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隣国での寵愛と、偽りの聖女の再起
第18話:星辰祭の崩壊
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数日後、サンクチュアリ王国最大の祭典『星辰祭』の当日がやってきた。
本来ならば、聖女セリナが星の力を呼び込み、国中の土地を浄化する輝かしい儀式となるはずだった。
だが、祭壇に立つセリナの姿に、集まった民衆からは期待ではなく、戸惑いと恐怖の声が漏れていた。
豪華な礼装に身を包んでいるものの、彼女の顔色は土色で、手首まで覆う手袋からは不気味な黒い霧が漏れ出している。
「……さあ、始めなさい、セリナ。皆が見ているぞ」
隣に立つカイル王子も、先日のゼノス様との一件で威厳を失い、縋るような目で妹を見ている。
「わ、わかっていますわ……。はぁ、はぁ……っ!」
セリナが祈りを捧げると、天から微かな光が降り注いだ。
しかし、その光が大地に触れた瞬間――。
ドォォォォォン!
地響きと共に、祭壇の周囲から噴き出したのは、どす黒いヘドロのような魔力の澱みだった。
「キャァァァ! 何よこれ、汚い!」
「聖女様!? 浄化どころか、汚れが溢れ出しているぞ!」
民衆がパニックに陥り、逃げ惑う。
セリナが光を強くすればするほど、これまでエレナが抑え込んできた数年分の「毒」が、せき止められたダムが決壊するように街へと溢れ出していく。
美しい噴水は腐った沼に変わり、咲き乱れていた花々は一瞬で黒い塵となって崩れ落ちた。
「嫌、嫌ぁぁぁ! なぜ!? なぜ私の光が効かないのよ!」
狂ったように叫ぶセリナ。その背後に、巨大な銀色の影が差した。
空を割って降りてきたのは、白銀の光を纏い、悠然と飛来する銀龍ゼノス様。
そしてその背には、夜空の女神のような神々しさを湛えた私が立っていた。
「……醜いですね。これが、あなたたちが望んだ『エレナのいない世界』の姿ですか?」
私の声は、魔力に乗って王都全域に響き渡った。
私は銀龍の背から飛び降り、澱みの中心へと静かに着地する。
周囲を埋め尽くす黒いヘドロが、私の足元に触れた瞬間、パァァ……と白銀の光に浄化され、消滅していった。
「あ、お姉様……! お姉様、助けて! 早くこれを、いつものようにあなたの右腕で吸い取ってよ!」
セリナが這いつくばり、私の靴を掴もうとする。
その必死な姿に、私は悲しみさえ感じなかった。ただ、冷めた心地よさだけがあった。
「いいえ、セリナ。私はもう、あなたの汚れを代わりに引き受ける『ゴミ箱』ではありません。……この毒は、あなたたちが積み上げてきた強欲と傲慢の結果。すべて自分たちで飲み込みなさい」
私は右腕を掲げた。
白銀の紋章が爆発的な輝きを放ち、周囲の「毒」を一箇所に集約していく。
だが、それを消し去るのではない。私はその毒を、セリナとカイル、そして私を裏切った公爵夫妻の足元へと固定した。
「この澱みは、あなたたちの心に巣食う闇。死ぬことはありませんが……一生、その腐敗臭と汚れから逃れることはできません。それが、私を奈落へ捨てた代償です」
カイル王子が、足元にまとわりつく黒い霧を払おうとして悲鳴を上げる。
それは洗っても、魔法を使っても、決して落ちない「不浄の刻印」となったのだ。
「そんな……嘘だ、私は王太子だぞ! こんな汚れた姿で、どうやって国を治めればいいんだ!」
「知ったことではありませんわ。……行きましょう、ゼノス様。ここにはもう、見るべきものは何もありません」
私は、私を呼ぶ醜い叫び声を背に、ゼノス様が差し出した手を取った。
私たちは再び空へと舞い上がる。
見下ろせば、黒い霧に沈みゆくかつての母国と、その中で無様に喚き散らす小さな影たち。
私はようやく、本当の意味で、あの奈落から抜け出したのだと感じた。
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本来ならば、聖女セリナが星の力を呼び込み、国中の土地を浄化する輝かしい儀式となるはずだった。
だが、祭壇に立つセリナの姿に、集まった民衆からは期待ではなく、戸惑いと恐怖の声が漏れていた。
豪華な礼装に身を包んでいるものの、彼女の顔色は土色で、手首まで覆う手袋からは不気味な黒い霧が漏れ出している。
「……さあ、始めなさい、セリナ。皆が見ているぞ」
隣に立つカイル王子も、先日のゼノス様との一件で威厳を失い、縋るような目で妹を見ている。
「わ、わかっていますわ……。はぁ、はぁ……っ!」
セリナが祈りを捧げると、天から微かな光が降り注いだ。
しかし、その光が大地に触れた瞬間――。
ドォォォォォン!
地響きと共に、祭壇の周囲から噴き出したのは、どす黒いヘドロのような魔力の澱みだった。
「キャァァァ! 何よこれ、汚い!」
「聖女様!? 浄化どころか、汚れが溢れ出しているぞ!」
民衆がパニックに陥り、逃げ惑う。
セリナが光を強くすればするほど、これまでエレナが抑え込んできた数年分の「毒」が、せき止められたダムが決壊するように街へと溢れ出していく。
美しい噴水は腐った沼に変わり、咲き乱れていた花々は一瞬で黒い塵となって崩れ落ちた。
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そしてその背には、夜空の女神のような神々しさを湛えた私が立っていた。
「……醜いですね。これが、あなたたちが望んだ『エレナのいない世界』の姿ですか?」
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周囲を埋め尽くす黒いヘドロが、私の足元に触れた瞬間、パァァ……と白銀の光に浄化され、消滅していった。
「あ、お姉様……! お姉様、助けて! 早くこれを、いつものようにあなたの右腕で吸い取ってよ!」
セリナが這いつくばり、私の靴を掴もうとする。
その必死な姿に、私は悲しみさえ感じなかった。ただ、冷めた心地よさだけがあった。
「いいえ、セリナ。私はもう、あなたの汚れを代わりに引き受ける『ゴミ箱』ではありません。……この毒は、あなたたちが積み上げてきた強欲と傲慢の結果。すべて自分たちで飲み込みなさい」
私は右腕を掲げた。
白銀の紋章が爆発的な輝きを放ち、周囲の「毒」を一箇所に集約していく。
だが、それを消し去るのではない。私はその毒を、セリナとカイル、そして私を裏切った公爵夫妻の足元へと固定した。
「この澱みは、あなたたちの心に巣食う闇。死ぬことはありませんが……一生、その腐敗臭と汚れから逃れることはできません。それが、私を奈落へ捨てた代償です」
カイル王子が、足元にまとわりつく黒い霧を払おうとして悲鳴を上げる。
それは洗っても、魔法を使っても、決して落ちない「不浄の刻印」となったのだ。
「そんな……嘘だ、私は王太子だぞ! こんな汚れた姿で、どうやって国を治めればいいんだ!」
「知ったことではありませんわ。……行きましょう、ゼノス様。ここにはもう、見るべきものは何もありません」
私は、私を呼ぶ醜い叫び声を背に、ゼノス様が差し出した手を取った。
私たちは再び空へと舞い上がる。
見下ろせば、黒い霧に沈みゆくかつての母国と、その中で無様に喚き散らす小さな影たち。
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