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帝都のひと夏
兄妹パジャマパーティーⅨ帝都の夜の物思い
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結局、私たちはそのまま兄さまの部屋に戻り、すぐに解散した。
今、私は自分の部屋のベッドでシーツにくるまって天蓋をぼーっと見ながら、長かった一日をぼんやり思い返している。
オスカー兄上の任命式を見たのが今朝なんて信じられない。
あの後、フィン兄さまと庭園を散歩してステファンさんを見かけ、お茶会へ行こうとしてうっかり魔導師団まで飛ばされて走り、控え室で一悶着あり。
お茶会ではたくさんの人に会って瞳をじろじろ見られた上、フェリクス殿下には恥ずかしい挨拶攻撃をされるわ、ジキスムント君は機嫌が悪いわ、新任の騎士さま方にはお酒を飲まされちゃうわ。
女の子たちを見かけても声もかけられなかったし、ステファンさんに一方的に借りを作られちゃうし。
殿下の突然なお誘いも結局参加した上、婚約なんて言う衝撃的な話は聞かされるし、近衛騎士さまはちょっと怖かったし、控え室のステファンさんは謎だったし、カレンブルクの伯父さまは怖い上に謎だったし。
「何が起こってるんだろうな・・・」
あの時。
カレンブルク侯のお屋敷から出て来る人たちの行き先を確認しよう、と言ったんだけど、聞いて貰えなかったの。
「ここからはお散歩じゃなくなっちゃうから、ルーとディーは部屋に戻ろう、ね。」
「だって気になるわ・・・。」
私がぷうっと頬を膨らませると、フィン兄さまがすかさず突いてから、下を指差した。
「ほら、お迎えが来てる。残念だけど、もう時間切れなんだ。」
釣られて下を見ると、バーベンベルク邸の屋根に、大鴉が一羽佇んでいた。
「あれは父さまの!」
「うん。実はね、そもそも、父上からさっき急に依頼があって、あの店に行ったんだ。君たちを連れて行くのは嫌がっていたけど、まあ、そこはせっかく兄妹全員が揃ったんだし強行したけどね。」
どうやら夜空の散歩はついでだったらしい。
「色々状況が動いているから、これから僕たちもバタバタしそうなんだ。せっかく兄妹パジャマパーティだったのに悪いんだけど・・・」
「いいんです、兄上、兄さま。ディー、俺たちはもう行こう?」
なおも言い募ろうとすると、ルー兄さまに手を掴まれた。そのまま連れて行かれそうになる。うう、仕方ない。
「分かったわ、兄さま。でも、後からきっと教えてね?」
カレンブルク邸に招かれた時に何も知らないのはちょっと怖い。
そう言うと、オスカー兄上が約束してくれた。
「君達はカレンブルク邸に招待されてるからな・・・分かった。父上と話すよ。」
言いながらみんなで一旦フィン兄さまのバルコニーまで降りて行く。
「遅くなっちゃったけど、ゆっくり休んでね。」
優しいお休みのキスの後、兄上たちは再び夜空に戻り、大鴉と一緒に何処かへ行ってしまった。
ちょっと寂しい。でも。
「さ、戻るぞ。」
いつもなら一人でさっさと行動するルー兄さまが、ローブを脱いでソファに置きながら声を掛けてくれたから。
「待って!」
慌てて私もローブを脱いで後を追う。
私の部屋の前まで黙って手を繋いでくれたルー兄さまは、いつものようにやや素っ気ないお休みのキスの後、
「お前の社交には俺がついて行くって言ってるだろう?あんまり心配するな。」
そう言うと、振り返りもせず自分の部屋に戻って行ってしまった。
まだ慣れない街屋敷のベッドに一人でいると、大変だったけど楽しかった筈なのに、何だか哀しくなって来る。
ほんとは、今日はジキスムント君とディーとして知り合って仲良くなるはずだったんだけどな。
それに、どうせ殿下と話すなら、婚約の話しじゃなくて、主催しているお茶会に招待している女の子を紹介してもらいたかったな。
そしたら、その子たちと頑張って話して、仲良くなったりして。バーベンベルクに戻っても、手紙のやり取りをしたりして。
なのに。
実際の私ときたら。
ジキスムント君には避けられちゃったし、女の子とは挨拶しか出来なかったし。おまけに、変な隣国の殿下や、変な伯父さまに絡まれて。
だんだん眠くなってきた頭で、ふわふわ考える。
しかも。
「婚約って、言われてもね・・・」
殿下の話を聞いた時は、全く実感が無かった。でも、真面目なルー兄さまに言われると、ちょっと気になって来る。
ただ、ね、、、。あのぶっきらぼうでプライドの高い殿下が、ジキスムント君と会わせてやるって言ってる殿下が、私に好意があるとは思えないんだよね、、、。
大体、婚約のこの字も聞いてないんだけど、私は。
「明日母さまに訊ねたら答えてくれるかな・・・?」
そう思ったのを最後に、私は眠りの中に入っていった。
今、私は自分の部屋のベッドでシーツにくるまって天蓋をぼーっと見ながら、長かった一日をぼんやり思い返している。
オスカー兄上の任命式を見たのが今朝なんて信じられない。
あの後、フィン兄さまと庭園を散歩してステファンさんを見かけ、お茶会へ行こうとしてうっかり魔導師団まで飛ばされて走り、控え室で一悶着あり。
お茶会ではたくさんの人に会って瞳をじろじろ見られた上、フェリクス殿下には恥ずかしい挨拶攻撃をされるわ、ジキスムント君は機嫌が悪いわ、新任の騎士さま方にはお酒を飲まされちゃうわ。
女の子たちを見かけても声もかけられなかったし、ステファンさんに一方的に借りを作られちゃうし。
殿下の突然なお誘いも結局参加した上、婚約なんて言う衝撃的な話は聞かされるし、近衛騎士さまはちょっと怖かったし、控え室のステファンさんは謎だったし、カレンブルクの伯父さまは怖い上に謎だったし。
「何が起こってるんだろうな・・・」
あの時。
カレンブルク侯のお屋敷から出て来る人たちの行き先を確認しよう、と言ったんだけど、聞いて貰えなかったの。
「ここからはお散歩じゃなくなっちゃうから、ルーとディーは部屋に戻ろう、ね。」
「だって気になるわ・・・。」
私がぷうっと頬を膨らませると、フィン兄さまがすかさず突いてから、下を指差した。
「ほら、お迎えが来てる。残念だけど、もう時間切れなんだ。」
釣られて下を見ると、バーベンベルク邸の屋根に、大鴉が一羽佇んでいた。
「あれは父さまの!」
「うん。実はね、そもそも、父上からさっき急に依頼があって、あの店に行ったんだ。君たちを連れて行くのは嫌がっていたけど、まあ、そこはせっかく兄妹全員が揃ったんだし強行したけどね。」
どうやら夜空の散歩はついでだったらしい。
「色々状況が動いているから、これから僕たちもバタバタしそうなんだ。せっかく兄妹パジャマパーティだったのに悪いんだけど・・・」
「いいんです、兄上、兄さま。ディー、俺たちはもう行こう?」
なおも言い募ろうとすると、ルー兄さまに手を掴まれた。そのまま連れて行かれそうになる。うう、仕方ない。
「分かったわ、兄さま。でも、後からきっと教えてね?」
カレンブルク邸に招かれた時に何も知らないのはちょっと怖い。
そう言うと、オスカー兄上が約束してくれた。
「君達はカレンブルク邸に招待されてるからな・・・分かった。父上と話すよ。」
言いながらみんなで一旦フィン兄さまのバルコニーまで降りて行く。
「遅くなっちゃったけど、ゆっくり休んでね。」
優しいお休みのキスの後、兄上たちは再び夜空に戻り、大鴉と一緒に何処かへ行ってしまった。
ちょっと寂しい。でも。
「さ、戻るぞ。」
いつもなら一人でさっさと行動するルー兄さまが、ローブを脱いでソファに置きながら声を掛けてくれたから。
「待って!」
慌てて私もローブを脱いで後を追う。
私の部屋の前まで黙って手を繋いでくれたルー兄さまは、いつものようにやや素っ気ないお休みのキスの後、
「お前の社交には俺がついて行くって言ってるだろう?あんまり心配するな。」
そう言うと、振り返りもせず自分の部屋に戻って行ってしまった。
まだ慣れない街屋敷のベッドに一人でいると、大変だったけど楽しかった筈なのに、何だか哀しくなって来る。
ほんとは、今日はジキスムント君とディーとして知り合って仲良くなるはずだったんだけどな。
それに、どうせ殿下と話すなら、婚約の話しじゃなくて、主催しているお茶会に招待している女の子を紹介してもらいたかったな。
そしたら、その子たちと頑張って話して、仲良くなったりして。バーベンベルクに戻っても、手紙のやり取りをしたりして。
なのに。
実際の私ときたら。
ジキスムント君には避けられちゃったし、女の子とは挨拶しか出来なかったし。おまけに、変な隣国の殿下や、変な伯父さまに絡まれて。
だんだん眠くなってきた頭で、ふわふわ考える。
しかも。
「婚約って、言われてもね・・・」
殿下の話を聞いた時は、全く実感が無かった。でも、真面目なルー兄さまに言われると、ちょっと気になって来る。
ただ、ね、、、。あのぶっきらぼうでプライドの高い殿下が、ジキスムント君と会わせてやるって言ってる殿下が、私に好意があるとは思えないんだよね、、、。
大体、婚約のこの字も聞いてないんだけど、私は。
「明日母さまに訊ねたら答えてくれるかな・・・?」
そう思ったのを最後に、私は眠りの中に入っていった。
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