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帝都のひと夏
何が無くても歩くことは出来るんだから。
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「もう、兄さまったら、失礼だわ!きちんとお礼を言わないと。」
私がプンプンしながら言うと、兄さまもなぜかちょっとご機嫌斜めで言い返してくる。
「あいつは良いんだよ。それより、なんでローブから顔を出したの、ディー。せっかく隠したのに。」
「きちんと兄さまがお礼を言ってれば出しませんでした!」
フンッと反対方向を向くと、ふうって溜め息を吐かれる。
「そっか、ごめんね・・・でも、ディーの顔、なるべく人に見せたくないんだよ。出来ればこのまま屋敷に帰りたいくらいだ。」
茶会でも最低限の挨拶で帰ろう。分かってくれるよね、と言いつつ私の両手を握りしめる兄さま。
灰色の瞳は真剣だ。
「そんな・・・」
私は絶句する。
ディーって人に見せたくないような顔なの?いつも可愛いしか言わないフィン兄さまがこんな真面目な顔で言ってくるなんて!
やっぱり父さまや兄さまの『可愛い』は、家族のひいき目っていうものなの?
そう言えば、、、。
私は思い出す。この間ディーの姿で会ったオリヴィエ兄さまも私のことしかめっ面で見てなかった?
うう、どうしよう。私も帰りたくなっちゃったよ、、、。
私が涙目で兄さまを見上げたると、驚いたみたい。
「え?ディー?なんで泣いて「表宮の入り口です。魔導師団の馬車はここまでしか入れません。」
兄さまが何か言いかけたけど。
御者の声と共に馬車が止まり、扉が開かれた。
私は気を取り直してギュッと目をつぶり、出かけた涙を押し戻す。
帰りたくても帰れる訳じゃない。
取り敢えず遅刻せずに会場に付かなくちゃ、伯父さまにもルー兄さまにも他のみんなにも迷惑が掛かる。
今までマナーだって社交術だって頑張ってきた。
出来ることをきちんとしよう。
「分かったわ、兄さま。ご挨拶を済ませたらすぐに帰るから、今は会場に連れてってちょうだい。」
馬車から降りながら伝えると、兄さんは、うん、約束だよ、と言いながらにっこりした。
そんなに嬉しそうに笑わなくても、、、ううん、今はそれは考えない。
「ディーの足だとちょっと遠いな・・・ここから会場まで行ける馬車を捕まえないと。」
門を警護している近衛に確認しに行く兄さまに遅れないよう、私も付いていかなくちゃ。あ、顔を見られないよう、人が気付かなくなる魔術も忘れずに。
「一台も無い?」
「はい。今回の茶会に出席予定の方は全て表宮に入られたのを確認しております。そのため、用意された馬車は全て、式典会場と茶会の会場の輸送に使われております。」
兄さまは身分確認にやっぱりバーベンベルクの名を出してから、馬車の使用を求めたけれど。
表宮入り口の近衛兵に、ここには一台も無いと言われてしまった。
参ったな、と言いながらチラッと時間を確認する兄さま。
表情から察するに、結構まずいみたい。
一瞬。
ほんのちょっとだけ。
父さまを呼ぶことを考えたんだけど。
「・・・兄さま。私、走れるわ。道はご存じなんでしょ。取り敢えず行きましょう。」
「ディー、ここは親父に・・・」
「良いから。行きましょう!」
「あ、いや、ディー、そっちじゃない。」
私は兄さまの腕をつかむと、ズンズン歩き出した。
フィン兄さまは父さまと仲が悪い。
ううん。本当に悪いわけじゃないと思う。でも、いつも父さまにはつんつんして、言うことも聞かないし頼らない。
これは私の想像なんだけど。
同じ顔して、でも貴重と言われる黄金の瞳は継がなくて。
高い魔力を持って、でも父さまには及ばなくて。
そう言うの、色々思うところがあるんじゃないかなって、私は思ってる。男の子とお父さんの関係って、娘とお父さんとは違うものね。
まあ、兄さまに聞いたことは無いんだけど。
だから、今は。
自分のせいで私が遅れそうになって困ってる、て兄さまが思ってるだろう今は。
父さまには頼らず何とかしたいと思うの。
その為にはかかとのある靴を履こうと。
フリフリドレスにコルセットをしてようと。
ディーは頑張って走って間に合わないとね。
「ふうっ、やっとここまで来たわね。」
それなのに。
ほとんど小走りで式典会場の前の回廊まで来たのに。
「馬車が無い・・・」
私たち以外はもう会場に行ってしまったためか。
輸送馬車のいるはずの回廊の入り口には、馬車だけでなく、手配をしてくれる侍従までもいなかった。
式典会場の警備の近衛兵が、回廊の少し先にいるだけだ。
「・・・待ってても仕方ないわ。兄さま、行きましょう?」
私が息を整えつつ兄さまのそでを引っ張った時。
カーン、カーン。
茶会の始まる時刻の鐘が、遠くの鐘楼から響いてきた。
私がプンプンしながら言うと、兄さまもなぜかちょっとご機嫌斜めで言い返してくる。
「あいつは良いんだよ。それより、なんでローブから顔を出したの、ディー。せっかく隠したのに。」
「きちんと兄さまがお礼を言ってれば出しませんでした!」
フンッと反対方向を向くと、ふうって溜め息を吐かれる。
「そっか、ごめんね・・・でも、ディーの顔、なるべく人に見せたくないんだよ。出来ればこのまま屋敷に帰りたいくらいだ。」
茶会でも最低限の挨拶で帰ろう。分かってくれるよね、と言いつつ私の両手を握りしめる兄さま。
灰色の瞳は真剣だ。
「そんな・・・」
私は絶句する。
ディーって人に見せたくないような顔なの?いつも可愛いしか言わないフィン兄さまがこんな真面目な顔で言ってくるなんて!
やっぱり父さまや兄さまの『可愛い』は、家族のひいき目っていうものなの?
そう言えば、、、。
私は思い出す。この間ディーの姿で会ったオリヴィエ兄さまも私のことしかめっ面で見てなかった?
うう、どうしよう。私も帰りたくなっちゃったよ、、、。
私が涙目で兄さまを見上げたると、驚いたみたい。
「え?ディー?なんで泣いて「表宮の入り口です。魔導師団の馬車はここまでしか入れません。」
兄さまが何か言いかけたけど。
御者の声と共に馬車が止まり、扉が開かれた。
私は気を取り直してギュッと目をつぶり、出かけた涙を押し戻す。
帰りたくても帰れる訳じゃない。
取り敢えず遅刻せずに会場に付かなくちゃ、伯父さまにもルー兄さまにも他のみんなにも迷惑が掛かる。
今までマナーだって社交術だって頑張ってきた。
出来ることをきちんとしよう。
「分かったわ、兄さま。ご挨拶を済ませたらすぐに帰るから、今は会場に連れてってちょうだい。」
馬車から降りながら伝えると、兄さんは、うん、約束だよ、と言いながらにっこりした。
そんなに嬉しそうに笑わなくても、、、ううん、今はそれは考えない。
「ディーの足だとちょっと遠いな・・・ここから会場まで行ける馬車を捕まえないと。」
門を警護している近衛に確認しに行く兄さまに遅れないよう、私も付いていかなくちゃ。あ、顔を見られないよう、人が気付かなくなる魔術も忘れずに。
「一台も無い?」
「はい。今回の茶会に出席予定の方は全て表宮に入られたのを確認しております。そのため、用意された馬車は全て、式典会場と茶会の会場の輸送に使われております。」
兄さまは身分確認にやっぱりバーベンベルクの名を出してから、馬車の使用を求めたけれど。
表宮入り口の近衛兵に、ここには一台も無いと言われてしまった。
参ったな、と言いながらチラッと時間を確認する兄さま。
表情から察するに、結構まずいみたい。
一瞬。
ほんのちょっとだけ。
父さまを呼ぶことを考えたんだけど。
「・・・兄さま。私、走れるわ。道はご存じなんでしょ。取り敢えず行きましょう。」
「ディー、ここは親父に・・・」
「良いから。行きましょう!」
「あ、いや、ディー、そっちじゃない。」
私は兄さまの腕をつかむと、ズンズン歩き出した。
フィン兄さまは父さまと仲が悪い。
ううん。本当に悪いわけじゃないと思う。でも、いつも父さまにはつんつんして、言うことも聞かないし頼らない。
これは私の想像なんだけど。
同じ顔して、でも貴重と言われる黄金の瞳は継がなくて。
高い魔力を持って、でも父さまには及ばなくて。
そう言うの、色々思うところがあるんじゃないかなって、私は思ってる。男の子とお父さんの関係って、娘とお父さんとは違うものね。
まあ、兄さまに聞いたことは無いんだけど。
だから、今は。
自分のせいで私が遅れそうになって困ってる、て兄さまが思ってるだろう今は。
父さまには頼らず何とかしたいと思うの。
その為にはかかとのある靴を履こうと。
フリフリドレスにコルセットをしてようと。
ディーは頑張って走って間に合わないとね。
「ふうっ、やっとここまで来たわね。」
それなのに。
ほとんど小走りで式典会場の前の回廊まで来たのに。
「馬車が無い・・・」
私たち以外はもう会場に行ってしまったためか。
輸送馬車のいるはずの回廊の入り口には、馬車だけでなく、手配をしてくれる侍従までもいなかった。
式典会場の警備の近衛兵が、回廊の少し先にいるだけだ。
「・・・待ってても仕方ないわ。兄さま、行きましょう?」
私が息を整えつつ兄さまのそでを引っ張った時。
カーン、カーン。
茶会の始まる時刻の鐘が、遠くの鐘楼から響いてきた。
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