役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?

しょくぱん

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第二部:格差社会と公開処刑

第十七話:ゴミの搬出はビジネスの始まり

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静寂が戻った祝祭宮殿。
透明なチューブの中を、断末魔の叫びと共に王子たちが消えていった後、会場には一瞬の沈黙、そして爆発的な喝采が沸き起こりました。

「素晴らしい……! 何という機能美だ!」
「侵入者の尊厳を完璧に削りつつ、物理的に確実に排除する。防衛建築の新しい形を目の当たりにしたぞ!」
「アニエス様! 我が国の王宮にも、あの『不審者シュート』を設置していただきたい! 予算は言い値で構いません!」

ドレスの裾を揺らし、優雅に一礼する私の周りには、先ほどまでの「追放された元令嬢」を見る目は微塵もありませんでした。そこにいたのは、帝国の繁栄を司る『神の指先を持つ建築士』を仰ぎ見る、心酔した賓客たちの群れです。

レオンハルト陛下が、私の腰にそっと手を添え、低く心地よい声で囁きました。
「どうやら、今夜の主役は皇帝である私ではなく、君の『床』だったようだな。……アニエス、君の価値にようやく世界が追いついてきたようだ」
「恐縮ですわ、陛下。私はただ、不純物を正しい場所に配置しただけですもの」

私は手元の扇子を広げ、宮殿の外――肥溜めの方角をちらりと見ました。
今頃シグムンド様たちは、私がわざと建材の質を落としておいた『暫定廃棄エリア』で、鼻をつく悪臭と格闘しているはずです。

---

一方、王都の外。
街灯すら届かない暗がりの廃棄場で、シグムンドは己の目を疑っていました。

「……な、なんだ、これは。何なんだあああ!」

彼が這い出したのは、王都中の「魔導温泉」から出た泥成分が蓄積される泥溜めでした。
横には、同様に頭から泥を被り、もはや高級な金髪が海苔の佃煮のように張り付いたクロエが、白目を剥いて転がっています。

「あ、アニエス……あの女……。王子である俺を、俺をこんな……ぐふっ、臭い、臭すぎる!」

シグムンドが叫ぼうとするたびに、泥の臭いが肺を突き刺します。
さらに彼を絶望させたのは、周囲を取り囲む帝国市民たちの視線でした。
かつてなら「王族」として跪かれていたはずの彼は今、見物に来た子供たちから指を差され、笑い者にされていたのです。

「見てパパ、大きな『生ゴミ』が動いてるよ!」
「これがあの有名なベルトコンベアの成果物か。噂通り、見事に洗浄と排出が完了しているな」

帝国の人々にとって、シグムンドは敬うべき隣国の王子ではなく、アニエスの有能さを証明するための『生きた実験材料』に過ぎませんでした。

「ちくしょう……。こんな屈辱、許されるはずがない! おのれレオンハルト、おのれアニエス! 戻ったらすぐに軍を動かしてやる! 灰にしてやるぞ、この国も、あの女も!」

負け惜しみの叫びを上げるシグムンド。
しかし、彼がどれだけ喚こうとも、彼の手元には何も残っていませんでした。
母国ラングリスの城は今、アニエスという「屋根」を失い、雨漏りと地盤沈下で二階から下が完全に埋まり始めていたのです。

---

その翌日。
私の研究所には、一晩で数年分に相当する『受注書』が山積みとなって届きました。

「『自動搬出ベルトコンベア(迎賓館仕様)』の注文が十五件。不審者検知ゲートのライセンス契約が八カ国……。ふふ、建材費を差し引いても、帝国の軍事費三回分は賄えますわね」

私は大量の書類をさばきながら、窓の外を見上げました。
青空には、平和な帝国の空気が流れています。
しかし、その平和を切り裂くように、南の空から一羽の伝書鳥が飛来しました。

届けられたのは、血のような赤い封蝋がなされた『宣戦布告書』。

「……シグムンド様、まだ学習なさらないのですか」

手紙には、彼の歪んだ文字でこう記されていました。
『アニエスを奪還せよ。さもなくば、我がラングリス王国十万の兵が、貴国の貧相な石壁を粉砕するだろう』

十万の兵。それはかつてアニエスが、その堅牢な防壁魔法で守り抜いてきた「彼女の子供たち」のような兵士たちでした。
それを今、彼女を殺すために向けてくるとは。

「陛下。……どうやら、私の新しい設計図は『城門』ではなく、『要塞』にする必要がありそうですわ」

レオンハルト陛下は、その手紙を一瞥して冷笑し、私に歩み寄りました。
「いいだろう。アニエス。君の力を見せてやれ。剣や槍ではなく、君が愛する『石』と『土』が、どれほど残酷に侵略者を拒絶するかを」

「ええ、承知いたしました。……それでは、第十八話に向けて、我が国境に『絶対拒絶アブソリュート・リジェクト』の術式を刻み込みましょうか」

私は羽ペンを折り、不敵な笑みを浮かべました。
追放された建築士による、国家規模の『最大級のざまぁ』。その序曲が、今、静かに幕を開けたのです。

最後まで読んでいただきありがとうございます! 第2部の盛り上がりがいよいよピークに近づいています。これからもお願いします!!
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