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帝都のひと夏
ディアナ嬢本人に会ったⅡ(ジキスムント)
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陛下が挨拶をされたから、次は高位貴族が直接挨拶に伺う番だ。
ロイス侯爵家は侯爵家の筆頭。公爵家の次だから、そろそろ並んでおかないと。
暗黙の了解で、父母と連れ立って陛下の席に近付いていくと、コンラート一門が連れ立って歩いていくのが見えた。
今日はコンラート公爵家とバーベンベルク辺境伯家が最初か。
そして・・・。
あの中で、宰相閣下がエスコートする白いドレスの女の子。あの子こそ、彼女に違いない。
早く挨拶がしたい。話したい。
今日は、保護者と一緒にただの挨拶しか出来ないだろうけれど。紹介さえ受ければ直接話しかけられる。誘うことも出来る。
始めは、子供同士で話しても、気恥ずかしさが先に立つだろうけれど。
でも。
きっとすぐに打ち解けて、快活なおしゃべりや、屈託のない笑みを向けてくれるに違いない。
手合わせしたいなんて言われたら、どうしよう、、、令嬢に剣が向けられるかな、、、。
そんな、浮き足だった気持ちでいたからいけなかったのかもしれない。
バーベンベルク辺境伯家のご令嬢と挨拶を交わした殿下が、はっきりと周りに分かるように、この令嬢は自分の気に入りだ、と示したのだ。
サーッと血の気が引くのが分かった。
殿下が。お気に召されたご令嬢。
儀礼以上の関係を持つことを牽制されたと言う事だ。
殿下?なんでです?
俺が真っ青になっていると。
父が、、、ロイス侯爵が溜め息をついた。
「殿下がご興味を持たれた以上、お前の話は無くなったと言うことだ・・・残念だったな。」
父には先日、彼女に交際を申込みたいと、出来れば婚約をと話してあった。
「そんなっ父上!だって私は、彼女の祖父である前辺境伯から・・・」
「それでもだ。我々にとって、皇家の意向は何よりも優先する。殿下の意向即ち陛下の意向だ・・・残念だが、諦めなさい。その代わり、親戚付き合いが出来るよう、挨拶してみよう。」
「そんな・・・ディアナ嬢・・・」
俺は駆け寄りたいのを堪えて、殿下に手を取られる令嬢を見つめた。
気が付くと殿下の前に立っていた。順番が来たようだ。
頭は回らないが、習慣となった挨拶は滞り無く進んで行く。
「顔色悪いな、どうした?」
貴方のせいです!なんで?どうして!
言いたいけど言えない俺は、なんとか口を開く。
「いえ、少しショックな事があって。」
「お前もか!?俺もだ・・・」
見ると、ご機嫌でもおかしく無いはずの殿下も、心なしか顔色が悪い。
「?殿下?」
「まあ、いい。」
殿下はサッと顔を寄せてきた。
「お前、挨拶終わったら、いつもの場所へ来いよ。必ずだ、良いな?」
いつもの、、、?聞き返す間も無く殿下は離れて。
俺は次の家に押し出されるように、殿下の前を後にした。
俯いたまま、父母の後ろを歩いて行くと不図立ち止まる。
顔を上げると、母が貴婦人達に誘われて去って行くところだった。
「お前の母上も気忙しいな。」
苦笑しながら父が見送っている。
確かに母上は華やかな社交好きだ。
最近はいつにも増して屋敷でお茶会やら何とかの会やらを開いているが、少しでも関心を見せると無理やり参加させられるので、なるべく関わらないようにしている。
それは父も同じの筈だが、、、。
「・・・少し、付き合う方が変わったか?」
父のこぼした小さな呟きは、俺の耳を素通りして行った。
「さてと。行くか?」
俺の凹みぶりを見かねたのだろう。
父は直ぐに宰相閣下達を見つけると、行くぞ、と短く言って、近付いた。
気持ちの整理は付いてないが、取り敢えず従って歩く。
いくらも経たずに、俺は彼女の前に立っていた。
可愛い、いや、美しい。
以前見た肖像画は、あまりに愛らしいので誇張されてるのかな、と思ったりもしていたが。
実物はそれ以上だった。
肩までの艶々な髪も、俺のような赤毛では無く、濃い紅と金が混ざってキラキラしている。
やや俯いているので、睫毛の長さが際立つ顔は、小さく形良く、乳の色をしている。
血色の良い頬に通った鼻筋、その下の小さな口は、今は固く閉じられて、ジッと自分の番を待っている。
すんなり伸びた細い首の下はドレスで隠され、綺麗な骨組みの手やほっそりした足首くらいしか見えないけれど、姿もとても美しい。
あの素早い、しなやかな動きがこの体から生み出されるなんて、目の前で見ていなければ信じられないくらいだ。
彼女の兄と言う、こちらもやたらと華やかな美人顔の少年を紹介され、握手を交わしながらも、俺の全神経は彼女に向いていた。
だから、彼女が涼しい声でディアナと名乗り、顔を上げて微笑んで目を合わせてくれた時は、食い入るように見つめてしまった。
待ち望んでいたこの瞬間。
作り物めいていた人形のような顔が、微笑んだ瞬間、明るく輝いて、その瞳、、、本当に溶けた黄金の色だった、、、は親しみを込めて真っ直ぐ俺を見ている。
怒ってない、微笑んでいる、、、嬉しい、やっと君に会えた、、、。
勢い込んで口を開きかけ、ハッと気付く。
彼女は殿下の、、、俺は、ただの再従兄、、、。
苦しい、苦しい、苦しい!
「こちらこそ、再従妹に会えてうれしい。ディアナ嬢・・・失礼!」
俺は俯き加減に答えると、足早にその場を去った。
ロイス侯爵家は侯爵家の筆頭。公爵家の次だから、そろそろ並んでおかないと。
暗黙の了解で、父母と連れ立って陛下の席に近付いていくと、コンラート一門が連れ立って歩いていくのが見えた。
今日はコンラート公爵家とバーベンベルク辺境伯家が最初か。
そして・・・。
あの中で、宰相閣下がエスコートする白いドレスの女の子。あの子こそ、彼女に違いない。
早く挨拶がしたい。話したい。
今日は、保護者と一緒にただの挨拶しか出来ないだろうけれど。紹介さえ受ければ直接話しかけられる。誘うことも出来る。
始めは、子供同士で話しても、気恥ずかしさが先に立つだろうけれど。
でも。
きっとすぐに打ち解けて、快活なおしゃべりや、屈託のない笑みを向けてくれるに違いない。
手合わせしたいなんて言われたら、どうしよう、、、令嬢に剣が向けられるかな、、、。
そんな、浮き足だった気持ちでいたからいけなかったのかもしれない。
バーベンベルク辺境伯家のご令嬢と挨拶を交わした殿下が、はっきりと周りに分かるように、この令嬢は自分の気に入りだ、と示したのだ。
サーッと血の気が引くのが分かった。
殿下が。お気に召されたご令嬢。
儀礼以上の関係を持つことを牽制されたと言う事だ。
殿下?なんでです?
俺が真っ青になっていると。
父が、、、ロイス侯爵が溜め息をついた。
「殿下がご興味を持たれた以上、お前の話は無くなったと言うことだ・・・残念だったな。」
父には先日、彼女に交際を申込みたいと、出来れば婚約をと話してあった。
「そんなっ父上!だって私は、彼女の祖父である前辺境伯から・・・」
「それでもだ。我々にとって、皇家の意向は何よりも優先する。殿下の意向即ち陛下の意向だ・・・残念だが、諦めなさい。その代わり、親戚付き合いが出来るよう、挨拶してみよう。」
「そんな・・・ディアナ嬢・・・」
俺は駆け寄りたいのを堪えて、殿下に手を取られる令嬢を見つめた。
気が付くと殿下の前に立っていた。順番が来たようだ。
頭は回らないが、習慣となった挨拶は滞り無く進んで行く。
「顔色悪いな、どうした?」
貴方のせいです!なんで?どうして!
言いたいけど言えない俺は、なんとか口を開く。
「いえ、少しショックな事があって。」
「お前もか!?俺もだ・・・」
見ると、ご機嫌でもおかしく無いはずの殿下も、心なしか顔色が悪い。
「?殿下?」
「まあ、いい。」
殿下はサッと顔を寄せてきた。
「お前、挨拶終わったら、いつもの場所へ来いよ。必ずだ、良いな?」
いつもの、、、?聞き返す間も無く殿下は離れて。
俺は次の家に押し出されるように、殿下の前を後にした。
俯いたまま、父母の後ろを歩いて行くと不図立ち止まる。
顔を上げると、母が貴婦人達に誘われて去って行くところだった。
「お前の母上も気忙しいな。」
苦笑しながら父が見送っている。
確かに母上は華やかな社交好きだ。
最近はいつにも増して屋敷でお茶会やら何とかの会やらを開いているが、少しでも関心を見せると無理やり参加させられるので、なるべく関わらないようにしている。
それは父も同じの筈だが、、、。
「・・・少し、付き合う方が変わったか?」
父のこぼした小さな呟きは、俺の耳を素通りして行った。
「さてと。行くか?」
俺の凹みぶりを見かねたのだろう。
父は直ぐに宰相閣下達を見つけると、行くぞ、と短く言って、近付いた。
気持ちの整理は付いてないが、取り敢えず従って歩く。
いくらも経たずに、俺は彼女の前に立っていた。
可愛い、いや、美しい。
以前見た肖像画は、あまりに愛らしいので誇張されてるのかな、と思ったりもしていたが。
実物はそれ以上だった。
肩までの艶々な髪も、俺のような赤毛では無く、濃い紅と金が混ざってキラキラしている。
やや俯いているので、睫毛の長さが際立つ顔は、小さく形良く、乳の色をしている。
血色の良い頬に通った鼻筋、その下の小さな口は、今は固く閉じられて、ジッと自分の番を待っている。
すんなり伸びた細い首の下はドレスで隠され、綺麗な骨組みの手やほっそりした足首くらいしか見えないけれど、姿もとても美しい。
あの素早い、しなやかな動きがこの体から生み出されるなんて、目の前で見ていなければ信じられないくらいだ。
彼女の兄と言う、こちらもやたらと華やかな美人顔の少年を紹介され、握手を交わしながらも、俺の全神経は彼女に向いていた。
だから、彼女が涼しい声でディアナと名乗り、顔を上げて微笑んで目を合わせてくれた時は、食い入るように見つめてしまった。
待ち望んでいたこの瞬間。
作り物めいていた人形のような顔が、微笑んだ瞬間、明るく輝いて、その瞳、、、本当に溶けた黄金の色だった、、、は親しみを込めて真っ直ぐ俺を見ている。
怒ってない、微笑んでいる、、、嬉しい、やっと君に会えた、、、。
勢い込んで口を開きかけ、ハッと気付く。
彼女は殿下の、、、俺は、ただの再従兄、、、。
苦しい、苦しい、苦しい!
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