死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん

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第18話:最後の晩餐

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公爵家から電気が消え、銀食器も宝石も消え去った。 広々とした食堂には、安物の蝋燭が一灯、頼りなげに揺れている。

父、ディートリヒ、マリアの三人は、埃の積もったテーブルを囲んでいた。彼らの前に並んでいるのは、私が自ら用意した「最後」の食事――一切れのパサついた黒パンと、具のない塩辛いスープだ。

「……なんだ、これは。エルゼ、お前が作ったのか?」

父の声には、もはや私を怒鳴りつける気力すら残っていない。昼間、シオンに叩き伏せられた際の恐怖が、まだその瞳に張り付いている。

「ええ。屋敷にはもう食材もありませんし、使用人も誰もおりませんもの。……精一杯の真心を込めて用意いたしましたわ」

私は、自分だけは何も食べず、立ったまま彼らを見守った。 前世で私が一人で机に向かい、彼らの贅沢の陰で冷めたスープを啜っていた、あの時と同じ情景。けれど今、惨めな思いをしているのは彼らの方だ。

「お姉様……お願い、嘘だと言って。明日になれば、また素敵なドレスが届くのよね?お金がどこかから入るのよね?」

マリアが震える手で黒パンを掴み、泣きながら口に運ぶ。

「あら、マリア。お金なら、あなたがカイル様に貢いだ分で、立派な屋敷が一つ買えたはずよ?……残念ながら、明日の朝届くのは、素敵なドレスではなく『競売開始の通知』ですわ」

「ひっ、ひいい……!」

ディートリヒはスープを啜ろうとしたが、あまりの不味さと塩辛さに咽せ返った。

「エルゼ、お前……僕を助けてくれるんだろう?あの書類、王宮に『僕が書いた』と言って返してくれ!姉弟だろう!?」

「弟……?ふふ、面白いことを仰るのね」

私はテーブルに歩み寄り、彼らの顔を一人ずつ覗き込んだ。

「前世で私が、あなたたちの罪をすべて背負わされて、一人で断頭台に上がった時。……あなたたちは、笑っていたわよね? 『便利な女が消えて清々した』って。美味しいワインを飲みながら、私の死を祝っていた」

「……何を、言っているんだ?前世だと?」

父が当惑の声を上げる。当然だろう。彼らにとっては覚えのないことだ。 だが、私にはあの冷たい刃の感触が、今も鮮明に焼き付いている。

「いいえ、独り言ですわ。……さあ、最後の一口まで残さず召し上がれ。これが、アデナウアー公爵家として食べる、最後のお食事ですもの」

私はそう言い残すと、優雅に背を向けて食堂を後にした。  自室に戻ると、既に旅装を整えたトニが窓際で待っていた。

「お嬢様、準備はすべて完了しました。隣国への秘密ルートも、シオン様が確保してくださっています」

「ありがとう、トニ。……行きましょう」

私は、机の上に一通の封筒を置いた。 中身は、アデナウアー公爵家の名義で借りた膨大な借金の「督促状の束」と、私が家督の全権を放棄した「絶縁状」。

夜の帳に紛れ、私は慣れ親しんだ地獄のような屋敷を後にした。  明日の朝、彼らが目覚めた時。 屋敷には家具一つ残っておらず、蛇口からは水も出ず、そして――彼らを支え続けた「便利なエルゼ」も、どこにもいない。

私は馬車に乗り込み、隣国へと続く道を見据えた。  復讐の序章は終わった。 ここからは、逃げ場のない絶望を、じわじわと味わわせてあげる番だ。















定期アナウンス↓

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「この先、一体どんな運命が待ち受けているの……!?」
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