帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

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皇宮での邂逅

皇太子殿下という俺を受け入れるために終(フェリクス視点)

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随分久し振りに、嫌な事を思い出してしまった、、、頭を振って、現状把握に努める。

俺が主催するお茶会の当日朝、父上に呼ばれて本宮殿に顔を出した。
父上と宰相にバーベンベルクのディアナ嬢に気に入られろ、でなければ廃嫡と言われて、七年前、俺が父上と皇帝という存在を尊敬出来なくなった出来事を思い出して、父上を詰ってしまった。

見ると、父上も苦い顔をして、俺を見ている。
皇帝が玉座の間で臣下に頭を下げて、他人の背に隠れたんだ。それを息子に見られてたなんて、そして、忘れ果てたであろう今頃詰られるなんて、不快に違いない。

七年ぶりに詳しく思い返しても、かっこいい姿じゃないからな。

でも。
七年前の俺では無く、今、帝王学を学んでいる俺の視点で見ると。
上に立つ者に必要なのは、出来る者を使う能力だ。
自分が誰よりも強く、賢くある必要は無くて。
大事なのは、人材を集められるかとか、集めた人材の忠誠を得られるかとか、才能を使いこなせるかって事。
そう言う意味では、宰相と辺境伯が庇った父上は、いい皇帝、なのかも知れない。あの魔導師も、あれからずっと、団長をしているし。

「父上は」
「お前は」
話そうとして、父上と被る。お互いに黙るが、父上は、話せ、と言うように頷いた。
「父上は、あの時、あの場で勝算がおありだったのですか?」

『あの場』が何か説明しなくとも、お互い分かるだろう。
父上は苦い表情を変えないまま、答えてくれた。
「大体の流れは、宰相と計画していた通りだった。アルフレートが一人で来たのは誤算だったがな。」
「だが、先に話を聞いて時間を稼げば、エレオノーレの性格なら、慌てて飛んでくるのは分かっていた。バーベンベルクにはオリヴィエを送り込んでおいたし。」
「エレオノーレさえ来れば、上手く納められるのは分かっていた。彼女は帝国に忠誠を誓う騎士だし、アルフレートは絶対に彼女には逆らわないから。」
「彼女が来るまでの時間が稼げるなら、ロデリックとアルフレートの前で頭を下げるくらいは仕方ない。そう割り切ったのに。」
まさかお前に見られているとはな、、、。
父上はそう言うと、そっぽを向いてしまった。
話しはしてくれたが、だいぶ嫌われてしまった。
何であんな事口にしたんだろう。俺が困っていると。
傍から宰相がとりなして来た。
「陛下は尊敬されていると思っていた息子に、自分の情けない姿を見られたと知って拗ねているだけですから。お気になさらず。」
え?
そうなのか、父上?
俺が見つめると、父上は薄赤くなりながら、でも、真面目な顔で再び尋ねてきた。
「お前こそ、あの場面を見ていたんなら、私や宰相がなぜ、ディアナ嬢に気に入られろ、と言うか分かったな?」
え?
あの場面の何がそこに結びつくのか分からない。
父上は、俺の訝しげな表情を見て、溜め息をついた。
「小さかったから、分からなくても仕方ないのか・・・?」
「陛下のように、幼馴染みとして彼らを見ていた訳ではありませんから。」
父上が愚痴って、宰相が慰めている。

俺は、何を見落としたんだろう?

悩んでいると、父上が仕方無さそうに口を開いた。
「アルフレートはエレオノーレの言うことなら無条件で従うのを見ただろう?」
確かに。
あれだけ嫌がっていたのに、言われるがまま膝をついた魔導師の姿を思い浮かべ、俺は頷く。
「あの血族は、代々自分の愛情にのみ忠実なんだ。」
本当に、周りの状況を一切考慮に入れないし、金にも権力にも地位にも興味が無い。
そう言うと、もう一度溜め息をつく。
「ディアナ嬢は、言わば、次代のアルフレートだ。あの強大な魔力を継ぐ者を引き続き皇帝の支配下に置くためには、どうすればいいのか?ディアナ嬢は、エレオノーレの血を引いてるからな。アルフレートと同じとは限らない。だが、情報が無い以上、取り敢えずお前がエレオノーレの役を、つまり、ディアナ嬢の最愛になるのが一番確実で、安全なんだ。」
私のように、あいつの最愛が来るまで頭を下げる必要もない。
自嘲して言うと、一転、父上はひどく真剣な顔をした。
「強大な魔力に基づく帝国の安寧。黄金の瞳を得る事で一層強められる帝権の権威。
得難い宝を二つ持つ乙女を攻略するのが、皇太子の使命でなくて、何だと言うんだ。怖気付くなら、廃嫡されても文句を言うな。ディアナ嬢には気の毒だが、帝室にとって、この嫁取りは失敗が許されないんだ。」
「そうですよ。殿下。」
宰相も口を開く。
「殿下がもし失敗されると、我々の一門にディアナ嬢獲得の使命が移ります。でも、それは我々にとって本意ではない。
コンラート公爵家とその一門は、今までもこれからも、帝室の最も強い後ろ盾である、この立ち位置を変える気はないのです。私も、そしてオリヴィエも。」

「そ、そんな、急に言われても・・・」
やっと。
やっと、父上と宰相の思惑が分かった。
確かに、他の貴族や他国の王族にディアナ嬢を取られたら、その男が帝権に叛旗を翻したら、、、帝室俺たちは終わりだ。

だけど、もう少し事前に言って、準備する時間をくれても良かったんじゃないのか?
女の攻略なんて習ったことも無いのに、急に言われて出来るわけが無い。

戸惑う俺に、父上も宰相も容赦なかった。
「何のために立太子以来お茶会をしている。令嬢に気に入られる術くらい、学んでいて当然だろう?」
近寄って来る令嬢のあしらい方は覚えたけどな!
見たこともない令嬢の関心を買う方法なんて知るか!
「殿下は御容姿にも恵まれてます。最近は鍛錬にも精を出されているとか。
よもや将来臣下とする貴族の子弟に負けはしないかと。」
父上はともかく、この発言、、、。宰相は絶対に面白がってるな?

バーベンベルクのディアナ嬢、、、見たこともない令嬢。
それどころか、あの魔導師の子だと毛嫌いしてきた。でも、あの辺境伯の子どもって事でもある。
「・・・どっちに、似てるんだろう」
ポツリと、言葉が溢れでてしまった。
父上と宰相が顔を見合わせる。

「あ、いや、俺は・・・」
なんだか気まずくて慌てふためくと。
宰相がにこやかに言った。
「私もまだお会いしてませんがね。姿は瞳以外、辺境伯にそっくりだそうですよ。」
「・・・」
辺境伯に似てるのか。
俺は、さっき思い出した鮮やかな紅色の髪と明るくて華やかな面立ち、凛とした眼差しを思い出し、、、

なんだか気まずくなってそっぽを向いてしまった。
「おやおや、これは。」
「う、煩い!」
面白がる様子を隠しもしない宰相に言い返しながら、なぜだか顔が熱くなるのを感じる。

だが。
そんな茶番も、父上の厳しい声に雰囲気は一変した。

「それで。皇太子の座をかけて、やるのか、やらないのか?フェリクス・ルートヴィヒ・エッケハルディン。」
父上に言われてしまえば、俺の返答は一つしかない。
「やります。必ず、ディアナ嬢の御心を捉えて見せましょう。」
くそ、全く自信はないけれど。
こんな重大な役目、まだ小さい弟や、コンラートの奴らに放れるかよ。
こっちには皇太子という武器がある。少なくとも第一印象は良いに違いない。

俺は帝国の安寧と帝権の強化の為に。
俺の息子の前で醜態を晒さないために。
何より自分で苦手で困難な事から逃げたと後悔しないために。

まだ見ぬ紅色と黄金色を纏った令嬢の好意を得る事を、皇帝に誓った。


俺がとんでもない失策をしていた事に気づくのは、もう少し後のことだ。







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