8 / 10
第二章 聖域の露呈と、歪んだ浄化
第8話:妹への引導と、壊れた玩具
しおりを挟む
謁見の間から放り出されたステラは、雪辱に震えていた。 「あんな……あんな無能の身代わりに、公爵様が跪くなんて、ありえないわ!」彼女は隠し持っていた光の魔導具を握りしめ、城の結界の隙間を探る。ゼノスの魔力がエルシアによって中和されている今なら、その隙を突いて彼を魅了できると信じていたのだ。
だが、彼女が結界に触れた瞬間――。城全体が、心臓の鼓動のような不気味な震動に見舞われた。
「……身の程を知らぬ羽虫が、また俺の庭を汚したか」
冷徹な声とともに、ゼノスが再び現れる。その腕には、意識を半分飛ばしたように、ゼノスの首筋に顔を埋めるエルシアがいた。ゼノスはエルシアを背後の氷の椅子に座らせると、その首に繋がれた魔力の鎖をステラに見せつけるように引いた。
「ひ……っ、あ、あぁ……っ」
鎖を引かれた刺激で、エルシアの首筋の所有印が赤黒く疼く。彼女の吐息は熱く、視線は虚ろだ。もはや家族の姿など、彼女の瞳には映っていない。
「公爵様! 見てください、お姉様はもう、魔力に当てられて正気ではありませんわ! 私なら、そんな無様に鳴いたりは――」 「黙れ。その濁った魔力で、俺の名を呼ぶな」
ゼノスが指を弾くと、ステラの手の魔導具が粉々に砕け散った。氷の礫がステラの頬をかすめ、鮮血が舞う。
「エルシア。見ろ。お前を『無能』と呼び、虐げてきた女の、無様な姿だ」
ゼノスはエルシアの顎を強引に上向かせ、ステラを直視させる。エルシアの瞳に、わずかな理性が戻る。だが、そこにあるのは同情ではなく、深い嫌悪だった。
「……ステラ。あなたは、何も分かっていないのね」 「な、何を……?」 「この方は、私を『無能』だから愛してくださるの。あなたの光なんて、ここではただの不純物よ」
エルシアは自ら、ゼノスの大きな手に自分の頬を擦り寄せた。ゼノスが満足げに喉を鳴らし、ステラの目の前で、エルシアの薄いシュミーズの肩紐を乱暴に引き下ろした。
「ああああっ! 見ないで、見せないで!」
ステラが絶叫し、目を覆う。そこには、ゼノスの魔力によって書き換えられた、おびただしい数の愛の呪印が刻まれていた。それは、清純だったはずの公爵令嬢が、一人の男の肉欲の器に成り下がった動かぬ証拠だった。
「連れて行け。この女は、死ぬまで俺の領地の地下深くで、日光を浴びることなく石炭を掘り続けさせろ。……光の魔力を持つなら、暗闇の中ではさぞかし輝いて見えるだろうな」
ゼノスの非情な宣告に、ステラは腰を抜かし、泣き叫びながら騎士たちに引きずられていった。実家という拠り所は、これで完全に潰えた。
静まり返った城壁の上で、ゼノスはエルシアを再び抱き上げる。冷たい雪が舞い散る中、二人の体温だけが異常なほどに高まっていく。
「……もう、誰もお前を呼ぶ声は聞こえない。お前の中に残る『実家の記憶』も、今ここで俺がすべて塗り潰してやろう」
ゼノスはエルシアを壁に押し当て、その太ももを高く持ち上げた。足首の金の鈴が、悲鳴を上げるようにチリンと激しく鳴る。
「あ、……ゼノス、様……っ。壊れる、……壊れてしまいます……っ!」 「壊れればいい。壊れたお前を、俺の魔力で何度でも継ぎ接ぎにしてやる」
冷気と熱気が混ざり合う、狂った交わり。エルシアは、遠ざかる妹の叫び声を、ゼノスの濃厚な口づけで塞がれた。彼女はもう、光の世界へ戻る方法も、戻る理由も、すべて失ったのだ。
【作者より】面白いと思ったら「いいね」「感想」「エール」をお願いします!
だが、彼女が結界に触れた瞬間――。城全体が、心臓の鼓動のような不気味な震動に見舞われた。
「……身の程を知らぬ羽虫が、また俺の庭を汚したか」
冷徹な声とともに、ゼノスが再び現れる。その腕には、意識を半分飛ばしたように、ゼノスの首筋に顔を埋めるエルシアがいた。ゼノスはエルシアを背後の氷の椅子に座らせると、その首に繋がれた魔力の鎖をステラに見せつけるように引いた。
「ひ……っ、あ、あぁ……っ」
鎖を引かれた刺激で、エルシアの首筋の所有印が赤黒く疼く。彼女の吐息は熱く、視線は虚ろだ。もはや家族の姿など、彼女の瞳には映っていない。
「公爵様! 見てください、お姉様はもう、魔力に当てられて正気ではありませんわ! 私なら、そんな無様に鳴いたりは――」 「黙れ。その濁った魔力で、俺の名を呼ぶな」
ゼノスが指を弾くと、ステラの手の魔導具が粉々に砕け散った。氷の礫がステラの頬をかすめ、鮮血が舞う。
「エルシア。見ろ。お前を『無能』と呼び、虐げてきた女の、無様な姿だ」
ゼノスはエルシアの顎を強引に上向かせ、ステラを直視させる。エルシアの瞳に、わずかな理性が戻る。だが、そこにあるのは同情ではなく、深い嫌悪だった。
「……ステラ。あなたは、何も分かっていないのね」 「な、何を……?」 「この方は、私を『無能』だから愛してくださるの。あなたの光なんて、ここではただの不純物よ」
エルシアは自ら、ゼノスの大きな手に自分の頬を擦り寄せた。ゼノスが満足げに喉を鳴らし、ステラの目の前で、エルシアの薄いシュミーズの肩紐を乱暴に引き下ろした。
「ああああっ! 見ないで、見せないで!」
ステラが絶叫し、目を覆う。そこには、ゼノスの魔力によって書き換えられた、おびただしい数の愛の呪印が刻まれていた。それは、清純だったはずの公爵令嬢が、一人の男の肉欲の器に成り下がった動かぬ証拠だった。
「連れて行け。この女は、死ぬまで俺の領地の地下深くで、日光を浴びることなく石炭を掘り続けさせろ。……光の魔力を持つなら、暗闇の中ではさぞかし輝いて見えるだろうな」
ゼノスの非情な宣告に、ステラは腰を抜かし、泣き叫びながら騎士たちに引きずられていった。実家という拠り所は、これで完全に潰えた。
静まり返った城壁の上で、ゼノスはエルシアを再び抱き上げる。冷たい雪が舞い散る中、二人の体温だけが異常なほどに高まっていく。
「……もう、誰もお前を呼ぶ声は聞こえない。お前の中に残る『実家の記憶』も、今ここで俺がすべて塗り潰してやろう」
ゼノスはエルシアを壁に押し当て、その太ももを高く持ち上げた。足首の金の鈴が、悲鳴を上げるようにチリンと激しく鳴る。
「あ、……ゼノス、様……っ。壊れる、……壊れてしまいます……っ!」 「壊れればいい。壊れたお前を、俺の魔力で何度でも継ぎ接ぎにしてやる」
冷気と熱気が混ざり合う、狂った交わり。エルシアは、遠ざかる妹の叫び声を、ゼノスの濃厚な口づけで塞がれた。彼女はもう、光の世界へ戻る方法も、戻る理由も、すべて失ったのだ。
【作者より】面白いと思ったら「いいね」「感想」「エール」をお願いします!
2
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる