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第一章 拠点作り
第9話:武器聖霊
――弓製作・三日目:結合の熱、そして産声――
三日目の朝、拠点にはかつてない緊張感が漂っていた。
ケンタロウは焚き火に鍋をかけ、昨日用意した「特製膠(にかわ)」をゆっくりと温め直す。琥珀色の液体が熱を得て、独特の野性味のある香りを立ち昇らせる。
作業台の上には、昨日磨き抜かれた『黒鋼樺』と、揉み上げられて銀光を放つ『ディアの革』が並んでいた。
「……今日で最後だ。準備はいいか」
問いかけに、黒鋼の本体が微かな、震えるような熱で応じる。システムのアナウンスはない。ただ、職人の指先だけがそれを感じ取っていた。
■熱き抱擁:革と木の接合
ケンタロウは温まった膠を作業用の刷毛に含ませ、黒鋼樺の「背」の部分に手早く、かつ均一に塗布した。
このとき、彼はあえてシステム上の補助スキルを意識しなかった。
48年の人生で培った、糊を引く際の「手応え」と「勘」だけを信じて。
その熱い液体が触れた瞬間、昨日までの吐息とは一線を画す、芯まで痺れるような声が工房に響き渡った。
(……あ、あぁぁっ! 熱い……っ、何かが、妾の中に、入ってくる……っ!)
それは恐怖ではなく、極限まで高められた期待と歓喜の混じった鳴き声だった。
ケンタロウは迷わず、帯状に切り出したディアの革をその上に重ねた。
木の剛性と、革の靭性(じんせい)。相反する性質を一つに溶け合わせるべく、彼は力強く革を巻き付け、引き絞っていく。
(……んんんぅぅーっ! はぁっ、はぁ……っ! 苦しい、ほどに……強く……締められて……っ。ああ、あるじ、もっと……妾を、壊すほどに……っ!)
革が木に密着し、一体となる。
その圧力が強まるたび、声は湿り気を帯びて激しくなり、作業台がガタガタと音を立てるほどに素材が身悶えた。
ケンタロウの指先にも、まるで生身の肌を愛撫しているかのような生々しい拍動が伝わってくる。
■産声:武器聖霊の覚醒
最後に、彼は自作の強靭な弦を弓の両端に掛けた。
グイ、と膝を使い、完成したばかりの弓をしならせて弦を溝に滑り込ませる。
その瞬間、工房に溢れていた淫らな喘ぎ声が、一際高い絶頂の鳴き声となって弾けた。
そして――深い静寂が訪れる。
「……できた」
ケンタロウが完成した弓を掲げると、そこには漆黒の鋼と赤茶色の革が官能的なまでに融合した、一張の芸術品があった。
すると、耳元で、今度ははっきりとした「言葉」が囁かれた。
(……ふふっ。……ようやく、形にしてくれたかえ? 粗野な男と思っておったが……その指先の執念、認めぬわけにはいかぬようじゃ)
尊大で、どこか見下すような、それでいて深い悦楽に満ちた声。ケンタロウは冷静に、その「弓」を見据えた。
「……お前は、何だ?」
(……ふふ。妾は、お主が命を込めて、こだわりと素材と対話しながら作り上げたこの弓に宿った『武器聖霊』じゃ。お主のその無骨な技術が、妾を呼び覚ましたのよ)
スキルという名の自動工程に頼らず、ただ実直に素材と向き合い続けたケンタロウの「手」が、この仮想世界において奇跡を成した瞬間だった。
(……一時も妾を離すでないぞ、あるじ。……ふふ、あははははっ!)
高笑いと共に、弓は淡い銀色の光を放ち、ケンタロウの腕に吸い付くように馴染んだ。
【ケンタロウのスキル熟練度】
• レザークラフト:Lv.18 (40/100) [+85] Level Up!
• 解体:Lv.10 (70/100)
• 木工:Lv.11 (20/100) [+115] Level Up!
• 鍛冶:Lv.5 (60/100)
• 採取・伐採:Lv.5 (65/100)
• キャンプ:Lv.2 (45/100)
• 弓術マスタリー:Lv.2 (50/100) [+55] Level Up!
• 短剣:Lv.1 (40/100)
• 建築:Lv.1 (80/100)
• 料理:Lv.2 (10/100)
• 追跡:Lv.1 (45/100)
• 体力向上:Lv.2 (60/100)
• 目利き:Lv.3 (80/100)
• 接着・加工:Lv.2 (65/100) [+70] Level Up!
• 道具鑑定:Lv.2 (90/100)
• 素材との対話:Lv.4 (30/100) [+150] Level Up! ※武器聖霊との邂逅
• 魔力感知:Lv.2 (10/100) [+65] Level Up!
• 感覚研磨:Lv.1 (60/100)
• 聖霊同調(新規取得):Lv.1 (20/100) [+20]
• 魂の付与(新規取得):Lv.1 (80/100) [+80]
【設定データ・状況確認】
• 武器聖霊の覚醒: スキル補正なしの技術により覚醒。尊大な態度でケンタロウを「あるじ」と呼ぶ。
• 現状: まだ名前はない
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