初夜に「快楽の毒」を注がれた身代わり花嫁。〜冷徹な魔公爵は「もう二度と逃がさない」と私の首筋に所有の証を深く刻み込む〜

しょくぱん

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第二章 聖域の露呈と、歪んだ浄化

第11話:暴走する呪いと、身代わりの受肉

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 深夜の寝室を支配していたのは、甘美な陶酔ではなく、命を削り合う・・・・・・ような凄絶な熱量だった。ゼノスが注ぎ込み続けた「毒」――彼の強大すぎる腐食の魔力は、エルシアの聖女プリズムの力と限界まで反発し、ついに制御不能な暴走を始めたのだ。

「……っ、が、あぁ……っ!」

 突如、ゼノスがエルシアの体を突き放し、喉をかき毟るようにして悶え始めた。彼の全身から、黒く鋭い氷の棘いばらが突き出し、寝台の天蓋や柱を無惨に粉砕していく。呪いが、主であるゼノス自身を食い破ろうとしていた。

「ゼ、ゼノス様……!?」

 朦朧としていたエルシアが、恐怖に目を見開く。ゼノスの瞳は血走り、肌は土気色に染まっていく。彼を長年蝕んできた腐食の呪いふしょくが、エルシアという「浄化の器」を得たことで、逆に活性化してしまったのだ。

「来るな……! エルシア……逃げろ、俺の……俺の魔力が、お前を殺す……!」

 ゼノスは床に這いつくばりながら、必死に彼女から距離を取ろうとする。だが、その瞬間。エルシアの足首に繋がれた金の鈴アンクレットが、激しく、澄んだ音を立てた。

 彼女の体は、頭で考えるよりも先に動いていた。逃げるどころか、全裸に近い姿のまま、黒い霧に包まれたゼノスの背中にしがみついたのだ。

「嫌です! 逃げません! ……あなたの毒で壊れるのが私の運命なら、全部、私にくださいっ!」

 エルシアの白い腕が、棘だらけのゼノスの体を強く抱きしめる。その瞬間、彼女の透明な魔力プリズムが最大出力を超えて励起れいきした。

 パキパキ、と嫌な音がエルシアの肌から響く。ゼノスの背中から溢れ出していたドロドロの呪いが、エルシアの指先、胸、腹部へと、吸い込まれるように流れ込んでいく。それは、彼の痛みを彼女がするという、残酷な愛の形。

「あ、……あ、ぁぁぁぁああああああっ!!」

 エルシアはのけ反り、音にならない悲鳴を上げた。ゼノスの呪いが彼女の体内に受肉じゅにくしていく。内側から血管が焼き切れるような、あるいは全身を数千本の針で貫かれるような激痛げきつうが彼女を襲う。しかし、その激痛のすぐ裏側には、ゼノスと完全に一つになったという、狂おしいほどの結合感エクスタシーが張り付いていた。

「エルシア……お前、何を……!」

 ゼノスの荒い呼吸が収まっていく。代わりに、エルシアの白い肌には、ゼノスのものと同じ黒い紋様アザが、全身を這い回るように浮かび上がっていった。

「……はぁ、っ、……あ、……ぁ……」

 エルシアは力なくゼノスの腕の中へ崩れ落ちる。彼女の指先は、今や触れるだけで周囲のシーツをわずかに腐食くろく変色させていた。ゼノスの呪いを半分引き受け、彼女はもはや、聖女でも人間でもない、ゼノスと同じ魔物まものへと成り下がったのだ。

「……ああ、なんということだ。俺はお前を、俺と同じ地獄ばしょへ引きずり込んでしまった……」

 ゼノスが震える手で、エルシアの頬を撫でる。彼の呪いが弱まったことで、初めてゼノスは、手袋も魔法の防御もなしに、素手でエルシアの肌に触れることができた。直接触れ合う肌の温もりなまめかしさ

 エルシアは、呪いの痛みに涙を流しながらも、幸せそうに微笑んだ。

「……嬉しい……。やっと、あなたと、同じになれた……。……あ、……ぁ、……っ」

 彼女の吐息には、今やゼノスと同じ死の香りフェロモンが混じっている。呪いを共有した二人は、もはや死が二人を分かつことさえ許されない、不浄の共犯者きょういぞんとなったのだ。

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