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皇宮での邂逅
最も会いたいゲストは影も形も見当たらない
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ここからは94話目、『再度、挑戦です』辺りからのフェリクス殿下視点になります。
和やかに、賑やかに、皇太子宮の茶会は始まった。
まずは軽食を取りながら今日同席のゲストと会話を交わす。
左隣の席は伯爵令嬢。右は侯爵子息か。
お互い顔見知りなので、ここは適当に気を抜く。
彼女達は、色味の違いはあれど、金髪に青い目と言う典型的なオストマルク貴族の色彩を持つ、宮廷貴族だ。
俺に好意を持ってくれていて、分かりやすく、惜しみなく表してくれるから、こちらも対処がしやすい。
食事とお茶が済み、どの席もゆったりとした雰囲気になって来た。
これからしばらくは、それぞれが自由な時間を過ごす。
もう少ししたら、俺も移動して、今日の出席者と一通り挨拶をしないと。
さり気なく会場である皇太子宮の庭を見渡した。
だが、どんなに目を凝らしても、今日一番の予期せぬ主役は、影も形も見当たらない。
天下の魔導師団長に結界張られたら、俺に分かるわけもないが、、、。
おいおい、、、俺は、これから何処へ行けばいいんだ?
「なぁ、本当に居るんだろうな?」
隣のご令嬢が俺の反対側の侯爵家の子息と話し始めたの確認してから、それでも念のため振り返らないまま、小声でそっとマルティンに声を掛ける。
大体、俺の代になってから、バーベンベルクの一族は一度もこの茶会に来たことが無いんだぞ?
たかが食器が二組消えたくらいで、魔導師団長と侍従見習い、、、いや、ディアナ嬢が紛れ込んでいると思うのは都合の良い妄想ではないのか?
先ほどまで俺の後ろに控えながら侍従とやり取りを重ねていた老執事は、すっと屈むと俺の耳元で答えた。
「実を言うと、先程は、もしや、という程度でしたが・・・」
「!」
なんだって?!
俺が思わず振り返りそうになるのを押さえるかのように言葉が続く。
「今は確信しております。いつもの場所に二人分の食器が戻ってきたと、今し方連絡がありましたし、食事も、我々が用意した量より、わずかに足りなくなっておりましたので。」
「信じていいんだな?」
「皇太子宮で五十年執事をしております私の、経験に基づく「勘』でございます。」
「勘・・・」
怪しい、、、。
俺、この老執事に騙されてないよな?
でも、自信たっぷり、どこか楽しげでさえある声を聞いて、俺は腹を括った。
頼ると、決めたんだからな、うん。
「外れたら、罰として一生俺の執事だからな?」
前を向いたまま言う。見えなくても、マルティンの纏う空気が柔らかくなったのが分かった。
「外れませんが・・・外れても楽しゅうございますな。」
取り敢えず、この何処かには確実に魔導師団長と執事見習いは居るとして、、、。
俺は再びさりげなく会場を見渡した。
あちこちで席を立って移動する姿が見え始めた。
俺も早く移動しなければ。
にこやかに同席の会話を見守るふりをしながら、頭をフル回転させる。
「食事は済ませたんだろ・・・」
確かに俺の茶会の食事とデザートは評判が良いが、まさかそれが目的では有るまい。何か他に有るはずだ。
帝都が初めての令嬢、、、何が気になるんだ?
俺は令嬢との会話例文のポイントを思い出す。
挨拶代わりに褒める、これは関係ないか。
でも、注意点として、流行りの髪型やドレスの場合、そこを重点的に褒めるってのがあったな。つまり、彼女達にとって大事な事なんだろう。
ただ、この場合、あちこちに散らばっている令嬢達を眺めるだけで、大体の流行は分かるだろう。あいつ、賢そうだったしな。
あとは、何だろう?あいつが興味を持ちそうな事、、、。
考えながらぼんやり動かしていた視界に、此処では珍しい赤が目に入った。
ジキスムントだ。何だか令嬢達に囲まれていて、ちょっと目を引く状況だ。
「そう言えばあいつ、珍しく今日は来ていたな。」
入場の時はマルティンとの話が忙しくて殆ど話せなかったけど。
ん?
待てよ。
ディアナ嬢はジキスムントとは知り合いだ。少なくともこの会場で一番親しいと言えるだろう。
そのジキスムントが令嬢に囲まれてたら、取り敢えず興味を持つんじゃないか?
「・・・マルティン、行き先が見つかった。」
低く呟くと、
「ロイス侯爵令息の所ですね。大変よろしいかと。」
俺の視線の先を見ていたのか、マルティンもすぐに返してくる。
、、、いよいよか。
これからいつもの様に貴族子女と自然に会話を交わしつつ、此処ぞという時は虚空に向かって話し掛けないといけない。
場合によっては、突然姿を現した魔導師団長と執事見習いに、貴族子女が見てる前で頭を下げる事になるかも知れない。
、、、下手すると殿下ご乱心の噂が飛ぶ事になる、、、。
ため息を堪えてる俺を知らぬ気にマルティンの穏やかな声がした。
「さあ、殿下、そろそろ他の皆さまにご挨拶を。」
お前、、、楽しんでるだろ。
にこやかに席を立ちつつ、密かに深呼吸をする。
俺は皇太子だ。これくらいの事が出来ずに国が動かせるか。
俺は半分やけくそな気持ちで、いつもながらに盛況な茶会のテーブルを抜けて、ジキスムントのところへ向かった。
和やかに、賑やかに、皇太子宮の茶会は始まった。
まずは軽食を取りながら今日同席のゲストと会話を交わす。
左隣の席は伯爵令嬢。右は侯爵子息か。
お互い顔見知りなので、ここは適当に気を抜く。
彼女達は、色味の違いはあれど、金髪に青い目と言う典型的なオストマルク貴族の色彩を持つ、宮廷貴族だ。
俺に好意を持ってくれていて、分かりやすく、惜しみなく表してくれるから、こちらも対処がしやすい。
食事とお茶が済み、どの席もゆったりとした雰囲気になって来た。
これからしばらくは、それぞれが自由な時間を過ごす。
もう少ししたら、俺も移動して、今日の出席者と一通り挨拶をしないと。
さり気なく会場である皇太子宮の庭を見渡した。
だが、どんなに目を凝らしても、今日一番の予期せぬ主役は、影も形も見当たらない。
天下の魔導師団長に結界張られたら、俺に分かるわけもないが、、、。
おいおい、、、俺は、これから何処へ行けばいいんだ?
「なぁ、本当に居るんだろうな?」
隣のご令嬢が俺の反対側の侯爵家の子息と話し始めたの確認してから、それでも念のため振り返らないまま、小声でそっとマルティンに声を掛ける。
大体、俺の代になってから、バーベンベルクの一族は一度もこの茶会に来たことが無いんだぞ?
たかが食器が二組消えたくらいで、魔導師団長と侍従見習い、、、いや、ディアナ嬢が紛れ込んでいると思うのは都合の良い妄想ではないのか?
先ほどまで俺の後ろに控えながら侍従とやり取りを重ねていた老執事は、すっと屈むと俺の耳元で答えた。
「実を言うと、先程は、もしや、という程度でしたが・・・」
「!」
なんだって?!
俺が思わず振り返りそうになるのを押さえるかのように言葉が続く。
「今は確信しております。いつもの場所に二人分の食器が戻ってきたと、今し方連絡がありましたし、食事も、我々が用意した量より、わずかに足りなくなっておりましたので。」
「信じていいんだな?」
「皇太子宮で五十年執事をしております私の、経験に基づく「勘』でございます。」
「勘・・・」
怪しい、、、。
俺、この老執事に騙されてないよな?
でも、自信たっぷり、どこか楽しげでさえある声を聞いて、俺は腹を括った。
頼ると、決めたんだからな、うん。
「外れたら、罰として一生俺の執事だからな?」
前を向いたまま言う。見えなくても、マルティンの纏う空気が柔らかくなったのが分かった。
「外れませんが・・・外れても楽しゅうございますな。」
取り敢えず、この何処かには確実に魔導師団長と執事見習いは居るとして、、、。
俺は再びさりげなく会場を見渡した。
あちこちで席を立って移動する姿が見え始めた。
俺も早く移動しなければ。
にこやかに同席の会話を見守るふりをしながら、頭をフル回転させる。
「食事は済ませたんだろ・・・」
確かに俺の茶会の食事とデザートは評判が良いが、まさかそれが目的では有るまい。何か他に有るはずだ。
帝都が初めての令嬢、、、何が気になるんだ?
俺は令嬢との会話例文のポイントを思い出す。
挨拶代わりに褒める、これは関係ないか。
でも、注意点として、流行りの髪型やドレスの場合、そこを重点的に褒めるってのがあったな。つまり、彼女達にとって大事な事なんだろう。
ただ、この場合、あちこちに散らばっている令嬢達を眺めるだけで、大体の流行は分かるだろう。あいつ、賢そうだったしな。
あとは、何だろう?あいつが興味を持ちそうな事、、、。
考えながらぼんやり動かしていた視界に、此処では珍しい赤が目に入った。
ジキスムントだ。何だか令嬢達に囲まれていて、ちょっと目を引く状況だ。
「そう言えばあいつ、珍しく今日は来ていたな。」
入場の時はマルティンとの話が忙しくて殆ど話せなかったけど。
ん?
待てよ。
ディアナ嬢はジキスムントとは知り合いだ。少なくともこの会場で一番親しいと言えるだろう。
そのジキスムントが令嬢に囲まれてたら、取り敢えず興味を持つんじゃないか?
「・・・マルティン、行き先が見つかった。」
低く呟くと、
「ロイス侯爵令息の所ですね。大変よろしいかと。」
俺の視線の先を見ていたのか、マルティンもすぐに返してくる。
、、、いよいよか。
これからいつもの様に貴族子女と自然に会話を交わしつつ、此処ぞという時は虚空に向かって話し掛けないといけない。
場合によっては、突然姿を現した魔導師団長と執事見習いに、貴族子女が見てる前で頭を下げる事になるかも知れない。
、、、下手すると殿下ご乱心の噂が飛ぶ事になる、、、。
ため息を堪えてる俺を知らぬ気にマルティンの穏やかな声がした。
「さあ、殿下、そろそろ他の皆さまにご挨拶を。」
お前、、、楽しんでるだろ。
にこやかに席を立ちつつ、密かに深呼吸をする。
俺は皇太子だ。これくらいの事が出来ずに国が動かせるか。
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