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帝都のひと夏
思ってもみない関係でした
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「ああ、もう!」
舌打ちが聞こえたと思ったら、ルー兄さまがマクシミリアンさま?の手をべりっとはがしてくれた。そのまま、
「失礼」
呟くと同時に当身を入れる。
「グフッ」
崩れ落ちる体をサッと抱き留めると、ルー兄さまは、「父上」と声を掛け、イヤそうな父さまを促してさっさと転移してしまった。
「待って、何で・・・」
呼びかける私に、今度は母さまが「ディー」と小さく呼びかけた。
眼で、黙ってて、と制される。
後ろを振り返って、副官の騎士に「ご苦労。明日また来てくれ。」と声を掛けると、母さまはそのまま私の肩を抱くようにして執事の前を通り過ぎ、扉をくぐった。
エントランスにはこの屋敷に仕える使用人が勢ぞろいしていて、一斉に頭を下げてきた。
そっか、母さまが当主なんだものね。
感心して眺めていると、奥から人影が近づいてきた。
お祖父さま、お祖母さまだ。
執事やメイド頭と挨拶していた母さまも、すぐに気付いたみたい。
「父上、母上」
呼びかけながら近づくと、さあッと使用人達が下がる。
エントランスホールの真ん中で、母さまはバーベンベルク騎士団の正式な礼をした。
いつ見ても、凛々しくてステキだな。魔導師も良いけど騎士も良いよね。
私がうっとり見ていると。
「いつ見ても野暮ったい挨拶よね。」
信じられない言葉が聞こえてきた。
声の主は、、、お祖母さまだ。
シーンと静まるエントランスホール。
「アーデルハイド」
お祖父さまの窘める声が聞こえたけど、お祖母さまは全く悪びれない。「だってあなた、近衛騎士団の礼はもっと洗練されてるわよ」なんて言い返している。
茫然としていると、今度は沈黙を守る母さまをしげしげと見つめ、
「エレオノーレ。あなた、また日焼けしたわね。日にさらされない白い肌こそ貴婦人の証なのに、それでは平民のようだとまた陰口を言われてしまうわよ。」
やーね、私までお友達にからかわれちゃうわ、と不満そうに口を尖らせた。
ひどい!
なんでお祖母さまはこんなひどいことを実の娘である母さまに言うの!?何で母さまは黙ってるの?
沈黙に耐えかねて口を開こうとすると。
ブワッと金色の火花がエントランスホールを満たした。
「きゃああっ!」「なんだこれは!」
悲鳴が飛び交う中、今度は一気に気温が下がる。
そして。
「私のいない隙に、また毒を吐いたな、この女狐。」
何とも下品なお言葉とともに。
父さまがフッと母さまの隣に現れた。
そのまま母さまの腰を抱くと、「怖いわ!ルベルト!」とお祖父さまにしがみつくお祖母さまの方を向く。
「お前たち、特に女狐、お前には警告したはずだ・・・分からないなら狐にして狩場に放り出すぞ。」
「何よ!娘の婿のくせに!私を誰だと思っているの・・・!」
父さまの言葉にお祖母さまが反発する。
「止めなさい、アーデルハイト。」
お祖父さまが流石に厳しい声で止めたけれど。
「当主だった方、でしょう?」
静かな、でも、はっきりとした母さまの声が響いた。
ハッとして母さまを見ると。
家族には決して向けない厳しい視線で、お祖母さまを見据えていた。
「貴女は確かにバーベンベルク辺境伯家の当主だった。でも、それはもう二十年も前の話です。普段この屋敷で女主人としてふるまうのは構いません。帝都社交界のご友人方に見栄を張るのも多めに見ましょう。」
「それでも、現当主は私です。」
私が居る時は、あくまで私が主人です。わきまえて下さるように。父上もよろしいですね?
疑問形の形をとった慇懃な命令をして。
軽くうなずいたお祖父さまと、なんですって!と叫んだお祖母さまを一瞥すると、母さまは腰に回った父さまの手を軽くたたき、私に向かってにっこり微笑んだ。
「待たせたね。私たちの部屋へ、案内してくれるかい?ディー。」
舌打ちが聞こえたと思ったら、ルー兄さまがマクシミリアンさま?の手をべりっとはがしてくれた。そのまま、
「失礼」
呟くと同時に当身を入れる。
「グフッ」
崩れ落ちる体をサッと抱き留めると、ルー兄さまは、「父上」と声を掛け、イヤそうな父さまを促してさっさと転移してしまった。
「待って、何で・・・」
呼びかける私に、今度は母さまが「ディー」と小さく呼びかけた。
眼で、黙ってて、と制される。
後ろを振り返って、副官の騎士に「ご苦労。明日また来てくれ。」と声を掛けると、母さまはそのまま私の肩を抱くようにして執事の前を通り過ぎ、扉をくぐった。
エントランスにはこの屋敷に仕える使用人が勢ぞろいしていて、一斉に頭を下げてきた。
そっか、母さまが当主なんだものね。
感心して眺めていると、奥から人影が近づいてきた。
お祖父さま、お祖母さまだ。
執事やメイド頭と挨拶していた母さまも、すぐに気付いたみたい。
「父上、母上」
呼びかけながら近づくと、さあッと使用人達が下がる。
エントランスホールの真ん中で、母さまはバーベンベルク騎士団の正式な礼をした。
いつ見ても、凛々しくてステキだな。魔導師も良いけど騎士も良いよね。
私がうっとり見ていると。
「いつ見ても野暮ったい挨拶よね。」
信じられない言葉が聞こえてきた。
声の主は、、、お祖母さまだ。
シーンと静まるエントランスホール。
「アーデルハイド」
お祖父さまの窘める声が聞こえたけど、お祖母さまは全く悪びれない。「だってあなた、近衛騎士団の礼はもっと洗練されてるわよ」なんて言い返している。
茫然としていると、今度は沈黙を守る母さまをしげしげと見つめ、
「エレオノーレ。あなた、また日焼けしたわね。日にさらされない白い肌こそ貴婦人の証なのに、それでは平民のようだとまた陰口を言われてしまうわよ。」
やーね、私までお友達にからかわれちゃうわ、と不満そうに口を尖らせた。
ひどい!
なんでお祖母さまはこんなひどいことを実の娘である母さまに言うの!?何で母さまは黙ってるの?
沈黙に耐えかねて口を開こうとすると。
ブワッと金色の火花がエントランスホールを満たした。
「きゃああっ!」「なんだこれは!」
悲鳴が飛び交う中、今度は一気に気温が下がる。
そして。
「私のいない隙に、また毒を吐いたな、この女狐。」
何とも下品なお言葉とともに。
父さまがフッと母さまの隣に現れた。
そのまま母さまの腰を抱くと、「怖いわ!ルベルト!」とお祖父さまにしがみつくお祖母さまの方を向く。
「お前たち、特に女狐、お前には警告したはずだ・・・分からないなら狐にして狩場に放り出すぞ。」
「何よ!娘の婿のくせに!私を誰だと思っているの・・・!」
父さまの言葉にお祖母さまが反発する。
「止めなさい、アーデルハイト。」
お祖父さまが流石に厳しい声で止めたけれど。
「当主だった方、でしょう?」
静かな、でも、はっきりとした母さまの声が響いた。
ハッとして母さまを見ると。
家族には決して向けない厳しい視線で、お祖母さまを見据えていた。
「貴女は確かにバーベンベルク辺境伯家の当主だった。でも、それはもう二十年も前の話です。普段この屋敷で女主人としてふるまうのは構いません。帝都社交界のご友人方に見栄を張るのも多めに見ましょう。」
「それでも、現当主は私です。」
私が居る時は、あくまで私が主人です。わきまえて下さるように。父上もよろしいですね?
疑問形の形をとった慇懃な命令をして。
軽くうなずいたお祖父さまと、なんですって!と叫んだお祖母さまを一瞥すると、母さまは腰に回った父さまの手を軽くたたき、私に向かってにっこり微笑んだ。
「待たせたね。私たちの部屋へ、案内してくれるかい?ディー。」
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