神世界と素因封印

茶坊ピエロ

文字の大きさ
73 / 83

71.最凶最悪の男、その名はエイダム

しおりを挟む
「我はエイダムと言っているだろう?まぁいい。この国に迷惑をかけるわけにはいかない。さっさと終わらせてもらう」

 まずい、イヴさんが斬られる。
 そんな気がした。なぜか<未来視フューチャーアイ>が発動しない。
 俺は咄嗟に電磁力と忌纏で高速移動し、イヴさんを離脱させた。


「なんのつもりだ少年?」


「あなたアダムさんですよね?今イヴさんを斬ろうとしましたよね?何故ですか?」


 アダムさんは難しそうな顔をする。


「そいつは複製体だ。我の死んだ思い人のな。少年だって家族を複製されたらいやだろう?だから処分しようとしていたんだ」


 複製?このイヴさんは偽物だというのか?


「違うの和澄。アダムは記憶が混濁しているの。どうやらわたしの複製をヘパに作られていたみたいでね。その複製体だと思われてるわけ」


 一体どういうことだ?話が詠めない。


「和澄。そこにいるイヴ殿が本物で、アダム殿は記憶喪失に近い状況。だからイヴ殿を偽物と勘違いして殺そうとしてる。そういうことだ」


 ルナトが要約してくれた。
 なるほど。理由はわかんないけど記憶が混乱してて、イヴさんが偽物だと勘違いしているのか。
 ならその誤解を解かないと。


「アダムさん。この人は偽物じゃありません。少なくとも俺達の師匠なんです」


「それを我に信じろと?少年。残念ながら我の思い人は死んだのだ」


「じゃあ仮にそうでもいいです今は!この人は複製ではありません」


 アダムさんが怒りの凶相に変わる。


「ありえんな。我は目の前で彼女が息を引き取る現場をみたんだ」


「違うわ。アダム、貴方が勘違いしたのよ。お願い思い出して・・・」


 悲痛そうな叫びをあげる。


「もういい。我はエイダムだ。記憶を植え付けられたのには同情する。悪いがここで死んでくれ」


 くそっ!雨宮さんかよこの人は!
 仕方ない。力尽くって言うなら俺達も加勢すれば勝てるはずだ。


「そう。和澄達、早く逃げなさい」


「なんでですか!俺達で協力すれば勝機は」


「ないわよ!彼我の実力差くらい見極めな・・嘘なんで!?避けなさい和澄!」


 目の前にアダムさんの脚が迫っていた。
 なんでだ?何故か<未来視>が発動しなかった。
 ヤバイ。これを喰らえば死ぬってわかる。


「バカもん!」


 俺を庇いながら蹴ってきた脚を腕で受けとめた、赤い髪の少女。


「ほぉ。我の蹴りを受け止めるか。少女よ」


「儂の可愛い愛弟子に何をしよる」


 俺の命の危機を救ったのはアンデル師匠だった。


「レイ、カリア。住民の避難活動を優先し怪我人が出てないか調べてくれ」


「承知」


「わかりましたアンデル様!」


 鞭を持ったショートヘアの女性と、二本の剣を持った黒髪の女性が、アダムに攻撃を浴びせて、離脱する。
 アダムは苦悶の表情をする。


「くっ!ちょこまかと!」


「ねぇアダム!どうして和澄を狙ったの!狙いはわたしだけでしょ!」


 激昂するイヴさん。
 正直いきなり俺が狙われるとは思っていなかった。
 <未来視>はかりに頼っていた弊害だろう。
 自分の危機に自動発動すると思ってたけど違うのか。


「決まっているだろう?複製体の弟子はちゃんと始末しなければいけない。エヴァの生き恥を晒す訳にはいかんからな」


 イヴさんはアダムさんの言葉に信じられないと口をこぼした。 


「ごめんなさい。貴方はアダムなんかじゃないわ。記憶混濁の所為とはいえね!あの人はどんな理由があっても人を殺そうとはしてなかった!あの邪神クズにすら躊躇うほど優しいやつだった!複製体を処分してると言っていた時点で気づくべきだったわ!」


 イヴさんは涙目だ。
 話を聞く限り、優しい人だったのだろう。


「最初からアダムではないと言っているだろう。それになんだ、その記憶は。アダムと言う奴は相当甘ちゃんだったようだなぁ」


「黙れ!」


 イヴさんから電撃と爆炎と水飛沫と氷の礫がアダムさんへと飛んで行く。
 アダムさんは右手を前に出している。
 避ける気が無いのか?


「ふん!効かぬと言ってるだろうが!」


 嘘だろ!?
 手を前にやっただけで、あの怒濤の攻撃を防ぎきったのか!?
 でたらめだ・・・


「本命はこっちよ」


 気づけばイヴさんはアダムさんの目の前にいた。
 光速移動したのか?
 ともかく見えない速度だったのはたしかだ。


「永劫の地獄へいざなってあげるわ。今の貴方の心に慈悲なんか与えない!<幻想ナイトメア悪夢イリュージョン>」


 あの魔眼はモルフェさんの!
 相手を悪夢へと誘う能力で、モルフェさんが言うには人間が耐えれるような者じゃないと聞いた。


「はぁ。何かと思えば悪夢の魔眼か・・・。今度の複製は多芸だったな」


「嘘でしょ!?」


 そしてイヴさんの胸にアダムさんが持っていた剣が突き刺さる。


「イヴさん!?くそっ!」


 俺より先にアンデルさんがアダムさんに殴りかかる。


「くそ!イヴを離さんか!」


「ふむ。人間にしては上出来だな。だが、神に喧嘩を売るには早過ぎる」


 次の瞬間にはアンデルさんの腹にアダムさんの掌底が直撃していた。
 そして近くの建物へと吹き飛ばされる。


「く、くそぉ・・。なんじゃ・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 え!?アンデルさんがいきなり頭を抱えて悲鳴をあげた。
 一体どうなってるんだ!?


「なんじゃこれはぁぁぁ。一体何をしたんじゃぁぁぁぁ」


「自分が纏っていたエネルギーが無理矢理破壊されたのだ。精神ダメージが入るに決まってるだろう」


 忌纏にそんなデメリットが!?
 アンデルさんはのたうち回っている。
 そしてイヴさんも出血量がヤバイ。
 早く治療しないと手遅れになる。


「ゴホッ・・ゴホッ・・・」


 イヴさんが咳き込んでる。
 だけど早く治療しないと。


「何をしようとしている?次は少年の番だというのに」


 早い!?
 もうこの距離まで詰め寄られた。


「さよならだな」


 だけど俺は全力で忌纏と電撃を放ち、電磁力を生み出して高速移動で回避した。
 しかしこっちの人外レベルのその動きにも追いついてくる。
 これじゃあガス欠を起こしてしまう。
 それにイヴさんだって一刻を争う状況なのに! 
 イヴさんの方をみると、ルナトが駆け寄っていた。
 こういう時頼りになるな。
 俺は少しでも時間を稼がないと!


「よそ見とは余裕だな」


 アダムさんの剣が俺の首に向かってくる。
 しかしその斬撃は空を切った。
 そしてアダムさんの頭上に石が飛び交い、アダムさんに触れた瞬間に爆発。
 その爆風で石がどんどん誘爆を起こし、アダムさんは大爆発に巻き込まれた。


「間一髪だな。動きが見えなくて、カズが一瞬止まった隙を突かれそうだからショートワープさせた。カウンター狙いだったら悪いな」


「いや助かったよ兄さん。あと少しでも遅れてたらって考えると背筋が凍る」

 
 実際兄さんの助けが無ければ、首と胴が永延にお別れしていたかもしれないんだ。


「あの爆発で仕留めきれているといいんだが」


「やっぱりあれは祐樹のか」


「そうだ。ヨシュアに協力してもらって爆撃した。ブレードがあれば・・・」


 いや、最早そういう次元じゃない。
 この化け物から一体どうやって逃げ切るかだ。
 幸い、俺とイヴさんにしかヘイトが向いていない。


「今のは奇襲にしては中々だったぞ」


「ちっ!後ろからかよ!」


 俺は兄さんと祐樹を横に突き飛ばす。


「最初から狙いは少年。君だけなのだがな」


 わかってるさ。だから二人を吹き飛ばした。


「悪いなおっさん」


 祐樹はアダムさんに触れてから一瞬で消え、兄さんの横に現れる。
 ヨシュア兄さんの闇属性で俺と同じようにショットワープしたんだ。
 祐樹は魔眼<爆弾作成ボマークリエイト>。
 魔眼を使い、服を爆弾に変えてもらおうと思って、一瞬でアダムさんの視界から外れてもらった。
 そしてその意図を完璧に読み取り、実行に移してくれる祐樹。


「喰らえ!」


 極めつけは兄さんの斬撃で起爆。
 初連携にしては上出来じゃないか?


「ふむ。そこの赤髪の少年がなにをしたかはわからぬが、所詮は子供の浅知恵だったな」


 結果を言うとすべてが失敗に終わった。
 兄さんの斬撃を当てるも全くダメージがなく、爆発も起こらない。
 そしてアダムさんは祐樹と兄さんの方へ手を向ける。


「攻撃というのはこうやるんだ」


 そういうとアダムさんの手から大きい氷が生み出される。
 その氷を二人の頭上に転位させた。


「くそっ!どういうことだ!?転位ができない!?」


「何してるんだヨシュア!あの氷の下敷きになったら死ぬぞ」


「わかっている。でも転位使えないんだ。全力で回避してくれ」


「我が闇属性を使いその空間を固定した。つまるところ我より低いエネルギー量の君たちでは何もできないのも自明の理」


 は!?
 言うは簡単だけど、要するにあそこら編一体に異空間を作ったという事じゃないか!


「若い芽を摘むのは忍びないが、攻撃をされて何もしないほど我も甘くない。死ね」


 くそっ!どうにかしないとホントに二人が死ぬ!


「お前の相手は我だぞ?」


「くそが!あんたには血も涙も無いのか!」


 俺はアダムさんの攻撃を全力で回避しながら叫ぶ。
 そして二人の方向から耳の痛くなるような大きな音が鳴った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

処理中です...