帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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バーベンベルク城にて

不安も魔力も少しずつ溜まってしまって

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次の朝。
すっきりと目覚めた私は、起こしに来たアンナに夜中の冒険について何も言われなかったのでホッとした。兄上達、内緒にしてくれたのね!
二人は腕輪の事も話したみたいで。アンナは私の手首に腕輪を見ると目を細めて、
「オスカー様とフィン様から伺っています。大切なものですから、落としたり無くしたりしないよう大事につけていて下さいね。」と言ってくれた。
お空を飛べたことをアンナやルー兄さまやライに自慢したいけれど、内緒の約束だし、我慢しなくちゃ。

夜中から嵐は続いていて、父さま母さまが不在だからか城内はざわついていたけれど、ルー兄さまと私は、アンナの監視の下、いつもの日課通りに過ごすことが出来たの。
でも、その日の夜、朝も昼も姿を見せなかったオスカー兄上とフィン兄さまが晩餐に降りてきて、私たちに笑いかけてくれた時はホッとしたわ。たぶんルー兄さまも同じ気持ちだったと思う。

「兄上、兄さま!」
ルー兄さまが兄上たちのところに走っていくと、二人はにこにこ頭をなでた。
「やあ、いたずらっ子君。今日もアンナを困らせたらしいね。」
「風が強いから城内なかで過ごすように言われたのに、外に出てしまったんだって?」
穏やかに話す兄上たちに、ルー兄さまは口を尖らせた。
「天気は良いんだ。風くらいなんともないさ。それなのにアンナは僕のおやつを抜いたんだよ!」
「そうか。でも強い風は身体を冷やすから、アンナは心配したんだろう。言いつけを守らなかったのなら罰を受けるのは仕方ない。お腹が空いたろう?晩餐をしっかり食べるんだね。」
オスカー兄上はまるで母さまのように言うと、ルー兄さまを抱き上げて席につかせた。兄上はまだ11歳だけど、武人のお祖父さまや母さまの血を濃く受けていてとても大きい。ルー兄さまは「兄上!」っとしがみついて喜んでいる。

「ルー兄さま、ずるい・・・」
私も口を尖らすと、フィン兄さまがにこにこして抱き上げてくれた。フィン兄さまは10歳。オスカー兄上よりは小さいし細いけど、私を抱き上げる腕は揺るがない。
「では、お姫様は僕が。」
「フィン兄さま!」嬉しくて頬っぺたを兄さまの頬にすりすりすると、兄さまが「くぅっ!」と身体を逸らして叫んだ。
「兄さま、ディー重いの?」心配になって尋ねると、ぶんぶん首を振る。
「ディーは羽のように軽いよ。さあ、たくさん食べてもっと大きくなろうね。」
席にやさしく下ろしてくれる兄さまに、こそっと囁く。
「風、強いと寒いの?母さま、食べてる・・・?」
兄さまは一瞬身体を強張らせたけど、すぐに、にこっと笑って囁き返してくれた。
「兄さまの魔術を信じて。風は防げているし、母さまは食べ物を持って行ってる。何もなければ明日の昼までには着くからね。そうしたら、父さまが母さまを守ってくれるよ。」
だから君も安心してお食べ。
兄さまの笑顔に、不安がほどけていく。
「兄さま大好き。」
私がギュッとすると、兄さまはなぜかまた「くうっっ!」と叫び、オスカー兄上はやれやれ、と肩をすくめた。その後見交わした二人の視線と小さなため息に、私は全く気付かなかったの。

状況はだんだん悪くなっていった。
二日目も嵐は続き、ここバーベンベルクだけではなく、国内のあちこちで大雨や雷も発生していると分かってきたの。ライが使用人の休憩室で聞いてきたんだけど、母さまの執務室、、、今はオスカー兄上が使ってる、、、には、皇城から度々使い魔が来ているみたい。
不安な一日が過ぎて。
その日の晩餐には、とうとう兄上たちは降りてこなかった。
「ディー、たくさん食べるんだぞ。」
いつも私に邪険なルー兄さまが真面目な顔で言った時だけ、少し笑ってしまったけど。自分でも、消しきれない不安がだんだん溜まっていくのが分かる。
結局その日はご飯もあまり食べられなくて、早々にベッドにもぐりこんだ。
腕輪を撫でながら、これが無ければお空を飛ぶだけじゃなく、フィン兄さまのお手伝いも出来るのかな、と考える。私の身体に流れ込む魔力には、この二日間でだいぶ馴染んできていた。今までなかったのが信じられないくらい、自然に感じる力。まだまだ身体中に満ちるには足りないけれど、でも、確実に増えてきている。
「明日はお手伝いしよう・・・」
そう思いながら、眠りについた。

三日目の朝、目が覚めたら嵐は止んでいた。柔らかな風が吹いていて、おひさまはキラキラ輝いている。
きっと父さまと母さまは出会えて、仲直りしたんだ!もしかしたらもう帰っていて、いつも通り朝ごはんの席についているかも!
私は飛び起きてアンナも待たずに着替えると、食堂に急いだ。けれど・・・。

そこには、誰もいなかったの。
がっかりしていると、しばらくしてルー兄さまが眠そうに現れて。アンナの給仕で朝ごはんを食べたけど。そのままお天気もいいのに子供部屋に押し込められた。
「もう少しの事ですから、今日はここから出ないでください。」
「アンナ、兄上たちは・・・?」
私が思い切って声をかけると、アンナはちょっとびくっとしてからにっこり笑った。
「オスカー様とフィン様は、まだもう少しお仕事のお手伝いです。もう少ししたら、きっとエレオノーレ様から連絡が入ると思いますので。それまでは良い子にしていてくださいね。」

私もルー兄さまも。呼ばれてきていたライも黙ってうなずいた。
ルー兄さまとライは部屋のソファで寝ころびながら、何か話している。私はぼんやり窓辺に座り込んで考え込んだ。
フィン兄さまは、昨日のうちに父さまと母さまは会えるはず、と言っていた。朝起きたら嵐も止んでた。それなのに、オスカー兄上は母さまの執務室に執政官や将軍達と籠もりきりのままで、フィン兄さまはもう一羽の大鴉、ムニンと父さまの執務室に籠もってる。
父さまと母さまに何があったのかしら?不安がどんどん膨らんでいくのを止められない。

不安な午前中が過ぎて。お昼ご飯もほとんど食べられなかった私は、考え疲れて子供部屋でウトウトしていた。フッと何かを感じて目が覚める。日はだいぶ傾いて、禍々しいほど赤い夕陽が山の向こうに掛かっていた。アンナはなぜか居なくて、ルー兄さまとライは、今度は窓辺で二人でこそこそ話をしていた。
「ふあ、ルー兄さま。何のお話してるの?」
私があくびをしながら近寄っていくと、二人はびくっとする。「ちびはあっち行け。」ルー兄さまがしっしっと追い払う真似をした。
「なによう、ルー兄さまの意地悪。きっと悪だくみしてるんでしょ。アンナに言いつけちゃうもん。」
私が頬を膨らませると、ライが慌てて手招きした。
「お嬢、待って。俺たちは何にも悪いことはしてないよ。オスカー様やフィン様の役に立てないか、相談しているんだ。」
「おい、ライやめろ。ちびを入れるな・・・危ないだろ。」
ルー兄さまが慌ててライを止める。でも、もう聞いちゃったもん。
私はライの腕にしがみつくと、ルー兄さまをにらんだ。
「ディーを仲間外れにしないで。私も兄上たちの役に立ちたい。」

「ディー・・・。」ルー兄さまがため息をつく。ライと目を見交わして、仕方なさそうに口を開いた。
「ライが聞いて来たんだ。さっき、魔導師団から、使い魔じゃなくて、父さまの副官と名乗る人が転移して来たんだって。今、オスカー兄上とフィン兄さまが母さまの執務室で会っているらしいよ。アンナは様子を見に行ったんだ。」

ドクン、と心臓が変な音を立てたの。
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