神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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46.大将の矜持

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「いいねいいね!そのくらい速い攻撃じゃないと楽しくないよぉ!」


 ゴードンはネイサンと対峙して奇妙な物を感じていた。動きは遅い。何度も大鎌を振り回し攻撃している。なのに攻撃が当たらないのだ。
 しかしゴードンもまたネイサンの攻撃も見切っている。鉤爪をいなして、塩酸の球体を切りつけて割って回避していた。
 お互いに攻撃の当たらない闘いが続いていた。ゴードンは大鎌にエネルギーを貯めて斬撃を飛ばす。


「わー。今のなになにー?帝国の将軍はみんなこんなことができるのぉ?楽しい!こんな所に派遣してくれたアシヤ大将に感謝しないと」


 斬撃をギリギリでバク転をして躱し、喜ぶネイサン。戦闘が始まっても小馬鹿にする態度を変えないネイサンに、ゴードンは苛立ちを通り越して呆れていた。しかし実力は本物であり油断せず踏み込む。


「塩酸の球体にも恐れを抱かない。さすが大将の座に就くだけあるぅ」


 突撃してきたゴードンの進行方向に球体を配置。ゴードンは冷静に大鎌で切り裂く。そこへ一瞬速度が落ちたゴードンに鉤爪が襲いくる。ゴードンは後ろに飛び退いて回避する。


「アハハ。大袈裟に飛び退いちゃってびびった?」


 ゴードンはネイサンを睨みつける。態度も喋ることもやめないネイサンに我慢の限界もきていた。電撃で電磁力を生み出した。そして黒い砂、砂鉄を集め始めた。しばらくすると後ろから黒い龍が形成された。


「喰らい尽くせ、砂龍サンド激震バイブレーション


 ネイサンに龍が襲いかかる。ネイサンは横に飛び退くが、龍の手に当たる部分が掠った。掠っただけなのにパックリ傷が開くので、ネイサンは傷口を思わず押さえ込んだ。


「なになに今の?掠っただけでこんな出血するんじゃ直撃したら細切れだったかな?」


 黙り込むゴードン。説明する気も話す気すらないようだ。砂龍激震は龍を形成している砂鉄が振動している。なので触れるだけでも恐ろしい切れ味なのだ。


「説明してくれても良いと思うんだ。まぁいいや、僕も良い物見せたげる」


 そういうと大きな液体の球体を二つ生み出した。


「この液体、何で出来てると思う?」


 ゴードンは黙ったまま斬りかかりにいく。相手の説明をわざわざ聞いてやる必要はないのである。ネイサンはその攻撃を踊るように避ける。


「あれぇ?聞かなくていいんだ?まぁ反応が見たいから教えてあげるけど。この二つの球体ね、こっちはただの水だよ。こっちはフッ素で形成されてるんだぁ」


 ゴードンは顔をしかめる。フッ素に水を注ぐと強力なフッ化水素を生み出すという。スプーン一杯で死に至ると聞いたこともあった。そしてそれだけの危険物を生み出せるのに今までそれをしなかったということは、こちらは囮である可能性が高い。


「やっと焦る顔をしたね。これがどういう意味か理解できたんだ。すごいすごい、知識も兼ね備えてるんだね」


「なぜそのようなことができながら住民には使わなかった?」


 ネイサンは笑顔を消してこたえる。ネイサンはゴードンの質問が気に障った。


「切り札っていうのはさ。強い相手に使うものなんだよ?」


「切り札だと?」


「そう切り札だよ。ゲームをするときに必殺技とっておくだろある?これは僕自身も危険が伴うんだぜ。おいそれと使えるはずもないだろう?大将はやっぱりバカだったんだ」


 ゴードンの怒りは頂点に達した。これだけ住民に被害を出しておきながらまるで悪ぶれず、どこか遊びの延長戦だと思ってるネイサンをゴードンは許せなかった。


「ふざけるなよ!怪我人だって大量に出ているんだぞ」


「それがなに?これはテロじゃないんだよ?立派な戦争行為。おにーさん達こそ平和ボケしていてそのことを忘れてるんじゃないの?」


「くっ」


 ゴードンは苦虫を嚼んだような表情をする。たしかにネイサンの言うとおり、敵国の尖兵の彼にそんなことを問うの間違っていると思ってしまった。見た目が少年だからかどこか軽んじていたのかも知れない。
 目をつぶって再度決意した。ネイサンはここで殺す。逃がせば被害が増加するし、そんなこと許容できるはずもなかった。


「まぁおにーさんはここで死ぬんだけどね。この球体を混ぜ合わせて、フッ化水素の完成ー」


 二つの球体を混ぜ合わせて一つの球体を生み出した。その間にゴードンは球体を混ぜ合わせてるときにネイサンの目の前まで接近していた。そしてネイサンを斬りつける。ネイサンは肩から腰までを斬られて出血し崩れ落ちる。追撃で首に砂龍激震を頭部にぶつけて首と胴が泣き別れしそのまま倒れた。


「悪いな少年。お前の言うとおりこれは戦争だ。だがせめてもの情けだ。痛みを感じずに逝けただろう」


「面白いね。なに勝った気でいるの?」


「――――!?」


 目の前には首を切断したはずのネイサンが手を上に向けて立っていた。ネイサンはその手を振り下ろし、その瞬間上に浮かんでいたフッ化水素の球体がゴードンに降りかかり直撃する。


「ぐっぁぁぁぁあ」


「帝国大将がこの程度で叫ぶなよ」


 フッ化水素は体内に容易に侵入する。ゴードンは全身の激しい痛みに襲われていて膝をついた。本来ならそれで死に至ってもおかしくないのだが、大将としての矜持がそれを許さなかった。


「何故貴様は・・・。たしかに首と胴を切断したはずだ」


「教えてほしい?特別に教えてあげる」


 そういうとネイサンは目を指差す。


「僕は魔眼持ち。この魔眼は<身体代替ボディエクスチェンジ>って言って、身体のあらゆるダメージとか病気とかを別の人間に移し替えるものだよ」


「そうか、貴様は・・・魔眼所持者だったのだな」


 ゴードンの意識は朦朧しており、砂鉄で生み出した龍も崩れ落ちた。フッ化水素は体内に入り込み骨を侵す。そして痛みも感じなくなっていた。


「ふふー、この魔眼は大統領自ら・・・あらら?」


 ゴードンの目から光が無くなっていた。膝をついたまま死亡したのだ。フッ化水素を全身に浴びた時点で心室細動を引き起こしており、血液が身体を巡らなくなっていた。本来であれば倒れこんでもおかしくないのによく耐えたと言える。


「まだ説明中だったのに。まぁ僕の任務はブレードの回収だし。正直魔眼を使うつもりなかったのに強かったなぁ」


 ネイサンは襲撃メンバーの中でも実力者だった。なので襲撃に対処しに来た時メンバーにブレード持ちがいたら回収するように頼まれていた。独自の流派で元から鉤爪を使った闘い方をしていた。そして初めてブレードを受け取って起動した瞬間、薬物の知識が頭に流れ込んできたのだ。ネイサンはこれだけ十分に対処できると思っていた。


「僕の魔眼は対象にする相手と半径10m以内に24時間いないといけないんだぞ!ストックが1人消えちゃったよ!アシヤさんに怒られる・・」


 ネイサンはゴードンの死体をそういって蹴り飛ばした。


「まぁブレードは回収したし大丈夫だろうけどね。どうせ捕虜の帝国民の命なんだし」


 そういって大鎌を持つ。アクセサリー型がどこにあるかわからなく探しこむ。首にかかっていたペンダントを取る。中を見ると女性が映っていた。


「これは彼女か何か?まぁイケメンだし彼女くらいいたよね」


 そしてピアスも含めた全部の装飾を取り出した。


「どうやらこのピアスがブレードみたいだね」


 装飾品を全部を足で踏み潰し、壊れなかったアクセサリーをブレードと判断した。
 帰還しようとするネイサンは一度医療施設を見る。


「ユウキとチャーリーのやつも余計なことをしてチャーリーは死んでたしなぁ。寄り道せずまっすぐ帰ろ」


 医療施設を壊滅させるか考えたが、ユウキとチャーリーも任務外のことをして痛い目見てる。
 斑鳩から命じられた内容は帝都で暴動を起こし、増援のブレード持ちから、ブレードを1つ奪取するものだった。なので医療施設は無視して帰還の準備を始めた。
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