初夜に「快楽の毒」を注がれた身代わり花嫁。〜冷徹な魔公爵は「もう二度と逃がさない」と私の首筋に所有の証を深く刻み込む〜

しょくぱん

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第四章 契約満了の朝と、永遠の鎖

第26話:命の代償と、魔王の簒奪

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窓のない寝室を、かつてないほどの激痛と魔圧プレッシャーが支配していた。 エルシアの出産は、もはや人間の産理を完全に逸脱していた。彼女の胎内に宿った「魔王の継承者」は、産声すら上げる前に、母体であるエルシアの生命力マナを、渇いた砂が水を吸うように猛烈な勢いで喰らい尽くし始めていたのだ。

「あ、……あぁぁぁあ、ぁぁぁああああっ!!」

エルシアはのけ反り、シーツが千切れるほどに掻きむしった。 彼女の白い肌を這う黒い紋様あざが、かつてないほど禍々しく発光し、全身の血管が浮き上がる。胎内の子は、聖女の光を燃料に、魔王の呪いを完成させようと暴れている。このままでは、子が産み落とされる瞬間に、エルシアの命は抜け殻となって霧散するだろう。

「……エルシア、意識を保て!俺を見ろ!」

ゼノスはエルシアの顔を両手で挟み込み、必死に彼女の瞳を覗き込んだ。 彼の顔には、初めて見る「焦燥」と、それを上回るほどの「狂気」が宿っていた。

「ゼ、ゼノス……様……。私、……もう……。あの子に……全部、……持っていかれて……っ」 「許さない。俺からお前を奪うことは、例え俺の血を分けた子であろうと許さない……っ!」

ゼノスは決断した。 彼はエルシアの首にかけられた漆黒の首輪チョーカーを握りしめると、自らの命の核である魔力源心臓を強引に逆流させた。 それは、産まれようとする我が子に「命を分け与える」のではなく、あえて我が子から「命を奪い返す」ことで、エルシアという「器」を維持しようとする、神への反逆にも等しい禁忌タブーだった。

「エルシア……、お前の命は俺のものだ。死ぬことさえ、俺の許可なくしてはさせない……っ!」

ゼノスが呪文を唱えると、エルシアの胎内に向かって、彼の真っ黒な魔力が牙を剥いて突き刺さった。 胎児が放つ強大な力を、ゼノスが自ら吸い出し、自分の中へと取り込んでいく。 エルシアの体が、急速に冷え、そしてゼノスの熱で再び焼き尽くされる。

「ひ、あ、……ぁ、……あぁぁぁぁあああああっ!!」

凄まじい衝撃と共に、部屋中にまばゆい黒銀の閃光せんこうが走った。 足首の金の鈴アンクレットが、まるで糸が切れたように悲鳴を上げて弾け飛ぶ。

……静寂が訪れた。

エルシアは、ぐったりとゼノスの腕の中に崩れ落ちた。 彼女の横には、産声を上げることもなく、静かに、だが力強く呼吸をする赤子がいた。 ゼノスは、我が子を一度も抱くことなく、ただ真っ青な顔で意識を失ったエルシアを強く、強く抱きしめた。

「……はぁ、っ、……はぁ、……」

エルシアの胸は、微かに、だが確かに動いている。 ゼノスは彼女を救うために、胎児の力を限界まで奪い、彼女の魂を強制的にこの世へ縫い付けた・・・・のだ。 その結果、エルシアは一命を取り留めたが、彼女の意識は深い眠りの中へと沈んだままとなった。

「いい。それでいい、エルシア。……もう、目覚めなくていい。このまま俺の腕の中で、動かぬ肉の人形ドールとして、永遠に俺だけのものになれ」

ゼノスは、我が子の存在すら無視し、物言わぬエルシアの唇に深く、執着に満ちた口づけを落とした。 聖女は死なず、しかし人間としても終わった。 魔王の独占欲は、ついに自らの血族さえも犠牲にし、一人の女を永遠の静止フリーズへと閉じ込めたのだ。

【作者より】我が子から力を奪ってまで、エルシアを「生ける人形」として手元に留めたゼノス。共依存の終着点は、この世で最も美しい墓標ねむりでした。面白いと思ったら、ぜひ「いいね」「感想」「エール」をお願いします!
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