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三章 天使VSサイコパス編

神の使徒イトナの実力

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スキルを使わずにあれだけの実力。
 俺はふざけてズボンを脱がそうとしている場合ではなかったと悟る。
 巨人女が爺さんの方に走っていった4人の方へと現れる。
 
「2人の元へは向かわせないわ」

「隆二を無視するなんて余裕ね!」

「ここは俺とメーテルに任せろ。2人はいけ!拳巨大化」

 メーテルの俺への信頼は嬉しい。
 青谷の拳巨大化とメーテルの高速剣術で十分に対処可能だ。
 しかし結果は予想をかなり裏切る結果になった。

「バカな!?俺の拳を片手で!?」

「くっ!離しなさい!」

 青谷の拳は片手で軽く受け止め、メーテルは最初の刺突でレイピアの先を人差し指と親指で受け止められた。

「この程度?拍子抜けね」

 青谷をメーテルの方へと投げつけ、2人は激突。
 そのまま落下していくがそんなことは今は問題じゃない。
 あいつが追撃しようとしてるのが問題だ。

「メーテル!青谷!避けろ」

「遅い」

 まだ試作段階だけど仕方ない。
 メーテルのポケットにはちゃんと入ってるな。
 蹴りを見事に受け止めてくれたが・・・

「これは――――フィギュア?」

「そうだ。俺のとっておきの、オールレンジ武器だ」

 とはいっても、試作段階でまだ攻撃はほとんどできなく、簡単な稼働しかできない。
 しかしそれを悟られるわけにはいかない。
 一つだけ最初に実装した攻撃がある。

「ふーん。わたし興味ないわそういうの」

「興味なくて結構」

 鼻血出てきた。
 こいつを動かすのに処理がキツいし、要改善だ。
 手で顔の下を隠して、フィギュアを接近させる。

「攻撃方法が無いのかしら?」

「あるさ!」
 
 自爆がな!
 フィギュアは張り付いた。
 喰らえ!
 効くとは思ってないけど、少しでもダメージを負えば儲けもんだ。
 ――――――ドゴーン。
 爆発後、爆風が止んだ。

「自爆ねぇ。痛くもかゆくも無いわ」

「無傷か。やっぱり効かないか」

「効かないよ。そしてそこの二人逃がさないよ」

 これはサービスだとでも言わん限りの、高速移動でにゃーこと石川に迫る。
 よし!にゃーこはスキル無効のスキルがある。
 たしかにステータスは高いが、スキルを無効化すれば関係ない。

「貴女はスキル無効があったわね」

「にゃ!?アアアアアアアアアアアアアアア」

「にゃーこ!?てめぇぇぇ!」

 顔面を鷲づかみにゃーこをたこ殴りにする巨人女。
 なんでスキル無効が発動しない!
 おかしいだろ。
 けどそんなことどうでもいい。
 殺す。
 俺の嫁をあんなに痛み付けやがって!
 俺は銃を構えようとするが、ホルスターから拳銃が無くなっていることに気づいたとき――――――
 ――――――パンパンッ!
 銃声だ。
 なんであいつが俺の銃を持ってるんだ?
 銃の弾道の方を見ると、パピヨンの脇腹二カ所に銃弾が撃ち込まれていた。

「ゴボッ・・・」

「パピヨン!クソがぁ!」

「自分の不注意が招いた結果よ。そしてそこ二人、立ち上がらない方が賢明だったわね」

 メーテルと青谷が立ち上がっていたが、真後ろにきて思い切り背中を蹴飛ばした。

「キャアアアア」

「ぐっ!そっちも喰らいやがれ」

 青谷よく絶えた。
 巨大な拳が巨人女に迫っていく。
 しかし顔面でそれを受けとめた。
 ここまでの実力差があるのか?
 あのムシなんかよりよっぽど強いじゃないか――――――

「お返し。小さな巨人化、部分解除」

 部分解除!?
 そんなことまでできるのか?

「よっこらせ!」

「あ・・」

 ――――――ドスーン!
 壁に大きなクレーターと共に青谷が叩きつけられた。
 一瞬意識を失ったが、内臓が破裂したのか、痛みで目を覚ましたようだ。

「てめぇぇぇ!」

「そんな大声で怒鳴らないで。耳がキンキンするわ」

 次の瞬間、巨人女が炎に包まれる。
 パピヨンの方を見ると笑顔で親指を立てていた。

「パピヨン。大丈夫か?」

「大丈夫ではないのぉ」

「そうか。でもナイスだ。ポーションだ。飲め」

 俺はポーションを飲ませようとする。
 けれどそれは適わず、右腕が転がりパピヨンの左胸の下に穴が開いた。
 痛い・・・
 けれどそれどころじゃない。
 このままじゃパピヨンが死んでしまう。

「パピヨン!」

「他人に気にする余裕があるように見えなかったわ。とりあえずそこのエルフの人。死んでちょうだい」

 炎に包まれた筈の巨人女が目の前にいて、俺の銃をパピヨンに向けていた。
 俺は咄嗟に銃の方向を変えて、銃を奪い返し巨人女に撃ち込む。
 脳天にきっちり撃ち込んだ。
 位置はあっていたんだ。

「喰らってたら危なかったわ」

「銃弾を受けとめるなんてでたらめな!?」

「まぁわたしもそう思うよ。じゃあとりあえずエルフさんバイバイ」

 手をパピヨンに翳す。
 今、何か魔法でも喰らえばパピヨンが死んでしまう。
 俺は咄嗟にかばい込む。
 そして炎弾が発射される。
 超巨大の炎弾を連発してくる。

「ガァァァァ!」

「よ・・・すんじゃ・・・隆二・・・お主も・・・腕が」

「馬鹿野郎。嫁を守るのが旦那の勤めだろうがぁ」

 俺の顔面に足が迫っていた。
 ヤバイ。
 俺は顔面を蹴り飛ばされて吹っ飛ぶ。

「やっと殺せるわぁ」

 くっそぉぉぉ!
 パピヨンが!
 炎弾を放とうとするところで、スカイが目の前に現れて聖剣で炎弾を切り裂いた。
 瞬間移動か。

「させないわ!」

「スカイ!助かった」

 しかし、スカイでも捕らえきれるか?
 聖剣で強化されているとはいえ――――――

「たしかに貴女が一番厄介だわ。初めに殺しそうかしら」

「簡単にいくかしらね!」

 聖剣を右に振るうスカイ。
 それを背中を反らして避ける。
 そのまま聖剣の棟を殴って弾くが、筋力が強化されているからピタリと止まる。
 かといって油断できる相手じゃ無い。
 それはスカイもわかってるようで、聖剣を振り下ろした。

「たしかに貴女は強い。だけれどね――――」

 聖剣を白羽取りした!?
 そしてすぐさま聖剣を取り投げ捨てる。
 何故投げ捨てたんだ?

――――――――――――
名前 キャロライン・スカイ 17歳

レベル55

ジョブ 女子高生

状態 健康

HP7800/7800
SP1865/1865
筋力528
俊敏201464
技量205941

スキル
瞬間移動 記憶改変無効 剣技 銃技 無慈悲なる世界
――――――――――――

 たしかに拳銃だけでも俊敏と技量はこれだけ高い。
 だけどそうじゃないんだ。
 おそらくこれよりも圧倒的にあの巨人女の方が――――――

「聖剣を持ってなかったら貴女の筋力は雑魚レベルね」

「くっ!」

 首を捕まれた。
 3桁の筋力じゃ俺からだって脱出できない。
 どうにかして脱出させられないか。
 悔しいが方法が思いつかない。
 パピヨンは瀕死、にゃーこは石川に支えられてるが、スカイが殺されたら次はにゃーこにいくだろう。
 メーテルと青谷は立ってるのがやっとか。
 本物の神の使途との格差はここまであるのか――――――
 仕方ない。
 本当の奥の手だ。
 俺はこの施設の自爆スイッチを起動した。

「なに!?佐川隆二!貴方なにをしたの?」

「答える義務があるのか?」

 もう諦めた。
 でもただじゃ死なない。
 てめぇらも道連れだ。
 目の前が光り出した。
 そして現れたのは明石。
 横には首の切れた女の死体がある。
 これはあのフクロウか?
 少なくとも明石は生きて戻って来た。

「ジンタン!?貴方が殺ったの?」

 明石は黙って周りを見渡している。
 明石はあの巨人の女には勝てるのだろうか?
 無理だろうな。
 でも顔は怒りで満ちていく。

「クソが!まずはこの女を殺す。次は貴方よ」

 巨人の女がスカイに向かって手刀で首を抉ろうとする。
 しかし明石はそれを――――止めた!?

「なぁ。俺の恋人に何してくれちゃってんのカスが!」

 巨人の女が吹き飛んでいく。
 明石が倒れ込んだ。
 いやでも助かった。
 俺はこの隙に持っていたポーションをパピヨンに飲ませた。

「ゲッホゲホ・・・助かったのじゃ」

「礼は明石が起きたとき言ってやれ」

「そうじゃのぉ」

 危なかった。
 しかしここが危険な事に変わりない。
 メーテルと青谷はお互いを、にゃーこは石川に支えられてこっちに歩いてきた。
 なので俺も含め全員にポーションを飲ませる。
 俺の右腕はちゃんと修復された。

「ここはもう自爆モードに入った。悪いスカイ。ここにいる全員を連れて地上に転移してくれるか?」

「わかったわ。全員こっちに寄ってちょうだい」

 そして地上に転移した。
 俺はダメ押しとばかりに、試作品のフィギュアを地下へと向かわせて、全員自爆させた。
 これであいつらも終わりだろ。
 さすがに生き埋めになって生き残れるはずもない。
 なんとか勝利を得ることができたな。
 しかしまだ危機は去っていなかった。
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