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第10話:毒を盛るなら皿まで
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夜会から戻った公爵家の空気は、文字通り凍り付いていた。 華やかな王宮の残り香を振りまく私とは対照的に、父は怒りで顔を真っ赤にし、広間にあった安物の花瓶を床に叩きつけた。
「エルゼ……!お前、どこまで私を、アデナウアー公爵家を辱めれば気が済むんだ!」
「辱める?心外ですわ。私はただ、シオン様のパートナーとして社交を楽しんだだけですもの」
「黙れ!隣国の皇太子だと?お前のような地味な女が、まともに相手をされるはずがない。どうせ何か卑怯な手を使ったんだろう!」
父の罵声を、私は耳元を撫でる風のように受け流した。隣では、ドレスの裾がボロボロになったマリアが、悔しそうにこちらを睨みつけている。
「お父様、エルゼお姉様を早くボルマン伯爵のところへ追いやって!こんな女が家にいたら、私の婚期まで逃げてしまうわ!」
「ああ、わかっている。……エルゼ、ボルマン伯爵からは『明日にでも結納金を満額支払うから、今すぐ身柄を引き渡せ』と連絡が来ている。お前の荷物をまとめろ。明日の朝、強制的にボルマンの屋敷へ送る!」
父の目に、狂気じみた欲望が宿った。 彼にとっては、娘の幸せなどどうでもいい。目の前の借金を帳消しにし、再び贅沢ができるだけの金が手に入れば、それでいいのだ。
(ああ、やっぱり……。前世と全く同じ言葉。全く同じ醜悪な顔)
私は、悲しみではなく、深い軽蔑を込めて微笑んだ。
「わかりましたわ、お父様。……そこまで仰るなら、ボルマン伯爵との契約を、私が責任を持って『完了』させて差し上げます」
「……ほう。ようやく聞き分けたか。最初からそうしていれば、あんな夜会で恥をかかずに済んだものを」
「ええ、本当に。……それではお父様、ボルマン伯爵に送るための『最終的な譲渡合意書』を作成してまいりますわ。結納金の振込先を、公爵家の公式な管理口座に指定しておきますので、サインだけいただけますか?」
父は、私が「公式な管理口座」という言葉を使ったことに、何の疑いも抱かなかった。 彼にとって、公爵家の口座はすべて自分のものだという思い込みがあるからだ。 だが、その「公式な管理口座」は、昨日の時点で私が書き換えた、公爵家の名を冠しただけの私個人のダミー口座である。
自室に戻った私は、すぐさま羽根ペンを走らせた。 ボルマン伯爵からの結納金、金貨五千枚。 それが振り込まれた瞬間に、自動的に隣国の『黄金の天秤』ギルドを経由し、私の隠し口座へと転送される術式を組み込む。
さらに、私は父に内密で、ボルマン伯爵へ一通の手紙を書いた。 『結納金は、公爵家の負債を優先的に清算するために、特定の口座へ早急に振り込む必要があります。さもなくば、婚礼直前に差し押さえが入り、エルゼの身柄を渡せなくなります』と。
「毒を盛るなら、皿まで。……いいえ、骨の髄までですわね」
翌朝。 私はわざとらしく荷物をまとめ、玄関ホールに立っていた。 そこには、ボルマン伯爵から送られてきた無骨な馬車と、金が手に入ると確信して上機嫌な父がいた。
「ハハハ!さっき確認したぞ、エルゼ!伯爵から指定の口座に、確かに金貨五千枚が振り込まれていた!これでお前の役目も終わりだ。とっとと行け!」
「ええ、お父様。……どうぞ、そのお金を有効にお使いになってくださいね。……使えるものなら、ですけれど」
「……何?」
父が不審げに眉を寄せたその時、トニが操る別の馬車が、屋敷の裏門から音もなく走り去っていくのが見えた。 あの中には、私の大切な仲間たちと、公爵家の金庫から空っぽになる前に運び出した最後の人財が乗っている。
「それでは、ご機嫌よう」
私はボルマンの馬車に乗り込むふりをして、そのまま反対側のドアから脱出した。 植え込みに隠れていたシオンが、私を軽々と抱き上げる。
「待たせたな、エルゼ。……完璧な仕事だ」
「シオン様。……さあ、行きましょう。この腐った箱が、中身がないことに気づいて絶叫を上げる前に」
私たちがシオンの用意した快速馬車で走り出した数分後。 公爵家の屋敷からは、父の裂けんばかりの絶叫が響き渡ったはずだ。
振り込まれたはずの金貨五千枚が、確認した次の瞬間に『残高ゼロ』となり。 同時に、家督の全権を放棄し、多額の債務のみを父に残したまま「エルゼ・フォン・アデナウアー」が除籍されたという通知が届いたのだから。
公爵家にはもう、一ペニーの金も、一人の有能な使用人も、そして『家を支える便利屋』も残っていない。
馬車の窓から、遠ざかる屋敷を見つめ、私は静かに瞳を閉じた。 復讐の第1段階は、これで終了。 これから始まるのは、隣国での新しい人生と――家族たちが地獄を這いずり回る様子を眺める、愉快な毎日だ。
定期アナウンス↓
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📖 読者の皆様へお願い 📖
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本日は数多ある素敵な作品の中から、本作を最後までお読みいただきまして、
心より、、本当に、心からの感謝を申し上げます……!!✨
。・゜・(ノД`)・゜・。
「この先、一体どんな運命が待ち受けているの……!?」
「物語の続きが気になって、もう待ちきれない!」
「なんだか面白そう! もっとこの世界に浸っていたい!」
もし、あなたの心にそんな小さな灯がともったのであれば、
作者としてこれほど光栄で、幸せなことはございません。
そこで、皆様にお願いがございます……!🙏✨
本作をこれからも盛り上げていくために、ぜひあなたの「お力」を貸してください!
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皆様からいただけるリアクションの一つひとつが、
孤独な執筆作業に打ち込む作者にとって、何よりの宝物であり、
次のエピソードを紡ぎ出すための「最強の魔法」になります……!🔥
「続きが読みたい!」というそのお声に応えるべく、
これからも全力全開、魂を込めて物語を書き進めてまいります!
あなたの温かい応援を、心より、切実にお待ちしております。
どうぞよろしくお願いいたします!!!(๑•̀ㅂ•́)و✧
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THANK YOU FOR READING!
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