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幕間
ジルトニア滅亡 ②
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大公息女イズミル。
友好の証として9歳で大国ハイラントの王太子、ハイラント・オ・レギオン・グレアムの第三妃として嫁いでいた。
その為に今回の難を逃れて生き残っていたのだ。
現在ハイラントは王太子が外交や内政のほとんどを国王から任されているという。
その王太子は確かまだ十八歳。
絶大な魔力を保有するだけでなく、聡明で卓越した政治手腕があると聞くが所詮はまだ二十歳にも満たぬ青年。
与み易しと判断し、ハイラントに嘆願の使者を送る。
「ジルトニア国民のため、貴国に嫁がれたイズミル元公女殿下をジルトニアにお返し願いたい」と……
しかし、宰相の画策により大公家が滅んだ事を秘密裏に調べていたグレアムは、無論それを退ける。
その理由はイズミルがまだ十歳で、国土全てを浄化出来るほどの力が無いという事とした。
大公家を滅ぼすほどの狡猾さと残忍さを併せ持つ宰相の元へイズミルを渡せば、幼い彼女がどのような目に遭いながら暮らす事になるかは容易に想像出来た。
ただ瘴気を祓うためだけの道具として扱われるのは目に見えている。
そんな目に遭うとわかっていながら幼い彼女を引き渡せるものか。
形だけではあるが、自分の妃を守るという名分がグレアムにはあった。
そしてそれは、ジルトニアの主張を退けるには十分な理由だ。
本来なら他国で起きた騒動に干渉する事は政治的に出来ない。
それが今回、力尽くでイズミルを奪おうと兵を差し向けて来たジルトニアに対して、ハイラントには王太子の妃を守るという大義名分が出来たのだ。
これにより二国間で軍事衝突が起きる。
しかし大国ハイラントと小さな大公国とでは軍事力に圧倒的な差があり、勝敗を決するのにさほど時間は掛からなかった。
グレアムは宰相を捕らえ、内乱と大公家殺害に加担した者らと共に国際裁判にかけて極刑に処した。
その後はジルトニアの国土の立て直しに着手する。
グレアムの持つ魔力で瘴気を祓い、集まっていた魔物を一掃する。
そして国土全土を包む巨大な結界を張った。
その桁外れの魔力と、妃である元公女を守り通した男気にジルトニア国民は平伏し、ハイラントへの忠誠を誓ったのは当然といえるのかもしれない。
そうしてグレアムはジルトニアでの後始末が一応片付いた後、一度ハイラントに戻り、イズミルと対面してその意思を確認した。
「キミが成人するまでその国土の守護は責任を持って俺が引き受けよう。しかし成人後はどうしたいか?国に戻り、然るべき相手と婚姻を結び直して大公家を復活させ、女性大公として国を治めてゆくという方法もある」
グレアムのその提案にイズミルは首を振る。
そして十歳の少女とは思えない強い意志を持ち、グレアムに答えた。
「畏れながら殿下、わたくしが成人するまで10年の月日を要します。その間、殿下のお慈悲にお縋り続けるのも策ではありますが、きっとその後はもう以前のジルトニアとは違う国になっておりましょう。わたしが国に戻ればきっと民は喜びます。でもそれは象徴的なもので、年若い女性大公にいずれ不安を募らせるばかりとなるはず……その時、我こそはと第二第三の宰相のような者が現れないとは限りません。そうなればまた国が荒れます。ここまで国力の落ちたジルトニアがまた乱れれば、破滅の道を辿るしかございません。ならばいっその事、ハイラントの属州の一つにお迎えいただきたく存じます」
その迷いのない聡明な意思にグレアムは驚いた。
十歳の少女には今後の祖国の行く末を左右する
決断はまだ無理であろうと高を括っていたのだ。
自分が道を示し、導いてやらねばいけないと。
しかしただ一人遺された元公女であるイズミルを蚊帳の外に放り出して勝手に事を進めるわけにはいかないと思った上での相談だったのだが……。
おそらくは王太后リザベルの助言もあったのだろうが、それを理解し、己の中で理路整然と結論を導き出しているというその聡明さにグレアムは内心驚きを禁じえなかった。
「……祖国を失う事になるが、キミはそれでいいのか?ジルトニアという名はただの地名となるのだぞ?」
「悲しくないと言えば、無念でないと言えば嘘になります……でも国は王家のためのものではありません。国民皆のものだと亡き父は言っておりました。わたくしが望むのは国民の安寧な暮らしです。ハイラントの属州となれば他国からの干渉も防げます。殿下のような方がいずれ国王となられる国であれば、安心してお任せする事が出来ます。きっと亡き父もそれを望んでいると思います……」
ここまで言ってイズミルは行儀良く重ねられていた手をスカートの上でぎゅっと握りしめた。
今まで我慢していたのだろう、堪えきれなくなった感情がじわじわとイズミルから溢れ出していた。
どれだけ大公家の公女として、そして王太子の妃として過不足なく育てられているはいえまだ十歳の少女なのだ。
その行動が正しいのかグレアムにはわからない、
だけどグレアムの手は動いていた。
ぽん、とイズミルの頭の上に手を置いた。
「泣いてもよいのだ」
という意思表示のつもりだった。
するとそれを理解したのか小刻みに震えながらイズミルから微かな嗚咽が漏れ出した。
力一杯握られた小さな手にポロポロと涙の粒が
降りかかる。
付き添いとして隣に座っていた王太后リザベルがそっと肩を抱き、幼い体に寄り添った。
少ししてイズミルは落ち着きを取り戻し、そして言った。
「取り乱してしまい申し訳ありませんでした。でも殿下、これだけはお伝えしたいわたくしの気持ちがございます。もう少しだけお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ。構わないよ」
それを聞き、イズミルはすくりと立ち上がり、最上級の礼を取った。
淑女としてのカーテシーよりももっと上位の礼である。
「この度の事、殿下には感謝してもしきれない程の恩義を感じております。弱小国の内乱など捨て置いてもよいものを、わたくしを見捨てる事なくお守り下さいました。それどころか亡き家族の仇も討っていただき、更にはジルトニアの国土をも救って下さったのです。このご恩をどうやってお返ししたらよいのか未熟なわたくしには見当もつきません」
ここまで言い、イズミルは顔を上げて真っ直ぐにグレアムの目を見た。
強い意思の光が彼女の瞳に宿っていた。
「だけど必ず、この生涯をかけて、殿下とこの国に恩返しがしたいと思います……!」
いつのまにか拳を握り前のめりになっている
イズミルを見て、グレアムは優しい微笑みを浮かべる。
「同じく国を統べる者として、そしてキミの夫として当然の事をしたまでだ。そんなに律儀に構えすぎるな、もっと楽にしてくれ。キミはまだ幼い。ただ健やかに成長してくれればそれでいい」
その時のグレアムの接し方は夫というより兄のような感じであった。
彼自身の気持ちの上でもそうであったのだろう。
しかしイズミルが恋に落ちるには充分すぎた。
(この方の妃になれてわたしはなんて幸せなのでしょう……!嬉しくて誇らしくて、こんなにも心が揺さぶられる……!)
一度意識してしまうともうまともにグレアムの顔を見られなかった。
グレアムが部屋を出て行くまでイズミルはずっと俯いたまま、顔を上げられなかった。
耳や頸まで真っ赤に染め上げ、もはやまともな鼓動は打てないのではないかと思うほどの早い鼓動に必死に耐えていた。
わずか十歳の身に宿った恋心である。
しかし幼い初恋と侮ることなかれ。
これよりじつに十年間、イズミルは初恋の相手グレアムを想い続けたのである。
あの恐ろしい事件が起き、後宮が廃された後も変わることなくイズミルの心の中に在り続ける。
自分が廃妃された後それに伴い王室規範を作り直す事を知った時、イズミルは規範改定によりグレアムに新しい妃を迎え入れ易くする事こそ、自分がグレアムやこの国に出来る恩返しであると考えた。
それが妃として出来る、最初で最後の仕事だと。
そして時は来た。
イズミルはこの城で暮らす最後の一年をグレアムのために生きると心に誓い、側に上がった。
たとえ拒まれようとも疎まれようとも恩返しが押し付けてあったとしても、最後の日まで決して側から離れない。
再びそう決意し、イズミルは明るみ始めた窓の外を見つめたのであった。
友好の証として9歳で大国ハイラントの王太子、ハイラント・オ・レギオン・グレアムの第三妃として嫁いでいた。
その為に今回の難を逃れて生き残っていたのだ。
現在ハイラントは王太子が外交や内政のほとんどを国王から任されているという。
その王太子は確かまだ十八歳。
絶大な魔力を保有するだけでなく、聡明で卓越した政治手腕があると聞くが所詮はまだ二十歳にも満たぬ青年。
与み易しと判断し、ハイラントに嘆願の使者を送る。
「ジルトニア国民のため、貴国に嫁がれたイズミル元公女殿下をジルトニアにお返し願いたい」と……
しかし、宰相の画策により大公家が滅んだ事を秘密裏に調べていたグレアムは、無論それを退ける。
その理由はイズミルがまだ十歳で、国土全てを浄化出来るほどの力が無いという事とした。
大公家を滅ぼすほどの狡猾さと残忍さを併せ持つ宰相の元へイズミルを渡せば、幼い彼女がどのような目に遭いながら暮らす事になるかは容易に想像出来た。
ただ瘴気を祓うためだけの道具として扱われるのは目に見えている。
そんな目に遭うとわかっていながら幼い彼女を引き渡せるものか。
形だけではあるが、自分の妃を守るという名分がグレアムにはあった。
そしてそれは、ジルトニアの主張を退けるには十分な理由だ。
本来なら他国で起きた騒動に干渉する事は政治的に出来ない。
それが今回、力尽くでイズミルを奪おうと兵を差し向けて来たジルトニアに対して、ハイラントには王太子の妃を守るという大義名分が出来たのだ。
これにより二国間で軍事衝突が起きる。
しかし大国ハイラントと小さな大公国とでは軍事力に圧倒的な差があり、勝敗を決するのにさほど時間は掛からなかった。
グレアムは宰相を捕らえ、内乱と大公家殺害に加担した者らと共に国際裁判にかけて極刑に処した。
その後はジルトニアの国土の立て直しに着手する。
グレアムの持つ魔力で瘴気を祓い、集まっていた魔物を一掃する。
そして国土全土を包む巨大な結界を張った。
その桁外れの魔力と、妃である元公女を守り通した男気にジルトニア国民は平伏し、ハイラントへの忠誠を誓ったのは当然といえるのかもしれない。
そうしてグレアムはジルトニアでの後始末が一応片付いた後、一度ハイラントに戻り、イズミルと対面してその意思を確認した。
「キミが成人するまでその国土の守護は責任を持って俺が引き受けよう。しかし成人後はどうしたいか?国に戻り、然るべき相手と婚姻を結び直して大公家を復活させ、女性大公として国を治めてゆくという方法もある」
グレアムのその提案にイズミルは首を振る。
そして十歳の少女とは思えない強い意志を持ち、グレアムに答えた。
「畏れながら殿下、わたくしが成人するまで10年の月日を要します。その間、殿下のお慈悲にお縋り続けるのも策ではありますが、きっとその後はもう以前のジルトニアとは違う国になっておりましょう。わたしが国に戻ればきっと民は喜びます。でもそれは象徴的なもので、年若い女性大公にいずれ不安を募らせるばかりとなるはず……その時、我こそはと第二第三の宰相のような者が現れないとは限りません。そうなればまた国が荒れます。ここまで国力の落ちたジルトニアがまた乱れれば、破滅の道を辿るしかございません。ならばいっその事、ハイラントの属州の一つにお迎えいただきたく存じます」
その迷いのない聡明な意思にグレアムは驚いた。
十歳の少女には今後の祖国の行く末を左右する
決断はまだ無理であろうと高を括っていたのだ。
自分が道を示し、導いてやらねばいけないと。
しかしただ一人遺された元公女であるイズミルを蚊帳の外に放り出して勝手に事を進めるわけにはいかないと思った上での相談だったのだが……。
おそらくは王太后リザベルの助言もあったのだろうが、それを理解し、己の中で理路整然と結論を導き出しているというその聡明さにグレアムは内心驚きを禁じえなかった。
「……祖国を失う事になるが、キミはそれでいいのか?ジルトニアという名はただの地名となるのだぞ?」
「悲しくないと言えば、無念でないと言えば嘘になります……でも国は王家のためのものではありません。国民皆のものだと亡き父は言っておりました。わたくしが望むのは国民の安寧な暮らしです。ハイラントの属州となれば他国からの干渉も防げます。殿下のような方がいずれ国王となられる国であれば、安心してお任せする事が出来ます。きっと亡き父もそれを望んでいると思います……」
ここまで言ってイズミルは行儀良く重ねられていた手をスカートの上でぎゅっと握りしめた。
今まで我慢していたのだろう、堪えきれなくなった感情がじわじわとイズミルから溢れ出していた。
どれだけ大公家の公女として、そして王太子の妃として過不足なく育てられているはいえまだ十歳の少女なのだ。
その行動が正しいのかグレアムにはわからない、
だけどグレアムの手は動いていた。
ぽん、とイズミルの頭の上に手を置いた。
「泣いてもよいのだ」
という意思表示のつもりだった。
するとそれを理解したのか小刻みに震えながらイズミルから微かな嗚咽が漏れ出した。
力一杯握られた小さな手にポロポロと涙の粒が
降りかかる。
付き添いとして隣に座っていた王太后リザベルがそっと肩を抱き、幼い体に寄り添った。
少ししてイズミルは落ち着きを取り戻し、そして言った。
「取り乱してしまい申し訳ありませんでした。でも殿下、これだけはお伝えしたいわたくしの気持ちがございます。もう少しだけお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「ああ。構わないよ」
それを聞き、イズミルはすくりと立ち上がり、最上級の礼を取った。
淑女としてのカーテシーよりももっと上位の礼である。
「この度の事、殿下には感謝してもしきれない程の恩義を感じております。弱小国の内乱など捨て置いてもよいものを、わたくしを見捨てる事なくお守り下さいました。それどころか亡き家族の仇も討っていただき、更にはジルトニアの国土をも救って下さったのです。このご恩をどうやってお返ししたらよいのか未熟なわたくしには見当もつきません」
ここまで言い、イズミルは顔を上げて真っ直ぐにグレアムの目を見た。
強い意思の光が彼女の瞳に宿っていた。
「だけど必ず、この生涯をかけて、殿下とこの国に恩返しがしたいと思います……!」
いつのまにか拳を握り前のめりになっている
イズミルを見て、グレアムは優しい微笑みを浮かべる。
「同じく国を統べる者として、そしてキミの夫として当然の事をしたまでだ。そんなに律儀に構えすぎるな、もっと楽にしてくれ。キミはまだ幼い。ただ健やかに成長してくれればそれでいい」
その時のグレアムの接し方は夫というより兄のような感じであった。
彼自身の気持ちの上でもそうであったのだろう。
しかしイズミルが恋に落ちるには充分すぎた。
(この方の妃になれてわたしはなんて幸せなのでしょう……!嬉しくて誇らしくて、こんなにも心が揺さぶられる……!)
一度意識してしまうともうまともにグレアムの顔を見られなかった。
グレアムが部屋を出て行くまでイズミルはずっと俯いたまま、顔を上げられなかった。
耳や頸まで真っ赤に染め上げ、もはやまともな鼓動は打てないのではないかと思うほどの早い鼓動に必死に耐えていた。
わずか十歳の身に宿った恋心である。
しかし幼い初恋と侮ることなかれ。
これよりじつに十年間、イズミルは初恋の相手グレアムを想い続けたのである。
あの恐ろしい事件が起き、後宮が廃された後も変わることなくイズミルの心の中に在り続ける。
自分が廃妃された後それに伴い王室規範を作り直す事を知った時、イズミルは規範改定によりグレアムに新しい妃を迎え入れ易くする事こそ、自分がグレアムやこの国に出来る恩返しであると考えた。
それが妃として出来る、最初で最後の仕事だと。
そして時は来た。
イズミルはこの城で暮らす最後の一年をグレアムのために生きると心に誓い、側に上がった。
たとえ拒まれようとも疎まれようとも恩返しが押し付けてあったとしても、最後の日まで決して側から離れない。
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