役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?

しょくぱん

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第一部:役立たずと捨てられた建築士、隣国で「聖域」を造って無双する

第三話:死の荒野に建つ、一夜の聖域

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 王都を出てから三日。私は母国と隣国――帝制ていせいレアルタとの国境付近に広がる『絶望の荒野ぜつぼうのこうや』にいた。
ここは古の戦場であり、大地には未だに強力な瘴気しょうきが渦巻いている。通常の魔導師であれば、立っているだけで魔力を削られ、体調を崩すような死の土地だ。

だが、私にとっては格好の『実験場じっけんじょう』でしかなかった。

「……ふむ。地脈がひどく捻じ曲がっていますね。これでは建物はおろか、草一本生えないのも道理です」

私は愛用の魔導杖で地面を叩き、地中のマナの流れを読み取る。
母国の王城を維持していた膨大な魔力は、今、すべて私の中に蓄積されている。この溢れんばかりの力をどう使うか――そう考えた瞬間、視界の隅に『異質な構造物』が映った。

それは、数台の馬車。
装飾は豪華だが、車輪は折れ、車体は無残に拉げている。そしてその周囲には、苦悶の表情で倒れ伏す騎士たちの姿があった。

「……遭難、でしょうか?こんな危険な場所で」

私は駆け寄り、最も奥にある一際大きな馬車の扉を開けた。
中には、一人の男が横たわっていた。
燃えるような銀髪に、彫刻のように整った顔立ち。だがその肌には、赤黒い紋様が血管のように浮き出て、脈動している。

「っ……来るな……。この、呪いに……巻き込まれ……」

男が掠れた声で私を制止する。
彼の纏う空気で理解した。この人こそ、隣国の若き皇帝――『氷結皇帝ひょうけつこうてい』レオンハルト陛下だ。
噂では、戦いの中で強力な建築的呪詛を受け、安らげる場所を失ったと聞いていたが。

「陛下、失礼します。……酷い構造ですね。あなたの体内で、マナが『逆流の渦ぎゃくりゅうのうず』を形成しています」

私は彼の胸元に手をかざす。
本来、人の体も一つの『精密建築せいみつけんちく』だ。地脈からの汚れたマナが、彼の体という構造を内側から破壊しようとしている。

「無駄だ……。どの聖女の浄化も……効かなかった……」
「浄化ではなく、補強ほきょうすればいいのですよ。陛下、今夜は冷えます。まずは『屋根』を用意しましょう」

私は立ち上がり、バッグから数個の高品質な魔石を取り出した。
それを荒野の地面に、正確な幾何学模様を描くように配置する。

「建築魔法――【神域展開:浄化の離宮じょうかのりきゅう】!」

私が地面を杖で突くと、地脈が大きく震えた。
渦巻いていた瘴気が一瞬で弾け飛び、魔石を起点に光の柱が立ち昇る。
地面から切り出された岩石が、私のイメージ通りに削られ、組み上がり、磨き上げられていく。

――ガガガ、ガシャアアアン!

轟音と共に、荒野のど真ん中に一軒の『魔導ログハウスまどうろぐはうす』が出現した。
ただの小屋ではない。壁には断熱と空間浄化の術式を刻み込み、床には地脈の汚れを濾過する特製の『魔力フィルターまりょくふぃるたー』を敷き詰めた、最高級の避難所だ。

「なっ……!?一晩で、いや、数秒で建物を……?」

瀕死だったはずの騎士たちが、呆然と腰を抜かしている。
私はレオンハルト陛下を、重力を操作する魔法でふわりと浮かかせ、完成した家の中へと運び込んだ。

玄関を潜った瞬間、陛下が大きく息を吐いた。
赤黒い呪いの紋様が、目に見えて薄くなっていく。

「あたたかい……。瘴気が、消えた……?ずっと、焼けるような痛みに苛まれていたというのに……ここは、驚くほど静かだ……」
「この建物全体が『巨大な結界きょだいなけっかい』ですから。陛下、ここならゆっくりとお休みいただけます。……ああ、ボロボロになった騎士の方々もどうぞ中へ。一晩で壊れるような手抜きはしておりませんので」

私は暖炉に火を灯し、慣れた手つきで図面を引き始めた。
次はこの建物を拠点に、隣国の王都をどう『リフォーム』するか。私の頭の中には、すでに新しい「聖域」の設計図が広がっていた。

一方その頃、母国の王城では――。
寝室の天井が突如として崩落し、シグムンド様が「ギャアアア!」と情けない声を上げながら、瓦礫の下敷きになっていたことなど、今の私には知る由もなかった。

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