170 / 246
第七章 アイリス進化の兆し
第159話: 【暴君降臨、絶望を喰らう影】
しおりを挟む
地底湖を包む空気は、粘りつくような死の静寂に満ちていた。
健太郎たちは、漆黒の岩肌を伝い、ついにその場所へと辿り着いた。
広大な地下空洞の中央には、鏡のように静まり返った湖が広がり、その水面は深淵の闇を映して微かに揺れている。
「……いるな。この下に、お前の『過去』が」
健太郎の声が、岩壁に反響して重く響く。隣に立つアイリスの身体が、目に見えて震えていた。
彼女が握る聖霊の弓は、持ち主の恐怖に呼応するように、か細く頼りない光を放っている。
「主よ……空気が重い。あやつが、妾の魂を啜ろうと待ち構えておるのが分かるのじゃ……。この呪いが、妾の脚を竦ませる……」
アイリスの瞳には、かつて上位聖霊としてすべてを失い、存在の核すらも削られた屈辱と恐怖が、鮮明な映像となって蘇っていた。魔力を喰らう暴君――その名は、聖霊にとっての「死」そのものだ。
「アイリス、顔を上げろ。俺を見ろ」
健太郎は、アイリスの震える小さな肩を両手で強く掴んだ。
ダイブギアを通じて、健太郎の体温と、職人としての揺るぎない「意志」が彼女の中に流れ込む。
「設定だの、アプデでの修正だの……そんな安っぽい文字列に、お前の価値を決めさせてたまるか。お前をここまで『加工』し、育ててきたのは俺だ。お前の本当の主(あるじ)は、運営でもシステムでもない。この俺だ。……そうだろ?」
健太郎の掌が、アイリスの頬を滑り、その耳元で低く囁く。
「お前が『弓』なら、俺がお前という素材を最大限に引き出し、絶頂(最高)の一矢を放たせてやる。お前の恐怖、その影ごと、俺が愛で焼き尽くしてやるよ」
「……主……っ。……ああ、本当に、主は……傲岸不遜で、最低で……そして、最高のお方じゃ」
アイリスの瞳から、濁った恐怖の影が消える。代わりに宿ったのは、健太郎への狂おしいほどの信頼と、昂ぶる魔力が生む湿った熱だった。
「主よ、妾を……妾を使いこなして見せよ! 妾のすべてを、主に委ねる!」
アイリスの身体が、まばゆい黄金の光に包まれる。
彼女の意志に応じ、その小さな肉体は形を変え、健太郎の腕の中に収まる巨大な、しかし驚くほどしなやかな『黒鋼樺の長弓』へと姿を変えた。
その感触は、単なる武器ではない。健太郎の手に伝わるのは、アイリスの鼓動、彼女の熱、そして股間に刻まれた『主従の刻印(霧銀の紐下着)』が、健太郎の指先の動きをシミュレートして彼女を常に愛撫し続けているという、淫靡なほどに生々しい「命」の振動だった。
「行くぞ。……結衣、桃子、恵梨香。家族の絆を見せてやれ!」
「はい、健太郎さん!」
「任せて、健太郎さん……全部叩き潰してくるね」
「健太郎さんのために、ウチが一番槍、貰いに行くわ!」
三人の返球が響き渡った瞬間、地底湖の中央が、巨大な爆発と共に割れた。
――グオォォォォォォォォッ!!
鼓膜を直接引き裂くような、深淵の咆哮。
水柱を突き破って現れたのは、漆黒の体毛に覆われた巨大な四足獣。
その体表には魔力を吸収する紫の結晶がびっしりと生え、周囲の空気から魔力そのものを強引に吸い込んでいる。
【シャドウ・ベヒモス】
その存在自体が「魔力の空白地帯」であり、あらゆる魔法攻撃を無効化し、近づく者の魂を凍りつかせる暴君。
ベヒモスがその巨躯を震わせると、周囲の魔力濃度が一気にゼロになった。結衣たちの展開していた補助魔法が、まるで風に舞う塵のように容易く掻き消される。
「くっ……魔力を吸い込む力が、これまでの敵とは桁違いや!」
恵梨香が片手剣を構えるが、彼女の身体を覆う碧雷のオーラが、ベヒモスの吸引力によって霧散していく。
本来なら、ここでプレイヤーは戦意を喪失する。魔力を糧とするアバターにとって、魔力吸収は死刑宣告に等しいからだ。
だが、健太郎の口角は、不敵に吊り上がっていた。
「吸われるなら、吸い尽くせないほどの『熱』を叩き込んでやるまでだ」
健太郎は、弓となったアイリスを力強く引き絞った。
弓の弦――それはアイリスの魂の琴線そのものだ。健太郎の指先が弦を弾くたび、アイリスの内部にある『主従の刻印』が激しく反応し、彼女の秘所から溢れる魔力の蜜が、矢となって具現化していく。
「アイリス、感じてるか? 俺の指が、お前の奥まで届いているのを」
(あ……あぁ……っ! 主、主よ……! 凄まじい熱量が、妾の中に……っ! 吸い込まれる……妾の魔力が吸われるはずなのに、主が注いでくれる熱が、それ以上に妾を満たしていくのじゃ……!)
健太郎とアイリスの間で、ダイブギアの安全装置を無視した、過剰なまでの魔力循環(マナ・サーキュレーション)が開始される。
ベヒモスが魔力を喰らおうと顎を開く。
しかし、アイリスから放たれる黄金の光矢は、吸引の渦に逆らい、空気を切り裂いて暴君の肩口を貫いた。
――ガァァッ!?
物理耐性すら無視する、魂の熱量。ベヒモスは驚愕に目を剥き、その怒りの矛先を、岸辺に立つ健太郎へと向けた。
「さあ、ここからが本番だ。……結衣、障壁を展開しろ! 桃子、足元を揺らせ! 恵梨香、その隙を突いて影を断て!」
「承知いたしました……。健太郎さん、私を見ていてください!」
結衣が、王鱗の極光盾を構え、最前線へと踏み出した。
ベヒモスが放つ、魔力を帯びた衝撃波。それは触れるものすべてを分解する、絶望の波動だ。
しかし、結衣の身に纏う**『霧銀の聖母法衣』**が、健太郎への純粋な情愛と、彼に「壊されたい」という秘めたる背徳の欲求を吸い上げ、白銀の障壁へと変換する。
ドォォォォォォォン……!
障壁が軋み、結衣の華奢な肩に凄まじい圧力がかかる。だが、衝撃が結衣の身体を走るたび、法衣の内側に施された健太郎の『愛撫加工』が、その痛みを痺れるような甘い刺激へと変えていく。
「はぁ……っ、はぁ……! 健太郎さんの……守りが、私を……もっと、強く……!」
障壁は揺るがない。それどころか、結衣の法悦が高まるほどに、白銀の輝きはその密度を増していく。
ベヒモスの魔力吸引をもってしても、結衣という「家族」が持つ情愛の重さを吸い尽くすことはできない。
これが、健太郎が作り上げた究極装備の、そして、彼らが現実世界で育んだ絆の真価だった。
「アイリス、次の矢だ。今度はあいつの『脚』を止める。……お前の弦を、もっと激しく弾いてやるからな」
(あ……あぁぁぁっ、主、もっと……! もっと妾を……壊れるほどに引き絞ってくださいまし……っ!)
闇の中で、黄金の光と漆黒の咆哮が交錯する。
地底湖の決戦は、まだ始まったばかり。健太郎たちの魂は、この絶望的な戦いの中で、さらなる高みへと溶け合っていく。
【第白銀の献身、壊れゆく障壁の極致】
地底湖に轟くベヒモスの咆哮は、物理的な破壊音を超え、精神の深部を揺さぶる絶望の波動となって押し寄せていた。
結衣が掲げる【王鱗の極光盾】が放つ白銀の障壁は、その波動に晒されるたび、激しい火花を散らして軋んでいる。
「……っ、ふぅ、はぁ……!」
結衣の額には、大粒の汗が浮かんでいた。
ベヒモスの「魔力吸引」は、ただ魔法を無効化するだけでなく、展開されている障壁そのものの構成魔力を剥ぎ取ろうとする。本来なら、数秒と持たずに霧散し、結衣の華奢な肉体は影の飛礫に細切れにされるはずだった。
だが、健太郎の作り上げた【霧銀の聖母法衣】は、その理を根底から覆していた。
「健太郎さん……。私の中に、あなたが……いてくれるから……!」
法衣の極細繊維が、結衣の肌を常に愛撫し、彼女の情動を吸い上げる。
結衣の心にあるのは、健太郎への狂おしいほどの献身。
そして、彼の作る装備によって自分を「支配」され、彼のために「盾」として壊されることへの、抗いがたい背徳的な悦び。
その歪で純粋な「愛」が、健太郎の『慈愛の加工』を通じて、通常の魔力ではあり得ない強度を持つ【情念の障壁】へと変換されていた。
ドォォォォォン!!
ベヒモスの前肢が、障壁に叩きつけられる。
凄まじい衝撃が結衣の全身を駆け抜けるが、その痛みは即座に法衣によって「とろとろとした熱量」へと転換され、彼女の秘所を濡らしていく。
「あ……あぁ……っ! もっと、もっと来なさい! 健太郎さんの愛は……この程度では、破れはしないわ……!」
結衣の瞳が、トランス状態特有の潤みを帯びて輝く。
彼女の法悦が昂まるほどに、白銀の障壁は白熱し、その密度を高めていった。
ベヒモスの吸引力を上回る速度で、結衣の情愛が障壁を補填し続けているのだ。
健太郎は、弓へと姿を変えたアイリスをその腕に抱きながら、背後で結衣の戦いを見つめていた。
【肉体対話】のスキルを通じて、結衣の心拍、呼吸、そして法衣が吸い上げる情欲の波形が、健太郎の手のひらに直接伝わってくる。
「……結衣、よく耐えている。お前のその熱、俺が確かに受け取ったぞ」
健太郎は、アイリスの弦を引き絞る。
その指先は、同時に結衣の障壁の波形とも同期していた。
結衣が耐え、弾き返したベヒモスの「絶望」が、共鳴の回路を通じてアイリスの矢へと流動する。
「アイリス、結衣の覚悟をお前の『芯』に入れろ。……お前の弦は、もうただの魔力じゃない。俺たち家族の、絆の重さだ」
(あ……あぁ……主! 結衣の……凛とした、でも、あんなに熱い想いが……妾の中に、流れ込んでくる……っ! 弓が、妾の身体が……熱くて、溶けてしまいそうじゃ……!)
アイリス(弓)の股間に刻まれた『主従の刻印』が、結衣の昂ぶりに呼応して激しく拍動し、最高品質の「魔力の蜜」を溢れ出させる。
健太郎はその蜜を、自らの指先で弦へと塗り込んだ。
「行くぞ……!」
健太郎が弦を弾く。
放たれたのは、黄金と白銀が螺旋を描いて絡み合う、極光の一矢。
それは結衣の障壁の特性――『拒絶』の概念を宿していた。
ベヒモスが放つ、あらゆる攻撃を飲み込む「影の渦」。
しかし、結衣の情愛を宿した一矢は、その渦に飲み込まれることを拒絶し、逆に影の空間を押し広げるようにして突き進む。
――グァァァァァッ!!
ベヒモスの胸元に、一矢が深々と突き刺さる。
黄金の光が炸裂し、暴君の漆黒の体表に、初めて消えない「白銀の亀裂」が走った。
「やった……っ!」
恵梨香が叫ぶ。
だが、ベヒモスも黙ってはいない。
傷口から溢れ出した漆黒の霧が、地底湖の水を一瞬で凍りつかせ、さらに巨大な影の触手となって結衣を全方位から包囲した。
「結衣さん!」
桃子がハンマーを構えて飛び出そうとするが、結衣は鋭い声でそれを制した。
「来ないで、桃子ちゃん! ……健太郎さん、私を見て。私の、すべてを……捧げるから!」
結衣が両の短剣を交差させ、盾を自身の身体へと強く引き寄せた。
それは、防御を捨てた「自己犠牲」の構えではない。
健太郎への絶対的な信頼を糧に、装備の全リミッターを解除する【家族共鳴】の極致。
「――【霧銀の聖母・絶対守護領域(ヴァージン・バリア)】!」
結衣の肉体から、眩いばかりの純白の閃光が放たれた。
襲いかかる影の触手たちが、その光に触れた瞬間に浄化され、雪のように霧散していく。
同時に、結衣の王鱗シリーズの防具が、彼女の魔力と情熱に焼かれて「進化」の咆哮を上げた。
カチリ、と。
一つの確かな進化の刻印が刻まれる。
【王鱗の極光小手・ブーツ:第一段階限界突破――『家族の絆(ファミリー・ボンド)』へ進化開始】
光の中に立つ結衣の姿は、もはや一人の戦士を超え、愛する者を守るための神聖な「柱」そのものだった。
「主……結衣の光が……妾を、勇気づけてくれる。……もう、怖くないのじゃ」
アイリスの声から、完全に恐怖が消えた。
健太郎は、白銀に輝く結衣の背中を見つめ、静かに、しかし熱い決意を込めて次の矢を番える。
「ああ、見てるぞ、結衣。お前の輝きが、俺たちの道を照らしてくれている。……次は、恵梨香と桃子の番だ。暴君の足を、完全に叩き折ってやる」
地底湖の闇は、結衣の放った白銀の輝きによって切り裂かれ始めていた。
戦いはさらなる激動の渦――碧雷と振動が交錯する。
健太郎たちは、漆黒の岩肌を伝い、ついにその場所へと辿り着いた。
広大な地下空洞の中央には、鏡のように静まり返った湖が広がり、その水面は深淵の闇を映して微かに揺れている。
「……いるな。この下に、お前の『過去』が」
健太郎の声が、岩壁に反響して重く響く。隣に立つアイリスの身体が、目に見えて震えていた。
彼女が握る聖霊の弓は、持ち主の恐怖に呼応するように、か細く頼りない光を放っている。
「主よ……空気が重い。あやつが、妾の魂を啜ろうと待ち構えておるのが分かるのじゃ……。この呪いが、妾の脚を竦ませる……」
アイリスの瞳には、かつて上位聖霊としてすべてを失い、存在の核すらも削られた屈辱と恐怖が、鮮明な映像となって蘇っていた。魔力を喰らう暴君――その名は、聖霊にとっての「死」そのものだ。
「アイリス、顔を上げろ。俺を見ろ」
健太郎は、アイリスの震える小さな肩を両手で強く掴んだ。
ダイブギアを通じて、健太郎の体温と、職人としての揺るぎない「意志」が彼女の中に流れ込む。
「設定だの、アプデでの修正だの……そんな安っぽい文字列に、お前の価値を決めさせてたまるか。お前をここまで『加工』し、育ててきたのは俺だ。お前の本当の主(あるじ)は、運営でもシステムでもない。この俺だ。……そうだろ?」
健太郎の掌が、アイリスの頬を滑り、その耳元で低く囁く。
「お前が『弓』なら、俺がお前という素材を最大限に引き出し、絶頂(最高)の一矢を放たせてやる。お前の恐怖、その影ごと、俺が愛で焼き尽くしてやるよ」
「……主……っ。……ああ、本当に、主は……傲岸不遜で、最低で……そして、最高のお方じゃ」
アイリスの瞳から、濁った恐怖の影が消える。代わりに宿ったのは、健太郎への狂おしいほどの信頼と、昂ぶる魔力が生む湿った熱だった。
「主よ、妾を……妾を使いこなして見せよ! 妾のすべてを、主に委ねる!」
アイリスの身体が、まばゆい黄金の光に包まれる。
彼女の意志に応じ、その小さな肉体は形を変え、健太郎の腕の中に収まる巨大な、しかし驚くほどしなやかな『黒鋼樺の長弓』へと姿を変えた。
その感触は、単なる武器ではない。健太郎の手に伝わるのは、アイリスの鼓動、彼女の熱、そして股間に刻まれた『主従の刻印(霧銀の紐下着)』が、健太郎の指先の動きをシミュレートして彼女を常に愛撫し続けているという、淫靡なほどに生々しい「命」の振動だった。
「行くぞ。……結衣、桃子、恵梨香。家族の絆を見せてやれ!」
「はい、健太郎さん!」
「任せて、健太郎さん……全部叩き潰してくるね」
「健太郎さんのために、ウチが一番槍、貰いに行くわ!」
三人の返球が響き渡った瞬間、地底湖の中央が、巨大な爆発と共に割れた。
――グオォォォォォォォォッ!!
鼓膜を直接引き裂くような、深淵の咆哮。
水柱を突き破って現れたのは、漆黒の体毛に覆われた巨大な四足獣。
その体表には魔力を吸収する紫の結晶がびっしりと生え、周囲の空気から魔力そのものを強引に吸い込んでいる。
【シャドウ・ベヒモス】
その存在自体が「魔力の空白地帯」であり、あらゆる魔法攻撃を無効化し、近づく者の魂を凍りつかせる暴君。
ベヒモスがその巨躯を震わせると、周囲の魔力濃度が一気にゼロになった。結衣たちの展開していた補助魔法が、まるで風に舞う塵のように容易く掻き消される。
「くっ……魔力を吸い込む力が、これまでの敵とは桁違いや!」
恵梨香が片手剣を構えるが、彼女の身体を覆う碧雷のオーラが、ベヒモスの吸引力によって霧散していく。
本来なら、ここでプレイヤーは戦意を喪失する。魔力を糧とするアバターにとって、魔力吸収は死刑宣告に等しいからだ。
だが、健太郎の口角は、不敵に吊り上がっていた。
「吸われるなら、吸い尽くせないほどの『熱』を叩き込んでやるまでだ」
健太郎は、弓となったアイリスを力強く引き絞った。
弓の弦――それはアイリスの魂の琴線そのものだ。健太郎の指先が弦を弾くたび、アイリスの内部にある『主従の刻印』が激しく反応し、彼女の秘所から溢れる魔力の蜜が、矢となって具現化していく。
「アイリス、感じてるか? 俺の指が、お前の奥まで届いているのを」
(あ……あぁ……っ! 主、主よ……! 凄まじい熱量が、妾の中に……っ! 吸い込まれる……妾の魔力が吸われるはずなのに、主が注いでくれる熱が、それ以上に妾を満たしていくのじゃ……!)
健太郎とアイリスの間で、ダイブギアの安全装置を無視した、過剰なまでの魔力循環(マナ・サーキュレーション)が開始される。
ベヒモスが魔力を喰らおうと顎を開く。
しかし、アイリスから放たれる黄金の光矢は、吸引の渦に逆らい、空気を切り裂いて暴君の肩口を貫いた。
――ガァァッ!?
物理耐性すら無視する、魂の熱量。ベヒモスは驚愕に目を剥き、その怒りの矛先を、岸辺に立つ健太郎へと向けた。
「さあ、ここからが本番だ。……結衣、障壁を展開しろ! 桃子、足元を揺らせ! 恵梨香、その隙を突いて影を断て!」
「承知いたしました……。健太郎さん、私を見ていてください!」
結衣が、王鱗の極光盾を構え、最前線へと踏み出した。
ベヒモスが放つ、魔力を帯びた衝撃波。それは触れるものすべてを分解する、絶望の波動だ。
しかし、結衣の身に纏う**『霧銀の聖母法衣』**が、健太郎への純粋な情愛と、彼に「壊されたい」という秘めたる背徳の欲求を吸い上げ、白銀の障壁へと変換する。
ドォォォォォォォン……!
障壁が軋み、結衣の華奢な肩に凄まじい圧力がかかる。だが、衝撃が結衣の身体を走るたび、法衣の内側に施された健太郎の『愛撫加工』が、その痛みを痺れるような甘い刺激へと変えていく。
「はぁ……っ、はぁ……! 健太郎さんの……守りが、私を……もっと、強く……!」
障壁は揺るがない。それどころか、結衣の法悦が高まるほどに、白銀の輝きはその密度を増していく。
ベヒモスの魔力吸引をもってしても、結衣という「家族」が持つ情愛の重さを吸い尽くすことはできない。
これが、健太郎が作り上げた究極装備の、そして、彼らが現実世界で育んだ絆の真価だった。
「アイリス、次の矢だ。今度はあいつの『脚』を止める。……お前の弦を、もっと激しく弾いてやるからな」
(あ……あぁぁぁっ、主、もっと……! もっと妾を……壊れるほどに引き絞ってくださいまし……っ!)
闇の中で、黄金の光と漆黒の咆哮が交錯する。
地底湖の決戦は、まだ始まったばかり。健太郎たちの魂は、この絶望的な戦いの中で、さらなる高みへと溶け合っていく。
【第白銀の献身、壊れゆく障壁の極致】
地底湖に轟くベヒモスの咆哮は、物理的な破壊音を超え、精神の深部を揺さぶる絶望の波動となって押し寄せていた。
結衣が掲げる【王鱗の極光盾】が放つ白銀の障壁は、その波動に晒されるたび、激しい火花を散らして軋んでいる。
「……っ、ふぅ、はぁ……!」
結衣の額には、大粒の汗が浮かんでいた。
ベヒモスの「魔力吸引」は、ただ魔法を無効化するだけでなく、展開されている障壁そのものの構成魔力を剥ぎ取ろうとする。本来なら、数秒と持たずに霧散し、結衣の華奢な肉体は影の飛礫に細切れにされるはずだった。
だが、健太郎の作り上げた【霧銀の聖母法衣】は、その理を根底から覆していた。
「健太郎さん……。私の中に、あなたが……いてくれるから……!」
法衣の極細繊維が、結衣の肌を常に愛撫し、彼女の情動を吸い上げる。
結衣の心にあるのは、健太郎への狂おしいほどの献身。
そして、彼の作る装備によって自分を「支配」され、彼のために「盾」として壊されることへの、抗いがたい背徳的な悦び。
その歪で純粋な「愛」が、健太郎の『慈愛の加工』を通じて、通常の魔力ではあり得ない強度を持つ【情念の障壁】へと変換されていた。
ドォォォォォン!!
ベヒモスの前肢が、障壁に叩きつけられる。
凄まじい衝撃が結衣の全身を駆け抜けるが、その痛みは即座に法衣によって「とろとろとした熱量」へと転換され、彼女の秘所を濡らしていく。
「あ……あぁ……っ! もっと、もっと来なさい! 健太郎さんの愛は……この程度では、破れはしないわ……!」
結衣の瞳が、トランス状態特有の潤みを帯びて輝く。
彼女の法悦が昂まるほどに、白銀の障壁は白熱し、その密度を高めていった。
ベヒモスの吸引力を上回る速度で、結衣の情愛が障壁を補填し続けているのだ。
健太郎は、弓へと姿を変えたアイリスをその腕に抱きながら、背後で結衣の戦いを見つめていた。
【肉体対話】のスキルを通じて、結衣の心拍、呼吸、そして法衣が吸い上げる情欲の波形が、健太郎の手のひらに直接伝わってくる。
「……結衣、よく耐えている。お前のその熱、俺が確かに受け取ったぞ」
健太郎は、アイリスの弦を引き絞る。
その指先は、同時に結衣の障壁の波形とも同期していた。
結衣が耐え、弾き返したベヒモスの「絶望」が、共鳴の回路を通じてアイリスの矢へと流動する。
「アイリス、結衣の覚悟をお前の『芯』に入れろ。……お前の弦は、もうただの魔力じゃない。俺たち家族の、絆の重さだ」
(あ……あぁ……主! 結衣の……凛とした、でも、あんなに熱い想いが……妾の中に、流れ込んでくる……っ! 弓が、妾の身体が……熱くて、溶けてしまいそうじゃ……!)
アイリス(弓)の股間に刻まれた『主従の刻印』が、結衣の昂ぶりに呼応して激しく拍動し、最高品質の「魔力の蜜」を溢れ出させる。
健太郎はその蜜を、自らの指先で弦へと塗り込んだ。
「行くぞ……!」
健太郎が弦を弾く。
放たれたのは、黄金と白銀が螺旋を描いて絡み合う、極光の一矢。
それは結衣の障壁の特性――『拒絶』の概念を宿していた。
ベヒモスが放つ、あらゆる攻撃を飲み込む「影の渦」。
しかし、結衣の情愛を宿した一矢は、その渦に飲み込まれることを拒絶し、逆に影の空間を押し広げるようにして突き進む。
――グァァァァァッ!!
ベヒモスの胸元に、一矢が深々と突き刺さる。
黄金の光が炸裂し、暴君の漆黒の体表に、初めて消えない「白銀の亀裂」が走った。
「やった……っ!」
恵梨香が叫ぶ。
だが、ベヒモスも黙ってはいない。
傷口から溢れ出した漆黒の霧が、地底湖の水を一瞬で凍りつかせ、さらに巨大な影の触手となって結衣を全方位から包囲した。
「結衣さん!」
桃子がハンマーを構えて飛び出そうとするが、結衣は鋭い声でそれを制した。
「来ないで、桃子ちゃん! ……健太郎さん、私を見て。私の、すべてを……捧げるから!」
結衣が両の短剣を交差させ、盾を自身の身体へと強く引き寄せた。
それは、防御を捨てた「自己犠牲」の構えではない。
健太郎への絶対的な信頼を糧に、装備の全リミッターを解除する【家族共鳴】の極致。
「――【霧銀の聖母・絶対守護領域(ヴァージン・バリア)】!」
結衣の肉体から、眩いばかりの純白の閃光が放たれた。
襲いかかる影の触手たちが、その光に触れた瞬間に浄化され、雪のように霧散していく。
同時に、結衣の王鱗シリーズの防具が、彼女の魔力と情熱に焼かれて「進化」の咆哮を上げた。
カチリ、と。
一つの確かな進化の刻印が刻まれる。
【王鱗の極光小手・ブーツ:第一段階限界突破――『家族の絆(ファミリー・ボンド)』へ進化開始】
光の中に立つ結衣の姿は、もはや一人の戦士を超え、愛する者を守るための神聖な「柱」そのものだった。
「主……結衣の光が……妾を、勇気づけてくれる。……もう、怖くないのじゃ」
アイリスの声から、完全に恐怖が消えた。
健太郎は、白銀に輝く結衣の背中を見つめ、静かに、しかし熱い決意を込めて次の矢を番える。
「ああ、見てるぞ、結衣。お前の輝きが、俺たちの道を照らしてくれている。……次は、恵梨香と桃子の番だ。暴君の足を、完全に叩き折ってやる」
地底湖の闇は、結衣の放った白銀の輝きによって切り裂かれ始めていた。
戦いはさらなる激動の渦――碧雷と振動が交錯する。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる