帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

文字の大きさ
171 / 241
帝都のひと夏

何が無くても歩くことは出来るんだから。

しおりを挟む
「もう、兄さまったら、失礼だわ!きちんとお礼を言わないと。」
私がプンプンしながら言うと、兄さまもなぜかちょっとご機嫌斜めで言い返してくる。
「あいつは良いんだよ。それより、なんでローブから顔を出したの、ディー。せっかく隠したのに。」
「きちんと兄さまがお礼を言ってれば出しませんでした!」
フンッと反対方向を向くと、ふうって溜め息を吐かれる。
「そっか、ごめんね・・・でも、ディーの顔、なるべく人に見せたくないんだよ。出来ればこのまま屋敷に帰りたいくらいだ。」
茶会でも最低限の挨拶で帰ろう。分かってくれるよね、と言いつつ私の両手を握りしめる兄さま。
灰色の瞳は真剣だ。

「そんな・・・」
私は絶句する。
ディーって人に見せたくないような顔なの?いつも可愛いしか言わないフィン兄さまがこんな真面目な顔で言ってくるなんて!
やっぱり父さまや兄さまの『可愛い』は、家族のひいき目っていうものなの?
そう言えば、、、。
私は思い出す。この間ディーの姿で会ったオリヴィエ兄さまも私のことしかめっ面で見てなかった?
うう、どうしよう。私も帰りたくなっちゃったよ、、、。

私が涙目で兄さまを見上げたると、驚いたみたい。
「え?ディー?なんで泣いて「表宮の入り口です。魔導師団の馬車はここまでしか入れません。」
兄さまが何か言いかけたけど。
御者の声と共に馬車が止まり、扉が開かれた。

私は気を取り直してギュッと目をつぶり、出かけた涙を押し戻す。
帰りたくても帰れる訳じゃない。
取り敢えず遅刻せずに会場に付かなくちゃ、伯父さまにもルー兄さまにも他のみんなにも迷惑が掛かる。
今までマナーだって社交術だって頑張ってきた。
出来ることをきちんとしよう。
「分かったわ、兄さま。ご挨拶を済ませたらすぐに帰るから、今は会場に連れてってちょうだい。」
馬車から降りながら伝えると、兄さんは、うん、約束だよ、と言いながらにっこりした。
そんなに嬉しそうに笑わなくても、、、ううん、今はそれは考えない。
「ディーの足だとちょっと遠いな・・・ここから会場まで行ける馬車を捕まえないと。」
門を警護している近衛に確認しに行く兄さまに遅れないよう、私も付いていかなくちゃ。あ、顔を見られないよう、人が気付かなくなる魔術も忘れずに。

「一台も無い?」
「はい。今回の茶会に出席予定の方は全て表宮に入られたのを確認しております。そのため、用意された馬車は全て、式典会場と茶会の会場の輸送に使われております。」
兄さまは身分確認にやっぱりバーベンベルクの名を出してから、馬車の使用を求めたけれど。
表宮入り口の近衛兵に、ここには一台も無いと言われてしまった。
参ったな、と言いながらチラッと時間を確認する兄さま。
表情から察するに、結構まずいみたい。

一瞬。
ほんのちょっとだけ。
父さまを呼ぶことを考えたんだけど。
「・・・兄さま。私、走れるわ。道はご存じなんでしょ。取り敢えず行きましょう。」
「ディー、ここは親父に・・・」
「良いから。行きましょう!」
「あ、いや、ディー、そっちじゃない。」
私は兄さまの腕をつかむと、ズンズン歩き出した。

フィン兄さまは父さまと仲が悪い。
ううん。本当に悪いわけじゃないと思う。でも、いつも父さまにはつんつんして、言うことも聞かないし頼らない。
これは私の想像なんだけど。
同じ顔して、でも貴重と言われる黄金の瞳は継がなくて。
高い魔力を持って、でも父さまには及ばなくて。
そう言うの、色々思うところがあるんじゃないかなって、私は思ってる。男の子とお父さんの関係って、娘とお父さんとは違うものね。
まあ、兄さまに聞いたことは無いんだけど。
だから、今は。
自分のせいで私が遅れそうになって困ってる、て兄さまが思ってるだろう今は。
父さまには頼らず何とかしたいと思うの。
その為にはかかとのある靴を履こうと。
フリフリドレスにコルセットをしてようと。
ディーは頑張って走って間に合わないとね。

「ふうっ、やっとここまで来たわね。」
それなのに。
ほとんど小走りで式典会場の前の回廊まで来たのに。
「馬車が無い・・・」
私たち以外はもう会場に行ってしまったためか。
輸送馬車のいるはずの回廊の入り口には、馬車だけでなく、手配をしてくれる侍従までもいなかった。
式典会場の警備の近衛兵が、回廊の少し先にいるだけだ。

「・・・待ってても仕方ないわ。兄さま、行きましょう?」
私が息を整えつつ兄さまのそでを引っ張った時。

カーン、カーン。

茶会の始まる時刻の鐘が、遠くの鐘楼から響いてきた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

処理中です...