死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん

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第16話:妹の婚約破棄

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父が詐欺容疑で連行され、家も財産も失ったマリアが最後に縋り付いたのは、密かに通じ合っていた隣領の伯爵嫡男、カイルだった。

「カイル様……!あのおぞましい姉がすべてを盗んでいったのですわ。私は被害者なのです。どうか、私をあなたの屋敷へ連れて行って!」

王都の路地裏。マリアは薄汚れたドレスの裾を気にすることもなく、カイルの馬車に縋り付いた。
カイルは以前、マリアがエルゼの目を盗んで豪華な贈り物を送り、甘い言葉で誘惑していた「予備の婚約者」候補だった。

しかし、馬車の窓から顔を出したカイルの表情は、マリアが期待していた慈愛に満ちたものではなかった。

「……近寄るな、アデナウアー家の恥晒しが。汚らわしい」

「えっ……?カイル、様?」

「君が私に送ってきたあの高価な指輪や馬。すべてエルゼ嬢が必死に稼いだから掠め取ったものだったそうじゃないか。おまけに、君が私の他にも三人の男と同時に浮気をしていた証拠まで、すべて私の元に届いているんだよ」

カイルが地面に投げ捨てたのは、一束の書状だった。
そこには、マリアが他の貴族たちに宛てた、恋に溺れるようなの数々と、彼女が裏で行っていた放蕩の記録が、日付入りで克明に記されていた。

「な、なぜ……!それは、私の部屋の鍵付きの箱に隠していたはず……!」

「ルナリア中央商会の密偵を甘く見ないことね、マリア」

不意に、カイルの背後から凛とした声が響いた。
馬車の影から現れたのは、ルナリアの紋章が入った豪奢な外套を羽織ったエルゼだった。

「お、お姉様……!貴女、貴女が……!」

「ええ。あなたの『予備の恋人』たち全員に、同じ書類を配っておいたわ。ついでに、あなたが彼らからせしめたプレゼントの総額と、それが法的に『公爵家の共有財産』として差し押さえ対象であることもね」

エルゼは、泥に塗れたマリアを見下ろし、冷酷に告げた。

「カイル様、ご協力感謝いたしますわ。……さあ、彼にこれ以上迷惑をかけるのはおやめなさい。あなたはもう、アデナウアー公爵家の令嬢ではなく、ただのに過ぎないのだから」

「そんな……嘘よ!私は、私は選ばれた美しい女なのよ!」

「美しさだけで腹は膨れないわよ。……そうね、マリア。あなたがバカにしていた『泥臭い仕事』、王都の下水掃除なら、まだ空きがあるかもしれないわね」

カイルの馬車が無情にも走り去り、マリアは跳ね上げられた泥水を顔に浴びて立ち尽くした。
王都中の人々が、彼女の醜聞を記した瓦版を手に、クスクスと笑いながら通り過ぎていく。

「あああああ!嫌!見ないで!私を見ないで!」

かつてエルゼの地味な容姿を嘲笑い、着飾ることで優越感に浸っていたマリア。
彼女のプライドという名の薄いメッキは、剥がれ落ちるどころか、汚泥に塗れて修復不可能になった。



馬車の中で、エルゼはふぅと短く息を吐いた。
隣に座るシオンが、彼女の髪を優しく撫でる。

「……これで、あの妹も終わりだな。君の復讐リスト、随分と項目が減ってきたんじゃないか?」

「ええ。でも、まだ『元凶』が残っていますわ」

エルゼの瞳に、鋭い殺気が宿る。
父、妹、そして……自分の功績を盗み続け、前世で処刑台への最後の一押しをした弟、ディートリヒ。

「次は、あの無能な弟に、本当のを教えてあげる番ですわ」

エルゼは、シオンの手に自分の手を重ねた。
復讐の刃は、今、最も憎むべき相手の喉元へと向けられていた。















定期アナウンス↓

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