神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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48.敵の狙い

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 アンデルは司令部執務室で難しい顔をしていた。急に通信器具が使用不能になり、帝都の現在の状況を把握できなくなってしまったからだ。


「奴らが賊に遅れを取るとも思えぬが、状況把握のために各区に使者を送った方がよいものか・・・」


「手配の準備をしますか?」


 迷っているアンデルにカリアが声をかける。


「うむ。いつでも出撃できるようにしておいてくれ。派遣した奴らも状況把握に兵を戻しているかもしれんしのぉ」


「わかりました。では準備の方を手配して参ります」


 彼女は一礼すると扉を開けて扉を出て行く。そして入れ違いで女性兵が執務室に入ってきた。


「失礼します。ロズワール隊所属、ヨカセフ・メンディ少尉です。報告よろしいでしょうか?」


「ロズワール少将の部隊か。許可する。話せ」


「はっ!襲撃者約50名を無力化、殺害しました。敵はアメリカ軍魔眼部隊で他の区にも襲撃があると予測されます」


 アンデルは顎を撫でて彼女に続けるように促す。


「襲撃者の一人の魔眼の能力により、通信器具が使用不能になったため報告ができない状況に陥りました。現在その能力は帝都全体にまで渡っていると思われます」


「ふむ。通信器具が使用できなくなったのはその所為か」


「報告は以上であります」


 彼女は報告を終えるとアンデルは通達係として内容を伝えようとするが、更に執務室に入ってくる者がおり、話を一旦止めた。
 その者は雨宮隼太大将とレオン・ライラック少将だった。レオンは右腕を失っていた。


「ごめんアンデルちゃん取り込み中に」


「良い。なにがあった?レオンが右腕を無くすような事態なのか?」


 レオンは苦笑いをしながら言う。


「すまんヘマこいてもーた。わいらが着いた頃に三区も襲撃があってな。急いで民間人を隊員達に避難はさせて現在ほぼ全員司令部前に待機させた」


 民間人全員をすぐに避難させる行動力はさすがと判断する。家族がいたというのもあるだろうが。


「ふむ。民間名簿を確認次第、司令部ホールに収容するかのぉ。メンディ少尉、すまんがその旨を儂の部隊の者の誰かに伝えてくれ」


「了解しました。伝達後、四等区に戻ってもよろしいでしょうか?」


「ロズワール少将達に伝えたいことがあるからまたここに戻って来てくれ」


「了解しました」


 そう言うとヨカセフはアンデルの部隊に伝えるため向かった。そして隼太が再び話し出す。


「アンデルちゃん状況報告だ。俺達の部隊は俺とレオン以外全滅した」


「なんじゃと!?」


 雨宮の部隊には大佐もいたはずだった。将軍手前の階級の者をも殺せるような強者が敵にはいたのだ。むしろよく民間人を避難させて戻って来ただけでもかなりの功績と言えよう。


「あれはヤバイな。襲撃者は子供だったんだんだが、施錠アンロックと言った途端に鍵の開く音がして黒い風が周りに吹き荒れた」


「それから敵さんの武器は片手剣型のブレードだったんやけど、黒い風が止んで出てきたらチェーンソーを持ってたんや。そして一振りでほとんどの奴らの胴は真っ二つ。わいの腕も見事に切断されてもーた。緊張感プレッシャーもそうやがあれは恐ろしかったで」


 アンデルは彼らの報告の現象について覚えがあった。和澄もブレードを暴走させた時に同じようなことが起きたとマーフィーから聞いていた。
 更にイヴがそれは神によって施された素質の封印、素因封印が一時的に解除されたものだと言っておりイヴやモルフェといった神ですら恐れを抱くほどだった。


「ふむ。なるほど事態は把握した。それは危険な現象じゃ。暴走したブレード使いはどうしたんじゃ?」


「殺したよ。オレが頭を凍らせて、レオンがアサルトライフルで蜂の巣にした」


「本当はわいが時間稼ぎをせなあかんかったんや。なのに初手で腕を失ったわいを気遣って・・・」


 泣き出すレオン。レオンは勤務態度こそ悪いが、部下に慕われていた。レオンは部下を大切にしていたからだった。


「雨宮大将、ライラック少将よ。お前達の部下は全員二階級特進じゃ。そしてライラック少将は今日付で帝国軍を除隊じゃ」


「アンデルちゃん!レオンの扱いは余りにも!」


「安心せい。レオンは軍学校の教官をやってもらおうとおもっとる。その腕じゃ治療しても復帰は難しかろう」


 部下思いな男だ。彼は良い教官になるだろう。民間人を無傷で守った功績もでかい。


「雨宮よ。主の部隊員の補充も考えておく。今は休んでおれ」


「ありがとうアンデルちゃん。以上で報告を終わりにするであります。なんてな」


 そう言って二人は執務室から出て行った。再び執務室の席に着き資料を確認するアンデル。


「ふむ。現状好ましくはないな。雨宮隊とレオン隊は全滅。計41名の隊員を失うか・・・」


 そして再びノックがしてドアが開いた。二等区に派遣されたガルーダ中将だった。


「さっきのレオンの様子をみるにどうやら三等区にも襲撃があったようですね。報告します。こちらにも襲撃がありました」


「なんじゃ二等区も襲撃か?これは予想とは違って帝都全体の襲撃じゃったか?」


「えぇおそらく。賊は60名ほどで事態の鎮圧が済んだところで通信器具が使用不能になり、参上した次第です」


「わざわざ主が来なくてもよかったものを」


 アンデルは隊長自らが報告にくることもないだろうと言った。しかし彼自身も考えがあってきていた。


「すいません。恥ずかしながら、賊が全員魔眼所持者だったので下手に部下が行くより我々隊長が報告に言った方がいいと思った次第です」


「やはり魔眼部隊か」


「えぇおそらく魔眼部隊で間違いないと。全員赤髪の少年少女達でしたが・・・」


「・・・主、今なんと言った?」


 アンデルは少し考え込んで質問する。


「おそらく魔眼部隊で間違いないかと?」


「そこじゃないわ!全員赤髪といったか?」


「えぇ。賊は全員赤髪でした。ほとんどは捕縛不可と判断し処刑しましたが」


「やはり赤髪か!嘘じゃろ・・・あの豚ぁあああ」


 アンデルは焦った顔をして立ち上がる。アンデルの慌てように驚くガルーダ。そして思い出したかのように彼は付け加える。


「殺害した者の中にはブレード持ちがいて自ら暴走させたいたのですが、他と変わった暴走の仕方をしていました。施錠?とかなにか叫んで持っていた銃型のブレードがククリ型に変わりまして、それからは我々隊長三人で一人ずつ処理し被害は出ませんでしたが・・・」


「まずいぞ。かなりまずい。敵を、アメリカを甘く見ておった。ガルーダよ、事の深刻じゃ。儂はマーフィーに伝えにいく。すまんがここにヨカセフがくるんじゃがそのことを伝えておいてくれ。女性兵じゃ」


「はぁ・・・わかりました」


 事の深刻性と言うがガルーダはイマイチピンときていない。相対した感じでも脅威はブレード持ちだけだと思っていた。
 通信器具が使えなくなっているので、アンデルは慌てて司令室に向かおうとする。しかし行動が余りにも遅すぎた。


――――ドゴォン


 司令部外から爆発音がする。窓をみると皇城から火の手が上がっていた。


「くそっ。遅かったか!今現在一等区にいる大将の者は城に向かわせる。主はヨカセフが来たらそれぞれ隊と合流してくれ。敵の狙いは皇帝と貴族の可能性が高い。奴はそのためにあんなことをしたんじゃからな・・・」


 彼は最後の意味がわからなかったが、事の深刻性は理解した。アンデルは急いでマーフィーのいる司令部へと向かった。
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