔が一点、俺に対して友好的だ。
 そりゃそうだろう。
 誰もこんなところで死にたくない中に、無傷で簡単に驚異を排除できる人間が居たらすがりつきたくなる。
 こんな死が目の前にあるなら尚更だ。
 一方文句を言っていた大人の領主達は複雑な表情をしている。
 強気に何か言いたいけど、言葉が出ないって感じだ。
 概ね計画通りだな。

「俺達はこの通りジャイアントベアなんか敵じゃない。その上であんたらに頼みたいんだ。Aランクの魔物は俺達が受け持つから、他の魔物達はお前達に受け持ってもらいたい」

 あからさまに沈んだ気持ちになっていた。
 いくら自分達で対処が可能でも万は居る魔物が相手なんだ。
 寧ろ沈むなと言う方が無茶だろう。
 ん?索敵魔法に何かが大量に引っかかる。
 へぇ、あいつら。

「どうしたんだ。Aランクを数千体相手にするよりよっぽど簡単だと思うけどな」

「数が、数が違いすぎる」

 学生が振り絞って出した一言にほぼ全員がその言葉を肯定するかのように頷く。

「たしかに苦しいだろうな。でもあんたらはそれをする義務がある。普段からふんぞり返って税で富を膨らましている分、民のためにそれをする義務があるんだよあんたらは」

「このどぶさらいが」

 誰かが発したのかはわからない。
 しかしその言葉で辺りが静まり返り、その後に罵詈雑言が飛び交う。
 どぶさらいか。
 死を目の前にしてもそれを言えるのは胆力があるのか、俺達がジャイアントベアを簡単に屠ったからか、或いはタダの馬鹿か。

「ドブさらいか。なぁ、今そう言った奴。それの何が悪い?」

「庶民は貴族に尽くすのが義務だ。貴族なのに庶民にへこへこして恥ずかしくないのか!」

「何故?」

「それは、庶民は貴族のために存在しているからだ!」

「はぁ、じゃあそれは庶民は良しと思っているのか?」

「そうに決まってる!」

 まぁそうだろうな。
 それが貴族達の常識だ。

「あ、っそう。じゃああんたらは公爵や侯爵、伯爵のために存在しているんだな?」

「そ、それは!」

 多分ここに居る人間全員が思っている不満だろう。
 何故俺達が率先して犠牲にならなきゃいけないのかと。

「違うのか?それがあんたらの常識じゃないのか?」

「これは皇令だから・・・」

「そうだな。そして逃げ出せば貴族の爵位を降格させる。つまりあんたらは逃げたら平民に堕ちるってことだ。じゃあどうして皇令にそんな力があるんだ?」

「それは陛下が偉いからだ!」

「違うな。陛下は偉いから皇令を出す権利があるだけで、皇令自体の力じゃない。貴族としての義務を果たさない人間は貴族である資格がないってことなんだよ!ですよね陛下?」

 俺が潰したジャイアントベアをアデルさんと真剣に見ているエルーザは、いきなり話を振られて驚いたように咳払いする。

「オッホン。たしかにアルゴノート子息の言うとおりだ。貴族は民の汗水垂らした金で暮らしている。だからこういった有事の際には、仕事をする義務がある」

「だ、そうだ。わかったか?お前達は貴族を守る立場であって間違っても虐げていい立場じゃないんだよ」

 さすがに皇帝にそう言われてしまえば、何も言い返すことはできない。
 ここで文句を言える勇気があるなら、バルドフェルド先輩の親同様にこの場には来ていないだろう。

「そもそも庶民を虐げずに、尽くせばかなりのメリットもあるんだぜ?」

「メリット?笑わせる。あるなら教えてくれよ!」

「あ、開き直っちゃう感じ?まぁいいよ。そろそろこっちに来る頃だろ」

 俺は帝都側を見る。
 さっき索敵魔法に引っかかった奴らは、俺が知っている人間達だ。

「リアスさーん!加勢に来たぜ!」

「いつも世話になってるからなぁ!さすがに女、子供は置いてきたが、それでも領民40人くらいはいるぜ!」

「あ、領民の人達。リアスくん、気づいてたの?」

「索敵魔法に引っかかったからな。ありがたい話だ。相手は一万、人出が欲しいところだったからな」

 メリット、それは命を張っても領主に尽くしたいっていう気持ちだ。
 ここは日本とは違って常に命懸けの場所。
 花そそでもそう言ったことはぼかして描かれていた。

「皆さん、ありがとうございます。なぁわかっただろ?こうやってドブさらいと言われる行為を続けて信頼関係を気づいていれば、こういった風に協力してくれる人達もいるんだよ」

「それはお前に力があるからだろ!」

「否定はしない。でもそれは暴力や権力じゃないぞ。信頼関係を築けるくらい領地のタメに色々なことをしたからだ。結果的に貴族は懐が潤って、領民も豊かな暮らしを手に入れて、こうやって有事の際にも駆け付けてくれる様になった、言わば絆の力ってところか」

「我々にはそんな力はない・・・」

「だろうな。庶民は虐げられても、貴族階級社会な以上文句は言えない。でも気持ちまでは強制できないんだよ。否定するなよ?現にお前らの領地の奴らは誰一人としてきてないじゃないか」

 まぁ正直、こんな場所に来てくれる領民なんて尽くしてても珍しいと思うけどな。
 その点は恵まれていた運の力とも言える。

「なぁ、もうやめにしないか?」

「やめる?」

「人を虐げる生活だよ。つまんないだろ?そりゃ貴族社会だ。礼節を弁える必要はあるさ。でもそれが決して虐げ良い理由にはならないんだよ」

 常識ではたしかに民は家畜と同じなんだろう。
 でも例え家畜でも苦しい思いをさせて良いはずがないんだよ。

「今更、そんな常識を変えるなんて・・・」

「できるさ。なぁ、アルナ?」

「え?あ!できますわ!ワタクシのお父様とお母様は、6年前まで領民達を虐げていました。ですが、今はそんなことはしておりません。人は変われるのです!」

 事実、理由や真意はどうあれ、領民達に尽くしていることはたしかだ。
 つまり変えられる証明でもあるし、それは貴族社会でも噂として知れ渡ってるだろう。
 結局本人次第だってことだ。
 さて、トドメといこう。
 俺の暮らしやすい生活のために、こいつらには変わってもらわないと困る。

「それに恥ずかしくのか?」

「え?」

「お前達が今やってることは、今の伯爵以上がやってることと同じだ」

「同じとは?」

「わかんないの?お前達には命を賭けさせといて、他の奴らはふんぞり返って談笑してることだよ。お前達がやってることはそれと変わんないんだ。なぁ、どう思う?悔しいだろ?」

 人間はどうしても悪口と言ったマイナスな事の方が話題になる。
 だから負の感情を少し刺激してやればどうなるか。

「く、悔しい!」

「それが庶民が思ってる気持ちだよ。本音でははらわた煮えくりかえってるのに、それを我慢してる。それがわかったか?」

 今度こそ誰も文句を言わなくなった。
 今ここで文句を言うのは、恥以外の何でも無いからだ。
 自分のことを棚に上げるような馬鹿はいないだろう。
 ここは逃げ出して無い人間の集まりなんだから。

「だが、今更変わったって言っても信じる奴はいないだろうな」

「俺達はどうすれば」

「それはあんたら次第。でも少なくとも、一万の魔物を俺達男爵や子爵が俺の領民、庶民と協力して食い止めたら民達はどう思うかな?」

「見直してくれる?」

「さすがにそんなに甘くないだろ。だがきっかけは作れる。あとはあんたら次第だ。三人で千体のAランクの魔物を倒すより、一万の軍勢を120人ちょっとで倒す方が現実的だと思うが?」

 俺の言葉と共にこの場は静寂に包まれた。
 しかしその静寂は突如に一人の雄叫びで終わる。
 誰が発したかわからない。
 だけど、その雄叫びが、鳴り止まない大歓声が帝都まで響き渡った。

「う、ウォォォォォ!」

「やるぞぉぉぉ!」

「俺達は変わるんだぁぁぁ!」

 単純な奴ら。
 でも背後が崖っぷちだったら、自ずとこうなるんだろうな人間って。
 あとはここを乗り切れれば、完璧だ。
 少なくとも男爵と子爵の当主と次期当主は俺に味方に付いたも同義でしょ。
 ドブさらいと言われることは十割方ありえない。
 まぁこの魔物大量発生を乗り切れればだけど。

「す、すごいな。アタシも皇帝になってから何年も領民を虐げないように命令していたが、言い聞かせることは出来なかったというのに」

「簡単です。人間は追い詰められるとこうなります」

「それでもだ。今の彼らは本気で変わろうとしてるのが伝わってくる」

 まぁ実際、皇帝にそう言われてもそれは命令だと、バレなきゃいいだろって思ってるところはあると思う。
 俺が男爵のドブさらいという地位で、且つ皇帝に慕われていると言う条件だからできたことだ。

「リアスくん、領民達がどうすればいいって言ってるよ」

「あぁ、さすがに彼らを闘いに向ける訳にはいかない。治癒魔法が使える人達は医療班、使えない人は補給係としてポーションを届けさせよう」

「ワタクシがそれは伝えてきますわ。三人は、魔物達に集中してくださいまし。お願いします!」

 アルナはそう言って領民達に向かって走っていく。
 あいつも結構領民に可愛がられてるしな。

「君たちには脅かされてばかりだ。俺はどうすればいい?好きに使ってくれ。上位精霊は従えている。来い、アンリエッタ」

 イルシア先輩の精霊は葉っぱの傘を持った小さな妖精だ。
 姿を見るに、水属性の妖精だろう。

『初めましてアンリエッタと申しますぅ。先ほどまでの姿を拝見したさかい、どうやら精霊と貴方は話せるみたいやね。アチキは他の水精霊と違って、雨を降らす固有の魔法を使えるヨ!好きに使っていいけん』

 キャラが濃い・・・
 関西弁なのか広島弁なのかはっきりしろよ。
 てか雨を降らす魔法ってなにげにすごくね?
 ナスタは気候を操る魔法は使えない。
 クレとミラは大嵐を起こしたり、落雷を音したり出来るけど。

「あ、じゃあイルシア先輩は雨を降らして、魔物達の進行速度を遅らせてください」

「俺の魔法まで把握してるのか。恐れ入るよ。わかった。味方もぬかるみで足場が悪くなるだろうがいいか?」

「そうですね。じゃあこうしましょう」

 俺はここ全体に魔法陣を展開する。
 この規模でも俺は1割も魔力を減らしてないんだよな。
 魔力量はチートだな。

「なんだこれ?」

「付与魔法です。まぁ下級魔法なので持続時間は少ないですが。エアーシューズ」

 エアーシューズとは足場の悪さに関係なくする風魔法。
 足が地上から1cmほど浮かび上がり、それでいて空気が地面代わりになる魔法だ。
 前世で某国民アニメの青い万能たぬきの足をイメージして開発した固有魔法オリジナルだ。
 固有魔法オリジナルとは文字通り、人類が書物などに記録されていなくて新しく作った物、つまりオリジナルの魔法のことだ。
 固有魔法オリジナルは花そそにもあった機能だが、ここまでオリジナリティーには作れなかった。
 まぁゲームだし、容量の問題もあったのだろう。
 花そそでの固有魔法オリジナルは色々な魔法を一つの魔法にして同時に放つと言うものだ。
 基本この世界は精霊も含めて、片手で一つしか魔法を放つことができない。
 だから三つ以上の魔法を同時放つことは出来ないんだが、主人公は固有魔法オリジナルでそれが可能だった。

「これで足場は関係なくなりました。これは足場に関係なく移動することが出来る魔法です」

「す、すごいな。固有魔法オリジナルか」

 足場を蹴っても地面が抉られないことで、その付与が自分の知らない魔法だとわかったのだろう。
 アンリエッタの雨を降らす魔法も固有魔法オリジナルらしいし、固有魔法オリジナルとは馴染み深いんだろうな。
 すぐ受け入れてくれて助かる。

「でしょう?あ、この魔法が付与された靴は、俺の領地でも売っていますのでほしければどうぞ?」

「あ、あぁ。ちゃっかりしてるな」

 それほどでもない。
 宣伝は忘れない。
 たしかに俺が魔法を作ったが、魔法陣がわかればこれは誰でも起動が出来る。
 付与された魔法陣は、理論なんて知らなくても誰でも起動出来るから便利だよな。
 下級魔法だから燃費も良いし、魔力が少ないイルミナでも起動が出来るからかなり重宝されている。
 畑仕事とかも楽になるしな。
 
「じゃあ雨を降らすとしよう。サウザンドレイニー」

 アンリエッタはそう言われると、イルシア先輩の手にキスを落として魔法陣が展開される。
 上空に大きな魔法だ。
 しばらくすると、大雨が荒野に降り注いだ。
 これほどの規模だと、結構魔力が消費されるんじゃないのか?

「すごいですね」

「それほどじゃないさ。これは魔力消費も激しいしな」

「やっぱりですか」

「だが、侵攻をはかなり遅れるはずだ。頼んだぞ」

 まぁこれがなくてもやるつもりだったし、時間が延びたと考えたら気が楽になった。
 イルシア先輩には感謝だな。

「ありがとうございます。ミラ、イルミナ!」

「うーん!出陣だね。競争する?」

「わたしの圧勝ですよ?」

「あぁイルミナに有利すぎるな。そして絶対俺がビリだ」

 イルミナは俺が魔法を組み合わせる戦術に対して、格闘だけでジャイアントベアを屠れる。
 つまり、魔法を展開する時間がない分一番早い。
 そしてミラの魔法の規模はかなりエグい。
 雷魔法に至っては同じ魔法なら、俺が全魔力を注いでも勝つことが出来ない規模だ。
 そして単純な火力はすべての魔法の中で雷魔法が一番威力が高い。
 つまり俺はミラに勝てないって事になる。
 そしてミラは速度ではイルミナに勝てない。
 つまり順位は、イルミナ、ミラ、俺ってなるわけだ。

「そんなこと無いと思うけど。ボクだって魔法陣の展開速度は速いつもりだよ」

「俺もそこそこ速いと思うがな」

「じゃあやろうよ!」

「わたしは構いませんよ。じゃあ一位はどうします?」

 肝心の何かがないと競争する意味もない。
 だから景品が必要だ。

「じゃあ一位の人は二位と三位からご奉仕してもらえるってのはどうかな?」

「それって俺が勝ったら、お前らにエッチな要求しても良いって事だな?」

「あ、え、そういうのは婚約してからだよ!」

 顔を真っ赤にしながら慌ててそう言うミラはかわいい。
 イルミナも顔が真っ赤になっている。
 まぁこれセクハラだよな。
 二人じゃなかったら絶対に言わなかった。

「冗談だよ。肩揉んだりとかそう言ったもんだろ?三人とも料理は壊滅的だしな」

「それは仕方ないです。わたし達は毒の心配がありますし、三人ともメルセデスに胃袋を掴まれていますからね」

「まぁわざわざ作ってくれる人が居るのに、覚える必要も無いしね。じゃあ肩もみ権で決定ね!ボクは一日ずっと二人に揉ませるよ!」

「え、一日!?」

「それはちょっと・・・」

「いいじゃん、その方が競争って感じで!」

 たしかに丸一日肩を揉むのは、肉体的にキツい。
 というか、揉まれる側も血行がよくなりすぎて大変なことになるだろう。

「ちくしょう。絶対負けらんないじゃんか」

「わたしが一人勝ちしますけどね」

「負けられない闘いがここにある」

 青い騎士達か!
 約千体もいるから、少なくとも五百体を倒せば勝ちって事だよな。
 絶対に負けない!

「じゃあお先に!」

「リアス様、失礼します」

 ミラは電磁力で宙に浮かんで、戦場へと足を運んでいった。
 イルミナは俺がさっきしたように空高く跳躍。
 つまり完全に出遅れたな。
 両翼にAランクが集中してるから二人はそれぞれ、右と左に飛んでいった。
 つまり俺が真ん中か。
 場所取りにも失敗したし、ハァ最悪。
 まぁレディーファーストだ。
 行くぜ。



 皇帝エルーザは目を見張っていた。
 ここから目視できるほどの距離に、自分達ではおおよそ理解出来ない戦場を作っている輩が三人もいたからだ。

「陛下・・・陛下が彼に公爵の地位を保証した理由がやっとわかりました」

「いや、アタシも驚いてるよ。なんだいあれ」

 アデルはいくら神話級の精霊を持っていると言っても、15歳の少年に公爵の地位を与えるのはどうかと思っていた人間だった。
 だからエルーザの選択が理解出来なかったのだ。
 しかし目の前の光景をみては納得せざるを得ない。
 何故なら、単体でも胸囲のAランクの魔物がたった三人に相手に圧倒されている。
 更に三人のうち一人、ミラは二人が見たこともない雷魔法を何度も連発していてジャイアントベアやボアソルジャーを丸焦げの灰にしていた。
 残りのリアスとイルミナは素手でAランクの魔物を殺しているのだ。
 Aランクの魔物は騎士団を蹴散らすレベルであり、それは魔法も使える騎士団を指していた。
 つまり素手だけで倒しているのは、この世界の常識では考えられなかった。
 実際にはその二人は身体強化魔法で、身体能力をかなり強化してはいるのだが、そうだとしてもそれが異常なことに変わりは無かった。

「今初めて、アタシはかなりの英断を下したと自負してるよ」

「ですね。あれが他国に渡るのはデメリットでしかない。あの三人はどれを見ても異常だ」

「陛下・・・」

 ふらふらとイルシアがエルーザとアデルの元に近づく。
 エルーザとアデルは、うち漏らしてしまった魔物を帝都に入れないためにここに残り、イルシアは魔力回付が済んだら貴族達に合流予定だった。

「イルシアか。助かるよ。この雨で大分魔物の進行が遅れている。貴族達もあと少しで魔物の大群にぶつかるよ」

「いえ、それよりも彼らすごいですね。俺の子入れ替えを未然に防いだ手腕は本物ですね」

「あぁ、その件は済まなかったな。全くお前の父親にも困った者だよ」

「証拠が残っていないんですものね」

 イルシアが寮内でイルシアそっくりの人間と入れ替えられそうになっていたのは、イルシアとグレシアの父、ゾグニ・フォン・ターニャの仕業だった。
 彼は狡猾で証拠を残す訳も無く、糾弾をすることは出来なかった。
 しかし理由は察することが出来た。
 イルシアは公爵でありながらドブさらいと呼ばれる人間だった。
 それを疎ましく思った公爵は、イルシアの入れ替え作戦を考えたのだ。

「全くくだらないよ。リアスの言うとおり、ドブさらいって単語を使うのは恥ずかしくて、つまらないことこの上ない」

「ですね。彼はあれだけの力を持ちながら、領民のために改革を行った。昔のアルゴノート領はお世辞にも良いところとは言えない。飢餓の貧困の中に自分達は贅沢をしていたのですから」

 イルシアが言うように、エルーザはアルゴノート家から爵位と領地を返還を求めようと考えていたのだ。
 しかしそれも6年前までの話。
 この6年で、アルゴノート領は帝国のどこよりも豊かになった。
 こうして戦場にまで駆け付けるほどに。

「まぁそれは昔の話だ。それに彼の言葉に響いた者はあの中にも多く居ただろう。帝国はこれを期に変わるぞ」

 エルーザやアデル、イルシアはリアス達に期待の目を向けている。
 この荒野に居る人間は概ね、リアス達に対して好意的な目を向けている。
 しかし全員が好意的な目を向けているわけではない。
 この荒野でリアス達に敵意の目を向ける者達もいた。
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