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50.アメリカの目的
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――――ッバン!
司令室についたアンデルは思い切り扉をあけた。
「マーフィーよ!敵の狙いは皇帝並びに貴族じゃ!」
「やはりか・・・。今、皇城からの火の手が上がっていたから確認のために兵を飛ばした」
「それはまずいぞ。今すぐここにいる大将全員で皇城へ向かう」
彼女の焦った物言いにマーフィーは疑問を感じた。家族を亡くして以来できる限りの戦力を警備に回すようになってはいたが、皇城にここにいる大将全員は余りにも過剰だった。皇帝レイクは強い。その実力は長い付き合いである彼女が一番知っているはずだ。
「アンデルよ何を焦っている?」
「敵は・・・赤髪の魔眼部隊だったそうだ」
「赤髪?・・・まさか?」
彼女が焦っていた理由がわかり驚くマーフィー。アンデルは軍学校時代一時期やさぐれていた。その時今まで黒髪だった髪が、赤髪に変わっていた。単純にグレて染めたのかと思っていたしそのときは興味も抱かなかった。
後に理由を聞いたが、人体改造をアメリカの何者かに施され、魔眼が相手の過去の記憶を改変するものから、過去自体を変えるようになり、髪の色も赤色になってしまったという。
「儂の髪が赤髪の理由覚えておるようじゃのぉ」
「その改造を襲撃者全員が施されているというのか!?」
「可能性の話じゃ。じゃがもしそうだとしたらレイク陛下の魔眼とブレードの組み合わせに対抗できる、魔眼所持者がいるかも知れぬ」
それは気づくべきだっただろう。先日ウェストサンド学園内にアメリカ軍が潜入者の髪の色も赤色だった。そして更に事態は最悪の方向へ進む。
「悪い司令官!緊急の報告があるんだが」
そういって入って来たのがクウラだった。後ろには医療班の隊長とライコットとレイもいた。
「時間が惜しい。手短に頼む」
「敵は一人を除き全滅。その一人との戦闘でゴードンは死亡。後にそいつを追い詰めるがブレードの暴走で現戦力では勝利は難しく、恥ずかしい話だが救える命を優先して帰還した」
「ディアボ大将が死亡じゃと!?誠か?」
それは司令室内にいた者全員が驚いた。まず大将クラスを殺せる敵がいたこと。しかしそれは人なのだ。一人くらいいてもおかしくはなかった。
それよりも問題がある。クウラの実力はアンデルやマーフィーに次ぐと大将達は把握していた。にもかかわらず彼は逃げ帰ってきた。それほどの脅威が4等区に発生したと言うことだった。
「くっ。今は悲しんでいる暇はない。ディアボ大将の死を無駄にしないためにも儂らの部隊が四等区に出る。大将達は予定通り皇城に向かってくれ。レイよ準備はいいか?おそらくカリアが爆発があった時点で出撃準備が完了してるはずじゃ」
「私は問題ありません」
「ではよい。中将以下の階級の者達はここで待機じゃ。民間人もおるからの。全力で死守してくれ」
「「了解」」
そういうとアンデルはレイを連れて司令室を出て行く。彼女の背中を見ながらマーフィーはつぶやく。
「あっちは心配しないでも平気だろうな」
なんだかんだいってアンデルのことを最も信頼するのは彼だろう。彼女のおかげでマーフィーは今の地位につけたようなものだった。アンデルが曲がり角に消えていくと、振り向いて全員に聞こえるように大声で話し始める。
「いいか!これはアメリカとの前哨戦だ。奴らは言いがかりで戦争を始めた。そして同胞達を不当な理由で殺めた!これは決して許されることではない。故に報いを受けさせる!」
「「サーイエッサー!」」
全員敬礼をして答える。この場にいる全員のマーフィーに敬意を抱いている。それにアメリカの公開処刑の映像はこの場にいる誰もが見ている。仲間であった忠澄達を理不尽に殺したアメリカを、そしてその原因を作った裏切り者の斑鳩に、憤りを感じていた。
「私の義弟は奴らに殺された。この襲撃者はそれには関わっていないかも知れない。だが甘さを見せればそれだけ家族、恋人、友が傷つく可能性がある。全員殺せとは言わん。しかし捕縛は二の次だ!捉えられない状況であれば躊躇なく命を奪え!」
「「サー!イエッサー!」」
「よし各々準備ができ次第、アンデルから与えられた任務へ移れ!解散!」
そういうと大将達は全員司令室を飛び出していき、中将以下も司令室をあとにした。残っているのはクウラ、ライコットだけだった。
「ライコット、お前も司令官様と共に四等区へいけ。俺はマーフィーと話がある」
「わかりました。では元帥殿、失礼致します」
そういうと彼女も司令室から出て行く。残るはマーフィーとクウラだった。
「実は私もお前に聞きたいことがあった」
「わかっている。何故四等区の敵を排除せずに戻って来たか、だろう?」
他の大将達は悪戦苦闘するも全員ブレード暴走者の排除に成功していた。それを実力は帝国でもトップクラスのこの男が対処できないはずがなかった。その疑問は当然マーフィー以外にも抱いていたが、現場をみていないため言及しなかった。
「その通りだ。ほんとに勝てない相手だったのか?」
「あぁ、暴走者じゃないけどな。いや勝つことはできただろうが、医療班や民間人、ライコットや隊の者、俺以外全滅していた可能性があった」
そうやって後ろを振り向き叫ぶ。
「いい加減出てきたらどうだ!聞いてんだろうてめぇ!」
「ふはははは。さすが歳を食っても銀浪とアメリカ軍から恐れられているだけある」
「その二つ名を知っているのはてめんとこのクソ大統領だけだろうがな!」
そういうと姿を現したのは男性。マーフィーもよく知る自分だった。
「全く気づかなかった。さすがはクウラ殿か。そしてお前はどの面を下げてここに来た?」
立場上は上官だがら彼のことは公の場では呼び捨てだ。クウラのことを慕っていたため、三人だけの空間なので今は呼び方を変えた。
「あははは。酷いじゃないですか!貴方の義弟の義弟ですよ僕は!」
「つまり私とお前とは赤の他人だ。家族でもなんでもないからな」
目の前に現れた男性は斑鳩だった。マーフィーは平静を装っているがはらわた煮えくり返ってしょうがなかった。なにせ義弟である忠澄を殺した張本人が目の前にいるからだ。
「酷いですねぇ。まぁ僕の〔変身〕不可視の生存者の能力は貴方にも効いた。自信がつきました。ありがとうございます」
「変身だと?何を言ってんだてめぇ」
「クウラさん。貴方の所為で自信を無くしていたんですよ?まぁいいです」
訳のわからない単語ばかり並べる斑鳩。クウラはリボルバー型のブレードを構える。マーフィも背負っている大剣を抜刀した。
「あぁ勘違いしないで下さい。僕は貴方達と闘う気はありません。まずはご挨拶を・・・っと」
斑鳩が話している最中に、クウラは発砲し、マーフィはそれに合わせて斬りつけた。しかし斑鳩は無傷だった。
「バカなたしかに当てたはずだ」
「バカですねぇ。貴方では僕には勝てない」
そういうと斑鳩は一指し指を上に向けてくいっとする。
「なに・・・ぐぁぁぁぁあ」
マーフィーの脇腹がパックリ割れる。なにをされたかわからずマーフィーは警戒心を上げた。
「いいですねぇ。戻ったら姉さんにもしてあげないと」
「なん・・・だと。静枝は生きているのか!」
「姉さんを気安く呼ぶな!」
そういうとも一度先ほどと同じ動作をするが、発砲音がしただけで何も起こらなかった。斑鳩は驚いた顔をする。
「俺もお前の能力はわからないが、行動くらい詠めたからな」
クウラは発砲して攻撃を防いだ。何の攻撃かはわかっていないが、先ほど同じ動作をしたために予測で防いだのだ。
「経験は豊富のようですね銀浪。まぁいいです。元々貴方たちと闘う気はありませんでしたし。マーフィーさん、貴方と彼女のおかげで私達の目的の一つは果たせそうですから」
そういうと斑鳩は姿を消した。クウラはすぐにマーフィーの元に駆け寄る。マーフィーの出血がすごかったからだ。
「目的・・・だと・・・」
「斑鳩って野郎の気配は消えた。どうやらほんとに撤退したみてぇだな。大丈夫か?」
「大丈夫にみえますか?」
マーフィーは苦笑いしながらいう。目的とはわからないが、どうやらアンデルとマーフィーの予想とは外れているようだったのでなんとかアンデルに伝えようと考える。しかし出血多量でマーフィーは気を失った。
司令室についたアンデルは思い切り扉をあけた。
「マーフィーよ!敵の狙いは皇帝並びに貴族じゃ!」
「やはりか・・・。今、皇城からの火の手が上がっていたから確認のために兵を飛ばした」
「それはまずいぞ。今すぐここにいる大将全員で皇城へ向かう」
彼女の焦った物言いにマーフィーは疑問を感じた。家族を亡くして以来できる限りの戦力を警備に回すようになってはいたが、皇城にここにいる大将全員は余りにも過剰だった。皇帝レイクは強い。その実力は長い付き合いである彼女が一番知っているはずだ。
「アンデルよ何を焦っている?」
「敵は・・・赤髪の魔眼部隊だったそうだ」
「赤髪?・・・まさか?」
彼女が焦っていた理由がわかり驚くマーフィー。アンデルは軍学校時代一時期やさぐれていた。その時今まで黒髪だった髪が、赤髪に変わっていた。単純にグレて染めたのかと思っていたしそのときは興味も抱かなかった。
後に理由を聞いたが、人体改造をアメリカの何者かに施され、魔眼が相手の過去の記憶を改変するものから、過去自体を変えるようになり、髪の色も赤色になってしまったという。
「儂の髪が赤髪の理由覚えておるようじゃのぉ」
「その改造を襲撃者全員が施されているというのか!?」
「可能性の話じゃ。じゃがもしそうだとしたらレイク陛下の魔眼とブレードの組み合わせに対抗できる、魔眼所持者がいるかも知れぬ」
それは気づくべきだっただろう。先日ウェストサンド学園内にアメリカ軍が潜入者の髪の色も赤色だった。そして更に事態は最悪の方向へ進む。
「悪い司令官!緊急の報告があるんだが」
そういって入って来たのがクウラだった。後ろには医療班の隊長とライコットとレイもいた。
「時間が惜しい。手短に頼む」
「敵は一人を除き全滅。その一人との戦闘でゴードンは死亡。後にそいつを追い詰めるがブレードの暴走で現戦力では勝利は難しく、恥ずかしい話だが救える命を優先して帰還した」
「ディアボ大将が死亡じゃと!?誠か?」
それは司令室内にいた者全員が驚いた。まず大将クラスを殺せる敵がいたこと。しかしそれは人なのだ。一人くらいいてもおかしくはなかった。
それよりも問題がある。クウラの実力はアンデルやマーフィーに次ぐと大将達は把握していた。にもかかわらず彼は逃げ帰ってきた。それほどの脅威が4等区に発生したと言うことだった。
「くっ。今は悲しんでいる暇はない。ディアボ大将の死を無駄にしないためにも儂らの部隊が四等区に出る。大将達は予定通り皇城に向かってくれ。レイよ準備はいいか?おそらくカリアが爆発があった時点で出撃準備が完了してるはずじゃ」
「私は問題ありません」
「ではよい。中将以下の階級の者達はここで待機じゃ。民間人もおるからの。全力で死守してくれ」
「「了解」」
そういうとアンデルはレイを連れて司令室を出て行く。彼女の背中を見ながらマーフィーはつぶやく。
「あっちは心配しないでも平気だろうな」
なんだかんだいってアンデルのことを最も信頼するのは彼だろう。彼女のおかげでマーフィーは今の地位につけたようなものだった。アンデルが曲がり角に消えていくと、振り向いて全員に聞こえるように大声で話し始める。
「いいか!これはアメリカとの前哨戦だ。奴らは言いがかりで戦争を始めた。そして同胞達を不当な理由で殺めた!これは決して許されることではない。故に報いを受けさせる!」
「「サーイエッサー!」」
全員敬礼をして答える。この場にいる全員のマーフィーに敬意を抱いている。それにアメリカの公開処刑の映像はこの場にいる誰もが見ている。仲間であった忠澄達を理不尽に殺したアメリカを、そしてその原因を作った裏切り者の斑鳩に、憤りを感じていた。
「私の義弟は奴らに殺された。この襲撃者はそれには関わっていないかも知れない。だが甘さを見せればそれだけ家族、恋人、友が傷つく可能性がある。全員殺せとは言わん。しかし捕縛は二の次だ!捉えられない状況であれば躊躇なく命を奪え!」
「「サー!イエッサー!」」
「よし各々準備ができ次第、アンデルから与えられた任務へ移れ!解散!」
そういうと大将達は全員司令室を飛び出していき、中将以下も司令室をあとにした。残っているのはクウラ、ライコットだけだった。
「ライコット、お前も司令官様と共に四等区へいけ。俺はマーフィーと話がある」
「わかりました。では元帥殿、失礼致します」
そういうと彼女も司令室から出て行く。残るはマーフィーとクウラだった。
「実は私もお前に聞きたいことがあった」
「わかっている。何故四等区の敵を排除せずに戻って来たか、だろう?」
他の大将達は悪戦苦闘するも全員ブレード暴走者の排除に成功していた。それを実力は帝国でもトップクラスのこの男が対処できないはずがなかった。その疑問は当然マーフィー以外にも抱いていたが、現場をみていないため言及しなかった。
「その通りだ。ほんとに勝てない相手だったのか?」
「あぁ、暴走者じゃないけどな。いや勝つことはできただろうが、医療班や民間人、ライコットや隊の者、俺以外全滅していた可能性があった」
そうやって後ろを振り向き叫ぶ。
「いい加減出てきたらどうだ!聞いてんだろうてめぇ!」
「ふはははは。さすが歳を食っても銀浪とアメリカ軍から恐れられているだけある」
「その二つ名を知っているのはてめんとこのクソ大統領だけだろうがな!」
そういうと姿を現したのは男性。マーフィーもよく知る自分だった。
「全く気づかなかった。さすがはクウラ殿か。そしてお前はどの面を下げてここに来た?」
立場上は上官だがら彼のことは公の場では呼び捨てだ。クウラのことを慕っていたため、三人だけの空間なので今は呼び方を変えた。
「あははは。酷いじゃないですか!貴方の義弟の義弟ですよ僕は!」
「つまり私とお前とは赤の他人だ。家族でもなんでもないからな」
目の前に現れた男性は斑鳩だった。マーフィーは平静を装っているがはらわた煮えくり返ってしょうがなかった。なにせ義弟である忠澄を殺した張本人が目の前にいるからだ。
「酷いですねぇ。まぁ僕の〔変身〕不可視の生存者の能力は貴方にも効いた。自信がつきました。ありがとうございます」
「変身だと?何を言ってんだてめぇ」
「クウラさん。貴方の所為で自信を無くしていたんですよ?まぁいいです」
訳のわからない単語ばかり並べる斑鳩。クウラはリボルバー型のブレードを構える。マーフィも背負っている大剣を抜刀した。
「あぁ勘違いしないで下さい。僕は貴方達と闘う気はありません。まずはご挨拶を・・・っと」
斑鳩が話している最中に、クウラは発砲し、マーフィはそれに合わせて斬りつけた。しかし斑鳩は無傷だった。
「バカなたしかに当てたはずだ」
「バカですねぇ。貴方では僕には勝てない」
そういうと斑鳩は一指し指を上に向けてくいっとする。
「なに・・・ぐぁぁぁぁあ」
マーフィーの脇腹がパックリ割れる。なにをされたかわからずマーフィーは警戒心を上げた。
「いいですねぇ。戻ったら姉さんにもしてあげないと」
「なん・・・だと。静枝は生きているのか!」
「姉さんを気安く呼ぶな!」
そういうとも一度先ほどと同じ動作をするが、発砲音がしただけで何も起こらなかった。斑鳩は驚いた顔をする。
「俺もお前の能力はわからないが、行動くらい詠めたからな」
クウラは発砲して攻撃を防いだ。何の攻撃かはわかっていないが、先ほど同じ動作をしたために予測で防いだのだ。
「経験は豊富のようですね銀浪。まぁいいです。元々貴方たちと闘う気はありませんでしたし。マーフィーさん、貴方と彼女のおかげで私達の目的の一つは果たせそうですから」
そういうと斑鳩は姿を消した。クウラはすぐにマーフィーの元に駆け寄る。マーフィーの出血がすごかったからだ。
「目的・・・だと・・・」
「斑鳩って野郎の気配は消えた。どうやらほんとに撤退したみてぇだな。大丈夫か?」
「大丈夫にみえますか?」
マーフィーは苦笑いしながらいう。目的とはわからないが、どうやらアンデルとマーフィーの予想とは外れているようだったのでなんとかアンデルに伝えようと考える。しかし出血多量でマーフィーは気を失った。
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