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夏休み後編
第94話 - 信頼
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––––"煙が目にしみる"!
町田が使用する自然科学型超能力。両手の平を擦り合わせることで発動する超能力で周囲を煙で包み込む。発動する際、大きな破裂音と共に閃光が発生し、スモークグレネードとスタングレネード両方の役割を果たす。
連発は不可能で、10分間のインターバルが必要で1日に4度しか使用することが出来ない。また、発動前に目と耳にサイクスを集中することで影響を避けることが可能である。
町田は瑞希、和人、金本にこの超能力の存在を事前に共有し、近藤組に追い込まれた場合に発動することを伝えていた。
しかし、誤算があった。
エレベーターから姿を現した近藤とその部下2人はレンズを初めから使用していたために目くらましの影響を受けなかった。
「(なっ、爆発音!? 爆弾でも仕掛けられたか!?)」
近藤は耳にサイクスを集中させていなかったために破裂音の影響を受けて一瞬怯むものの瑞希、和人、町田の3人がその場から離れた様子を視界に捉える。そしてただ1人、別方向へと向かう影を見る。
「(孤立しとるあいつをやるか)」
瑞希は迷いなく階下へ続く階段に向かう。
「背中がガラ空きやぜ、お嬢ちゃん!」
近藤がサイクスを込めた拳で瑞希を殴りかかりに向かう。瑞希は尚も振り返ることなく走る。
––––"弓道者"・"雷光"
瑞希と近藤の間にあるスペースに矢が刺さり、眩ゆい光を放つ。
「何や!?」
和人は直ぐに距離を詰めて顔面に右ストレートを見舞う。近藤が一瞬、怯んだ隙に階段の方へと目をやると瑞希が少し微笑みながら何かを呟いたのを見て和人も短い瞬きで応じ、近藤を蹴ってその勢いで距離を取った。
「痛ェな……」
最後の蹴りは左手で防御したものの初めの拳を諸に受けており、近藤はペッと血が混じった唾を地面に吐き出す。
事前の打ち合わせでは町田の超能力が発動したら全員で同じ方向へと逃れて態勢を整える予定だった。
しかし、発動直前、和人の"第六感"と瑞希のサイクスはエレベーターの中にいた近藤たちのサイクスを感知していた。
––––今、船内部の警備は手薄
2人は近藤が上甲板に現れたことで人質である結衣と萌の警備が手薄であると理解する。どちらが行くか話し合う時間は無かったものの、瑞希が階段へと向かう様子を見た和人は瑞希の思惑を悟り、近藤の足止めに徹した。
「(和人君ありがとう)」
瑞希は和人の考えを察知、和人からの援護を信じて振り返ることなく真っ直ぐに階下へと向かった。
「弓矢の超能力か」
近藤は軽く咳払いした後に和人に相対する。
「恐らくは殺傷能力の高い矢もあるんやろうけど、避けられるのを警戒して目眩しの矢にして接近戦で時間を稼いだんやろ?」
片腕を失った近藤だがそれでも尚、力強いサイクスを纏う。
「俺が背中を向けた時に強い矢を放たなかったこと、後悔するばい」
そう言うや否や和人の目の前に現れ、左手だけでラッシュを見舞う。そのスピードとパワーは和人に反撃の隙を与えず、"弓道者"をも発動させる時間を与えない。和人の鳩尾に前蹴りを思い切り見舞い、その勢いで和人は吹き飛ぶ。
「おう、そっちは気ィ付けえよ」
「!?」
仕掛けられた機雷の方へと誘導されており、衝撃機雷が起動、和人にダメージを与える。
「ハァ……ハァ……」
既に和人は息切れし、近藤の強さに驚愕する。
「(強い……! 片腕を失って明らかに消耗しているのにこの強さ。万全な状態だと勝ち目が無いかもしれない)」
近藤の戦法は単純である。和人の超能力が弓矢であることに気付いた時点で発動する隙を与えないように近接戦へと持ち込む。また、物質生成型超能力者である事とサイクスがまだ未熟である事からも身体刺激型である自身に分があると判断した。
「(時間はかけてられん)」
海中での戦闘から完全に回復しきっていないため、なるべく素早く処理することを念頭においている。近藤は和人が皆藤を処理した超能力者とは見なしておらず、その超能力者との戦闘を踏まえてなるべく温存しようと考えている。
近藤は再び和人との距離を詰めて打撃と機雷で追い詰め、やや一方的な展開が続く。
「(あと約5分!)」
和人は町田の超能力発動までのインターバルを意識しながら近藤の連撃に耐える。
––––"火力増強銃"!
コンテナ船へと辿り着いた田川の射撃が2人の間を横切る。
「今度は何や!?」
––––"弓道者"・"衝撃"!
一瞬の隙を突いた和人が衝撃の矢を近藤の腹部に命中させる。
「このクソガキがああ!」
近藤が咆哮を上げた直後、上り切ろうとした血が捉えた影によって一瞬止まる。
「皆藤! おま……」
続く言葉を発する前に近藤は、皆藤の右腕に逆手持ちで持ったナイフが振り向きざまに自分の胸に伸びてきていることに気付いた。近藤は躱すことに成功するも包帯が巻かれた右腕に刺さる。
「ぐうぅっ!」
止血した傷口から再び血が流れ始める。
"弓道者"・"捕獲"!!
近藤の身体6箇所からサイクスの筋が伸び、それが結合して和人の右手へと向かう。和人はそれを掴むと従来通りに両手で弓矢を模して近藤に矢を向け、自分のサイクスを更に込めながら撃ち放つ。
その矢は近藤に直撃し、眩い光を放ちながら近藤の身体を包み込む。
「(数が少ないけど……! 頼む! これで何とか止まってくれ!)」
和人はそう願いつつ近藤の様子を静観する。
町田が使用する自然科学型超能力。両手の平を擦り合わせることで発動する超能力で周囲を煙で包み込む。発動する際、大きな破裂音と共に閃光が発生し、スモークグレネードとスタングレネード両方の役割を果たす。
連発は不可能で、10分間のインターバルが必要で1日に4度しか使用することが出来ない。また、発動前に目と耳にサイクスを集中することで影響を避けることが可能である。
町田は瑞希、和人、金本にこの超能力の存在を事前に共有し、近藤組に追い込まれた場合に発動することを伝えていた。
しかし、誤算があった。
エレベーターから姿を現した近藤とその部下2人はレンズを初めから使用していたために目くらましの影響を受けなかった。
「(なっ、爆発音!? 爆弾でも仕掛けられたか!?)」
近藤は耳にサイクスを集中させていなかったために破裂音の影響を受けて一瞬怯むものの瑞希、和人、町田の3人がその場から離れた様子を視界に捉える。そしてただ1人、別方向へと向かう影を見る。
「(孤立しとるあいつをやるか)」
瑞希は迷いなく階下へ続く階段に向かう。
「背中がガラ空きやぜ、お嬢ちゃん!」
近藤がサイクスを込めた拳で瑞希を殴りかかりに向かう。瑞希は尚も振り返ることなく走る。
––––"弓道者"・"雷光"
瑞希と近藤の間にあるスペースに矢が刺さり、眩ゆい光を放つ。
「何や!?」
和人は直ぐに距離を詰めて顔面に右ストレートを見舞う。近藤が一瞬、怯んだ隙に階段の方へと目をやると瑞希が少し微笑みながら何かを呟いたのを見て和人も短い瞬きで応じ、近藤を蹴ってその勢いで距離を取った。
「痛ェな……」
最後の蹴りは左手で防御したものの初めの拳を諸に受けており、近藤はペッと血が混じった唾を地面に吐き出す。
事前の打ち合わせでは町田の超能力が発動したら全員で同じ方向へと逃れて態勢を整える予定だった。
しかし、発動直前、和人の"第六感"と瑞希のサイクスはエレベーターの中にいた近藤たちのサイクスを感知していた。
––––今、船内部の警備は手薄
2人は近藤が上甲板に現れたことで人質である結衣と萌の警備が手薄であると理解する。どちらが行くか話し合う時間は無かったものの、瑞希が階段へと向かう様子を見た和人は瑞希の思惑を悟り、近藤の足止めに徹した。
「(和人君ありがとう)」
瑞希は和人の考えを察知、和人からの援護を信じて振り返ることなく真っ直ぐに階下へと向かった。
「弓矢の超能力か」
近藤は軽く咳払いした後に和人に相対する。
「恐らくは殺傷能力の高い矢もあるんやろうけど、避けられるのを警戒して目眩しの矢にして接近戦で時間を稼いだんやろ?」
片腕を失った近藤だがそれでも尚、力強いサイクスを纏う。
「俺が背中を向けた時に強い矢を放たなかったこと、後悔するばい」
そう言うや否や和人の目の前に現れ、左手だけでラッシュを見舞う。そのスピードとパワーは和人に反撃の隙を与えず、"弓道者"をも発動させる時間を与えない。和人の鳩尾に前蹴りを思い切り見舞い、その勢いで和人は吹き飛ぶ。
「おう、そっちは気ィ付けえよ」
「!?」
仕掛けられた機雷の方へと誘導されており、衝撃機雷が起動、和人にダメージを与える。
「ハァ……ハァ……」
既に和人は息切れし、近藤の強さに驚愕する。
「(強い……! 片腕を失って明らかに消耗しているのにこの強さ。万全な状態だと勝ち目が無いかもしれない)」
近藤の戦法は単純である。和人の超能力が弓矢であることに気付いた時点で発動する隙を与えないように近接戦へと持ち込む。また、物質生成型超能力者である事とサイクスがまだ未熟である事からも身体刺激型である自身に分があると判断した。
「(時間はかけてられん)」
海中での戦闘から完全に回復しきっていないため、なるべく素早く処理することを念頭においている。近藤は和人が皆藤を処理した超能力者とは見なしておらず、その超能力者との戦闘を踏まえてなるべく温存しようと考えている。
近藤は再び和人との距離を詰めて打撃と機雷で追い詰め、やや一方的な展開が続く。
「(あと約5分!)」
和人は町田の超能力発動までのインターバルを意識しながら近藤の連撃に耐える。
––––"火力増強銃"!
コンテナ船へと辿り着いた田川の射撃が2人の間を横切る。
「今度は何や!?」
––––"弓道者"・"衝撃"!
一瞬の隙を突いた和人が衝撃の矢を近藤の腹部に命中させる。
「このクソガキがああ!」
近藤が咆哮を上げた直後、上り切ろうとした血が捉えた影によって一瞬止まる。
「皆藤! おま……」
続く言葉を発する前に近藤は、皆藤の右腕に逆手持ちで持ったナイフが振り向きざまに自分の胸に伸びてきていることに気付いた。近藤は躱すことに成功するも包帯が巻かれた右腕に刺さる。
「ぐうぅっ!」
止血した傷口から再び血が流れ始める。
"弓道者"・"捕獲"!!
近藤の身体6箇所からサイクスの筋が伸び、それが結合して和人の右手へと向かう。和人はそれを掴むと従来通りに両手で弓矢を模して近藤に矢を向け、自分のサイクスを更に込めながら撃ち放つ。
その矢は近藤に直撃し、眩い光を放ちながら近藤の身体を包み込む。
「(数が少ないけど……! 頼む! これで何とか止まってくれ!)」
和人はそう願いつつ近藤の様子を静観する。
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