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第三部:知略と闇の胎動
第二十四話:国家破綻の鐘が鳴る
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黄金に輝く法廷内には、もはやラングリス王国の味方は一人もいなかった。
裁判長は、黄金の輝きを放つ槌(ガベル)を高く掲げ、断罪の響きと共にそれを振り下ろした。
「判決を言い渡す! 原告ラングリス王国の訴えはすべて棄却。あわせて、被告アニエス・ラ・トール殿に対する不当な名誉毀損、およびレアルタ帝国への不当な軍事介入の責任を認め、ラングリス王国に対し、以下の支払いを命じる!」
裁判長が読み上げる数字の羅列に、法廷内の空気が凍りついた。
「一つ、不当提訴による賠償金、金貨五万枚。一つ、帝国の防衛建築維持に対する不当な妨害への損害賠償、金貨二十万枚。そして……」
私はここで、レオンハルト陛下から預かっていた『追加の請求書』を差し出した。
「裁判長、付け加えさせていただきたいことがございます。私がラングリス王国に在籍していた十年間、彼らは私の技術を『王家の所有物』として無償で利用し続けました。しかし今、彼ら自身が私の術式を『国家最高機密の秘術』であると定義した。……ならば、その『秘術』を十年間にわたり一建築士に独占的に保守させたライセンス料、および過去の残業代を遡及請求させていただきます」
法廷内の魔導建築士たちが「ほう!」と声を上げた。
建築の世界において、秘匿技術の維持管理費は極めて高額だ。それを十年間、一人の女性に押し付けていた代償は――。
「算定の結果……ライセンス料の遡及分を含め、追加で金貨七十万枚。合計、金貨九十五万枚を、向こう一ヶ月以内に支払うこと!」
「き、金貨……九十五万枚だと……!?」
シグムンド様が椅子から転げ落ち、白目を剥いた。
九十五万枚。それは、今のラングリス王国の国家予算の数年分に相当する。すでに戦争の敗北と城の崩壊で国庫が底をついている彼らに、そんな大金が払えるはずもない。
「払えない、そんなの払えるわけがないだろう!アニエス、お前は俺を、自分の国を滅ぼす気か!」
「『自分の国』?勘違いしないでください。私の国は、今隣に座ってくださっている陛下が治めるレアルタ帝国だけですわ。……払えないのであれば、担保を頂くしかありませんわね」
私は、あらかじめ用意していた『領土割譲および資源採掘権の譲渡契約書』をテーブルに広げた。
「代金が払えない場合、ラングリス王国の南半分の領土、および主要な魔導鉱山すべての権利をレアルタ帝国へ譲渡していただきます。……これで、国際的な『差し押さえ』の準備は整いましたわ」
「ひっ……ひいいいいっ!」
バルド宰相が泡を吹いて倒れ、クロエ様はあまりの絶望に自分の顔を掻きむしっている。
彼らが私を追い出したことで得たものは、崩れゆく瓦礫の山。
私が彼らを追い出したことで得たものは、法的な正義と、敵国の実質的な支配権。
「――お断りしますと言ったはずです、契約外ですので。……ですが、これは『契約』ですわ。しっかりとお支払いいただきますわよ、シグムンド様」
判決が下り、法廷の黄金の壁が、敗北者たちの青ざめた顔を容赦なく照らし出す。
ラングリス王国は、今この瞬間、事実上の国家破綻を迎えたのだ。
だが、追い詰められた鼠は、時に最も醜い牙を剥く。
シグムンド様の瞳に宿った、ドス黒い執念の炎を、私はまだ見逃していなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
裁判長は、黄金の輝きを放つ槌(ガベル)を高く掲げ、断罪の響きと共にそれを振り下ろした。
「判決を言い渡す! 原告ラングリス王国の訴えはすべて棄却。あわせて、被告アニエス・ラ・トール殿に対する不当な名誉毀損、およびレアルタ帝国への不当な軍事介入の責任を認め、ラングリス王国に対し、以下の支払いを命じる!」
裁判長が読み上げる数字の羅列に、法廷内の空気が凍りついた。
「一つ、不当提訴による賠償金、金貨五万枚。一つ、帝国の防衛建築維持に対する不当な妨害への損害賠償、金貨二十万枚。そして……」
私はここで、レオンハルト陛下から預かっていた『追加の請求書』を差し出した。
「裁判長、付け加えさせていただきたいことがございます。私がラングリス王国に在籍していた十年間、彼らは私の技術を『王家の所有物』として無償で利用し続けました。しかし今、彼ら自身が私の術式を『国家最高機密の秘術』であると定義した。……ならば、その『秘術』を十年間にわたり一建築士に独占的に保守させたライセンス料、および過去の残業代を遡及請求させていただきます」
法廷内の魔導建築士たちが「ほう!」と声を上げた。
建築の世界において、秘匿技術の維持管理費は極めて高額だ。それを十年間、一人の女性に押し付けていた代償は――。
「算定の結果……ライセンス料の遡及分を含め、追加で金貨七十万枚。合計、金貨九十五万枚を、向こう一ヶ月以内に支払うこと!」
「き、金貨……九十五万枚だと……!?」
シグムンド様が椅子から転げ落ち、白目を剥いた。
九十五万枚。それは、今のラングリス王国の国家予算の数年分に相当する。すでに戦争の敗北と城の崩壊で国庫が底をついている彼らに、そんな大金が払えるはずもない。
「払えない、そんなの払えるわけがないだろう!アニエス、お前は俺を、自分の国を滅ぼす気か!」
「『自分の国』?勘違いしないでください。私の国は、今隣に座ってくださっている陛下が治めるレアルタ帝国だけですわ。……払えないのであれば、担保を頂くしかありませんわね」
私は、あらかじめ用意していた『領土割譲および資源採掘権の譲渡契約書』をテーブルに広げた。
「代金が払えない場合、ラングリス王国の南半分の領土、および主要な魔導鉱山すべての権利をレアルタ帝国へ譲渡していただきます。……これで、国際的な『差し押さえ』の準備は整いましたわ」
「ひっ……ひいいいいっ!」
バルド宰相が泡を吹いて倒れ、クロエ様はあまりの絶望に自分の顔を掻きむしっている。
彼らが私を追い出したことで得たものは、崩れゆく瓦礫の山。
私が彼らを追い出したことで得たものは、法的な正義と、敵国の実質的な支配権。
「――お断りしますと言ったはずです、契約外ですので。……ですが、これは『契約』ですわ。しっかりとお支払いいただきますわよ、シグムンド様」
判決が下り、法廷の黄金の壁が、敗北者たちの青ざめた顔を容赦なく照らし出す。
ラングリス王国は、今この瞬間、事実上の国家破綻を迎えたのだ。
だが、追い詰められた鼠は、時に最も醜い牙を剥く。
シグムンド様の瞳に宿った、ドス黒い執念の炎を、私はまだ見逃していなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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