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帝都のひと夏
兄妹パジャマパーティⅦ帝都の夜の飲み屋にて
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そのお店は、真夜中と言うのに結構な賑わいだった。
手慣れた様子でさっさと奥に進んでいくオスカー兄上に手を引っ張られ、周りを見る余裕もなくついて行った私は、気付くと奥のテーブル席にいた。フィン兄さまもルー兄さまも当たり前のようにテーブルの向こうに座ってる。
「早かったね。ディー、さては兄上は何もディーに買ってくれなかったな。」
「そういえば・・・。あ、でも兄上は花束を買ってらしたわ?」
「あ~。それは別件だと思うよ。でも大丈夫、僕が買ったからね。」
ニコニコしながら隣に座らせた私の手を広げさせて、フィン兄さまは小さな包みをぽん、と置く。促されて開けて見ると可愛いリボンで出来た髪紐だった。
「ディーの髪もだんだん伸びて来るから、括れると便利でしょう?これから帝都でちょっとお忍びでって時に使ってね?」
「ありがとう!兄さま!」
「なんだ?フィンはあの短期間でディーに買い物までしたのか?流石だな・・・それより、いいか?」
向かいの席に落ち着いたオスカー兄上が私の掌を覗き込むと、そのままフィン兄さまに話しかけた。
「仕方ないですね・・・ルー、ディー、いいかい?これから僕と兄上は術式を解くけど、君達はそのまま黙っていてね。ちょっとやり取りして一杯飲んだらすぐ出るから。」
「「はい。」」
私もルー兄さまも異存は無い。こくりと頷くと、二人はおもむろにフードを被った。
ふっと空気が変わる。
途端に周囲の席がザワっとした。
「・・・あれ?魔導師なんかいたか?」
「さあな?」
「俺らも騒いでたからな~。」
賑やかなお店だから不審がられてはいないけど、何人かはこっちをチラッと見てる。大丈夫かな?私たちもフードかぶる?ルー兄さまと目で相談していると、向こうから明るい声がした。
「あら、そちら、気付かずにごめんなさい。今行くわね?」
テーブルを回って料理や飲み物を配りながら笑顔で近づいて来たのは、金茶の髪の若い女の人だった。
「お久しぶり。いつものでいいかしら?」
「ああ、あと、連れに、さっぱりした果汁を二つ追加してくれ。それと・・・」
白いエプロンのポケットからメモ紙を出す彼女に、オスカー兄上はローブからおもむろに花束を取り出した。
「これを。急にすまない。」
「「!??」」
突然のことに驚く私とルー兄さまをよそに、女の人は「もう、仕方ない人ね」などと言いながら、当然のように花束を受け取り、ちょっと匂いをかいだ。
「ちょっと待ってて。すぐ持って来るわ。」
そう言いながらウィンクをしてさっさと調理場へ消えてしまった女の人を見送りながら、オスカー兄上は、そしてフィン兄さままでも平然としている。
「「・・・」」
私とルー兄さまは必死で目配せし合った。
どう言うこと?あのお姉さんはもしかして次期バーベンベルク辺境伯夫人なの?
思わず二人して兄上たちを見つめると、、、。堪えきれないようにフィン兄さまが笑い出した。
「あはは!二人が何を考えてるのか分かるけど、そんなんじゃないよ!」
静かだった魔導師たちが花束を出したり、笑い出したりしたのでチラチラ見られている。
兄さまは首を竦めると、心話で話しかけてきた。
『ここは宰相閣下直属で、オリヴィエが管理している情報屋でね。ちょくちょく出入りしてるんだ。花束はまあ、この辺りでは飲み屋でお気に入りの子が出来ると挨拶代わりに渡す習慣があって、、、僕らはあの中に依頼事項のメモを入れてるんだよ。キザなオリヴィエらしいやり口だよね~。』
フィン兄さまは三人同時に話しかけたみたい。私とルー兄さまが同じように驚き、オスカー兄上は苦笑いをした。
「最近は夜の散歩も仕事がらみと言ったろう?我らが伯父上と従兄殿は、結構人使いが荒いんだ。」
「・・・驚かせないで下さい。あの方を姉上と呼ぶことになるのかと思いました。」
抑えた声でルー兄さまが文句を言ってるけど、私も同感よ。
「ごめんね~。でもびっくりするの、楽しいでしょう?」
ニコニコしながら悪気のかけらもないような顔で、フィン兄さまがルー兄さまを宥めていると。
「お待ち遠さま。いつものと、カシスベースのベリージュースを二つね。」
何ごとも無かったかのようにさっきの女の人がエールのジョッキと果汁のグラスを持って来てくれた。
小銭のやりとりをしてさっさと去っていく。
あれ?話さないの??
そう思って見ていると。
『さっきの小銭のやり取りで、メモを貰ってるんだ。さ、飲んだらいこうか』
再びフィン兄さまの心話が聞こえ。
ふに落ちないままベリージュースを飲んで、夜の飲み屋体験は終わってしまった。
あ、ベリージュースは美味しかったです。オストマルク帝国の庶民の夏の味なんだって。
手慣れた様子でさっさと奥に進んでいくオスカー兄上に手を引っ張られ、周りを見る余裕もなくついて行った私は、気付くと奥のテーブル席にいた。フィン兄さまもルー兄さまも当たり前のようにテーブルの向こうに座ってる。
「早かったね。ディー、さては兄上は何もディーに買ってくれなかったな。」
「そういえば・・・。あ、でも兄上は花束を買ってらしたわ?」
「あ~。それは別件だと思うよ。でも大丈夫、僕が買ったからね。」
ニコニコしながら隣に座らせた私の手を広げさせて、フィン兄さまは小さな包みをぽん、と置く。促されて開けて見ると可愛いリボンで出来た髪紐だった。
「ディーの髪もだんだん伸びて来るから、括れると便利でしょう?これから帝都でちょっとお忍びでって時に使ってね?」
「ありがとう!兄さま!」
「なんだ?フィンはあの短期間でディーに買い物までしたのか?流石だな・・・それより、いいか?」
向かいの席に落ち着いたオスカー兄上が私の掌を覗き込むと、そのままフィン兄さまに話しかけた。
「仕方ないですね・・・ルー、ディー、いいかい?これから僕と兄上は術式を解くけど、君達はそのまま黙っていてね。ちょっとやり取りして一杯飲んだらすぐ出るから。」
「「はい。」」
私もルー兄さまも異存は無い。こくりと頷くと、二人はおもむろにフードを被った。
ふっと空気が変わる。
途端に周囲の席がザワっとした。
「・・・あれ?魔導師なんかいたか?」
「さあな?」
「俺らも騒いでたからな~。」
賑やかなお店だから不審がられてはいないけど、何人かはこっちをチラッと見てる。大丈夫かな?私たちもフードかぶる?ルー兄さまと目で相談していると、向こうから明るい声がした。
「あら、そちら、気付かずにごめんなさい。今行くわね?」
テーブルを回って料理や飲み物を配りながら笑顔で近づいて来たのは、金茶の髪の若い女の人だった。
「お久しぶり。いつものでいいかしら?」
「ああ、あと、連れに、さっぱりした果汁を二つ追加してくれ。それと・・・」
白いエプロンのポケットからメモ紙を出す彼女に、オスカー兄上はローブからおもむろに花束を取り出した。
「これを。急にすまない。」
「「!??」」
突然のことに驚く私とルー兄さまをよそに、女の人は「もう、仕方ない人ね」などと言いながら、当然のように花束を受け取り、ちょっと匂いをかいだ。
「ちょっと待ってて。すぐ持って来るわ。」
そう言いながらウィンクをしてさっさと調理場へ消えてしまった女の人を見送りながら、オスカー兄上は、そしてフィン兄さままでも平然としている。
「「・・・」」
私とルー兄さまは必死で目配せし合った。
どう言うこと?あのお姉さんはもしかして次期バーベンベルク辺境伯夫人なの?
思わず二人して兄上たちを見つめると、、、。堪えきれないようにフィン兄さまが笑い出した。
「あはは!二人が何を考えてるのか分かるけど、そんなんじゃないよ!」
静かだった魔導師たちが花束を出したり、笑い出したりしたのでチラチラ見られている。
兄さまは首を竦めると、心話で話しかけてきた。
『ここは宰相閣下直属で、オリヴィエが管理している情報屋でね。ちょくちょく出入りしてるんだ。花束はまあ、この辺りでは飲み屋でお気に入りの子が出来ると挨拶代わりに渡す習慣があって、、、僕らはあの中に依頼事項のメモを入れてるんだよ。キザなオリヴィエらしいやり口だよね~。』
フィン兄さまは三人同時に話しかけたみたい。私とルー兄さまが同じように驚き、オスカー兄上は苦笑いをした。
「最近は夜の散歩も仕事がらみと言ったろう?我らが伯父上と従兄殿は、結構人使いが荒いんだ。」
「・・・驚かせないで下さい。あの方を姉上と呼ぶことになるのかと思いました。」
抑えた声でルー兄さまが文句を言ってるけど、私も同感よ。
「ごめんね~。でもびっくりするの、楽しいでしょう?」
ニコニコしながら悪気のかけらもないような顔で、フィン兄さまがルー兄さまを宥めていると。
「お待ち遠さま。いつものと、カシスベースのベリージュースを二つね。」
何ごとも無かったかのようにさっきの女の人がエールのジョッキと果汁のグラスを持って来てくれた。
小銭のやりとりをしてさっさと去っていく。
あれ?話さないの??
そう思って見ていると。
『さっきの小銭のやり取りで、メモを貰ってるんだ。さ、飲んだらいこうか』
再びフィン兄さまの心話が聞こえ。
ふに落ちないままベリージュースを飲んで、夜の飲み屋体験は終わってしまった。
あ、ベリージュースは美味しかったです。オストマルク帝国の庶民の夏の味なんだって。
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