月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜  嘘つきの妹に成敗を、ざまあ

しょくぱん

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隣国での寵愛と、偽りの聖女の再起

第17話:遅すぎた後悔

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 セリナが床に崩れ落ち、謁見の間が静寂に包まれる中、ガタガタと音を立てて立ち上がった男がいた。

「……エレナ。そんな、そんなはずはない。君は、不浄の痣を持つ、出来損なしの令嬢だったはずだ……」

王太子カイルだ。 かつて私を冷たい瞳で見下し、「お前の代わりなどいくらでもいる」と吐き捨てた男。 彼は、今や誰よりも神々しく、夜の王の隣で気高く微笑む私から目を離せずにいた。  今の私には、彼の浅はかな心が手に取るようにわかる。 圧倒的な力、絶世の美貌、そして自分を歯牙にもかけない超然とした態度。彼は今、手放した獲物が実は「世界で唯一の至宝」であったことに、ようやく気づいたのだ。

「エレナ……いや、エレナ。すまなかった。私はセリナの嘘に騙されていたのだ!」

カイルが、ふらふらと私の方へ歩み寄ってくる。 その顔には、見苦しいほどの期待と、卑屈な笑みが張り付いていた。

「君こそが真の聖女だ。その力があれば、この国の枯渇も、流行病もすべて救える! さあ、今すぐ私の元へ戻るんだ。罪人の件は白紙にしよう。君を王太子妃として、最高の地位で迎え直してやる!」

その言葉を聞いた瞬間、私の横にいたゼノス様の周囲の空気が、パキパキと凍りついた。 だが、私がその腕を制すると、ゼノス様は不機嫌そうに鼻を鳴らしつつも、私に先を譲ってくれた。

「カイル様。……あなたは、今ご自分が何を仰っているか理解していますか?」

私は、汚れ物を避けるような足取りで、カイルの前に立った。 カイルは、私がかつてのように彼の寵愛を求めて縋り付くとでも思ったのか、自信ありげに手を差し出してくる。

「わかっているとも! 君も私を愛しているのだろう? だからこうして、私の元へ戻ってきてくれた。そうだ、その忌々しい隣国の王から離れて、私の腕の中へ――」

「――不快ですわ」

私の短い一言に、カイルの動きが止まった。

「愛? そんなものは、あなたが私を奈落へ突き落とした瞬間に、この右腕と共に焼き尽くされました。今の私にとって、あなたはただの、騒がしい羽虫と同じです」

「な、なんだと……!? この私を侮辱するのか! 私はこの国の次期国王だぞ!」

「王? 民を守る術も知らず、真実を見抜く目も持たず、ただ『装置』として私を使い潰そうとした男がですか? 笑わせないでください」

私は、白銀に輝く右腕をカイルの目の前に突きつけた。 彼が「不浄」と呼んだその紋章から、清冽な魔力の波動が放たれる。その重圧だけで、カイルの豪華な装束がビリビリと裂け、彼はその場に無様に尻餅をついた。

「ひ、ひぃ……っ!」

「カイル様。私が戻ってきたのは、あなたに愛を乞うためではありません。……あなたが愛したその『偽りの光』が、これからどうやって腐り落ちていくのかを、最前列で見ていただくためです」

「貴様ぁ……ッ!」

カイルが激昂し、剣の柄に手をかけた瞬間。 私の背後から、漆黒の魔力の爪が伸び、カイルの喉元を寸前で止めた。  「我の獲物に触れようとするな、雑種。……エレナ、もういいだろう。このような無能と会話を続けるのは、貴様の美しい唇が汚れる」

ゼノス様が私の肩を抱き寄せ、冷酷な眼差しでカイルを見下ろす。

「カイル・サンクチュアリ。貴様には、この国が滅びゆく様を、その醜い瞳に焼き付ける刑を処そう。……殺すのは、その後だ」

カイルは恐怖のあまり、その場に失禁し、声も出せずに震えることしかできなかった。 かつての婚約者がこれほどまでに矮小な男だったのかと、私は心から冷めた笑みを浮かべた。

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