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サイクスの効率化編

第23話 - フロー

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「そのまま俺の打撃を防御しながらサイクスのコントロールに集中するんだ!」

 瀧との体術の訓練に取り組んでいる和人が拳を受けて吹き飛ばされる。

「(流石に瀧さん強いな……)」

 和人の父方の祖父は道場を持ち、幼い頃からその技術を学んだ。また、祖父の方針で様々な武術、空手や柔道、合気道、剣道、弓道なども学んでいる。
 その中でも和人は弓道の才に恵まれ、彼の超能力も弓道に関連するものである。

「和人、お前の超能力は基本的に遠距離からの攻撃だ。相手に距離を詰められた時の為にも近距離戦闘は重要だぞ」

 瀧は霧島道場の出身で和人のことをよく知っており、和人の癖を熟知している。
 
 和人は瑞希には伝えてはいないものの進路として警視庁に入ることを希望している。その為、サイクスを利用した戦闘訓練にはかなりの思い入れを持って取り組んでいる。また、瀧から聞かされた"TRACKERS"計画についても大いに興味を抱いている。

「前にも言ったが戦闘中も"フロー"をしっかりと意識することだ。それは自分だけじゃなくて相手のフローについても意識する必要がある」

––––"フロー"
 
 サイクスの流れを感じ、身体のどの部分にどの程度のサイクスを配分するか。それによって攻撃と防御のバランスを変える。また、インナー・サイクスとアウター・サイクスの切り替え技術もフローの一部とされる。
 これはサイクスを使った戦闘において大切な技術で相手のフローを読み取ることでサイクスの配分を変え、攻撃または防御を行う。正確に読み取り、配分をスムーズに行うことで戦闘において優位を取ることが可能となる。

 最終的に運が味方したが、瑞希と菜々美の最終局面において菜々美が足に3割のサイクスを配分し拳の到達時間に差をつけた。これもフローによって優位性を掴んだ一例である。

「今のも俺のフローの読み取りが甘い。防御と攻撃のバランスが上手くいっていないからここまで必要以上に吹き飛ばされるんだ」
「はい」

 和人が汗を拭う。

「(和人はサイクスを効率的に使うことに長けているがフローの読み取りが甘い。逆に瑞希はサイクスの効率化は苦手だがフローに関してはかなり優秀だ。これは彼女の目によって幼い頃から多くの残留サイクスを見てきたことで自然とサイクスに対する意識が普通の超能力者よりも高いことに起因する。インナー・サイクスとアウター・サイクスの切り替えは早いからな)」

 
 瑞希も既にフローについては説明を受けており、菜々美との戦闘における自分の経験不足についても即座に理解した。

「(瑞希はサイクスの移動はスムーズなのよね。そこに無駄が多いっていうのがあるけど)」

 花が目を閉じてアウター・サイクスに取り組む瑞希を眺める。

「(何だか2つのサイクスの感覚を掴めてきた……) 」

 そのままインナー・サイクスに移行する。

「(やはり切り替えはスムーズ。さて感覚を少し掴んだみたいだけどインナー・サイクスの方はどうかしらね)」

 瑞希はサイクスを自分の内側に感じ取る。アウター・サイクスと違って洋服の違いのようにイメージすることは出来ない。

「(和人くんは感覚的にはアウター・サイクスをそのまま内側に持って行っただけって言ってた。でも上手くいかない……)」

 その時、直感でサイクスを身体の中心にボール状に集める。この直感が働いた理由は最近放課後にクラスマッチに向けてボールを触る機会が多いことにあった。その偶然が瑞希のインナー・サイクスにおける鍵となった。

「(これ何か良いかも! 200PBの時はバスケットボールより大きい位かな? 50PBの時はもっともっと小さい……)」

「(何か掴んだようね)」
 
 花は瑞希の表情、そしてサイクスの様子を見て変化を感じる。

 しばらくキープした後に瑞希がインナー・サイクスを解く。

「最高記録ね。200PBで30分間、50PBで45分間」
「はい! ボールの感覚でサイクスを感じてみたんです」

 瑞希は嬉しそうに答える。

「イメージには個人で差があるからね。和人の感覚があなたにとって正しいとも限らない」

 瑞希が頷く。

「ところで瑞希はクラスマッチは何に出るの?」
「バスケットボールに出ます。他の競技も頼まれてはいますが」
「じゃあ、出られる競技全部出なさい」
「でもそれだと練習時間長くて訓練に来れるかどうか……」
「インナーとアウターの感覚掴めてきたんでしょ? それなら反復練習をあとは繰り返すだけ。日常生活でも出来るしね。あと……」

 花は少し間を置いて続ける。

「多くの競技を行う中でサイクスのコントロールを維持し、アウター・サイクスを駆使しながら効率的に消費すること。そして競技の合間や競技中にタイミングを見てインナー・サイクスを行ってサイクスの消費を無くして回復に努め、長時間持続させること。実戦よ」

 「なるほど」と瑞希は頷く。

「じゃあ日常で意識しながらクラスマッチも頑張ります!」

 花が微笑む。


#####


 瑞希と和人の帰宅を見送り、瀧と花が話を始める。

「どんな調子だ?」
「瑞希も少し感覚を掴んだみたい。クラスマッチの全競技に参加させてその中でサイクスの扱いに慣れるよう伝えたわ。そっちはどう?」
「和人は武術の心得もあることで筋が良いな。フローの部分がまだまだ未熟だが。それに読み取りが甘い。"レンズ"も苦労するかもな。そこで1つ提案があるんだが……」

 瀧が徳田に先ほど連絡があった小野建設での事故について話を始めた。

「超能力者だけ13人が今日一気にだ。事故のはずないぜ。何かあるはずだ。課長も同じ考えで俺たちも捜査に加わって欲しいとのことだ。和人も参加させてみないか?」
「まだ15歳よ!? 危険かもしれない」
「和人は将来的に警視庁捜査一課を希望していてTRACKERSにも前向きだ。俺も付いとくしアイツのセンスなら問題ないだろ」
「いやだからって……」
「愛香も17歳で参加してたじゃねぇか。それに玲奈も含めあいつらまだ20歳とかだぞ? 最年少よりまだ2歳も若い」
「あの2人は特殊じゃない。愛香の17歳での参加だって覚醒した超能力で"協力"したという形だし」

 瀧は面倒臭そうに頭を掻いた後に徳田の背中を軽く叩く。

「まぁ何とかなんだろ! 期待の星だしな」
「そんな適当な」

 笑っている瀧を横目に花は溜め息をつく。

 その後すぐに瀧はこの話を課長・藤村ふじむら 洸哉こうやに提案し、共感した藤村はすぐさまTRACKERSプロジェクトチームに話を持っていき迅速に和人の参加が認められた。

 こうして15歳の少年が"捜査協力"として参加することが決定した。

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