月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜  嘘つきの妹に成敗を、ざまあ

しょくぱん

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隣国での寵愛と、偽りの聖女の再起

第15話:跪くかつての主君

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 静まり返る王宮の謁見の間。
かつて私を「不浄」と呼び、冷たい床に這いつくばらせたその場所に、私は今、夜の王ゼノス様の隣で、最も貴い客分として立っていた。

「……え、エレナ……なのか? 本当に、お前なのか?」

玉座の傍らで、実の父であるローウェル公爵が、幽霊でも見たかのように顔を痙攣させていた。
母もまた、扇子を握りしめたまま、信じられないものを見る目で私を凝視している。
彼らの記憶にある私は、常にうつむき、妹の影に隠れ、右腕を痛々しく抱えた「家門の汚点」だったはずだ。

「お久しぶりです、お父様。そんなに驚かれるなんて、まるで私が生きているのが不都合であるかのようですね」

私が鈴を転がすような声で微笑むと、公爵はさらに顔を青ざめさせた。
今の私には、ゼノス様から与えられた潤沢な魔力が満ちている。かつての痩せこけた面影はなく、真珠のような肌と、神秘的な白銀の瞳を持つその姿は、誰の目にも「真なる高貴」を体現しているように映った。

「ふ、不敬だぞ、エレナ!たとえ生きていたとしても、罪人であるお前がなぜ隣国の王と並んでいる!早くそこを退き、王太子殿下と公爵家に謝罪を――」

「黙れ、老いさらばえた。我が妃に対し、誰が口を利いて良いと許可した?」

ゼノス様が低く、地を這うような声で遮った。
その瞬間、謁見の間に凄まじい「威圧感」が吹き荒れた。
龍王の魔力。それは物理的な重圧となって公爵を襲い、彼は悲鳴を上げる間もなく、その場に崩れ落ちて膝を突いた。

「が、はっ……!?な、なんだ、この重圧は……」

「我が妃エレナは、我が命よりも重い至宝。貴様のような、娘をゴミ箱扱いした無能に指図される筋合いはない。……それとも、今すぐこの国を地図から消してほしいか?」

ゼノス様の黄金の瞳が、爬虫類のような鋭い縦瞳じゅうどうに変わる。
その殺気に、周囲の騎士たちは指一本動かすことができず、カイル王子さえもが玉座から立ち上がれぬまま、ガタガタと震えていた。

「待ってください、ゼノス様。……あまり怖がらせては、お話ができませんわ」

私はそっとゼノス様の腕に手を添えた。
彼は私にだけは柔らかな眼差しを向け、その威圧をふっと霧散させた。
私はゆっくりと、這いつくばる父の前へと歩み寄り、その耳元で囁いた。

「お父様。私がいない間、さぞかし『清らかな』光に満ちた生活を送られていたのでしょう?……でも、おかしな匂いがしますわ。このお城、どこかいませんか?」

「そ、それは……」

「お姉様……ッ!」

叫び声を上げたのは、カイルの後ろに隠れていたセリナだった。
彼女は今にも私に掴みかからんばかりの形相で、けれどその体はガタガタと震えている。

「お姉様が、そんなに綺麗に……そんな力を手に入れているはずがないわ!それは偽物よ!私の光こそが本物で、お姉様はただの不浄な依代なのに……!」

セリナの叫びは、静寂に包まれた広間に虚しく響いた。
彼女の指先からは、無理やり絞り出したような鋭い「光」が漏れていた。だが、その光はかつての美しさを失い、どこか煤けたような、禍々まがまがしい色を帯びていた。

私は確信した。
この国はもう、内側から死んでいる。
私を捨てた代償は、これから彼らが想像もしなかった絶望となって襲いかかるのだ。

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