帝国最強(最凶)の(ヤンデレ)魔導師は私の父さまです

波月玲音

文字の大きさ
215 / 241
帝都のひと夏

兄妹パジャマパーティーⅨ帝都の夜の物思い

しおりを挟む
結局、私たちはそのまま兄さまの部屋に戻り、すぐに解散した。
今、私は自分の部屋のベッドでシーツにくるまって天蓋をぼーっと見ながら、長かった一日をぼんやり思い返している。

オスカー兄上の任命式を見たのが今朝なんて信じられない。
あの後、フィン兄さまと庭園を散歩してステファンさんを見かけ、お茶会へ行こうとしてうっかり魔導師団まで飛ばされて走り、控え室で一悶着あり。
お茶会ではたくさんの人に会って瞳をじろじろ見られた上、フェリクス殿下には恥ずかしい挨拶攻撃をされるわ、ジキスムント君は機嫌が悪いわ、新任の騎士さま方にはお酒を飲まされちゃうわ。
女の子たちを見かけても声もかけられなかったし、ステファンさんに一方的に借りを作られちゃうし。
殿下の突然なお誘いも結局参加した上、婚約なんて言う衝撃的な話は聞かされるし、近衛騎士さまはちょっと怖かったし、控え室のステファンさんは謎だったし、カレンブルクの伯父さまは怖い上に謎だったし。
「何が起こってるんだろうな・・・」
あの時。
カレンブルク侯のお屋敷から出て来る人たちの行き先を確認しよう、と言ったんだけど、聞いて貰えなかったの。

「ここからはお散歩じゃなくなっちゃうから、ルーとディーは部屋に戻ろう、ね。」
「だって気になるわ・・・。」
私がぷうっと頬を膨らませると、フィン兄さまがすかさず突いてから、下を指差した。
「ほら、お迎えが来てる。残念だけど、もう時間切れなんだ。」
釣られて下を見ると、バーベンベルク邸の屋根に、大鴉が一羽佇んでいた。
「あれは父さまの!」
「うん。実はね、そもそも、父上からさっき急に依頼があって、あの店に行ったんだ。君たちを連れて行くのは嫌がっていたけど、まあ、そこはせっかく兄妹全員が揃ったんだし強行したけどね。」
どうやら夜空の散歩はついでだったらしい。
「色々状況が動いているから、これから僕たちもバタバタしそうなんだ。せっかく兄妹パジャマパーティだったのに悪いんだけど・・・」
「いいんです、兄上、兄さま。ディー、俺たちはもう行こう?」
なおも言い募ろうとすると、ルー兄さまに手を掴まれた。そのまま連れて行かれそうになる。うう、仕方ない。
「分かったわ、兄さま。でも、後からきっと教えてね?」
カレンブルク邸に招かれた時に何も知らないのはちょっと怖い。
そう言うと、オスカー兄上が約束してくれた。
「君達はカレンブルク邸に招待されてるからな・・・分かった。父上と話すよ。」
言いながらみんなで一旦フィン兄さまのバルコニーまで降りて行く。
「遅くなっちゃったけど、ゆっくり休んでね。」
優しいお休みのキスの後、兄上たちは再び夜空に戻り、大鴉と一緒に何処かへ行ってしまった。
ちょっと寂しい。でも。
「さ、戻るぞ。」
いつもなら一人でさっさと行動するルー兄さまが、ローブを脱いでソファに置きながら声を掛けてくれたから。
「待って!」
慌てて私もローブを脱いで後を追う。
私の部屋の前まで黙って手を繋いでくれたルー兄さまは、いつものようにやや素っ気ないお休みのキスの後、
「お前の社交には俺がついて行くって言ってるだろう?あんまり心配するな。」
そう言うと、振り返りもせず自分の部屋に戻って行ってしまった。

まだ慣れない街屋敷のベッドに一人でいると、大変だったけど楽しかった筈なのに、何だか哀しくなって来る。
ほんとは、今日はジキスムント君とディーとして知り合って仲良くなるはずだったんだけどな。
それに、どうせ殿下と話すなら、婚約の話しじゃなくて、主催しているお茶会に招待している女の子を紹介してもらいたかったな。
そしたら、その子たちと頑張って話して、仲良くなったりして。バーベンベルクに戻っても、手紙のやり取りをしたりして。
なのに。
実際の私ときたら。
ジキスムント君には避けられちゃったし、女の子とは挨拶しか出来なかったし。おまけに、変な隣国の殿下や、変な伯父さまに絡まれて。
だんだん眠くなってきた頭で、ふわふわ考える。
しかも。
「婚約って、言われてもね・・・」
殿下の話を聞いた時は、全く実感が無かった。でも、真面目なルー兄さまに言われると、ちょっと気になって来る。
ただ、ね、、、。あのぶっきらぼうでプライドの高い殿下が、ジキスムント君と会わせてやるって言ってる殿下が、私に好意があるとは思えないんだよね、、、。
大体、婚約のこの字も聞いてないんだけど、私は。
「明日母さまに訊ねたら答えてくれるかな・・・?」
そう思ったのを最後に、私は眠りの中に入っていった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...