死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん

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第17話:父の暴走と最後通牒

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父、アデナウアー公爵が一時的に保釈されたのは、私が裏で法務官に相応の「協力」をしたからだ。もちろん、彼を救うためではない。逃げ場のない鼠を、最も残酷な形で追い詰めるため。

ルナリア商会の王都支店。閉館後の静まり返ったエントランスに、獣のような荒い息遣いが響いた。

「……エルゼェ……出ろ、エルゼ!貴様さえ、貴様さえいなければ、私はまだ……!」

現れた父の姿は、もはや貴族の面影など微塵もなかった。汚れ果てた服、血走った眼。その手には、捨て身の覚悟で手に入れたであろう、錆びた短剣が握られていた。

「お呼びでしょうか、お父様。そんな格好で、私の新しい城へ不法侵入とは感心しませんわね」

私が二階の吹き抜けから声をかけると、父は狂ったように顔を跳ね上げた。

「死ね!悪魔め、お前さえ死ねば、すべては夢だったことになるんだ!」

父が階段を駆け上がろうとしたその時。
私の影から、漆黒の魔力が渦巻くように溢れ出し、一瞬で父の動きを封じた。

「……私の婚約者に、その汚い刃を向けた罪。万死に値するな」

冷徹な声と共に、シオンが姿を現す。彼は私の前に立ち、指先一つ動かさずに、重圧だけで父を床に組み伏せた。

「ひ、ひっ……あ、あああ……!」

「シオン様、殺さないで。……この男には、自分が壊した家の残骸を一生眺めていてもらわなくては」

私はシオンの腕に手を添え、ゆっくりと階段を降りた。
床に這いつくばり、恐怖で失禁する父。かつて私を「無能」と呼び、鞭打った支配者の威厳は、もうどこにもない。

「お父様。あなたが最後に縋った暴力すら、私には届かない。……さようなら。次は、本物の牢獄で、自分が売った娘の顔を思い出しながら余生を過ごしてちょうだい」

警備兵に引きずられていく父の絶叫を背に、私は手元の報告書をシオンに差し出した。

「次は、ディートリヒですね」

「ああ。君が事前に『回収』しておいた、例の王宮機密書類……。紛失の罪で、既に騎士団が動いている」



その頃。王都の場末にある酒場で、ディートリヒは震える手で安酒を煽っていた。
彼がエルゼから盗んだと思っていた「王宮への重要報告書」。その中には、あろうことか敵国との通じ合いを示唆するが紛れ込んでいた。

正確には、紛れ込んでいたのではない。エルゼが彼に盗ませるように仕向け、彼が内容も理解せずに「自分の手柄」として提出し、その後に「紛失した」と騒ぎ立てた書類だ。

「……なぜだ、なぜ書類がない!あれがないと、僕は国家反逆罪に……!」

「探し物はこれかしら?ディートリヒ」

酒場の扉が開き、ルナリアの紋章を背負った騎士たちに守られ、私が入場した。
私の指先には、彼が必死に探していた書類が揺れている。

「エ、エルゼ!頼む、それを返してくれ!それがあれば僕はまた次期当主として……!」

「いいえ。これはもう、王立騎士団に『証拠物件』として提出済みよ。……あなたが、自分の無能を隠すために機密を売り払おうとした、決定的な証拠としてね」

「なっ……!?」

店内に踏み込んできた騎士たちが、ディートリヒの腕を捻り上げる。

「ディートリヒ・フォン・アデナウアー。国家機密横領および反逆の疑いで拘束する!」

「違う!これはエルゼが……姉上がやったんだ!僕は知らない、僕は有能なんだぁぁ!」

自分の過ちを認めず、最後まで他人のせいにする。
その姿に、私は前世で流した涙の最後の一滴が、乾いていくのを感じた。

「さようなら、無能な弟。……あなたが夢見た『公爵』の椅子は、もうこの国のどこにも存在しないわ」

夜の王都。
アデナウアー公爵家の血筋は、こうして完全に歴史の闇へと葬り去られた。















定期アナウンス↓

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作者としてこれほど光栄で、幸せなことはございません。

そこで、皆様にお願いがございます……!🙏✨
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