月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜  嘘つきの妹に成敗を、ざまあ

しょくぱん

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隣国での寵愛と、偽りの聖女の再起

第16話:本物と偽物の境界

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 謁見の間に、セリナの甲高い声が響き渡る。

「認めないわ……認めない! お姉様、その力もその腕も、何かの間違いよ! 呪われた不浄を無理やり隠しているだけだわ!」

セリナは、私への恐怖を塗りつぶすように、両手を高く掲げた。 彼女が懸命に祈りを捧げると、その掌から眩いばかりの光が溢れ出す。かつてこの国の民を魅了し、私からすべてを奪い去った「聖女の光」だ。

「見なさい! これが神に選ばれた者の輝きよ! 闇を切り裂き、不浄を焼き払う……私の光こそが本物なのよ!」

強引に魔力を絞り出したせいか、セリナの鼻からは一筋の血が流れていた。 それでも彼女は、勝ち誇ったように私を指差す。 けれど、その光に照らされた謁見の間で起きたのは、奇跡ではなかった。

「……うっ、なんだ、この匂いは」 「目が……目が痛い! 聖女様の光が、まるで毒のように……」

参列していた貴族たちが、次々と顔を覆って蹲る。 セリナが放つ光は、今や浄化の輝きではなく、周囲の生命力を無理やり吸い上げ、排泄物を撒き散らすへと成り果てていた。 中和する「器」であった私を失った彼女の光は、もはや制御不能な魔力の暴走に過ぎない。

「……見苦しいですね、セリナ」

私は静かに一歩前へ出た。 ゼノス様が私の背を優しく押し、私にすべてを委ねるように微笑む。

私は右腕を解いた。 白銀の紋章が脈動し、私の中から溢れ出す魔力が、部屋全体を包み込んでいく。 それは目も眩むような暴力的な光ではない。夜空の星々が地上に舞い降りたような、静謐で、深く、柔らかな輝き。

「え……? 嘘……光が、吸い込まれていく……?」

セリナが放っていた煤けた光が、私の魔力に触れた瞬間、霧が晴れるように消えていった。 私の【星の楔ステラ・ウェッジ】は、世界に溢れる負を無効化し、純粋な理へと還す力。セリナの「歪んだ光」さえも、私にとってはただの不純物でしかない。

「あ、あああ……嫌っ! やめて! 私の力を奪わないで!」

セリナが叫びながら床に倒れ伏す。 彼女の陶器のような肌には、隠しきれない黒い筋が浮き出し、美しいはずの金髪はバサバサと枯れ落ちていく。

「これが、あなたが私に押し付け続けてきたものの正体ですよ、セリナ。……これまで私は、この痛みと汚れをすべて一人で飲み込んできました。でも、もうその必要はありません」

私は、震える妹を見下ろし、慈悲など微塵も感じない冷徹な声で告げた。

「これからは、あなたが自分で作り出したその『毒』に、自分一人で溺れなさい」

広間を支配したのは、圧倒的なまでの「真実」への沈黙だった。 誰の目にも明らかだった。 どちらが真の聖女で、どちらが偽物だったのか。  カイル王子は、あまりの力の差に呆然自失となり、私の名を呼ぼうとした。だが、その声が届く前に、ゼノス様が私の肩を抱き寄せ、冷たく言い放った。

「ゴミ箱を捨てた報いだ。精々、自らの汚物の中で朽ち果てるがいい」

私たちは、這いつくばる偽りの聖女を後に、再び「夜の支配者」として歩み出した。

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