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第一章 凍てつく呪いと、灼熱の初夜
第1話:氷の魔王に売られた夜
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窓のない地下室。カビの匂いと、凍てつくような静寂がエルシアのすべてだった。 「エルシア。お前は今日から、レオンハルト公爵家に嫁ぐのだ」実父である公爵の言葉に、エルシアは乾いた唇を震わせる。嫁ぐ、と言えば聞こえはいい。だが、相手は「氷の魔王」と恐れられるゼノス・ヴァン・レオンハルト。触れるものすべてを腐食させ、凍土に変えてしまう呪われた魔力を持つ男だ。本来、その「生贄」になるはずだったのは、光の魔力を持つと謳われる妹のステラだった。けれど、妹は泣いて拒んだ。だから、「魔力ゼロ」の無能として疎まれていたエルシアが、その身代わりとして選ばれた。
「私のような無能が行っても、すぐに死んでしまうのでは……」 「構わん。お前のような恥さらし、あの方の毒で溶かされて消えるのがお似合いだ」
父の冷酷な言葉を背に、エルシアは黒塗りの馬車に押し込められた。行き先は、最果ての地。そこに待っていたのは、噂通りの氷の城だった。
城の奥、重厚な扉が開くと、そこには漆黒の衣を纏った男が座っていた。ゼノス。氷のように透き通った瞳と、夜を切り取ったような黒髪。恐ろしいほどに美しいその男からは、どろりとした、どす黒い魔力が陽炎(かげろう)のように立ち上っている。彼が指先で触れた肘掛けが、パキパキと音を立てて白く凍りつき、崩れ落ちた。
「……お前が、新しい供物か」低く、地響きのような声。ゼノスは立ち上がり、エルシアの元へ歩み寄る。一歩ごとに、床の絨毯が黒く腐食していく。死ぬ。エルシアがそう確信して目を閉じた瞬間、温かな――いや、火傷しそうなほどに熱い指先が、彼女の顎をクイと持ち上げた。
「なぜ、壊れない」
ゼノスの瞳に、驚愕の色が走る。彼に触れられたエルシアの肌は、凍りつくどころか、熱を帯びて甘く痺れ始めていた。エルシアの「無(透明)」の魔力が、彼の「黒い呪い」を吸収し、甘やかな快楽へと変換していく。ゼノスの瞳から冷徹な色が消え、どろりとした、飢えた獣のような欲情が宿るのをエルシアは見た。
「お前……。この俺に触れて、正気でいられるのか?」 「あ、……っ……」
逃げようとした腰を、強引に引き寄せられる。氷の魔王と呼ばれた男の吐息が、耳元で熱く爆ぜた。 「決めた。お前を、誰にも渡さない。――俺だけの毒で、中まで塗り潰してやる」
その夜、エルシアは知ることになる。氷の魔王の正体は、誰よりも熱く、狂った執着を持つ孤独な男だということを。
【作者より】面白かったら、いいね、感想、エールをいただけると執筆の励みになります!
「私のような無能が行っても、すぐに死んでしまうのでは……」 「構わん。お前のような恥さらし、あの方の毒で溶かされて消えるのがお似合いだ」
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「なぜ、壊れない」
ゼノスの瞳に、驚愕の色が走る。彼に触れられたエルシアの肌は、凍りつくどころか、熱を帯びて甘く痺れ始めていた。エルシアの「無(透明)」の魔力が、彼の「黒い呪い」を吸収し、甘やかな快楽へと変換していく。ゼノスの瞳から冷徹な色が消え、どろりとした、飢えた獣のような欲情が宿るのをエルシアは見た。
「お前……。この俺に触れて、正気でいられるのか?」 「あ、……っ……」
逃げようとした腰を、強引に引き寄せられる。氷の魔王と呼ばれた男の吐息が、耳元で熱く爆ぜた。 「決めた。お前を、誰にも渡さない。――俺だけの毒で、中まで塗り潰してやる」
その夜、エルシアは知ることになる。氷の魔王の正体は、誰よりも熱く、狂った執着を持つ孤独な男だということを。
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